華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
制作 : 山本ゆり繪 
  • 早川書房
4.22
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本棚登録 : 836
レビュー : 152
  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091635

感想・レビュー・書評

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  • 『好きなキャラクターについて』という作文の題材は、昨年度の早川書房の入社試験だったか。ぼくが受験していたなら、主人公の青澄・N・セイジを挙げるだろう。己の信念と世界の現実の間で葛藤しながら、最後まで「交渉」することに心血を注いだ外交官である。

    『平行線にしか見えない議論に知恵を絞り、言葉を絞り、体力を振り絞って、両者が進むべき道を模索しなさい。その行為は、人間が最も知的である瞬間だ』これは彼の師・間宮が生涯貫いた理想だ。彼の信念を体現する言葉だ。青澄はいかなる時も決して対話を諦めない。どれだけの危険と困難が待ち受けていても、武力に訴えない手段を模索する。

    国際化やら格差社会やら、ともすれば隣人とすら価値観を共有出来ない時代だ。誰もが納得のいくたった一つの冴えたやり方など、存在しないのかもしれない。それでも、対話から目を背けてはならない。合意形成をしていかなくてはならない。将来への不安を煽られつつ、燃えてきたのも事実だ。勇気をありがとうございます、青澄公使。

  • 読み終わるのに時間がかかったけども、じっくりと物語に浸れた。
    すごい一冊に出会えたと感激。

    未曾有の脅威に襲われた○○年後の地球という設定はよくあるけれども、この世界観に圧倒され、その世界で生き抜いていく人々の闘いや生き様に溜息がでる


    登場人物も素晴らしい。
    今の日本に、青澄のような役人がいてくれればいいと願わずにいられない。
    陸上民、海上民の区別なく、地球に生きている人々のためにおしみなく闘える人。それも武力はなく、言葉の力だけで。
    この人は心からの善人だ。

    世界の滅亡を迎えるとき、形を変えてでも生き残ろうとするか、それとも滅びる事も自由のひとつとして迎えることができるだろうか。
    最後の一文、「全力で生きた」と言えるようにしたいものだ

  • SF小説は未だに村上龍の5分後の世界程度しか
    読んだことない(いやあれはSFと言っていいのか?)
    が、今回は題名に惹かれて手に取った。
    読み始めは、その世界観の理解に苦しんだものの
    一度理解してしまうと、読了まで一気にどっぷり
    はまってしまった。
    昨年秋に刊行された本だが、今年に入ってから
    起きている世界各地で起きている災害とリンクする
    部分もあり、SFにもかかわらず妙なリアル感があった。
    地学とバイオテクノロジーに関心ある方は、面白いと
    感じる一冊。

  • 生きる事を問う、現在と地続きの濃いSFだった。
    読み進めるのが辛く、一頁一頁が重かったのは初めてだった。
    人類が危機に瀕して脱する、なんてありきたりな話では無く、そこでいかに生きているのか、生々しく語られている。
    今の日本への痛烈な批判とも感じられる、生き残る為には甘い。
    我々は生きる事を舐めている、そう感じた。
    人間は残酷であり、自分さえ良ければよい利己的な生き物である。
    でも、その中で共益の為に抗い、争い、闘い続ける人々もいる。その人々が歴史を動かす一端になっているはず。
    凄いSFだった!
    これがSFなんだ!!!と、刻まれた一冊だった。

  • その世界に暮らしていくのは難しそう。
    陸も海も問題抱えてて、どちらも選べない。
    だけどアシスタントはすごく欲しい。ひとりは寂しいですから。
    続きも考えてる(?)らしいので、かなり気になります

  • 長かった~!
    SFだから当然なのだけど理系の難しい言葉がたっくさん出てくるし、
    ただでさえ2段でページ数が多いのになかなか読み進まなくて大変でした。
    でもラストはなんだか夢のある感じでよかったです。
    びっちりリアルに書いてあったので実際にこんなことあるかもねって思ってしまうくらい。
    それにしても作者が女性なのにすんごくハードな内容で、
    ただただ感嘆してしまう。私の中で獣舟のイメージは祟神。

  • 25世紀、地球内部の激変により水面が260m上昇し、僅かな大地と広大な海の世界で懸命に生きる人の姿を描いた海洋SF。「魚舟・獣舟」を先に読了した後でこちらに。背景から緻密に練り上げられた世界が素晴らしいです。海で生きる為に作り出された海上民と魚舟、前記を含め人類の身勝手さで生み出された様々な生物の反乱、人の思考を深めるアシスタント知性体の存在など、挙げれば切りがないです。そして、人類を救うことに全力を掛ける登場人物たちの信念が作者の想いをストレートに伝えてきます。間違いなくSFの歴史を刻む傑作でしょう。

  • SF?サラッと読み進めようなんて、始めの気持ちはすぐ覆し、丁寧にそしてかなり感情移入して読んでしまいました。ありえない設定!?いえいえ、そうとばかりもいえない現在の状況、想定外という枕詞はないのです。遠い将来、ホッとプルームで人類が・・・そしてその時、どう対処するのか、人類は何を選択するのか。大きい問題を問うだけではなく、一人ひとりの人物描写がとてもいいのです。私の今レベルの感想、アシスタント知性体、欲しい!

  • SFマガジン編集部による「SFが読みたい!ベストSF2010」のベスト1に選ばれたということで読んでみました。

    残酷な描写も多いですが、海上民と魚舟の友情、自分の体を犠牲にしても〈朋〉と共に戦う魚舟に読んでいて思わず涙が…
    地殻変動、遺伝子操作、AIのパートナーと、SF要素も盛りだくさんですが、遺伝子操作が物語のすべてにおいてカギになっているはずなのに扱いが少なくて、エ!? そんなことができるの? どういう技術? と思ってしまいました。そこは触れない約束なの?
    海面が上昇した未来の地球、という世界観の構築は面白かった♪

  • わたしはSFがあまり好きじゃないんだけど、「週刊ブックレビュー」をみて、この本を読んでみた。
    すごく込み入った世界を細かく作り込んでいて、SF作家の人って漫画家みたいに緻密で大変だなーと尊敬したけど、やっぱりわたしはSFむけじゃないのか、読んでいてしんどくなった。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。同作は「SFが読みたい! 2011年版」国内篇第1位に選ばれ、『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』の各表題作、『華竜の宮』の姉妹編『深紅の碑文』と合わせて《Ocean Chronicleシリーズ》と呼ばれ、読者からの熱い支持を集めている。近著に『妖怪探偵・百目』シリーズ、『薫香のカナピウム』など。

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