数覚とは何か? 心が数を創り、操る仕組み

  • 早川書房 (2010年7月24日発売)
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本 ・本 (100ページ) / ISBN・EAN: 9784152091420

感想・レビュー・書評

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  • 数学と聞くとアレルギーがある人もいるかもしれない。しかし、我々は生まれつき数について理解ができるようになっているし、そうじゃないと、損してばかりの人生になる。この本は、タイトルの通り「数覚」。数の感覚についての本。人間が生まれつき持っている数を理解する能力について幅広い視点で教えてくれる良書だ。

    赤ちゃんはいつから、どのように数を認識するのか。人間以外の動物は数の概念をもっているのか。数を認識する脳とは。男女の数学に対する能力差について、などなど。一つ一つのテーマを深く掘り下げていく。ローマ数字でⅠⅡⅢⅣと、4から棒を数えるだけじゃなくて別の記号になっていくが、この理由は何故か、などの考察も面白かった。動物が数を本当に認識するのかなどこの本の説明だけでは納得しにくい部分もあったが、そんな考察も含めて、楽しい読書ができた。

    ー 今では、私たちの祖先が3以下の数を示す言葉しか持っていなかったかもしれないとは、とても信じられない。それでも、それはあり得ないことではない。今日に至るまで、オーストラリア先生民のワルピリ族の人たちは、「1」、「2」、「少し」、「たくさん」という量を表す言葉しか持たずに暮らしている。色の領域では、アフリカの言語の中には、黒、白、赤の区別しか持たないものもある。言うまでもなく、このような限界は、まったく語彙だけの問題だ。ワルピリ族の人々が西欧人と出会うようになったあとでは、彼らは容易に英語の数詞を覚えたのだから。つまり、彼らが数を概念化する能力は、彼らの言語に少ない数の単語しかないことによって制限されているわけではなく、ましてや(言うまでもなく)、遺伝子によるのでもない。この問題についてはあまり研究がないのだが、彼らも3以上の数の量的概念を持っているが、それは非言語的で、おそらく概算であるようだ。

    ー サヴァン症候群のような計算の達人の大部分は自閉症であるが、自閉症は、男性が女性よりも四倍多い神経学的病気である。実際、自閉的症状は、脆弱X症候群のようなX染色体の遺伝的障害とも関連している。逆のケースとして、ターナー症候群は女性だけに起こる遺伝病であり、X染色体の欠失に関連している。ターナー症候群の女性は、ある種の身体的奇形に加えて、知能が通常のレベルであっても、数学や空間表象にだけ特化した認知障害を示すことがわかった。彼女たちの障害の原因の一部は、卵巣の萎縮により性ホルモンの極端な分泌不全が起こることだ。実際、初期にホルモン治療をすると、彼らの数学的、空間的能力は改善する。

    「数学の言語」は私たちが宇宙を読み解くのに使える言語なのだと著者は言う。確かに、数字や数式は、世界共通のリンガフランカである。そして、それを用いて世界を認識した内容も共通だ。哲学的な言語ゲーム同様、もしかしたらそれ以上に、数字の世界も面白い。

  • 授業で取り扱いました

  • 時々、こういうサイエンス系の本を読みたくなる。視覚・聴覚・味覚などが優れている人は、身の周りにいたりするのでピンと来やすいが、数字に強い「数覚」という才能・センスがあるんだよというお話し。この感覚は動物にも、赤ちゃんにもあるらしく、カラスや熊などは、少しの数なら数えられる(ようだ)。ただし、テレビで足し算できる動物が紹介されたりするが、それは眉唾らしい。やはり感覚なのだろう。人に数覚があったことでコンピュータが発明され、宇宙にさえ飛び出すことができる。数学ではなく数覚と考えると、ちょっとだけ親近感がわく。

  • 数学には直観が必要だと何となく思っていたところを、とてもつぶさに検討してくれていて、とても説得させられた。本書を読んで良かったのは、とはいえ、数学は、直観に完全に寄り添っているわけではないということ。そこのネットワークをつなげることが、人類の発明した数学の世界への門を開くのだということ。

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  • 図書館

  • 神様は数学者だ。と言うのは大抵数学者なので、嘘臭いなあと思っていたのだけれど、数学者とは頭の良い象徴のような職業なので、裸の王様を見た大人よろしく黙っていた。ところがそこに、神経科学者がやって来た。おまけに王族(元数学者)の出身だそう。そんな彼は言いました。数学者も結局、進化の産物である脳で考えていますよと…そんな本です。
    同じことを日本の解剖学者が「唯脳論」と名づけてたのを、これを読んで思い出した。

  • 2010年刊行。著者はコレージュ・ド・フランス教授(実験認知心理学)。◆人間が遺伝的に継受する能力は多々あるが、本書はその中で「数」に関する感覚的側面を、主として遺伝的、神経科学的側面から解読しようとする。

  • 興味が湧くテーマだが、後半難しい

  • 味覚・視覚・聴覚とおなじように備わっていると考える「数覚」確かに、他者を感じることは数えることから始まるのだ。

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