矜持 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房 (2011年1月7日発売)
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本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784152091857

作品紹介・あらすじ

〈競馬シリーズ〉アフガニスタンの戦場で片足を失った英国陸軍大尉フォーサイス。故郷に戻った彼は、母が所有する厩舎の馬が不審な敗戦を続ける事件の調査を始め、誇りを賭けて凶悪な敵と闘う。

感想・レビュー・書評

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  • ディック・フランシス最後の作品

    お亡くなりになった作家さんには「最後の作品」というのが必ずあって、まあそりゃあそうなんだけど、やっぱり好きな作家の「最後の作品」は哀しいなあ寂しいなあとなるよね

    そしてフランシス最後の作品も冒険小説の全てが詰まっていて、もう好き

    不撓不屈の主人公、謎めいたヒロイン、残酷な悪の親玉に情けない小悪党
    窮地に陥る主人公、息をもつかせぬ展開にあっと驚くどんでん返し

    基本冒険小説そのものが好きなんよね〜

    よ〜しロバート・B・パーカーとかも読んじゃおうかな

    • ひまわりめろんさん
      競馬業界を舞台にした冒険小説やで
      競馬業界を舞台にした冒険小説やで
      2024/12/26
    • yukimisakeさん
      これも昔に読んだような…でも覚えてないという事は、理解はせずに見てたのかなー。
      これも昔に読んだような…でも覚えてないという事は、理解はせずに見てたのかなー。
      2024/12/26
    • ひまわりめろんさん
      覚えてる方がおかしいのよ
      覚えてる方がおかしいのよ
      2024/12/26
  • ディック・フランシス最後の作品。
    最近は息子のフェリックスと共著になっていて、フェリックスだけでも十分続きそう。

    今回の主人公は、アフガニスタンで負傷して帰国したという設定。
    英国陸軍近衛歩兵グレナディア連隊大尉って、ウィリアムの結婚式で聞きましたね。大尉ってハリー王子と同じ?あ、近衛騎兵だったかな。
    これが、フェリックスの息子がアフガニスタンにいた軍人だというのだから…描写にリアルさがあるわけです。
    フランシスの、意志が強い主人公で、そのうえ軍人て~
    悪党はすぐさま改心して逃げた方が良いんじゃ?

    語りはソフトですが、中身はなかなかにハード。
    母親が有名な調教師という設定は新鮮。
    二度離婚して三度目の結婚をしている猛女。
    トマス・フォーサイスはあまりかまわれずに育ち、十代の頃は義父とも反りが合わず、17歳でケンカして家を出てすぐ軍隊に入った。以来15年。
    戦場で足を吹き飛ばされて入院。軍隊で衣食住をまかなっていたため、病院を出ても帰る場所がない。
    久しぶりに帰った家で、幼なじみイザベラに再会したり、懐かしいような不思議な感覚を覚えたり。

    競馬界ではファースト・レディとあだ名される有名な母親ジョセフィン・カウリ。
    だが最近は有望な馬が不審な負け方をし、魔力を失ったと新聞に書かれていました。
    母と義父の口論を立ち聞いて、経済的にも困っていると知る。
    節税対策の勧めに乗せられて脱税し、事情を知る何者かに脅迫を受けていたのだ…
    意を決して軍隊式に行動方針を固めるトマス。
    しかし調査を始めた途端に、トマスは誘拐され…?

    多彩な登場人物はフランシスらしいレベルに達しています。
    申し分ないスリルで、わくわく。
    最高傑作とは言いませんけど、十分楽しめました。

    [追記:
    再読したので、再アップします☆
    「矜持」という普段使うことのない言葉がディック・フランシスにはぴったりなので、最後の作品にふさわしいですね。

    主人公のトムは負傷して苛立ち、軍人としての再生は難しい立場。
    15年間生きがいであり家族同様の仲間がいた暮らしを失いかけている‥
    軍人としては経験豊富だけど、他の面ではまだ大人になりきっていないかも知れない?
    苦難に直面して、もてる能力を生かす、再生の物語。

    全盛期の書き込みの魅力、ツボをついてくる、ぞくぞくするような緻密さには及びませんが。
    ディック・フランシスが息子との共著に孫の経験も生かしているという、フランシス家のチームプレーも微笑ましい。
    親から子へと繋いでいくイメージで終幕へ。

  • ついに読み終えてしまった。
    ディック・フランシスの最後の小説。
    空軍パイロットから、チャンピオンジョッキー、そして小説家。
    ヒーローと呼ぶにふさわしい英国紳士の最後の一冊。

    「競馬ミステリーシリーズ」と呼ばれ続けたけど、本当は、多くのファンが指摘する通り「現代の冒険小説」だった。

    最後の一冊の日本語版のタイトルは『矜持』。
    白い部分の多い表紙の装丁もなにやら静かな哀調だ。
    物語のラストは、辣腕調教師の母親が引退し、息子に厩舎を引き継ぐシーン。
    愛妻メアリーが逝ったあと休業していたディック・フランシスが、息子フェリックスとのコンビで数冊を出し、そして妻のもとへと旅立った。

    この間、マイケル・クライトンの最後の小説を読み、そして、ディック・フランシスの新作もこれで読みおさめだ。

    勇気、自尊心、誇り。
    そういうものを教えてくれた人だった。
    ありがとう!!
    安らかに。

  • 内容紹介を、表紙裏から転載します。
    『英国陸軍大尉トマス・フォーサイスは、アフガニスタンで爆弾によって右足を吹き飛ばされ、6ヶ月の帰宅休暇を命じられた。偉大な調教師で厩舎を経営する母ジョセフィンとは折り合いが悪かったが、他に行くあてもなく彼は母と義父が暮らす家に帰る。
    だが、厩務長から意外な話を聞かされた。このところ厩舎の馬が勝てるはずのレースで不審な負け方をすることが続いているというのだ。さらに母と義父の口論を聞き、家計が逼迫していることを知る。
    彼は母の仕事部屋を調べて、母の個人口座から毎週2000ポンドもの金が引き出されていることを突き止め、脅迫状を発見する。母と義父に事情を聞くと、会計士に進められた節税方法を採用したが、脱税をしていると何者かに脅され、金の支払いと馬をレースで負けさせることを強要されるようになったという。会計士の勧めでヘッジファンドに投資し、大金を失ってもいた。
    トマスは脅迫者を暴き、母の金を取り戻そうとするが、手がかりとなる会計士は死んでいた。卑劣な手段でトマスの命を奪おうとする敵と、彼は自己の名誉を賭けた戦いを繰り広げる。

    競馬シリーズで世界中の読者に興奮と感動を与え続け、惜しくも死去したディック・フランシスの最後の作品。』

    ディック・フランシスは亡くなりましたが、まだ一冊残っていました。そのことは嬉しく思います。

    今回は職業軍人が主人公。調教師の息子ですが母とは折り合いが悪くて、軍に入ってからはほとんど家に帰っていません。でも負傷し、義足をつけて退院し、強制的に休暇を取らされた彼は、実家しか行くところを思いつけません。ごくたまに休暇で帰ってもたちまち喧嘩して家を出てきたのに、6ヶ月も・・・・。しかもたぶん休暇が終わった時には軍を退職することになるはずなのです。

    案の定家に帰って母との軋轢が始まった時、今までになかった展開になります。
    有能な調教師で、何事にも自信満々の母は、思いがけなく会計に関してまるで無能だったのです。以前の会計士が引退し、新しい会計士の言うがままに処理した結果、とんでもない羽目に陥っていました。

    読み始めたときは、主人公のトマスや、母のカウリ夫人、義父のデリクに全然好感が抱けず、この話に入り込めませんでした。。トマスは障害者になってしまったこともありかなり意固地になっているし、気が強すぎる母と流されるままの義父、その3人の言い合いにいらいらしてしまいました。
    それが、トマスが母の秘密に気付き、犯人を突き止めようとして逆に苦境に陥った頃から、いつのまにか「トマス頑張れ!」と主人公に肩入れして読んでいました。
    主人公が苦しい立場になりそれを持てる力を総動員して撥ね退ける、これが競馬シリーズの醍醐味です。今回もちゃんとそうなっていました。トマスは軍人なのですが、彼が敵に対して戦略を練るときにいつも思い浮かべるのは「孫子の兵法」というのが驚き。おおっ!って感じです。
    後半は一気読みでした。面白かったです。

    小説は作家とは別物ではありますが、母と息子が心を通わせるようになるところや、頂点に立ったまま退く、手綱は次の世代へ、など深読みできる場面や言葉が散りばめられていて、ディックとフェリックスのこれからを暗示しているように思えます。
    解説の方も書いていますが、競馬シリーズは以前からもディック・フランシス一人で書いていたわけではなく、亡くなった奥様の力が大きかったし、その後は息子さんがその代わりをしていました。

    もしかしたら手綱を渡されたフェリックス・フランシス一人の名前で、次の作品が発表されるかも・・・・とかすかに期待します。

  • 2020/3/10から図書館で借りる。やや新型肺炎で毎日が閉塞感を感じる中、やはり気分転換にはデック・フランシスは気分的にはいいね。3/13読了。

  • 不撓不屈の物語。フランシスを堪能しました。

  • 「矜持」(ディック・フランシス&フェリックス・フランシス:北野寿美枝 訳)を読んだ。この人の作品を読むのは20年振りくらいかもしれない。25冊か26冊くらいは読んでいるんだけれど、ある時を境に急に輝きを失ったような気がして読まなくなってしまったんだよな。この作品が遺作だそうだ。

  • いつもながら期待を裏切らない面白さ。最高の小説家が世を去ってしまった。。・゜・(ノД`)・゜・。

  • 競馬シリーズ最終作。主人公が職業軍人、母親との確執など興味深いが、スピード感があまりないのが残念。

  •  原題の「crossfire」が「矜持」という意訳になってしまうことに何となく納得ができない。「十字砲火」とでも訳されるはずの原題は、主人公や物語のさまざまな要素を象徴するとてもいいタイトルだと思う。結局、フランシスの最後の長編という思い入れがあるのだろうけど、なんとなく好きになれない。確かに「プライド」とか「誇り」というニュアンスは大事だけど、もう少し作者の書いた言葉を尊重してほしいと思う。

    軍人が主人公というのは虚を突かれた感じである。フランシスの小説というのは、多かれ少なかれ冒険小説の要素を持っているから、戦いのプロである軍人というのはある意味適任かもしれない。正体のわからない犯人に対して「宣戦布告」するあたり、とても説得力があった。ただ、戦いのプロであるということと、殺人のプロであるということは、やっぱり分けて考えておきたい部分が(少なくとも僕には)あって、主人公の考え方にやや違和感を感じたのは確か。

    全体として、今までのフランシスの作品のいろんな要素が組み合わさっているようなイメージがあった。親との確執とか、主人公の監禁とそこからの脱出とか、プラトニックな不倫的要素とか、肉体的な欠損とか。だけど、全体として「軽い」感じがするし、何よりも主人公の持つ偽悪的な要素がすっきりと心の中に入ってこない。あるいは、先に書いたように「殺人のプロ」という先入観が僕の中にあるからかもしれないが、今まで読んできたフランシス作品の主人公と異なり、この作品の主人公は「人と傷つける」ことについての我慢が足りないような印象を受ける。

    そういうわけで、物語はとってもおもしろいのだけど、全体としてはもう一つ好きになれない作品であった。ディック・フランシスの死を受けて息子さんが競馬シリーズを書き続けたとしても、今までのようにこのシリーズを好きにはなれないような気がする。サスペンス小説としてのサービス精神は息子さんの名前が表に出るにつれて大きくなったような気がするけれど、競馬シリーズの一番根幹にあったものが、するりと抜けていっていると思う。読めば読むほど、よくできた物語であればあるほど、なんだかそれが悲しくなってしまうのだ。

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ディック・フランシスの作品

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