隠れていた宇宙 (下)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092267

作品紹介・あらすじ

先端物理を極める理論のなかにはなぜか必ず、「多宇宙」が現れる…科学研究の肝を巧みな比喩で余すところなく伝えるポピュラー・サイエンス。

感想・レビュー・書評

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  • 請求記号・443.9/Gr/2
    資料ID・100059404

  • 上下巻の下巻。後半に向けて著者の主張が熱くなってくる。

    「提案される主要な物理法則の基礎になる数学にハンドルを握らせると、再三再四、何らかのバージョンの並行宇宙に連れて行かれる」というように、最終的には、パッチワークキルト多宇宙、インフレーション多宇宙、ブレーン多宇宙、サイクリック多宇宙、ランドスケープ多宇宙、量子多宇宙、ホログラフィック多宇宙、シミュレーション多宇宙、といった多宇宙論がある。著者が述べるように、宇宙論を突き詰めて考えると、どうしても多宇宙を含むものになっていく、というのだ。

    例えば、量子多宇宙では、量子論の基礎であるシュレディンガー方程式のコペンハーゲン解釈を観測によって確率密度関数が収束しているのではなく、可能性のある事象は観測者も含めて全て「実現」している平行世界が現実で自然な解釈だという。死んでしまったシュレディンガーの猫はどこかで生きているのだ。ブレーン宇宙は最新の宇宙理論のようだが、この世界は11次元であるとなるとなぜそんなに次元があるのか不思議だ。ホログラフィック宇宙では別に真なる実体があって現世はそのホログラフィのようなものだという(かなり真剣で「二一世紀半ば近くにはホログラフィック原理が物理学者にとっての灯台になると、私は考えている」とまで言う)。シミュレーション宇宙まで行ってしまうと、鈴木光司の『ループ』と同じでぶっとんでいる。ただ、これらの多数の多宇宙理論を同じ理論で説明する根底の理論があるのではないかというのが理論物理学者としての期待だ。

    そして、多宇宙を論じる理論物理学者の著者として、当然ながら次のような疑問を表明する。

    ―観測不能な宇宙をもち出すことは、科学として正当と認められるのか?
    ―私たちは多宇宙から、ほかでは得られない説明能力を与えられるのか?

    原題は"The Hidden Reality"。The Hidden Universe、ではない。つまりは、多宇宙も含めてひとつの"Reality"=「宇宙の実像」があり、それを追究するのが人類の中の理論物理学者の役目と任じているようだ。最後は先の二つの疑問について自ら答えるように次のような文章で締めくくられる。

    「 これが最終的な結果かどうか、私にはわからない。誰にもわからない。しかし果敢に関与することによってしか、自分の限界を知ることはできない。私たちをなじみのない妙な領域へと連れ去る理論であっても、とにかく論理的にそれを追究してはじめて、広大な宇宙の実像を明らかにする可能性が生まれるのだ」

    それにしても、次の言葉の方がより深い。

    「 しかし無のほうが何かがあるよりも、はるかに単純にも思える――作用する法則もなく、登場する物質もなく、住む空間もなく、展開する時間もない――ので、ライプニッツの疑問は多くの人々の心をまともに打った。なぜ無がないのか? もしあれば、無は決定的にエレガントだったことだろう」

    存在すること自体が最大の謎なのだ。

  • 平易にわかりやすく書かれているとは思うのだけど、多宇宙という概念が、自分にとって完全に理解の範疇を超えているというか、チンプンカンプン。僕の理解力が足りないだけなのですが。

  • 科学方法論、解釈問題、エントロピーと情報など。
    ブラックホールの蒸発がどのように起こるのか?

    量子論の不確実性は、主観的には確率論的だが客観的には決定論的であるという考えは面白いですね。
    それは視点の違いに過ぎないと。

    あらゆる形のあらゆる物体に蓄積されていて、ある空間領域内に含まれる情報の両は、つねに、その領域を囲む表面の面積(平方プランク単位で測定された)より少ない。なかなか面白い話ですね。
    ちなみに半径50cmの球の表面に収まる情報は10億×1兆×1兆×1兆ヨタバイトらしい(ヨタバイト=1兆テラバイト)。それが物理的な記憶容量の限界らしい。まぁ当分困らないねw

    多宇宙の話がメインだけど風呂敷を盛大に広げてありとあらゆる最先端の現代物理学を紹介したような本ですね。
    所々難しくてわかったようなわからないような気がするけど・・・

  • 上はしっかり読めたけど、図書館で借りた下はあまり時間がなくてななめ読み。もう少し、万人向けにかみくだいて説明されたものを読んだ方がいいかも。

  • 今まで読んだ本の中で最凶レベルに難解だけど、それを上回る魅力がある。

  • 隠れていた(る)現実 並行世界と宇宙の法則の深層の下巻
    SFでは古典的な設定であるパラレルワールドやブラックホールについてファンタジーを抜きにガチに説明してくれる。小説「量子宇宙干渉機」(ジェイムズ ホーガン著)を読んでから本書を読むと理解度が一層増すので是非お試しを。
    欲をいえば、極小空間に巻き取られた多次元についてもう少し、イメージしやすく解説してほしかった。この世(ユニバース)がどう構成されているのかごく一部分ではあるが解った気になったが更に新しい疑問が湧いてでてくる。

  • 「エレガントな宇宙」、「宇宙を織りなすもの」に続くBrian Greene氏の著作。
    最新の素粒子理論に関する著作の中では抜群の傑作と断言できる。

    前作まででは、特に相対論と量子力学の統合に関する困難さを説明していた。
    本書は一歩議論を進めて、最新の素粒子理論から導かれる宇宙の形について詳細に、しかし平易な文章にて記述している。
    提案されている宇宙の形を実証するのは、近い将来では難しいかもしれないし、これほど精緻な理論を作り上げても、なかなか統一的な見解が得られていないという現状に、非常に残念に思う。しかしながら、勝手に人間が作った数学が、これほどまでに世界を記述できるのはなぜだろうか。

    物理学の勝利があるとすれば、できるだけ少ない原理・原則から将来を予測することができる「約束事」を見つけることができたときであろう。
    例えば、質量が素粒子一つ一つが勝手な値を取ることができるという考えから、ある場(いわゆるHiggs場)を仮定すると勝手に粒子に対応する質量が生成されれば、それは前者よりも(ある面では)j優れている考えという事になる。

    現在の素粒子理論では、理論を定式化して、その結果の数学的要請から宇宙の形を複数提案しているが、どれが正しいかは実験に依ってのみ規定されうる。

    約140億年前に生まれたこの宇宙の中の、一つの銀河の中のある惑星の生物が宇宙の起源を知ることができるかもしれないなんて、なんてステキな事だろうか。

  • 上巻参照

  • 「科学において、多宇宙を持ち出すことはまともなだけではない。そうしないことは非科学的だ。」とあるが、そうはいってもここに書かれていることはSFの世界に近いと思う。いやむしろSF以上にSF。でもこれが物理学者が科学的に考える最新の宇宙論なのですね。今日考えられている多宇宙「パッチワークキルト多宇宙」「インフレーション多宇宙」「ブレーン多宇宙」「サイクリック多宇宙」「ランドスケープ多宇宙」「量子多宇宙」「ホログラフィック多宇宙」「シミュレーション多宇宙」「究極の多宇宙」。いろいろあるようです。いろいろあるということは、これだというものがないと状態でもある?

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著者プロフィール

物理学者・超ひも理論研究者。コロンビア大学物理・数学教授。研究の第一線で活躍する一方、超ひも理論をはじめとする最先端の物理学を、ごく普通の言葉で語ることのできる数少ない物理学者の一人である。超ひも理論を解説した『エレガントな宇宙』は、各国で翻訳され、全世界で累計100万部を超えるベストセラーとなった。

「2016年 『文庫 宇宙を織りなすもの 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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