これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091314

感想・レビュー・書評

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  • 難解。

    考えの違いこそが議論の核であり、定義付けは最も難しい行為だと思う。

    普段は考えもしない設問が用意されている。自分の奥底にある正義感というものが、如何に曖昧であるかを突き付けられる。一見、公平な判断は突如として不公平に変貌する。何が正義か。

    多数と少数。自由と制約。道徳や宗教、政治まであらゆる事柄を、正義というテーマで考える。

  • 読みごたえがあった。

    正義や道徳について、人種や宗教の違いによって、ましてや個人によってあり方が違うなか共存している我々はどう向き合っていけば良いのかをもう一度考えるべきではなかろうか。と思ってしまいました。

    哲学的で少し難しく、答えがないので
    多少の読み飛ばしが必要でした。

  • 数年前に世間を賑わせた本書。読もうかと思っていたものの、その分厚さから長いこと放置していたが、いよいよ読む決心がついた。確かに読み応えある一冊で何日もかかってしまったが、流石論じ方が整然としており何の話をしていたか難しいながらもついて行くことができた。
    自由を強調するリベラルの考え方では拾い切れない共通善という考え方を知るのに最適な一冊となっている。

  • 話題になっていたので読んでみました。
    ニュースを見ていると、「正義」って1つしかないように感じてしまうけれど、結局正義なんてものはその人が依って立つところ次第で変わるものなんだなぁ、と感じました。
    読みやすくなっているとはいえ哲学書なので、多少読むのに疲れてしまうかもしれません。

  • 楽天ブックス購入
    ブックオフ売却

    ・快な目的
    自分にとっての、そして相手にとっての、それぞれの正義を知ってみたい

    ・質問
    ある事例に対して、各立場に応じての正しいと思うことをそれぞれ導き出す方法を教えてください
    テストを補正、過去を補修するとはどういうことですか?


    世間で話されている正義には欠陥ばかり。
    その世間で正義だと言われているものの、致命的な落とし穴を知った上で、正義についてもう一度議論をしよう!

  • 『ハーバード白熱教室』のマイケル・サンデル教授、2010年のベストセラー。
    (つまりこの本も10年、積読されてたわけです。やっと読んだよ。)

    功利主義、リバタリアニズム(自由至上主義)、カント、ロールズ、アリストテレスといった政治哲学を、有名な「トロッコ問題」をはじめ、代理出産、徴兵制、アファーマティブ・アクション、妊娠中絶、同性婚など具体的事例をあげ、「正義」と「道徳」の問題として解説する。

    いや〜、難しかったです。あげてある事例も使われている言葉も比較的わかりやすいと思うのですが、答えのでない問題を扱っているのでやっぱり難しい。トロッコ問題ひとつとっても「正しい答え」はないし、この場合の「正しい」とは何かというところから考えなくてはいけない。でも哲学ってこういうことを考えるためにあるんだよっていうことはわかりました。

    以下、引用。

    アーシュラ・K・ル=グィン
    「オメラスから歩み去る人々」

    「満足した豚であるより不満足な人間であるほうがよく、満足した愚か者であるより不満足なソクラテスであるほうがよい。そして、愚か者や豚の意見がこれと異なるなら、それは彼らがこの問題について自分自身の側しか知らないからだ」ジョン・スチュアート・ミル

    イラクではアメリカ政府と契約を結んだ民間人が1200人以上殺されたが、彼らはアメリカ国旗で覆われた棺で帰国することもなく、アメリカ軍の犠牲者数に含まれることもない。

    「ある人間を幸せにすることと、彼を善い人間にすることはまったく別の話だし、ある人間を抜け目ない人間、利に聡い人間にするのと、彼を徳のある人間にするのもまったく別の話だからだ」利害や選好を道徳の基準にすると、道徳の尊厳が台無しになる。そのようなやり方では、善悪を区別する方法は学べない。「せいぜい、そろばん勘定がうまくなるくらいだ」
    イマヌエル・カント

    カントにとって、自殺は殺人が誤りであるのと同じ理由で誤りだ。どちらも人格を物として扱っており、それ自体が究極目的である人間性を尊重していない。

    カントにとっては、すべての人間の人権を守ることが正義だ。相手がどこに住んでいようと、相手を個人的に知っていようといまいと関係ない。ただ相手が人間だから、合理的推論能力を備えた存在だから、したがって尊敬に値する存在だから、人権は守られるべきなのだ。

    カート・ヴォネガット『ハリスン・バージロン』

    人間に特有の能力である言語は、快楽や苦痛を表現するためだけにあるのではない。何が正義で何が不正かを断じ、正しいことと間違っていることを区別するためにあるのだ。人間はそうしたことを沈黙のうちに把握してから言葉を当てはめるのではない。言語は、それを通してわれわれが善を識別し、熟考するための媒体である。
    アリストテレス

    幸福とは心の状態ではなく人間のあり方であり、「美徳に一致する魂の活動」なのである。

    公正な社会は、ただ効用を最大化したり選択の自由を保証したりするだけでは、達成できない。公正な社会を達成するためには、善良な生活の意味をわれわれがともに考え、避けられない不一致を受け入れられる公共の文化をつくりださなくてはいけない。



  • この本は、ハーバード大学史上空前の履修者数を記録し続ける、超人気講義「Justice」(正義)をもとにした全米ベストセラーの日本語訳です。

    この本では「正しい行い」とは何か?を考えます。

    例えば。
    1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、あなたはその1人を殺すべきでしょうか?
    収入の高い人から高い税金をとって、収入の低い人に再分配するのは、本当に公正なことでしょうか?
    前の世代の人々が犯した過ちについて、私たちに償いの義務はあるのでしょうか?
    アメリカでは既に行われている代理出産は、双方の同意のもと、子どもを出産し、出産後その子どもを引き渡しますが、その契約は、赤ん坊の売買行為にはあたらないのでしょうか?
    などなど。どれも、正解のない、にもかかわらず決断をせまられる問題です。

    一つめの問題は、アルジェリアの事件のことを考えてしまいます。大津の事件や、桜ノ宮高校の事件のことも。誰にとっても正しいこと、あきらかな正解、なんてないときのほうが多くて、自分が選びとれる「行い」はいつでも一つしかなくて、どうすればいいのかわからなくて、結局判断することから逃げてあいまいに笑ってその場をやりすごして、波風なんてたてないのが一番で、それがオトナの振る舞いだなんて自分に言い訳して、でも苦しくて。……そんな経験がないまま一生を過ごす人なんて、きっといません。
    この本は芯から重たいがっつりした「正義」について、その時自分はどんな「行い」をするのかについて、深い深いところまで、考える刺激をくれます。
    重たいニュースがつまった新聞やテレビをみながら、何かを考えずにはいられなくなったときに、いい本かもしれません。

  •  テレビなどでサンデル先生が講義をしている場面を拝見することがあった。内容は溺れかけている人を助ける順番であるとか、人命に優劣はあるのかなど重い内容だった記憶がある。専門は政治哲学で現役のハーバード大学教授である。

     本書の内容は感情的な事柄に属することを冷静に理論立てて考えてみようというものなのだが、理路整然と解釈はしているのだが不思議なことにどこかチグハグな感じがする。人の感情を理屈で説明しようとすることに無理を感じるのはわたしだけなのだろうか、善悪をロボットにプログラミングすることの難しさが知れる。

  • すごく頭を使わされる本。言葉自体は難しくないが、哲学慣れしていない自分には読み進めるのが結構苦しかった。
    内容としては、結局「正解って一つじゃないよ」ということか?
    「正義」という一見普遍的なものも立場・見方によって全く異なる見解があり、誰にでも当てはまる「正義の正解」は未だ無いようだ。自由とか人権を尊重しすぎることも一種の思考停止状態。偏った正義を押し付けないように見識を広げたいとおもった。

  • 正義とか哲学とか、こんなにも難しいのか。
    身近な実例を挙げつつ、そこに孕む正義の捉え方を紐解く。生き方考え方で、こんなにも世界は違って見えるのか。
    自分にとっての正義とか他者の正義は違う。
    どう生きるかは自分次第だけど、絶対もないけど、自分なりのものは追い求めていたいと思う。なんだこの感想。
    また読もう。

著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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