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本 ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784152092687
作品紹介・あらすじ
切り出される神殿、水に沈む町、遠い過去に失われた人々──若い夫妻がエジプトやカナダで目にした喪失のかたちとは。『儚い光』のオレンジ賞受賞作家が13年の沈黙を経て発表した至高の文芸長篇
感想・レビュー・書評
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降り積もったばかりの雪の静けさを湛えた物語。静けさは祈りに限りなく近いものだ。わたしは沈黙の声に耳を澄ませていた。白銀の清浄は何かを思い起こさせるし、何かを忘れさせもする。雪上に刻まれた足跡はやがて跡形もなく消えてしまう。それでも白紙の地図が現れるたびに名付け直し、生きた証を残そうとする。その欲望を誰にも否定することはできない。
喪失の痛みを抱える者同士がお互いをいたわるやさしさ。わたしの記憶は語り合い、共有することでわたしたちの記憶になる。「忘れさせない」と「忘れたくない」の結び目はまたたき、星座を描く。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平行して進めてたけど、こっちも終わりそうにない
諦めた -
アスワンハイダム建設のため、水没する土地に身を置き神殿の移設を請け負うエイヴァリーと植物を愛するジーン。
水瓶を作るため、切断され生み出した土地を離れてゆくラムセス二世の"体"。自らの記憶につながる土地を沈められていく人々。ナイル川の黒い流れを背景に、語られることのないいくつもの喪失に囲まれたハウスボートの中、二人の体が負ってきた記憶が静かに水が満ちてくるようにひそやかにお互いにだけ語られていく。
やがて二人のつながりも、別の方向に向けて流れ始めていく。
人は立ち上がれないくらいの"冬の眠り"をどのように受け入れていくのか。そして、その喪失からどうやって目覚めへと向かっていけるのか。その過程は、失い続けることでもあるのではないか。静かな悲しみの中に、喪失を抱えて生きる人の姿を見つめる一冊です。(院生アルバイトスタッフ) -
ナイル川の上流に建設されるダム工事に関わる技師や移転のお話。
エキゾチックなストーリーで旅した気分になる。 -
登場人物の心象風景がきれいに描かれていて、登場人物に寄り添って彼らと同じように感じるのは、ちょっと別の世界を体験している感じ。
ストーリーよりも、彼らが見たもの、感じたことを表現している文章力が素晴らしい。