マルドゥック・スクランブル〈改訂新版〉

著者 :
  • 早川書房
3.96
  • (78)
  • (105)
  • (51)
  • (13)
  • (4)
本棚登録 : 739
感想 : 109
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091536

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 秀逸なカジノシーン・戦闘シーン
    映画向け

  • 「そうそうこれが見たかった」とも「え、あなたこんな人だったんですか」とも、
    登場人物にも小説そのものにもそう思いつつ読んだ。
    それと、個人的にはバロットの話、それもバロットとウフコックでもなく、バロットとボイルドでもなく、バロットとシェルが対になった話だと思ってるんだと気付いた。

    旧版は多分五回くらいは読み返している。気に入った本は繰り返し読む場合があるのでそういう作品はほかにもあるんだけども、改訂版を買って読んだのは初めて。

    最初っから登場人物の『全然大丈夫じゃない』感がすごい。
    語彙が足りなくて『大丈夫じゃない』って言い方しか今のところできないのが悔しい。多分『焦げ付き』と表現されるところのもの。
    その生々しさとか切実さが、旧版とは比べ物にならない勢いとか一種の容赦なさで、名前のある登場人物のほとんど全員に補われているような気がした。
    特にシェル。旧版だと終盤で一気に瓦解していったイメージがあるんだけども、改訂新版だと最初っから本当にめちゃくちゃになってる。
    序盤の
    「怯えきった男が、怯える理由もわからないまま幸福感にすがりつき、にっこりと微笑んで言った。」
    あたりからずっと。

    それでももちろん一番はバロット。こんなにか弱い子だったのか。臆病さや不安や欲や復讐心、「どうして私なの?」が旧版とは別物の丁寧さで描かれているので、それこそ冒頭の描写であった硬い人形みたいなイメージが読んでいくうちに別物になったり。
    「私はそんなに殺しやすく見えますか?」
    個人的にはここが一番のクライマックス。書きなおされた今までを
    ふまえて。
    あと彼女は「オイレンシュピーゲル」の三人の血の濃い親戚だなあとも思う。

    ウフコックも(ヴェロシティ読んだこともあるけど)安定してそうに見えて全然そんなことはないし、ドクターはバロットとのやり取りが修正されて何に悩んで迷ってるのかわかるようになったし。トゥイードルディ、ドルディムはがらりと印象が変わって不気味一歩手前の屈託なさが初めて魅力的に見えたし。
    あとは完全版を読んだ時の愉しみに。

    それから、冲方さんはエピローグの長い話を書く気がする、という私見。失速とか蛇足とかでは全然ないものとして。
    「天地明察」も、関孝和と会って怒鳴られ托されたところが到達点で、あとは長い後日談という気がしたし。「ばいばい、アース」もお別れを言って回るのにかなり文章を費やしてたし。
    「腐った卵の中身でも、大事に暖めれば、いつか生き返るかもしれないから」
    ここでケリがついて、あとはエピローグという気がした。ボイルドについて、ヴェロシティの後ではマルドゥック自体壮大な、ある意味死んだ後の話みたいなもんだという気がしている。

    完全版が愉しみ。映画も漫画も。アノニマスも。

  • 久しぶりにフィクション小説ガッツリ系を読んだ。

    まず、1冊に3冊分が入っているので時間がかかった。
    4日間もかかってしまった。

    さておき、

    感覚することから逃げていた少女バロットが、自分を取り巻くすべてを感覚するようになるお話。

    話の中では、序盤がすきかなー。バロットが生まれ変わり、力を暴走させていくあたり。

    中盤のカジノの話は、ゲームの定石というか、必勝法がいまいち理解できなかった; できなくても読めるようにはなっているけど、頭をだいぶ使いながらよんだからつかれちゃったよ。

    最後の戦闘シーンでは、あと10数ページしかないであろう残りページでどうしめくくるのかと(中途半端な印象になるんじゃないかと)おもっていたけれど、読後感すっきり。

    黄金のネズミ、ウフコック、とバロットを見ていると、アルジャーノンを思い出した。『アルジャーノンに花束を』では、最後に二人とも手に入れたものを失っていたけれど、バロットたちは失うことなく新たな関係性を手に入れて終わっていたように思う。

    ほかにも完全版など出ているみたいだけど、何が違うのかなぁ。

  • まずは、改定新版で読みごたえの違いにびっくり。

  • 早川書房から出ていることに納得の作品。伊藤さんの虐殺器官のようなテイストもありながら、時に哲学的でもあるような問いかけをされるような本。
    厚いから、時間がかかるかなと思ったけど、面白くて一気読み。
    SFものが好きな人にはもう間違いない作品なのでは!
    とても満足できる作品です!

  • 最初に読んだのは文庫本の刊行ごとに読んだので、待たされながらであって、今回、一気に読んでこんなに短い時間の話だったのかと再認識。卵繋がりの名を持つ、登場人物たちに久しぶりに浸ったが、圧巻なのは三巻目のカジノシーン。ギャンブルだけで読ませる筆力は麻雀放浪記の阿佐田哲也に匹敵するか。ギャンブルシーン後の固ゆでとの銃撃シーンは、以前の銃撃シーンの迫力に及ばず、欲求不満気味。したがって固ゆでの活躍を待つには、ベロシティを。こちらの完璧版も是非、発行願いたい。咬ませ犬以外の何物でもないバンダースナッチよりもカトルカールとスクランブル09メンバーの激闘を是非、完璧版で読みたい。そのためにはスクランブルのアニメの商業的成功が必要かな?

  • 少女娼婦は一度死んだ。

    そして、生きることを選択した。
    戦うことを選択した。

    彼女の選択は壮絶なる戦いを迎え、自らの生きる意味、自らの過去と向き合い。
    そして、生き残る為の戦いが始まる。

  • 映画化に当たり、手を伸ばしてみました。
    本屋大賞受賞である新鋭の作家、沖方丁先生の著書。

    ファンタジー出身の作家だけあって、
    やはり目立つのは、言葉の使い方だと僕は思いました。

    お洒落な言葉の中にある、格差社会マルドゥックシティ。
    それを彩るのは、幼い少女と、真摯な金色の鼠。

    本を読みながら、映画化するには、もってこいな作品であると
    僕は思いました。

    アクション、作品の情緒、雰囲気などなど。
    僕は、作品の作風・空気感がすごく好きです。

    弱い存在であった少女が"あしながおじさん"であるMr.ウフコックの力を借りて成長していく姿は、とても美しいなあと思いました。

    ----------------------------------
    2010年10月31日 読了
    26冊目
    梅田駅 立読にて。
    ----------------------------------

  • 久しぶりに疾走感が心地よい小説を読んだ。読書に夢中になるとき、自然と自分から小説の中に身をおいている場合と、作者になかば強引に引きずられるように物語に引き込まれる場合があるけれど、明らかに後者だった。でも、それがとても心地よかった。
    『天地明察』とはまったく異なる世界の話ではあるのだけれど、主人公の魂の形とか、やはり同じ作家の手によるものだなあ、と感じた。
    この世界、まだまだ広がりがありそうだから、続編もきっと期待できるのかな?

  • 登録日:10/15

全109件中 91 - 100件を表示

著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

冲方丁の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×