繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史(下)

  • 早川書房
4.03
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本棚登録 : 479
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091659

作品紹介・あらすじ

交易なくして農耕は成り立たなかった!「自給自足」はいかなる豊かさも生み出さない!都市化と化石燃料と化学肥料がもらたらされたからこそ、労働・生活環境は向上し、食糧危機を免れ、しかも自然をここまで保つことができた!そして技術革新を促すのは、資本でも知的財産権でも政府でもなく、「共有」である-。人類史上の各種の定説や常識を、著者は膨大な資料とデータにもとづいて次々と覆していく。人類の歴史はつまるところ革新の歴史だ。そしてイノベーションは累積的に拡大する。では、これらを踏まえた先にわれわれを待ち受ける未来とは?名著『やわらかな遺伝子』の著者が、圧倒的な説得力で謳いあげる「合理的楽観主義」宣言の書。

感想・レビュー・書評

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  • 悲観的な主張が、メディア・世論を牛耳っている。「未来は明るい」なんて、声を大にして言えない空気が蔓延している。
    この本を突き動かしているのは、「楽観主義」。言い換えれば、酸性雨や食糧難など、実際のデータとはかけ離れた予測で人びとを恐怖に陥れてきた「悲観主義」への筆者の怒りであり、挑戦なのだ。
    読後感はとてもよい。「楽観主義」には、人に前を向かせる力がある。「悲観主義」はあきらめしか生まない。あきらめからは何も生まれない。人が前を向き、テクノロジーの発展を止めたら未来はない。
    世界の厳しい現状と、未来への絶望しか子供たちに伝えられない世界より、「“地球温暖化”だって“アフリカの現状”だってきっと解決できる。未来は明るいんだよ。君たちがもっとテクノロジーをつないで、すばらしい未来を作っていくんだ。」そう伝えられるほうが、どんなにいい世界だろう。

  • 自由交易は相互の繁栄をうむが、保護主義は貧困を生む。

    リカード理論

    人間には交換と専門化の習慣があるため、古き良き時代のマルサス的人口抑制がじつは人間には当てはまらないことを示唆している。つまり、食糧供給量に対して人数が多すぎるとき、人間は飢餓と疫病で死ぬのではなく、専門化を強めることによって利用できる資源で生存できる人の数を増やすことができる。マルサスの危機は人口増加の結果として直接生じるのではなく、専門化の衰退によって起こるのだ。

    人間の繁殖力が低下した原因とは?
    逆説的な話だが、子供の死亡率の低下だ。
    赤ん坊が死ぬ可能性が高ければ高いほど、親はたくさん産む。
    もう一つの要因は富である。収入が増えるということは、多くの赤ん坊を養えるということだが、ひっきりなしに子を産む気などなくすような贅沢もできるということだ。女性解放、都市化。
     人間という種は、個人が自給自足をしようとするよりむしろ、みんなで物資とサービスを交換し合うまでに分業が進むと、自らの人口拡大を止めるのだ。
    私たちはみな相互依存して暮らしが豊かになればなるほど、地球の資源でやっていける範囲内に人口を安定させる。

    再生可能でない、地球にやさしくない、クリーンでないエネルギーに頼るようになってはじめて、経済成長が持続可能になった。

    もし化石燃料がなければ、青銅器時代の帝国が実際そうだったように、1パーセントのひとがまともな生活水準を保つためには、99パーセントのひとが、奴隷として生きなくてはならなかった。

    土地をむさぼり食うモンスターのような再生可能エネルギーを地球にやさしいだの、人道的だの、クリーンだのと呼ぶのは私には奇妙に聞こえる。

    バイオ燃料
    貧困者は収入の70%を食べ物に費やしているのだ。事実上車を運転するアメリカ人は自分の車のタンクを満たすために、貧しい人々の口から炭水化物を奪ったのだ。

    自然に均衡はない。あるのは絶え間ない活動のみだ。

    イノベーションは、短い間に激しく燃え盛り、どこかに飛び火してして消えてしまう山火事みたいなものだ。
    どの国も知識を生み出すリーダーの座にながくとどまってはいない。一見して、この事実には驚く。
    ことの問いに対する答えは社会制度と人口だ。
    社会にイノベーションが起きると、一定の土地に対して人口が増えすぎ、発明家が必要とする自由な時間や富、市場が減ってしまった。また官僚はあまりに多くの規制を課し、支配者はあまりに多くの戦争をはじめた。
    繁栄と成功はさまざまな略奪者や帰省者を生み出し、ついにこれらの人々によって金の卵を産むガチョウは殺されてしまった。

    科学はテクノロジーの母というより娘だ。
    あなたなら携帯電話や検索エンジン、ブログをいったいどの科学者の功績に上げるだろう。
    産業革命後期も、原理がまるで理解されないままに発達を遂げたテクノロジーの例には事欠かない。

    イノベーションを生み出す方法は資本と人材を揃えることだ。
    企業の研究開発費は現状維持にしか興味のない経営陣に牛耳られている。
    企業が成長していく上でもっとも危険な瞬間は成功を収めた時だ。なぜならそのときイノベーションを忘れてしまうからだ。
    企業が採用できる一つの解決法は、社員に起業家のように自由に振舞わせることだ。

    今日のアメリカで新たに特許をいちばん多く取得しているのはパテントトロールと呼ばれる一連の企業だ。彼らの意図はこれらの特許を利用して実際に製品を製造することではなく、自社の特許権を侵害する相手に対して訴訟を起こして金を稼ぐことにある。

    イノベーターの仕事とは「共有」することなのだ。
    ほとんどのすべてのテクノロジーは雑種なのだ。これが文化の進化が遺伝子のそれに対して持つ利点だ。
    拡散効果ー他者があなたのアイデアを盗むという事実ーは発明家にとってたまたま起こる厄介な欠点などではない。それがイノベーションの真骨頂なのだ。

    人生がよくなっていると信じまいとうる集団心理
    人々は自分個人に関しては楽観的である反面、社会全体に関しては悲観的だ。

    ここまで私たちは、人間の営為の明るい側面を眺めてきた。人口爆発はいずれ終わりをつげ、エネルギーはにわかには枯渇せず、人間がモノやサービス、アイデアを交換し続けられる限り、公害、疾病、気が、戦争、品行はいずれも減少してゆく、と主張してきた。
    事実を真摯に見直すなら、この先90年でアフリカは繁栄するし、悲惨な気候変動も起こらない可能性のほうがはるかに高い。
    援助によって経済が成長した証しのある国を見出すことはできなかった。
    世間を騒がす警告の数々は、優生学や酸性雨、精子数、癌のときと同じく誇張されすぎている。来世紀に起きる地球温暖化は悲劇的というよりは穏やかなものだ。
    本書は気候に関する本ではなく、人類と人類が持つ変化に対処する能力に関するものだ。
    地球の気温は今世紀中に3℃上昇するを文明は生き延びることができるのか?

    世界の貧困層が二酸化炭素を放出し続けながらも、いまよりずっと豊かに1世紀にわたって生きられる可能性が99%あるのなら、その可能性を彼らから奪い去るし書くが私にあるだろうか?

    人間社会をトップダウンの決定論の産物として解釈するのではなく、遺伝子の代わりに文化の変異体が自然淘汰されてきた長い歴史のさんぶつ 。そして個々の取引の見えざる手によって発生した双発的な秩序として解釈しようと試みた。

  • 現代は過去より確実に良い世界だ。未来も必ず現代より良い世界になるだろう。必要なことは自由な経済活動と自由な社会。という論。そしてそれを証明するエビデンスをひたすら例証していく。世の中には悲観論が満ちているが、それは過去からずっとそうだった。だが結果として人類はより幸せになっているじゃないか!という本。確かに。人間って批判しないと何かした気にならないとこがあるよね(会社のえらい人を見てるととてもそう思う)。だから悲観論のほうがなんとなく、インテリっぽいっていうところはあると思う。

  • 歴史
    社会

  • 社会の問題はどんどん複雑化しており、どんな専門家でも、一つの専門領域で解決できる問題はどんどん少なくなっている。しかし複雑化のおかげで同時に、われわれはソーシャルネットワークを手に入れた。他者の専門知識を取り入れ、絶望的に解けなかった問題を次々とクリアできるようになるだろう。
    まもなく読了する。以上、本書で得た気づき。

  • これは良い

  • 2010年刊。技術発展と分業・交易との関係とその史的経緯、そして地球の将来像を提示。全てが??と思ったわけではなく、将来にわたり自由な情報流通や交易・分業の重要性は変わらないだろう。また、飛ばし読みによる理解が不正確さがあるかも。ただ、エネルギー確保(特に化石Eの枯渇と核Eの運用の困難さ)、急激な環境激変への備え、農作物への塩害の問題は対応が困難な一方、それらは著者の言う分業理念、その前提たる信頼重視の心性、人間の利他的傾向とも両立しうる。つまり先の問題は残存するわけで、本書の言うほど楽観視はしづらい。

  • 貧困や気候変動への危機感など、世界中に蔓延する「悲観主義」に正面から反論し、「合理的楽観主義」を提唱する。膨大な量の史実とデータの検証により、単なるアンチテーゼに終らない説得力のある主張が展開される。本書を読むと「消費型社会vs持続型社会」とか「経済的豊かさvs精神的豊かさ」といった単純な二元論が無意味に思えてくる。人類の歴史は即ちイノベーションの歴史であり、未来に向けてもそうであるはずだという本書の主張を最も必要としているのは日本なのかもしれない。

  • 「今後、人類はますます技術革新を行い、それにともないこれらの問題も解決していくであろう 」というのが、著者のアンサーである。

    驚くほどの楽観主義ではあるが、これまでの人類の10万年史をみてくると、それもあながち夢物語ではないのかもしれない。

  • 018
    リチャードイースターリンのパラドックス。
    「一国内では裕福な人の方が貧しい人よりも幸せ。豊かな国の人が貧しい国の人よりも幸せな訳ではない。」は間違いであることが証明された。
    人間にはかなり安定した幸福の水準があって、有頂天になっても落ち込んでも、やがてその水準にもどることが心理学で証明されている。
    物物交換とは公平である必要すらない。→じゃあ貨幣経済が現れることでデメリットがあった?
    男女による分業について
    男の方が非効率的?
    リカードの法則

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著者プロフィール

マット・リドレー(サイエンスライター)

「2015年 『フランシス・クリック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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