無垢の博物館 下

制作 : 宮下 遼 
  • 早川書房
4.07
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本棚登録 : 99
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091840

作品紹介・あらすじ

「これから、わたしたちはどうなるの?」二人の愛する女から突きつけられたこの言葉に、ケマルは答えを持たなかった。彼の心はスィベルとフュスンの間を揺れ動き、終わりのない苦悩に沈む。焦れた女たちはそれぞれの決断を下すのだが……。ケマルは心配する家族や親友たちから距離を置き孤立を深める。会社の経営にも身が入らず徐々にその人生は破綻していく-トルコ初のノーベル文学賞作家が八年の歳月を費やして完成させた最新傑作、待望の邦訳。世界文学最高の語り部が贈る愛の寓話。

感想・レビュー・書評

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  • もし、今恋愛から遠くにいる人や、恋人とうまくいっている人には理解しがたい世界で、失恋した人や強烈な片思いの人ならシンパシーを感じる物語なのかもしれない。
    ともあれ、フュスンの家に8年も通い詰め、ついに結婚というところまで来たケマルさん。その間もフュスンの家からいろいろなものをこっそり持ち出し、コレクションに加えていく。やはり、気味が悪く、受け入れがたい。

    結婚が決まっても、フュスンの葛藤には全く頓着しない。観察物のように彼女を愛でながらも、昔置き去りにされた時の彼女の悲しみや、女優になりたいという夢に本気で向き合うことはなかった。
    それは、ケマルさんが自分の思うような理想像の彼女しか欲しくなかったからでは。
    コレクションした物たちは、いわゆる死んだもの。なにも裏切ることなくケマルさんの傍らでフュスンを思い出すよすがとなってくれる。
    だから結婚目前で彼女を失ったことは、ケマルさんにとっては悲しいばかりではなさそうだ。
    永遠に彼女の記憶とともに穏やかに過ごせるのだから。

    ※うっかり自分で「これいいね」ボタンを押してしまいました。
    どうやったら取り消せるのでしょうか?

  • 2006年ノーベル文学賞を授賞したトルコ人作家オルハン・パムク氏が受賞後に発表した作品「無垢の博物館」上下巻を読了。

     やはりノーベル文学賞を授賞した作者の作品だけあってやはりかなりの骨太な作品だ。ただ骨太の作品ではあるが、難解なテーマを扱っているかというとそうではなくて偏執的な恋愛を描いただけのシンプルな作品でもある。

    作品は1970年代のトルコ・イスタンブールを舞台にしたもので、主人公は地元の優良企業を経営する同族企業の御曹司で何不自由なく育ったどら息子なのだが、その彼が婚約者が居る身でありながら親戚の美しい女性に恋してしまうところから物語ははじまる。

    1970 年代のイスタンブールのライブ感あふれる様子が描かれていてそれだけで十分にたのしめるし、その時代のトルコの都会の蹴る風俗が克明に書き込まれているのが素晴らしい。

     そんな僕らにはエキゾチックに感じる舞台装置を縦横無尽に利用して、主人公のケマルのフュスンへの超偏執的な愛をを伝えるため、彼の一日一日が独白で積み重ねられて行くという手法で描かれている。

     タイトルの付け方も秀逸だ。読み進めて行くうち主人公が愛の思い出を品々を集めた博物館を作り上げようとしてしyているのは伝わるが、読み進めて行くうちにかれがどのような思いでそれを目指したかが描かれていくうちに、最初は不純にさえ思えた彼の行動がいかに純粋だったかが明かされて行く。上下巻と壮大な偏執愛の物語楽しめました。

    トルコへの興味がぐっと増しイスタンブールの街をぐるぐる歩いてみたくなるトルコのお坊ちゃまの痛々しくくある愛のお話を読むBGMに選んだのはMiles Davis"Someday my prince will come". いつ聞いても格好いい。
    https://www.youtube.com/watch?v=fBq87dbKyHQ

  • トルコは僕たちのイメージするように、内乱や熱心者達の国じゃない。そこに人々の営みがあって、アタテュルクの言葉の下で、愛やセックス、様々な情景が入り混じる普通の国だ。ただ、それにしてもこの病的としか言えない愛を、どう受け入れればいいのだろう。言葉は一つ一つが人間の意志として記憶に残る。僕もたぶんいつかトルコへ行く。パムクという一人の作家のための、「無垢の博物館」を見るために。

  • フュスンに再会してから、その家に通いつめるケマル。いつしかフュスンが触ったものを持ち帰るのが常套化していく。例えば、持ち帰ったフュスンの煙草の吸殻だけで4213本!ケマルはそのそれぞれに日付を入れ、記録を付けているのだ!「その一本一本が、フュスンがそれを消すときに抱いた感興の表徴なのだ」と。

    そしてフュスンの死…

    ケマルは世界中の美術館・博物館を巡りだし、ついに「博物館とは真のコレクターの家そのものである」と悟り、イスタンブールにフュスンの思い出を集めた博物館を作るのである。

    このように本書は恋愛(片思い)小説でありながら、プルーストの「失われたときを求めて」のような味わいもある。ガルシアマルケスの「コレラの時代の愛」が好きな人もたまらないだろう。

    なお、慣れない国の小説というと、読みにくいのではないかと思う向きもあるだろうが、本書はその中核が片思いと、物への偏執狂的な執着とにあり、極めて読みやすかった。もちろん、イスラムにおける女性の処女性の問題など、文化の違いによる部分は多分にあるが、筆者はそれについても、前提知識とせず、文中で述べているので、とまどう部分はほとんどない。翻訳だからと毛嫌いしないで読んでほしい小説である。

  • 2006 年ノーベル文学賞受賞後の初作品。
    1970 年代のイスタンブールを縦横無尽に利用して、
    遠縁の娘フュスンへの愛、フェティシズムを描く。
    主人公ケマルの人生、生活のその時その時を、
    数多く積み重ねる手法が取られ、
    一体この物語は何処に着地するのかと思いつつも、
    終盤のメタ的展開を読めば納得。

  • プルースト的な記憶の物語。一見恋愛小説のようだが、本当の主人公はイスタンブル。

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プロフィール

オルハン・パムク(Orhan Pamuk, 1952-)1952年イスタンブール生。3年間のニューヨーク滞在を除いてイスタンブールに住む。処女作『ジェヴデット氏と息子たち』(1982)でトルコで最も権威のあるオルハン・ケマル小説賞を受賞。以後,『静かな家』(1983)『白い城』(1985,邦訳藤原書店)『黒い本』(1990,本書)『新しい人生』(1994,邦訳藤原書店)等の話題作を発表し,国内外で高い評価を獲得する。1998年刊の『わたしの名は紅(あか)』(邦訳藤原書店)は,国際IMPACダブリン文学賞,フランスの最優秀海外文学賞,イタリアのグリンザーネ・カヴール市外国語文学賞等を受賞,世界32か国で版権が取得され,すでに23か国で出版された。2002年刊の『雪』(邦訳藤原書店)は「9.11」事件後のイスラームをめぐる状況を予見した作品として世界的ベストセラーとなっている。また,自身の記憶と歴史とを織り合わせて描いた2003年刊『イスタンブール』(邦訳藤原書店)は都市論としても文学作品としても高い評価を得ている。2006年度ノーベル文学賞受賞。ノーベル文学賞としては何十年ぶりかという

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