これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091314

感想・レビュー・書評

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    ・快な目的
    自分にとっての、そして相手にとっての、それぞれの正義を知ってみたい

    ・質問
    ある事例に対して、各立場に応じての正しいと思うことをそれぞれ導き出す方法を教えてください
    テストを補正、過去を補修するとはどういうことですか?


    世間で話されている正義には欠陥ばかり。
    その世間で正義だと言われているものの、致命的な落とし穴を知った上で、正義についてもう一度議論をしよう!

  • 『ハーバード白熱教室』のマイケル・サンデル教授、2010年のベストセラー。
    (つまりこの本も10年、積読されてたわけです。やっと読んだよ。)

    功利主義、リバタリアニズム(自由至上主義)、カント、ロールズ、アリストテレスといった政治哲学を、有名な「トロッコ問題」をはじめ、代理出産、徴兵制、アファーマティブ・アクション、妊娠中絶、同性婚など具体的事例をあげ、「正義」と「道徳」の問題として解説する。

    いや〜、難しかったです。あげてある事例も使われている言葉も比較的わかりやすいと思うのですが、答えのでない問題を扱っているのでやっぱり難しい。トロッコ問題ひとつとっても「正しい答え」はないし、この場合の「正しい」とは何かというところから考えなくてはいけない。でも哲学ってこういうことを考えるためにあるんだよっていうことはわかりました。

    以下、引用。

    アーシュラ・K・ル=グィン
    「オメラスから歩み去る人々」

    「満足した豚であるより不満足な人間であるほうがよく、満足した愚か者であるより不満足なソクラテスであるほうがよい。そして、愚か者や豚の意見がこれと異なるなら、それは彼らがこの問題について自分自身の側しか知らないからだ」ジョン・スチュアート・ミル

    イラクではアメリカ政府と契約を結んだ民間人が1200人以上殺されたが、彼らはアメリカ国旗で覆われた棺で帰国することもなく、アメリカ軍の犠牲者数に含まれることもない。

    「ある人間を幸せにすることと、彼を善い人間にすることはまったく別の話だし、ある人間を抜け目ない人間、利に聡い人間にするのと、彼を徳のある人間にするのもまったく別の話だからだ」利害や選好を道徳の基準にすると、道徳の尊厳が台無しになる。そのようなやり方では、善悪を区別する方法は学べない。「せいぜい、そろばん勘定がうまくなるくらいだ」
    イマヌエル・カント

    カントにとって、自殺は殺人が誤りであるのと同じ理由で誤りだ。どちらも人格を物として扱っており、それ自体が究極目的である人間性を尊重していない。

    カントにとっては、すべての人間の人権を守ることが正義だ。相手がどこに住んでいようと、相手を個人的に知っていようといまいと関係ない。ただ相手が人間だから、合理的推論能力を備えた存在だから、したがって尊敬に値する存在だから、人権は守られるべきなのだ。

    カート・ヴォネガット『ハリスン・バージロン』

    人間に特有の能力である言語は、快楽や苦痛を表現するためだけにあるのではない。何が正義で何が不正かを断じ、正しいことと間違っていることを区別するためにあるのだ。人間はそうしたことを沈黙のうちに把握してから言葉を当てはめるのではない。言語は、それを通してわれわれが善を識別し、熟考するための媒体である。
    アリストテレス

    幸福とは心の状態ではなく人間のあり方であり、「美徳に一致する魂の活動」なのである。

    公正な社会は、ただ効用を最大化したり選択の自由を保証したりするだけでは、達成できない。公正な社会を達成するためには、善良な生活の意味をわれわれがともに考え、避けられない不一致を受け入れられる公共の文化をつくりださなくてはいけない。



  • 読了までに時間がかかってしまった。難解な部分もいくつかあり、完全な理解にはほど遠いかもしれないが、いろいろと考えさせられるきっかけとなった。

  • 列車の線路上に5人の作業員がいる。このまま行けばその5人は死ぬが、今進路を変えて別の道にすればその5人は助かる。しかし、その線路の先には1人の作業員がいる。
    あなたはどうするか?

    今では有名な話となったが、どちらか一方が正しいわけではなく、様々な視点から正義論について語られていた。
    アリストテレスやカントなどの哲学者の考えを紹介しながら、様々な社会問題について考察されていた。

    今まで考えたことのないような発想で問題に向き合っていたので、頭が混乱しながらも価値観が広がったような気がした。

  • 個人的な読んだ理由として

    選挙とは、政党から提示される実行可能な政策セットの選択であると考えていた。例示すれば「大きな政府」対「小さな政府」といったものである。ではどのような基準をもって選択すればよいのか。まず、「実行可能な」というからにはすでに経済学的アプローチのよる選別はすんでいるはずである。そこで本書を手に取った。

  • 哲学について、たしかに取り付き易く記載されていて、講義が大人気なのも納得。
    ただし、やはり哲学なのでどの方向性に帰着させるかは自分次第であり、自分の考えをちゃんと持つことが大事だと実感する

  • とりあえずヘビーな本です。ハーバードのエリート学生に「功利主義」と相対するものを伝えたかったのでしょう。正義を考えるきっかけになる本。哲学道徳の入門としてよいのでは。ただ、結論っぽいことは書かれていないので自分にとっての正義は自分で考える必要あり。
    また挑戦しよう。

    1.この本をひと言でまとめると
    正しい行いとは何か…自分で考えよう

    2.お気に入りコンテンツとその理由を3から5個程度
    ・ある社会が公正かどうかを問うことは、われわれが大切にするものがどう分配されるかを問うことである(p29)
      ⇒結局政治に依存する。政治哲学しだい。
    ・赤ん坊や妊娠を商品として扱うのは、それらを貶めることになる(p128)
      ⇒すんなりと頭に入ってきて自分の感覚に近い。
    ・貧しい国々の計算ずくの政策としての商業的な代理出産産業の出現(p134)
      ⇒金儲けのタネにしか考えてないようであり、先見の明があるようにも感じる。
    ・人生の不公平さを是正するのではなく、この差を受け入れ、そこから利益を得るべき(p214)
      ⇒是正するだけではだれも努力をしなくなる。


    3.突っ込みどころ
    ・正しい行いとは何か?結局自分の中で答えは出ませんでした。
    ・道徳的か否かを知りかければ動機をみよ(p146) ⇒崇高すぎてだれも道徳的になれない?
    ・人格を究極の目的として扱う(p159)⇒絶対的価値?
    ・貢献度は少なくともある程度はもって生まれた才能、つまり自分の功績とは言えないもので決まる(p207)
      ⇒過程はどうでもよく結果だけで判断するということ?

  • <blockquote>この本は道徳と政治を巡る考察の旅</blockquote>

    自由市場で我々が下す選択はどこまで自由なのか?
    市場では評価されなくても、金では買えない美徳・価値は存在するのか?

    <blockquote>理性の納涼kは自由の能力と結びついている。この二つが組み合わさることで、人間は動物とは一線を画す独自の存在となる。これらの能力が、人間を生理的欲求しか持たない生き物以上の存在とするのだ。(P.141)</blockquote>

    <blockquote>私の意思は私自身が決めたものではなく、外的な力――状況の必然性や、そのときど記の欲求や欲望によって決められたもの。(P.161)</blockquote>

    <blockquote>道徳は経験から生まれのではない。道徳は関あからある程度の距離を置いたところに存在し、世界に対して判断を下す。(P.168)</blockquote>

  • 正義に関する3つのアプローチの検証。
    1、最大多数の最大幸福を目指す(功利主義)
    2、選択の自由の尊重(リバタリアン、リベラル)
    3、美徳と共通善を考える

    功利主義への反論
    個人の価値基準を一つの尺度で計ることはできない

    自由主義への反論
    突き詰めると社会が成り立たない
    市場主義ではある種の腐敗が生じる(それをお金で買いますかに詳しい)


    一つの原理ですべて解決することはできない。避けられない不一致を受け入れる社会にするための議論が必要


    第1章
    さまざまなシチュエーション提示による葛藤を考えさせる。
    このような考察はギリシャ時代からされているのに決着はついていない。
    なぜなら考察は孤独な作業ではなく社会全体で取り組む試みだから。

    第2章、最大幸福原理
    全体最適のために犠牲になる人がいてはならないという通念がある。幸福、快不快を定量化できないため現実的でない。人の命に値段をつける問題。(ピントフォード)

    第3章、私は私のものか?
    税金、臓器売買、幇助自殺。極端な例をあげ、リバタリアンの過激さを主張。

    第4章、雇われ助っ人
    徴兵と傭兵、代理母問題の共通性。
    自由市場での契約は本当に自由なのか(貧富の差)
    金で買えないもの、買うべきでないもの(子供とか)はあるのか?

    5章重要なのは動機
    カントの紹介。
    自分の所有者は自分であるということの否定。人間とは(常にではなくとも)理性的存在であること。感覚的な欲望は自律行動ではない。行動が正しいかどうかは、結果ではなく、一貫した動機。例えば嘘をつかないこと、計算ずくの正直さに道徳的な価値はない。感情的な親切にも道徳的な価値はない、理性的に一貫して親切なら良い。

    道徳の原理は
    義務、自律、定言命法(普遍化)

    どんな状況であれ、嘘はいけない。原則である以上、状況や結果の予測に基づいて、例外をつくるものではない。
    しかし、真実だが誤解させる意図での言い訳は許される。これは嘘はいけないという道徳に敬意を払っているし、注意すれば判断可能である。
    (クリントンの言い訳)

    第6章、平等の擁護
    共同体の原理を選ぶための思考実験。全員に無知のベールをかぶせて検討させる(自分の社会の中での立場がわからないようにする)
    分配について下記3種は不完全
    1封建制度(不公正)
    2形式的自由主義(生まれた環境で差がつく)
    3実力主義(能力も生まれつきだとみなす)

    ロールズの格差原理
    個人の天賦の才を公共資産と見なす。恵まれた人は恵まれない人を助けるという前提においてのみ、その能力から利益を得ることができる

    (筆者は)うまくいくかはともかくより平等な社会を生み出す可能性があると主張。

    7章、アファーマティブアクション
    大学の存在意義は、テストの結果で入学を判定するものではなく、多様性という公的善に貢献するものだとすれば、人種や地域配慮などは許される。

    8章、誰が何に値するか
    アリストテレスは正義は目的により定義されるとした。

  • 社会の見方について、様々な視点を獲得できる。
    身近な例を列挙して話を進めてくれるため、大変理解しやすい。
    ただ、分野によっては現在の関心と合わずとばし読みしてしまったため、また再読したい。その時々で感じ方も変わるのであろう。

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著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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