繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史(下)

制作 : Matt Ridley  柴田 裕之  大田 直子  鍛原 多惠子 
  • 早川書房
4.03
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本棚登録 : 456
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091659

作品紹介・あらすじ

交易なくして農耕は成り立たなかった!「自給自足」はいかなる豊かさも生み出さない!都市化と化石燃料と化学肥料がもらたらされたからこそ、労働・生活環境は向上し、食糧危機を免れ、しかも自然をここまで保つことができた!そして技術革新を促すのは、資本でも知的財産権でも政府でもなく、「共有」である-。人類史上の各種の定説や常識を、著者は膨大な資料とデータにもとづいて次々と覆していく。人類の歴史はつまるところ革新の歴史だ。そしてイノベーションは累積的に拡大する。では、これらを踏まえた先にわれわれを待ち受ける未来とは?名著『やわらかな遺伝子』の著者が、圧倒的な説得力で謳いあげる「合理的楽観主義」宣言の書。

感想・レビュー・書評

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  • 悲観的な主張が、メディア・世論を牛耳っている。「未来は明るい」なんて、声を大にして言えない空気が蔓延している。
    この本を突き動かしているのは、「楽観主義」。言い換えれば、酸性雨や食糧難など、実際のデータとはかけ離れた予測で人びとを恐怖に陥れてきた「悲観主義」への筆者の怒りであり、挑戦なのだ。
    読後感はとてもよい。「楽観主義」には、人に前を向かせる力がある。「悲観主義」はあきらめしか生まない。あきらめからは何も生まれない。人が前を向き、テクノロジーの発展を止めたら未来はない。
    世界の厳しい現状と、未来への絶望しか子供たちに伝えられない世界より、「“地球温暖化”だって“アフリカの現状”だってきっと解決できる。未来は明るいんだよ。君たちがもっとテクノロジーをつないで、すばらしい未来を作っていくんだ。」そう伝えられるほうが、どんなにいい世界だろう。

  • 歴史
    社会

  •  読書も交換の一種だとしたら、大量に読むほどイノベーションが起こる。読書は「質より量」だ!

  • 社会の問題はどんどん複雑化しており、どんな専門家でも、一つの専門領域で解決できる問題はどんどん少なくなっている。しかし複雑化のおかげで同時に、われわれはソーシャルネットワークを手に入れた。他者の専門知識を取り入れ、絶望的に解けなかった問題を次々とクリアできるようになるだろう。
    まもなく読了する。以上、本書で得た気づき。

  • これは良い

  • 2010年刊。技術発展と分業・交易との関係とその史的経緯、そして地球の将来像を提示。全てが??と思ったわけではなく、将来にわたり自由な情報流通や交易・分業の重要性は変わらないだろう。また、飛ばし読みによる理解が不正確さがあるかも。ただ、エネルギー確保(特に化石Eの枯渇と核Eの運用の困難さ)、急激な環境激変への備え、農作物への塩害の問題は対応が困難な一方、それらは著者の言う分業理念、その前提たる信頼重視の心性、人間の利他的傾向とも両立しうる。つまり先の問題は残存するわけで、本書の言うほど楽観視はしづらい。

  • 貧困や気候変動への危機感など、世界中に蔓延する「悲観主義」に正面から反論し、「合理的楽観主義」を提唱する。膨大な量の史実とデータの検証により、単なるアンチテーゼに終らない説得力のある主張が展開される。本書を読むと「消費型社会vs持続型社会」とか「経済的豊かさvs精神的豊かさ」といった単純な二元論が無意味に思えてくる。人類の歴史は即ちイノベーションの歴史であり、未来に向けてもそうであるはずだという本書の主張を最も必要としているのは日本なのかもしれない。

  • 「今後、人類はますます技術革新を行い、それにともないこれらの問題も解決していくであろう 」というのが、著者のアンサーである。

    驚くほどの楽観主義ではあるが、これまでの人類の10万年史をみてくると、それもあながち夢物語ではないのかもしれない。

  • 018
    リチャードイースターリンのパラドックス。
    「一国内では裕福な人の方が貧しい人よりも幸せ。豊かな国の人が貧しい国の人よりも幸せな訳ではない。」は間違いであることが証明された。
    人間にはかなり安定した幸福の水準があって、有頂天になっても落ち込んでも、やがてその水準にもどることが心理学で証明されている。
    物物交換とは公平である必要すらない。→じゃあ貨幣経済が現れることでデメリットがあった?
    男女による分業について
    男の方が非効率的?
    リカードの法則

  • 下巻では、それまでの過去に例を見ない繁栄の分析というテーマに対して、その裏面とも言える悲観主義の分析とその対抗がもうひとつのテーマとして語られている。
    具体的には、1900年以来繰り返される、貧困、格差、癌、核のアルマゲドン、人口爆発と飢饉、資源枯渇、清浄な空気、遺伝子操作、疫病、といった未来に対する悲観論が挙げられる。特に現代の二大悲観主義として、一章を割いてアフリカの貧困と気候温暖化について詳しく扱っている。本書の中で、それらは過去解決されているか改善されるているし、いずれ解決可能な問題であることを説明している。著者は、遺伝子組み換え技術への盲目的な反対に反対するし、化石燃料の利用を必要以上に抑制することにも反対する。それが根拠も影響も疑わしい地球温暖化防止のためであればなおさらだ。著者は悲観論者の非合理性について、合理性でもって対抗しようとする。それは、届けようと考える相手に果たして届いているのだろうか。

    第8章で述べられるようにイノベーションの源泉が科学でもなく、資金でもなく、特許でもなく、政府でもなく、「交換」 - 無尽蔵なアイデアの交換 - であるとすると、現代は歴史上最も期待が持てる状況だろう。そして、人類が「交換」することを始めて以来、「今」が常に最も繁栄した時でありつづけているのではないだろうか。

    最後の章では未来を語り、経済学者のハイエクが「交換と専門化によって自発的に起きる秩序」と定義した「カタクラシー」が拡大するとしている。なじみのない「カタクラシー」という言葉を使って表現しようとする未来とはどのような未来なのであろうか。
    「イノベーションの火を消すのは難しいだろう。それはイノベーションが、かくもネットワーク化された世界における、かくも進化的なボトムアップの現象だからだ」(P.240)というようにイノベーションは想像の範囲を超えて進むものだ。そのことについては改めて楽観的であるべきだと説く。そのため「未来は、現代のエンジニアにとってほんのひらめき程度のアイデアにあふれているだろう」(P.223)と想像する。

    「2100年に驚異的だが当たり前になっているテクノロジーは何かと想像しようとしてもまず無理だろう」(P.223)というのは真実であり、希望であり、寂しさでもある。そして、少なくとも数百年のレベルにおいては、そうだと単純に信じることができているのは、自分も合理的楽観主義者のひとりではあるのだろうなと腹落ちするのである。

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著者プロフィール

マット・リドレー(サイエンスライター)

「2015年 『フランシス・クリック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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