暁に立つ (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房
3.20
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本棚登録 : 34
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091772

作品紹介・あらすじ

私立探偵サニー・ランドルがジェッシイのもとを訪れた。パラダイスの新興宗教団体に入信した娘を連れ戻してほしいという両親の依頼を受けたのだ。だが、その両親も心配なのは世間体で、娘に対する愛情は薄い。サニーはジェッシイの協力を得ながら娘のために奔走する。一方、ジェッシイはギャングの下っ端が射殺された事件の捜査に着手した。殺された男のボスは、奇妙なことに別のギャングのボスと隣同士に住み、美しい双子の姉妹をそれぞれ妻としている。ボスたちの邸宅へ聞き込みに訪れたジェッシイが見たのは、嫉妬をおぼえるほど幸福そうな二組の夫婦の姿だった。しかしその直後、くだんのボスの一人が先の殺人とよく似た手口で殺されているのが見つかる。不自然な共存を続けるギャングたちの中でいったい何が起きているのか…。プロとして仕事に邁進するジェッシイとサニー。お互いに破れた愛を引きずってきた二人は、いかなる未来へ向かうのか。愛と警官魂の物語-巨匠ロバート・B・パーカーによる警察署長ジェッシイ・ストーン・シリーズ、ここに終幕。

感想・レビュー・書評

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  •  パラダイス警察署長ジェッシィ・ストーンのシリーズと女性探偵サニー・ランドルのシリーズが、本書で合流する。無念なことに、パーカーはこの作品を最後に他界してしまったので、どちらのシリーズにとっても、この作品が最終作となってしまった。逆に言えば、ここで二つのシリーズが合流しておいてよかったと言えるかもしれない。特に最終章を読み終わるときに、ぼくはそう感じた。突然死と伝えられる作者であるが、無意識のうちに、作家の魂がシリーズを閉じようとしていたのかもしれない。

     ジェッシィもサニーも、恋愛と結婚については今一つうまくゆかず、ともにカウンセラーに世話になり、心のケアを必要としている状況だから、少なくともこの事件を契機に二人のライフ・ストーリーに共に節目が着いてゆくのは偶然ではない。スペンサー&スーザン・シルバーマンのシリーズのように完成された自信、そして折り合いのついた愛情生活に辿り着くには、シリーズはさほど冊数を重ねていないのだから、とりあえずはあまりの不安定には折り目をつけて置いた方がいい。

     さて本書。大西洋に面する港町パラダイスを舞台に、二つの殺人事件(警察:ジェッシィ担当)と、一人の少女を怪しげな教会から救い出す依頼(探偵:サニー担当)が展開する。二人の男女主人公の他に、スペンサー・シリーズのレギュラー陣も登場するのが魅力。スーザン、リタ・フィオーレ、ヒーリィ。

     基本的には感情表現の文章を入れ込むことのないパーカーだが、サニー・ランドルが主体となるパーツのみ、彼女の感情を第三者視点で書き込んでいる。文体が違うのだ。そもそもパーカーが女性を主人公に女性目線での小説を書き始めたとき、そのこと自体が話題になったのだが、既に確立されていたパーカー小説作法からの脱却のようなものもパーカー自身は胸に思い描いていたのかもしれない。本書のサニーの叙述は、スペンサーやジェッシィとは異なる味わいがあるので、最後にこの辺りも確かめておきたい。

     本シリーズでは、荒事は主としてサニーの相棒パイクが引き受ける。性的マイノリティでもあるパイクは、セックスそのものが主題となる本書のテーマにとって、一つの遠慮がちに記述されたバリエーションであるかに見える。本書の中で印象の深い、美しい一卵性双生児の姉妹については、ミステリの一つの道具立てとしても、本書の複雑な人間関係の中を遊泳する奇妙な精神的フリークとしての印象的構図であるようにも見えるのだが、かつてのハードボイルドであればあり得なかったようなモダン・セレブの現代ならではの頽廃が浮き出てきそうだ。

     スペンサーの方は仕事も恋愛関係も盤石の安定を誇るけれど、そもそも仕事や恋愛関係の不安定から始まったジェッシィの方は、まだまだ安定には程遠く、酒やカウンセラーの力を借りて何とかやり過ごしている感が否めない。ソロで仕事をするスペンサー&スーザンに比べると人間関係のストレスがもっとあってもおかしくないのだが、パーカーの作品では職場内でのストレスは、他の警察小説作家ほどには取り上げられない。ジェッシィは、恵まれていると思う。

     プロットが極度の多重構造でないこと、シンプルなミステリ仕掛けであることも、パーカー作品の特徴。むしろシンプルさを誇る。年に二三本のシリーズを一本ずつ上梓できていたのも、その辺りのタイトさの故だろう。重たい作品が多い昨今と比べると、この時代は、このサイズの翻訳ハードカバーがそれなりに売れていた。翻訳小説が日本の書店の平積み台から姿を消してしまいがちな現在、パーカーの貢献度は今さらながら光って見える。長い年月の作家活動しかもたらし得ない積み上げの実績そのものだ。

  • 軽いタッチの探偵もの
    すーっと読めました

  • ジェッシー・ストーンとサニー・ランドルシリーズ最終巻。もうふたりに会えないと思うと淋しい。。。

  • 作者の死によって最終話になってしまったシリーズ。アル中のダメ人間が復活していく最初の頃は面白かったけれど、途中から妙に理屈っぽい精神分析みたいな幕間が多くなり、最近はあまり楽しめないでいた。

    もうひとつの、女性私立探偵を主人公にしたシリーズと一体化していったのには驚いたけど、今回の結末を見て、なんだか納得した感じである。ちゃんとシリーズ最後を締めくくったようだ。

    ただ、一冊の本としてみれば、あまり感心できない。二人主人公はいいとしても、それぞれの分担している事件につながりがなく、二つの中編を交互に読んでいる気がしてしまう。二人のプライベートなやりとりだけで繋がっているので、そういった要素に興味がなければ、本当に何の引っ掛かりもなくよみおえてしまいそうだ。

    もちろん、作者は名手だから、それなりには読ませる。でも、二つのシリーズの最終話であるという感慨を除けば、決していい作品とは言えないと思う。

  • ジェッシイ・ストーン・シリーズ9作目にして最終作。今回は私立探偵サニー・ランドルとの共演で、シリーズに一区切りがつきます。今後の展開が、と思ったのですが、著者の手がけた新作はもう読めないのですね。

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