華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
制作 : 山本ゆり繪 
  • 早川書房
4.22
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本棚登録 : 836
レビュー : 152
  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091635

感想・レビュー・書評

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  • (チラ見!)

  • リアルな考証を重ねて導き出された人類の黙示録的SF。

    気候の大変動により海面が上昇した近未来。人類は自らを改造することで過酷な環境に適応して生き延びていた。
    そんな人類に更なる絶望が襲う。

    環境が変わってそれに適応しようと自らを変えても、いたちごっこのように予期せぬ事態に振り回される人類。
    その中で、少しでも人々が幸せになれるよう奮闘する主人公とその補助脳であるAI。

    この二人が中心となって物語は進行する。

    人類が叡智で貧困や差別から解放されるでも無いが、地続きな未来を感じさせるSF設定。

    限られた時間の中で、各々が己の立場の中でベストを尽くそうとしている流れは、
    絶望的な未来でも人を信じたいという気持ちにさせる。

    550頁超のボリュームでも、だれることなく一気に読ませる(実質二日かかりましたが)ストーリーは、
    SFは勿論ホラー的な展開や、ミステリ要素もあり、正にエンターテインメント。

    希望があったのかどうか、最後は読者に投げかけるラストも見事。

    短編から入りましたが、この作者の作品に、今のところ外れはありません。

  • 自然と人間の関係。
    人間はしょせん自然の一部。自然を畏れ、敬いながらいきるしかない。
    それが、他者を認めることにつながる。
    自然観と科学、倫理観を問うたものでもある。

  • 第32回日本SF大賞受賞作。
    「リリエンタールの末裔」の著者、上田 早夕里氏が「獣船・魚船」の世界観をベースに描いたSF長編。地殻変動によって目まぐるしく変わった未来の地球で人々を描いた小説です。

    地球規模のテーマを扱っているだけあって、その内容はとても濃密。600ページ弱ある上に、上下の二段に分かれた構成です。
    その文字量と登場人物の多さに一瞬は圧倒されますが、物語を読ませる力はとても強かったです。それぞれの立場の人々が自分の信念を持って最善を尽くそうとしている姿は胸を打たれます。
    特に主人公、青澄がいいですね。名前の通り青々とした澄んだキャラで、目の前の苦難や妨害をひたすら突き進んでいく所は思わず応援したくなるぐらいです。少年マンガのような正義感ですが、それが鼻につかないところも好印象でした。
    パートナーであるアシスタント知性体のマキもいい味を出しています。

    地殻変動による大地の沈没といえばSF的には「日本沈没」が有名ですが、その模倣という枠にとどまらずにひとつの物語として昇華されているのも流石でした。

    結末は著者らしい爽やかさに満ちたものです。過去に著者の作品を楽しめた人ならば、なんの抵抗もなく楽しめる一冊でしょう。

  • 構成される世界の独創性、そしてその緻密さが素晴らしい。
    大災害を得た未来の地球。そこで繰り広げられる未知の物語。
    日本にはこれほどまでに想像力豊かな小説が存在しながら、世界ではアメリカ生まれのシナリオで映画が作られるのかが不思議で仕方ない。
    その緻密に描かれた世界で繰り広げられる、物語はありがちなアクション主体にならずに、主人公を対外折衝を主任務とする公使にする事で、軸足をうまく『交渉』という知能戦にしている点も面白い。
    いくつか解き明かされていない謎を含んだまま終わりを迎えるが、そこに違和感が残らないのは、この物語が些末な「謎と回答X個数」という単純な方程式で書かれているのではなく、基本設定を前提とする物語そのものに中心が置かれているからだろう。


    通常交渉には意見の衝突が付きもの、それが国が異なる交渉の場合は尚更。グローバルが持てはやされている現実社会においても、交渉と言うものの重要性が高まっている。
    世界を揺るがすような、交渉の場につく事など普通の人にとってはないだろうが、主人公の憧れと言える人の台詞が心に残ったのでそのまま転記した。
    『交渉というのは、価値観の異なる他者との対話だ。だから、ときにはまったく解決がつかない場合もある。どこまでいっても、平行線にしか見えないことも…。けれども、それに対して知恵を絞り、体力を振り絞って、両者が進むべき道を模索しなさい。その行為は、人間が最も知的である瞬間なんだよ。たとえその場で、どれほど乱暴な、どれほど感情的な言葉が飛び交ったとしても、最後まで決してあきらめるな。間接的な効かせ方とはいえ、言葉は、暴力を止められることもある。それを忘れてはいけない』

  • ありえないけど、映像化するならツキソメはヤン・リーピンだ。

    これから正気で生きていく事は困難な事になっていくだろう。
    ま、それでもそんな道も、一回なら歩いても良いかもしらん。

  • 日本SF大賞
    海面が大幅に上昇した地球。人類は生き残るために遺伝子を改変し、海への道を開いた。陸に生きる人々は、アシスタント知性体という思考補助を側に置いている。
    海面の上昇は終わったかと思いきや、人類に最大の危機が迫る…!
    てな感じの大好きワードが満載で、期待の一冊。重さのせいで手を付けずにいたのをようやく読破。大好きワードたちは裏切らず、ついでに展開も大きく裏切らず、安定した様相で、話は進む。
    終局、図らずも涙したのは、ここまでの想像力と安定した未来世界を見せてくれた作者への感謝ゆえ、と思う。
    SFは、読書は、やはり楽しいと心から思わせてくれる一冊だった。SFは人類の、夢だよね…。

  • ほぼ人生初のSFといってもいいくらい。
    にしては、ものすごい分量でした。
    世界観が圧倒的でしばらく戻ってこれないほど。
    ラストはなんかあれっという感じもしたのだけど
    とにかく世界観ですべて帳消しな感じ。

  • アバターとウォーターワールドとデイアフタートォモロー等々を足したみたいな小説だけど、すごく面白かった。登場人物がイキイキしている。

  • 魚舟獣舟は読んでたけど、それでも世界観は独特で入り込むまでに時間がかかる。科学的な難解さもあり、面白いは面白いんだけどけっこう読み進めるのがきつかった。
    が、終盤の盛り上がり方はすごく良かった。SFならではの絶望、そしてそんな中での希望がとても良く描かれていると思う。
    せっかく2冊読んでやっと世界に慣れてきたので、ぜひシリーズを続けて欲しい。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。同作は「SFが読みたい! 2011年版」国内篇第1位に選ばれ、『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』の各表題作、『華竜の宮』の姉妹編『深紅の碑文』と合わせて《Ocean Chronicleシリーズ》と呼ばれ、読者からの熱い支持を集めている。近著に『妖怪探偵・百目』シリーズ、『薫香のカナピウム』など。

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