忘れない忘れない

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 66
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091499

作品紹介・あらすじ

ボクの母ちゃんの頭の中は12才だ。小学生の時に交通事故にあってから記憶力がすっかりダメになって、それ以降のことはほとんど覚えていられない。「忘れんぼノート」にメモして覚えておこうとするんだけど、2、3日で忘れてしまう。障害をもった人たちが働くパン屋さんで働いてるから、学校でからかわれたりするけれど、ボクはぜんぜん気にしてない。そんなふうに毎日を過ごしていたある日、母ちゃんの行方がわからなくなってしまって…もしも、もしもなにかあったら…人生という長く険しい道を、母、息子、父の3人で、寄り添いながら歩んで行く、せつなく温かな家族の軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • 子供の頃に交通事故にあって
    記憶力に障害が残った女性。

    優しい男性と知り合い結婚し、男の子が産まれ幸せな毎日。

    このまま幸せなエピソードでら終わるのかと思ったら、まさかこんな事実が。

  • 読みやすい本で一日で読了した。

    11歳の息子と、父と、記憶障害の母の物語。
    12歳の時の交通事故がもとで、それ以後の記憶を保持できなくなった母。
    現在の生活、父と母の出会い。
    泣けるシーンもあって、ちょっと感動もの。

    ラスト近く、父が家を出て何日か後に帰宅するのだが、そこは説明不足で惜しかった。

  • 新しい事をすぐ忘れてしまう障害を持つ母と、小学生の男の子、父の三人家族。色々トラブルがありつつも仲良く暮らす話かなと思いながら読んでいくと、母の障害の原因となった事故の真相が明らかになり、更に予想外の展開となっていく。

  • 息子…障碍を持ったお母さんの小学生の息子の話。小川洋子さんの博士の愛した数式を思い浮かべながら読んだ。
    母…母の日記。働き、恋をし、出産し、育児する。障碍がなくても大変なのに。女の人には本当に頭が下がる。バトンを渡したという言葉にしんみりした。
    父…このつながりは予想外で衝撃だった。愛というより罪滅ぼしなのか。もしそうなら罪を一層深めてはいないだろうか。
    母…事故を覚えていたのか。愛が先にありきだから計算尽くでもないのか?
    息子…もしかしてお母さんは記憶が戻ったのか。とてもほっとするエンディングだった。

  • 読みやすい!!

  • 記憶障害を持つ母親と、全身全霊で彼女を守る父親、そしてたまに面倒に思いながらもそんな母親を支えようとする息子。
    他の友達とはちょっと違う、けれど温かな家族のカタチ。

    ・・・と油断して読んでいると、足元をすくわれる。
    息子、母親、父親と語り手が入れ代わりながら物語は進んでいくのだけど、確かに母親の章までは胸が痛くなるような温かさを感じていた。
    しかし父親の章になって、まさかまさかの急展開。
    ほのぼのとした家族の話かと思いきや、若干ホラー調ミステリー。

    罪を背負って生きていく父親、その罪を「忘れたふり」をしている母親。そして何も知らない息子。

    読み終えた後の、この何ともいえない感じ。
    思わず何度か読み返した。
    最初は純粋に心から妻を愛している夫のように見えたのだけど、本当にそう?ただ自責の念からくるものじゃないの?
    それとも段々と真実の愛に変わっていった?
    どうしてもただの「温かな家族の話」には私には思えなくなってしまった。

    全てを知った後、タイトルの「忘れない、忘れない」を目にすると
    読む前とはまた違った意味に思えて、妙に怖い。

  • 記憶障害を持つ母・琴音、それを献身的に支える父・涼、苦労はあるけど元気に育っている二人の子・未来。
    この家族は温かくやってきている。琴音と涼はある意味宿命で結ばれたということを除いて。
    やさしさ、切なさにじぃーんと涙が溢れる時もあれば、ゾッとする伏線があったりで、一筋縄ではいかない一冊。

  • ラストが意味不明すぎて残念な感じ。

  • 渡辺やよいの小説は、2年前の秋に『ピーター・ノースの祝福』を読んだ。おもしろくて、図書館で借りて読んだあと、買ってまた読み、『ヒューマンライツ』で紹介したのだった。そのとき出ていた本はひととおり読んだ。

    図書館の新着リストで久しぶりに新刊『忘れない忘れない』をみつけて借りてきた。去年も文庫で『そうなっていい、って思って来たの』というのが出ていたが、これは近所の図書館に入らなくて、未読のまま(このたび『忘れない忘れない』を返すときにリクエストしてきた)。

    『忘れない忘れない』は、子どもの頃の交通事故が原因で、記憶がほとんどもたなくてすぐ忘れてしまう「母ちゃん」のことを語る小5の「僕」の章から始まる。この「記憶がもたない」というのは、『博士の愛した数式』の博士のようでもある。あの博士は、上着にメモをどんどん挟んで、カサカサ音をさせて生きていたが、この母ちゃんは、首から「忘れんぼノート」を提げている。

    毎日繰り返されるようなこと、定期的に繰り返されるようなことは少しずつ記憶できるのだが、日々変わるものはどうしてもおぼえていられない母ちゃんは、毎日顔をあわせていても息子の僕のことがわからなくなったりする。だから、僕の家は玄関からずらーっと、僕が産まれた頃からの写真を貼ってあるという。

    母ちゃんは「忘れない」ようにと努力する。でも忘れてしまう。それを悲しがる。彼女の記憶に残るのは、悲しいこと、つらいこと、苦しいこと。楽しかったことは忘れてしまう。「おぼえておけない」「忘れてしまう」悲しさはあるだろう。私も、病気になったあとの母はまだおぼえていることが多いが、元気だった頃の母はもうだいぶ忘れてしまった。それは、ちょっと寂しい気持ちもある。

    母ちゃんのことを語る「僕」の話は、そこで語られた「母」自身の視点で語る章になり、その母の夫である僕の「父」の章になる。そうやって物語がすすむなかで、母ちゃんの事故のこと、母ちゃんと父ちゃんが結婚した経緯、母ちゃんの母、そして父ちゃんの母のことが少しずつ明らかになっていく。

    この母ちゃんは、世間的にいえば"知的障害者"ということになるのだろう。母ちゃんが父ちゃんとつきあってる段階で、母ちゃんは職場の人から「遊ばれてるのだ」と注意されたりもしている。息子の「僕」は、母ちゃんに心を配っているが、母ちゃんが「ヘン」なことに、ときどきうんざりもしている(学校の先生は"理解"してくれているが、同級生には「オマエの母ちゃん、おかしいよな」とか言われたりするし)。

    僕、母ちゃん、父ちゃんと、複数の視点を組み合わせたからこそ書けた物語だと思う一方で、「僕」が語るフルバージョンを読んでみたいな~と思った。それはたぶん、"障害をもった母ちゃんの、ケナゲな息子"というような話ではなくて(この『忘れない忘れない』も、そんなケナゲ息子の話ではない)、もっと違う話、YAモノとか、そんな話になるだろうと思う。

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