しらない町

著者 :
  • 早川書房
3.48
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本棚登録 : 150
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092533

作品紹介・あらすじ

故郷の島根を離れ、映画監督を夢見る青年、門川誠一。今は大阪でアパート管理のバイトで生活をしていた。ある日、亡くなった独り暮らしの老人、帯屋史朗の遺品を整理していた時、誠一は部屋で8ミリフィルムを見つける。映っていたのは-行商のため重いリヤカーで集落へと向かいながら、優しくほほ笑む女性の姿だった。帯屋老人はなぜこのフィルムを大切に保管していたのだろう。誠一はドキュメントを撮ることを決め、映像が撮られた場所とゆかりの人たちを訪ねてゆく…。独居老人の遺品の8ミリフィルムに導かれた青年がめぐりあう、戦争という時代、ありし日の故郷、人と人との絆の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 亡くなった老人の帯屋史朗の遺品を整理していた誠一は
    史朗が若い頃撮った8ミリフィルムを見つける。

    映写してみると、どこかの田舎である。
    田舎の道を40代くらいの可愛い女性がリヤカーを
    引いている。

    史朗はなぜ隠すようにしてこのフイルムを持っていたのか。

    誠一は史朗が撮ったこの女性に会ってみたいと思った。

    誰だって、自分の人生は自分が主人公である。
    誰だって、一番輝いていた時がある。

    人と人との感動の絆です。
    心に残る一冊となりました。

  • 読んでいる途中から身体中に何かががざわざわと逆流していくのを感じた。
    それは今、ここに生きている自分自身を自覚せよ、という声無き声のようで。
     60数年前の日本と、今の日本と、全く別の世界のような二つの「今」は、
    紛れも無く一本の線でつながっているのだということを改めて認識した。
     少しずつ解き明かされていく真実は、今生きている人の心の中にあるもので。
    だから本当の意味での真実は誰にも分からない…
     ある一定の年齢の多くの方が死ぬまで心の奥底にしまいこまなければならない
    闇の行き着く先が孤独死でしかないのならば、今の日本ほど不幸な社会は
    無いのかもしれない。
     この小説は色んな問いを私たちに投げかけてくる。
     その問いの一つ一つに真摯に向き合うこと、それが今生きている私たちの
    使命なのかも知れない、そう思った。

  • 人は1人では生きられない。必ず誰かと関わり縁を結んでいるもの。死んだ瞬間だけ切り取って孤独死だとか無縁だとかそんなことはないんだ。とは言え、孤独死よりも伏龍作戦の方が気になったな。

  • 映画監督を夢見る門川誠一青年は、アパート管理のアルバイトをしていたが、そのアパートで独り暮らしの帯屋史郎老人が亡くなった。その遺品整理をしていた時、8ミリフイルムとその映写装置を見つけ、思わず、そのフイルムを見て、その中の映像に惹かれてしまう。そして帯屋老人の人生を映画にする決心をして、帯屋老人の人生を振り返る為、関係する人々の調査へ乗り出す。
    独居老人の死亡に焦点を当てながら、一方で再び戦争を思い出す悲しい、しかし素晴らしい作品だ。

  • 2019.02.02
    無縁とか孤独死とか同情することは非常に失礼なことだ。「人生のエンディング、エンドロールには多くのキャストの名前が名前が連なるでしょう」と帯屋史朗の言葉。「脱・孤独死、さらば無縁社会」戦争経験者の生きる覚悟、死ぬ覚悟に今更ながら頭が下がる。
    たまたま図書館で手に取った一冊。出逢えて良かった!

  • 孤独死をした老人の残した8ミリビデオ。
    それを見たところから主人公の謎解きが始まる。
    死体も殺人もないソフトミステリー。
    少し物足りない感があるし、ちょっとこじつけ感もあったのが残念。
    でも、別の作品も読んでみたいという気にもなった。

  • 重い話だ。私にとっては孤独死よりも
    戦争の話がきつかった。いつも、きっちり避けていたのに
    たまたま読んでしまった。
    やっぱりつらかった。最後はよかったのだけれど。
    戦争の話は苦手。

  • 「絵」でも
    「書物」でも
    「映画」でも
    戦争というテーマを中心に据えて書かれたものには
    つい手をだしてしまう

    たいがいのことは「想像」する力を発揮する中で
    自分の中に落とし込んだり、自分の中で思考したりしていくのだけれど

    この「戦争」というものは
    そんななまやしい「想像力」では及びもつかないものであるような気がしている
    でも その実体はそれなりに把握したい
    もちろん「体験」など絶対にしない方がいい

    それだからこそ
    きな臭く感じることの多い今だからこそ
    それなりに自分の中で考え続けておきたいものだ

  • 鏑木蓮作品初読み。
    自分も孤独死の可能性高いよなとか冷静に考えてしまったわ(笑)
    文体とか考えたらもっとほんわかした作品書いて欲しいなと思う作家さんかな。。。

  • 過酷な戦争を体験した老人の死後、
    その老人がいったいどんな人物だったのか
    戦争を知らない若い世代の人間が老人の人生を
    掘り起こしていくという構成が
    百田尚樹『永遠の0』との類似性を感じさせますが、
    読中受ける印象や雰囲気はかなり違いますね。

    こちらのほうが柔らかいというか自然体な感じを受けます。

    『永遠の0』の方は物語として優れているけど
    『しらない町』はドキュメンタリーチックな
    飾らない感じがするというか。

    その分じわっと心に染みるような読後感を持ちました。

    なんというか久々に静かな感動を味わったような気がします。

    多くの人に読んでほしいと強く思う、
    いろんな人にオススメしたい作品です。

    ※表紙の、女性と背景の雰囲気がすごく作品にマッチしていますね。

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著者プロフィール

鏑木 蓮(かぶらき・れん)
1961年京都府生まれ。広告代理店などを経て、92年にコピーライターとして独立する。2004年に短編ミステリー「黒い鶴」で第1回立教・池袋ふくろう文芸賞を、06年に『東京ダモイ』で第52回江戸川乱歩賞を受賞。『時限』『炎罪』と続く「片岡真子」シリーズや『思い出探偵』『ねじれた過去』『沈黙の詩』と続く「京都思い出探偵ファイル」シリーズ、『ながれたりげにながれたり』『山ねこ裁判』と続く「イーハトーブ探偵 賢治の推理手帳」シリーズ、『見えない轍』『見えない階』と続く「診療内科医・本宮慶太郎の事件カルテ」シリーズの他、『白砂』『残心』『疑薬』『水葬』など著書多数。

「2022年 『見習医ワトソンの追究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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