ファイナル・オペラ (ハヤカワ・ミステリワールド)

  • 早川書房 (2012年3月22日発売)
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本 ・本 (403ページ) / ISBN・EAN: 9784152092793

感想・レビュー・書評

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  • 「ミステリ・オペラ」「マヂック・オペラ」に続く、検閲図書館・黙忌一郎(もだし きいちろう)が探偵役となるシリーズの最終作。
     今回の舞台は東京・八王子市にある長良神社。そこで代々、能「長柄橋」を14年ごとに演じる明比家(あさひなけ)の面々が主な登場人物となる。
     因みに長柄橋は大阪の淀川に架かっているが、この能の長柄橋は嵯峨天皇の時代、西暦812年に今とは別の場所に架かっていたもの。人柱の伝説が残っており、歌枕に詠まれている伝説の場所となっている。
     実際の能にも「長柄の橋」というものはあるそうだが、本作の「長柄橋」はそれとも異なり、明比家に秘曲として伝わるものとして作者が創作したもの。能「隅田川」後日譚的なものとして描かれている。
     時代背景は、昭和20年8月、第二次世界大戦末期、14年ぶりに「長柄橋」が上演される。しかし、舞台である八王子市は、8月2日にB29による空爆で大きな被害を受ける…
     一方、時を遡る14年前、前回の「長柄橋」上演の際には、二人の人間が死んでいた…
     意識の混濁、空想と現実、現在と過去が入れ子になった不思議空間に様々な仕掛けが散りばめられていく山田正紀のお馴染みの世界。繰り返される戦争の中、無数に死に逝くこどもたちのための贖罪能として「長柄橋」はあるという…。
    冒頭にも掲げられた「長柄橋」の一節「雨夢見えし てふ ゆきて 時のうつるもわきまえず」の謡が執拗に繰り返され、やがて自分の頭の中にも音として響いてくるという独特のリズム感。面白かった。シリーズでもベストではないだろうか。

  • 読み終わった。

    正直、この小説は難しい。難解。

    でも、作品の雰囲気に酔うのもまた読書の楽しみ。

    劇中劇のミステリというよりも、幻想ファンタジーっぽい作品。

    能の世界を勉強して読み返すともっと面白くなるんだろうなあ。

    兎に角、山田正紀の世界を堪能しまくり(ということは、訳の分からない世界を堪能するということ)で、読書アドレナリン出まくりの1冊でした。

    おもしろかった。

  • おもしろかった。少しむずかしかった。

  • 文句なしに面白かった

    3部作らしいけれどこれだけでも楽しめる。
    でも、1作も読んでなかったことが悔やまれるほど。

    能の隅田川の続編として描かれた能の出来の良さといい
    解釈の大胆さといいなかなか好きです。

    また、どこまでが真実でどこまでが虚構なのか。
    文章のつくり方もどこまでが真実でどこまでが虚構なのか。
    いろいろな演出が非常に野心的で引き込まれます。

    ラストはあまり明るい終わり方ではないですが納得のいく終わり方で、再び再読したらまた違った味わいで読める作品。

    多分懸命な読者の方は仕掛けには引っかからないのでしょうけれども、わかっててもあえて騙されるという心地よさが良かったです。

  • 黙忌一郎の「オペラ」シリーズ。最終作?今作は自分の理解力が足りないのと、黙忌一郎あんまり出てないな〜。ラストは物悲しい。

  • 「どんな時代になろうと、罪のない子供たちが戦乱、貧困のために『人柱』に処される事実に変わりはない、というペシミスティックな歴史観が働いているのだろうと思います。それが室町時代であろうが、昭和の御代であろうが、あるいはまだ見ぬ未来であろうが、その時代なりの要請に応じて、いつだって子供たちは犠牲に処せられるのです。非常に殺される、無情に捨てられるーそれが未来永劫、人間にかせられた罪業であり、原罪でもあって、どんなに時代が変わろうと、ついにその悲劇が尽きることはない。」
    面白い。第一部から読み直したいな。それにしても、どうにもならない歴史とは言え、こんな終わり方はないよな…。

  • やっと読み終わった。
    このオペラシリーズ、前2作も読んでいるのに、なぜか印象薄いんです。
    難しい、知らない世界、ってこともあるんでしょうが。スイマセン。

    これも幻想的ですね。
    読んでる間は楽しめたので、☆は甘めの四つということで。

  • 長過ぎる。場面展開も多くついていけず。

  • オペラシリーズ三作目。タイトルどおりこれが三部作のファイナルかな?
    能を巡る謎の事件と、歴史的背景にまつわる壮大な物語。最初はややとっつきにくい印象を受けましたが、終盤には俄然面白くなりました。どんどん謎が解かれていくのは爽快。
    能舞台上の事件の真相も見事だけれど。輪廻転生の謎がまさかきちんと解かれるものだったとは! そして終盤のとんでもない展開と(国もひどいことするなあ)、一転して物静かなラストが印象的でした。

  • 現実と幻実の狭間をゆらゆらと生きる語り手。能の幽玄世界を体現したような花科の一人称で語られる物語。
    幻想と本格推理とSF的なものまで包含し、それをまとめ上げ、力でねじ伏せながら、しかし読みやすい、奇跡のような一つの小説。

    と、書いてみたけどうまく説明できない。推理と幻想の危ういバランスが崩壊していない小説。お勧めです。

    推理合戦とか本当の犯人は『虚無への供物』へのオマージュでしょう。
    現実とうまくコミットできない花科が語り手なので、検閲図書館も現実なのか幻なのか……不安定です。

    八王子空襲の文章は山田節全開。それ以外でも山田正紀の過去作品を思わせる部分もある。
    そして……『50億ドルの遺産』か『ロシアンルーレット』のような……。山田正紀はたまにこういう話を書くから油断できない。

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著者プロフィール

1950年生まれ。74年『神狩り』でデビュー。『地球・精神分析記録』『宝石泥棒』などで星雲賞、『最後の敵』で日本SF大賞、『ミステリ・オペラ』で本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞を受賞。SF、本格ミステリ、時代小説など、多ジャンルで活躍。

「2023年 『山田正紀・超絶ミステリコレクション#7 神曲法廷』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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