それをお金で買いますか――市場主義の限界

制作 : 鬼澤 忍 
  • 早川書房
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本棚登録 : 1874
レビュー : 232
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092847

感想・レビュー・書評

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  • 本書は私たちの生活と密接にかかわる「市場主義」をめぐる問題について、この現代最重要テーマに、国民的ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』のマイケル・サンデル教授が鋭く切りこむモノでございます。

    「カネで買えない物はない―」
    かつて、そういって物議をかもした人間がいました。そのことに関する是非は別として『金で買えないもの』ではなく『カネで換算できないもの』はほぼないのではなかろうかとそういうことを思いながら本書を読んでおりました。

    さらりと概要をお話しますと本書は『現代の孔子様』と称せられるハーバード大学のマイケル・サンデル教授が現代におけるもっともグレーかつ最重要な『至上主義の是非』という問題に『正義』という観点から切り込んでいくというものです。いやいや…。一般向けの書籍とはいえ、本当に骨太い内容でございました。

    ここにあげられるのは民間会社が戦争を請け負い、臓器が売買され、公共施設の命名権がオークションにかけられる…。果ては人間の寿命までもが『売買』の対象になるということを例示されており、まさかアメリカにはセレブリティーの寿命までもが『賭博』の対象として扱われているという現実に空恐ろしくなってしまいました。しかし、市場主義という観点からこれらの事象を見れば、なんら問題はなく、売り手と買い手が合意のうえで、双方がメリットを得ております。

    しかし、ここで心に引っかかる『違和感』はなんだろう?それについてサンデル教授が一つ一つに対して詳細な論考を重ねていきます。特に面白かったのはサンデル教授が大の野球ファンで、『マネー・ボール』を例に取り上げ、彼らのとった戦略が長期的には頭打ちとなり、肝心の野球の試合そのものが味気ないものになっていくというお話しは考えるところが多かったです。

    さらに、『保険』というものについて、二次市場の複雑さとNHKで放送されていた『マネー資本主義』で若干放送されておりましたが、保険を使ったデリバティブ市場でなんと『人の生き死に』をまったく知らない他人の投資家が願っているという事例を紹介している箇所は『ここまで進んでいるのか…。』と頭を抱えてしまいました。個人的にはサンデル教授のおっしゃることの全てには賛同できるか、といわれればそれもまた首をひねってしまいますが、『行き過ぎた市場主義』に対してどこまでブレーキをかけることができるか?という現代社会にとって根源的な問いを発信している著者の『勇気』に僕はとても賛同しますし、巻末でこの本を執筆する際に同僚でもあるハーバード大学の超一流の経済学部の教授陣や学生たち、さらにはシカゴ大学の教授たちも協力しているということらしいので、そういった要素もこの本を価値あるものにしているのではないかと、個人的にはそう思っております。

  • 資本主義社会って何だろう。お金で買えるもの、買っては行けないもの。とても考えさせられた。現代のソクラテスのようです。

  • 核廃棄物処理場は補償金を出さない方が地元市民に受け入れられる。
    政府が企んだテロの先物市場はテロの予測に使えそうだが不幸な出来事の賭けを政府が主催するのは道徳的な嫌悪感を招く。
    バリーボンズが打ったシーズン73本目のホームランボールの持ち主は誰かという事で法廷論争の末、二人でボールを売却して売上を折半した。
    広告にふさわしい場所とふさわしくない場所を決めるにはー。
    自治体マーケティング。

  • お金で買えないものに値段をつけて商売する。究極的に行き着く先は不公平、不道徳、腐敗、堕落。歯止めはあるのか

  • すごく面白かった
    知らない情報もたくさんあった
    今までとは違う目で世の中を見ることができる

    私も小さい頃に野球場に行って、ボックス席は羨ましいけれど、売り子が来なそうで嫌だなと思ったのを思い出した

    あと、日本の小学校や幼稚園にもマクドナルドの「食育」教材を初め、わんさか企業から教材が届くこと
    幸いにもそんなのを使う余裕さえなかったけれど

    ぜひこのタイトルで惹かれた方は一読を

  • 仏法みたい。「そもさん」「せっぱ」ちょっと違うかも知れないけど、真理の話。
    ようするに正義の議論とか一般のコンセンサスはあとまわしに、経済がひどい勢いで、法の網の目と、モラルの微妙な解釈をかいくぐって、当該関係者、または、全能と勘違いしている一部の決定権者のみで、話を決めてしまった、結果的に「市場」とみなされたものが増えすぎて、その後処理で社会が苦労しているって話。
    でも、後処理で苦労している人たちは別に得してるわけでもなく、結果、法の網の目と、モラルの微妙な会社をかいくぐって、話を決めた、一部の人が潤っただけ。
    こうなると、法律にだめって書いてないことやらない方がばかじゃない?みたいな。。。
    なんとも耳の痛い話ですが、事実なんだと思います。

  • 市場は善悪を判断しないので、道徳的観点も必要になる。一理あると思う。

  • 公共哲学からの経済学(特に新自由主義)批判。

    公共や生命や倫理に関わるもの。
    例えば、スポーツや交通や生命保険。

    そういったものが、お金によって売買されている。
    野球のボールはサインされ、球場は名前が売られる。
    生命保険では、死ぬ前に「自分が死んだら保険金を受け取れる権利」を他人に売ることで、崎に現金を手に入れる。

    こういったことは、直接的には問題を引き起こさないけれど、何か嫌な感じを受けるのは確かだ。
    著者はそれを「腐敗」「善の喪失」といった言葉で表現している。

    しかし、現代世界の大きな問題のひとつは財政であり、財政維持のために公共的な「お金では買えないもの」は縮小し、次々に売りに出されている。
    本書の指摘はもっともだけれど、「財政問題=前世代による前借り」をどう解決するのかについては提示されていない。

    この点が解決しなければ、生活破綻という、倫理よりも直接的な問題に直面するのではないか。

  • あらゆる分野において、市場の原理を取り入れる事によって生まれる道徳的な問題を、公平性と腐敗という2つの軸から論理的に考えるという思考体系が身についたと思う。

    ネーミングライツとかインセンティブとかファストパスとか、今までうまい仕組みだなとしか考えていなかったが、非常に勉強になった。

  • しばらく、積ん読にしていたので、時間がかかってしまいました。学校などの公共に、どんどん入りこんでくる企業活動の実態について、大変深く考えさせられました。

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