火星の挽歌 (海外SFノヴェルズ タイム・オデッセイ3) (海外SFノヴェルズ タイム・オデッセイ 3)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092595

作品紹介・あらすじ

2069年2月、19年間の人工冬眠から覚醒させられた英国陸軍の元兵士ビセサは、世界が驚くべき状況下にあることを知らされた。2042年に魁種族によって引き起こされた太陽嵐を、人類は壮大な計画を実行に移して、なんとか生き延びた。だが、その27年後、人類の文明を凌駕する知識と力をもつファーストボーンが新たな攻撃をしかけてきたというのだ。Q爆弾と名づけられたファーストボーンの武器は、何年も前に太陽系外から地球をめざして進みつづけており、21カ月後には地球に到達する予定なのだった。この非常事態に対処するべく、世界宇宙評議会などの組織が動きはじめていた。冷凍睡眠施設から出たビセサは、娘マイラとともに地球外をめざす。いっぽう、過去200万年の歴史上のさまざまな時代の断片がつなぎあわされている、もうひとつの地球ミールにある神殿でも、異変を告げる事件が起こっていた。ビセサが残していったフォンが呼びだし音を鳴らしはじめたのである。バッテリー切れを起こしていたはずのフォンに、いったいなにが起こったのか…?太陽系に住む人類を襲う苛酷な試練と、その苦難に立ち向かう人々の活躍、ふたたび旅だったビセサの壮大な冒険行を、英国SF界の新旧ふたりの巨匠が練達の筆致で描く長篇SF。巨匠クラークとバクスターが、『2001年宇宙の旅』に始まる"宇宙の旅"シリーズを新たな角度から描いた"タイム・オデッセイ"三部作、待望の完結篇。

感想・レビュー・書評

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  • なるほど。ビセサが追われるのがいまいち納得いかないのですが、太陽嵐によって、世代間の断絶により、いろいろ地球にもあったんですね。

    ミールが再び出てきます。紀元間もないのに、大西洋を渡っていたり、狂気期間があったりと、完全に世界は変っていますが。その変更された世界が、2070年の地球に影響があるのか、無いのかが明らかにされていないような気もします。所謂SFの設定では、過去の変更が現在に影響を与えることになっているんですけどね。

    終盤、ちょっとややこしい感じですね。すっきりと解決したような、しないような・・・。

  • AIもだいぶ進化している時代なので、彼らの個性が、機械であるがゆえの限界もあったり、人を超えていたり、性格も違っていておもしろいだけど。
    宇宙服のスーツ5号が、ビセサに
    「私の性能を探求して欲しいのです」
    と要求する、機械としての使命感と来たら(笑)!

    ネタバレまくり

    人類の進化において、私が理想とするもの。
    p302 AIアテナ
    「…略…どれほど権力があろうと、どれほど特別な地位にあろうと、これは個人が下すべき決断ではありません。歴史において、このような選択を迫られた世代はこれまでありませんでした。けれども、テクノロジーのおかげで、これほど一体になった世代もありませんでした。そして言外の意味は明らかです。この異性は、わたしたち全員が払わなければならいのです。
     その犠牲は火星です」

    「もしかしたら、これが種として成長するということの意味だと思わない? こういう決断を迫られることが」

    p304
    「わたしたちはこの数分のうちに、太陽系を走りまわっていたこの数カ月のうちに学んだよりも多くのことを学んだわ。もしかすると、最初から公表するべきだったのかもしれない」
    「ええ。もしかすると、それが成熟した文化のしるしかもしれませんね。秘密は守られず、真実は語られ、ものごとは議論されるというのが。そう思いませんか?」


    しかし、とんでもないタイムスリップ劇を引き起こしたのがファーストボーンで、ファーストボーンは宇宙のエネルギーを保って、より長く「種としての生命」を生き延びさせるために、あらゆる手段を投入した……のは、まあ、理由にも納得したけれど。
    この終わり方は……
    S.キングの『ガンスリンガー』シリーズを読んで、最終巻で膝から崩れ落ちるほどの失望を味わったのと似ている……一部解決はしたのに、放りっぱなしじゃないか……
    「宇宙の旅」シリーズを新たな角度から描く「タイム・オデッセイ」シリーズ完結篇、は、直角編であるとか書いてあったけど、「宇宙の旅」を全部読めばラストボーンも出てくるんだろうか……

  • 楽しみに、楽しみに、楽しみにしていた、タイムオデッセイ完結編。

     「時の眼」では、国により時代が切り貼りされた異なる地球(ミール)を見せてくれた。なぜそんなことになったのかはわからないままではあるが、三部作の中では人類の敵、あらゆる知的生命体の敵ファーストボーンの登場編だといえる。

     モノリスに値するのは<眼>という、π=3の時空をつなぐ球体だ。

     「太陽の盾」では、地球がファーストボーンの攻撃にさらされる。タイトル通り、人類はこの攻撃を想像を絶するスケール(このスケールはバクスターならではであり、彼を超える作家を私は知らない)の盾で防ぎ切る。ミールの謎、ファーストボーンの謎はそのままにして話は終わる。

     <眼>はもちろん登場するが、今回の主役はHAL9000ならぬアリストテレス・タレス・アテナの 3AI だ。

     脱線するが、私自身はこの「太陽の盾」がとても好きである。人類が英知を絞って立ち向かうさまが大好きだ。そして、AI が大好きである。

     そして、完結編。ファーストボーンはさらなる脅威を人類に与える。ファーストボーンとは何か。彼らは、人類のみならず他の知的生命体をも滅ぼした過去を持つ。その中には原始火星人も含まれる。

     旅立った 3AI たちはどうなったか。彼らは再び地球に戻ってくる。ファーストボーンと戦うために。人類の武器では勝ち目はない。そこでAIたちが、ファーストボーンに敗北を喫した知的生命体が選んだのは、人類代表のヒロイン・ビセサだった。

     彼女は<眼>を利用し、再びミールに戻る。そこで、原始火星人の協力のもと、ファーストボーンの攻撃から人類を救うことになる。なぜ、ファーストボーンに帰属する<眼>は(結果的に)人類の味方をするのか、非常にわかりにくい(ここがクラークの色満載なんだが)ラストボーンとはなんなのか。謎を残しながら物語は終わる。

     地球人と宇宙を根城にするスペーサーとの確執は、先日読んだ「ストリンガーの沈黙」に通じるものがある。これは、私自身はサイドストーリーと認識している。読み方によっては面白いだろう。私には、「ストリンガー・・・」ほど両者に顕著な差がないため、イマイチ面白くなかったのだが。
    (逆に言えば、「ストリンガー・・・」が面白すぎたのかもしれない)

     再読しないとわからないのかもしれないが、ラストボーンとはなんなんだろう? チャーリー? そんなはずはない。原始火星人? 考えられる。この理解が最も良いと思う。しかし、きっとこのタイムオデッセイはスペースオデッセイとつながっているはずである。そう読むのがもっとも楽しいかなぁ。

     ファーストボーン=魁種族、ラストボーン=殿種族。ラストは続くのか最後なのか? 殿の訳は適切なのか? 前2作をもう一度読みながら、この作品を楽しんでみたい。

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