それをお金で買いますか――市場主義の限界

制作 : 鬼澤 忍 
  • 早川書房
3.82
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本棚登録 : 1873
レビュー : 232
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092847

作品紹介・あらすじ

あるものが「商品」に変わるとき、何か大事なものが失われることがある。これまで議論されてこなかった、その「何か」こそ、実は私たちがよりよい社会を築くうえで欠かせないものなのでは――?
私たちの生活と密接にかかわる、「市場主義」をめぐる問題。この現代最重要テーマに、国民的ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』のサンデル教授が鋭く切りこむ、待望の最新刊。

感想・レビュー・書評

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  • 市場が社会の公的な領域あるいは道徳的規範の領域に侵入したときに何がおきるか?

    ひとつめは、公平性にかかわる問題、ふたつめには、腐敗にかかわる問題が発生する。

    お金をより多く持つ人間が公的なサービスを受けやすくなるということは、公的サービスの公平性を損なうことになる。

    また、道徳的規範の領域に市場が入り込むと、道徳的規範そのものが損なわれる。

    経済学者はこう主張する。市場が問題とするのは効率性である。市場により財の分配が効率的に行われることにより、人々が享受する効用が最大化するのだ。

    市場主義の限界は、功利主義の限界である。市場主義は効用の「量」だけを問題とし、その「質」は問わない。これが、経済学者が市場を価値中立的とみなす理由である。

    経済学は自然科学、特に物理学を模範としてきた。自然科学であるからには、道徳的価値とは無縁だというのが、その発想の大元にある。

    市場が価値中立的だというのは誤りである。
    市場が侵入することによって、道徳的規範の「質」が変化してしまうことがありえる。それは単に「量」の問題ではない。

    効率性の増大のみを至上原理とし、人間生活のあらゆる領域に浸透してゆく市場主義が、社会を成立させる上で重要な道徳的価値を腐敗させている。

    だから私たちは、市場主義が浸透していく領域の限界を定め、それをコントロールしていかなければならない。

    また経済学者は、自分たちの仕事が単に計量化できる事象にだけ影響力を及ぼしているのだけではないということに自覚的になる必要がある。

    自然科学も、経済学も、それが取り扱う領域が複雑かつ膨大になるにつれて、人為的なコントロールの及ばない領域に突入してきている。

    それは現代文明が直面している危機である。

  • アメリカって恐ろしい。(好きな国だけど)需要と供給さえあればなんでもビジネスにするのか。いや、アメリカに限った話じゃないか、人間ってそういう性質があるのか。アメリカ人のほうが発想が柔軟だからいろんなことを思いつく。だからいろんなビジネスが生まれてる。サンデル先生は危機感を感じてこれを書いたんだろうな。考え方より多様な発想に驚かされた。

  • お金で何でも買えてしまうのだろうか?

    先日読書会に参加してきました。サンデル教授の本は「Justice」も読んで
    非常に勉強になっていましたが、今回も実に考えさせられる本でした。

    お金で買えないものは当然あるんですけど、その領域がどんどん狭まっていると感じる。
    例えば、愛や信頼というものは絶対に買うことができないけれども、
    臓器しかり、狩猟禁止領域の動物のハンティング権しかり、
    何でもお金さえ払えば入手できる世の中になりつつある。

    経済学的に双方が望んでいるのであれば、良い取引になるんだけれども、
    例えば臓器を売るという事が倫理上許されることなのか?
    そんな経済学の分野に政治哲学を持ち込もうとしたサンデル教授は本当にすばらしい。

    市場原理があらゆる取引に介入すると、2つの問題が起こるとサンデル教授は言っている。
    一つは公平性の問題、もう一つは腐敗が起きることだ。
    後者の例はイスラエルの幼稚園で起きた罰金 vs 延滞料金のだろう
    (ここではこの話を省略します。本に書かれていることなので)。
    いったんお金で解決しようとするとその人の行動の価値観を変えてしまい
    二度と戻ることがないのだ。

    この本を読んで恐ろしいと感じたのは「生と死を扱う市場」という第4章だ。
    アメリカではバイアティカルというものがあり、これは余命いくばくかという
    人の生命保険を投資家が購入して、保険料を支払いそしてその人が
    仮に死んだ場合は死亡保険を受け取るというのだ。
    考えてみてください、このシステムがうまく機能するのは余命1年と宣言された人が、
    予測通りなくなることが条件なのだ。
    人の死を願ってしまうインセンティブが働くことになる。
    信じられますか?このようなシステムがアメリカではすでに事実としてあるということを。

    ではどうすれば、この市場主義を止めることができるのか?
    それは我々が対話を通して市場の役割は何かという事を考え、
    市場が侵入してきてはいけない領域というものを作ることだ。
    ひいてはサンデル教授のいう共通善とは何かという事につながるのではないか。

    こういう機会を作ってくれた友人のYさんに感謝です。

  • アメリカと日本の市場の違いは勿論あるが、こういった市場の流れは確実に日本に侵食してくるであろうと考えられる。
    最後の章を読んでみると、昨日たまたま参加したカンファレンスにて発言されていた「広告の未来は広告ではない」という言葉と合致する部分を感じた。

    とはいえ、これから様々な面で、意味で、信用という言葉が重要になってくると感じた。本書ではその信用が市場主義の面で出てきただけである気がする。

  • 臓器売買や人身売買が「してはいけないこと」だというのははっきりしている。それは売り買いすべきものではないと圧倒的多数の人が思うだろう。じゃあ、お金を払って行列の先頭に行かせてもらうのはどうか?病院で優先的に診察してもらうのは?高速道路でスピード違反する権利を買うのはどうなのか?これらはいずれも他国で実際に売買されているのだそうだ。もしかしたらもう日本でもあるのかも。

    本書はこのような実例を次々と挙げて、何が問題なのかを考えていこうとしている。結論から言うと、市場主義が入り込むべきでないところに進出していくと、それ自身やそれを支える社会的な規範の価値を、低級な基準で査定することによって貶め、尊厳を傷つける、ということになるのだろうか。

    あげられる例が豊富で驚かされるものもあり、その点では面白いのだが、繰り返しが多くくどい感じのするのが残念。もっとコンパクトにまとめてあったらなと思う。

    世の中のあらゆるものが市場の商品として取引される社会に私たちは生きている。市場を本来あるべき所に押し戻すことはかなり難しいことのように思われる。それでも「それはお金で買うものではないでしょう」という声はあげていかなくちゃ、と思う。「命名権」というものを初めて聞いたときのなんとも言えない違和感を忘れないようにしたい。

  • 長々しい直感が続き、いつまでもSo What?感が拭えない

  • ハーバードのサンデル教授による経済と倫理観について述べられた本。市場至上主義により何もかもがビジネスの対象となり、不公平と腐敗を招いていることを説いている。白熱教室で学生と討論した時と同じく、数多くのことをケーススタディ的に取り上げており、わかりやすく、かつ興味深く読めた。
    「絶滅の危機に瀕したクロサイを撃つ権利:15万ドル、主治医の携帯電話の番号:1500~2万5000ドル/年、製薬会社の安全性臨床試験で人間モルモットになる:7500ドル、連邦議会議事堂前の行列に並ぶ:15~20ドル/時間、成績不振校で本を1冊読む:2ドル」p12
    「あらゆるものが商品となってしまったせいで、お金の重要性が増し、不平等の刺すような痛みがいっそうひどくなった」p20
    「「早い者勝ち」という行列の倫理には、平等主義的な魅力がある。それはわれわれに、特権、権力、富といったものを無視するよう命じる。われわれは子供の時分「順番を待ちなさい。割り込んでは駄目だよ」と言い聞かされたものだ」p60
    「(保育所で、親が迎えに来るのが遅れることについて)この問題を解決するため、保育所は迎えが遅れた場合に罰金をとることにした。すると、何が起きたと思うだろうか。予想に反して、親が迎えに遅れるケースが増えてしまったのである。以前であれば、遅刻する親は後ろめたさを感じていた。保育士に迷惑をかけていたからだ。今では迎えに遅れることを、そのために進んでお金を払うサービスだと考えていた」p96
    「われわれは贈り物として受け取る品物の価値を、費やされた1ドルにつき、自分で買う品物より20%低く評価する」p144
    「全米退職者協会はある弁護士団体に、1時間あたり30ドルという割引料金で、貧しい退職者の法律相談に乗ってくれるかどうかをたずねてみた。弁護士団体は断った。そこで退職者協会は、貧しい退職者の法律相談に無料で乗ってくれるかどうかをたずねた。今度は弁護士団体も承諾した。市場取引ではなく慈善活動への取組を要請されていることがはっきりすると、弁護士たちは思いやりをもって対応したのである」p172
    「(献血を有料化したことによって献血者が減少したことについて)「献血を商品にして利益を得ることによって、自発的な献血者を追い払ってきたのだ」人々が血液を普通に売買される商品とみなしはじめると、献血に対する道徳的責任を感じにくくなる」p175

  • 生命保険に携わる人は、第四章は必読。保険の歴史、従業員保険、バイアティカル、保険の証券化商品などをモラルの観点から考えることができる。

  • この世の中はお金で買えるものばかり

  • 完全に学問の本。市場と経済、倫理観、価値と腐敗、そういう話。

    売れるけど、売るべきではないもの。
    何が正しくて、何が正しくないのか。
    この本では正解を出しているわけではない。あくまでサンデル自身の見解を述べているだけ。

    インセンティブの効果は興味深かった。お金だけじゃないよ、と。

    罰金の料金化という視点も面白い。本来は罰という道徳的見地から考えるものが、お金を払えばそれをしていいんだ、という料金化の考えを生むというのは確かにそうだなと。

    レンタルビデオなんて、完全に料金だもんね。

    正しいようで、実は本末転倒とか、道徳的見解にはそういうものが多い。

    いかにして市場は道徳を締め出すか。この章が一番面白かった。

    買えるもの買えないもの。買えるけど「そうすべきではないもの」。人の生死や肉体の部品化の話などは本当に考えさせられる。

    広告の進化は、時として人々の感覚を鈍くさせるものなんだなとも思う。でもこれもお金を払う人がいて、対価を受け取る人がいる限りは、そこに倫理観や価値や腐敗の話は必ず議論として起こりえるんでしょうね。

    人は高尚な生き物であり、強く持っている倫理観や、道徳心、腐敗を嫌う心、本当にそういう生き物であるべきなんだなと思うんだけど、あくまでそれは「個人」や「個人が考える一般論」であって、ニーズに応える市場がある限りは、議論は起こり続けるんだなと。

    なかなか考えさせられる本でしたよ。

  • 本書は私たちの生活と密接にかかわる「市場主義」をめぐる問題について、この現代最重要テーマに、国民的ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』のマイケル・サンデル教授が鋭く切りこむモノでございます。

    「カネで買えない物はない―」
    かつて、そういって物議をかもした人間がいました。そのことに関する是非は別として『金で買えないもの』ではなく『カネで換算できないもの』はほぼないのではなかろうかとそういうことを思いながら本書を読んでおりました。

    さらりと概要をお話しますと本書は『現代の孔子様』と称せられるハーバード大学のマイケル・サンデル教授が現代におけるもっともグレーかつ最重要な『至上主義の是非』という問題に『正義』という観点から切り込んでいくというものです。いやいや…。一般向けの書籍とはいえ、本当に骨太い内容でございました。

    ここにあげられるのは民間会社が戦争を請け負い、臓器が売買され、公共施設の命名権がオークションにかけられる…。果ては人間の寿命までもが『売買』の対象になるということを例示されており、まさかアメリカにはセレブリティーの寿命までもが『賭博』の対象として扱われているという現実に空恐ろしくなってしまいました。しかし、市場主義という観点からこれらの事象を見れば、なんら問題はなく、売り手と買い手が合意のうえで、双方がメリットを得ております。

    しかし、ここで心に引っかかる『違和感』はなんだろう?それについてサンデル教授が一つ一つに対して詳細な論考を重ねていきます。特に面白かったのはサンデル教授が大の野球ファンで、『マネー・ボール』を例に取り上げ、彼らのとった戦略が長期的には頭打ちとなり、肝心の野球の試合そのものが味気ないものになっていくというお話しは考えるところが多かったです。

    さらに、『保険』というものについて、二次市場の複雑さとNHKで放送されていた『マネー資本主義』で若干放送されておりましたが、保険を使ったデリバティブ市場でなんと『人の生き死に』をまったく知らない他人の投資家が願っているという事例を紹介している箇所は『ここまで進んでいるのか…。』と頭を抱えてしまいました。個人的にはサンデル教授のおっしゃることの全てには賛同できるか、といわれればそれもまた首をひねってしまいますが、『行き過ぎた市場主義』に対してどこまでブレーキをかけることができるか?という現代社会にとって根源的な問いを発信している著者の『勇気』に僕はとても賛同しますし、巻末でこの本を執筆する際に同僚でもあるハーバード大学の超一流の経済学部の教授陣や学生たち、さらにはシカゴ大学の教授たちも協力しているということらしいので、そういった要素もこの本を価値あるものにしているのではないかと、個人的にはそう思っております。

  • 資本主義社会って何だろう。お金で買えるもの、買っては行けないもの。とても考えさせられた。現代のソクラテスのようです。

  • 核廃棄物処理場は補償金を出さない方が地元市民に受け入れられる。
    政府が企んだテロの先物市場はテロの予測に使えそうだが不幸な出来事の賭けを政府が主催するのは道徳的な嫌悪感を招く。
    バリーボンズが打ったシーズン73本目のホームランボールの持ち主は誰かという事で法廷論争の末、二人でボールを売却して売上を折半した。
    広告にふさわしい場所とふさわしくない場所を決めるにはー。
    自治体マーケティング。

  • お金で買えないものに値段をつけて商売する。究極的に行き着く先は不公平、不道徳、腐敗、堕落。歯止めはあるのか

  • すごく面白かった
    知らない情報もたくさんあった
    今までとは違う目で世の中を見ることができる

    私も小さい頃に野球場に行って、ボックス席は羨ましいけれど、売り子が来なそうで嫌だなと思ったのを思い出した

    あと、日本の小学校や幼稚園にもマクドナルドの「食育」教材を初め、わんさか企業から教材が届くこと
    幸いにもそんなのを使う余裕さえなかったけれど

    ぜひこのタイトルで惹かれた方は一読を

  • 仏法みたい。「そもさん」「せっぱ」ちょっと違うかも知れないけど、真理の話。
    ようするに正義の議論とか一般のコンセンサスはあとまわしに、経済がひどい勢いで、法の網の目と、モラルの微妙な解釈をかいくぐって、当該関係者、または、全能と勘違いしている一部の決定権者のみで、話を決めてしまった、結果的に「市場」とみなされたものが増えすぎて、その後処理で社会が苦労しているって話。
    でも、後処理で苦労している人たちは別に得してるわけでもなく、結果、法の網の目と、モラルの微妙な会社をかいくぐって、話を決めた、一部の人が潤っただけ。
    こうなると、法律にだめって書いてないことやらない方がばかじゃない?みたいな。。。
    なんとも耳の痛い話ですが、事実なんだと思います。

  • 市場は善悪を判断しないので、道徳的観点も必要になる。一理あると思う。

  • 公共哲学からの経済学(特に新自由主義)批判。

    公共や生命や倫理に関わるもの。
    例えば、スポーツや交通や生命保険。

    そういったものが、お金によって売買されている。
    野球のボールはサインされ、球場は名前が売られる。
    生命保険では、死ぬ前に「自分が死んだら保険金を受け取れる権利」を他人に売ることで、崎に現金を手に入れる。

    こういったことは、直接的には問題を引き起こさないけれど、何か嫌な感じを受けるのは確かだ。
    著者はそれを「腐敗」「善の喪失」といった言葉で表現している。

    しかし、現代世界の大きな問題のひとつは財政であり、財政維持のために公共的な「お金では買えないもの」は縮小し、次々に売りに出されている。
    本書の指摘はもっともだけれど、「財政問題=前世代による前借り」をどう解決するのかについては提示されていない。

    この点が解決しなければ、生活破綻という、倫理よりも直接的な問題に直面するのではないか。

  • あらゆる分野において、市場の原理を取り入れる事によって生まれる道徳的な問題を、公平性と腐敗という2つの軸から論理的に考えるという思考体系が身についたと思う。

    ネーミングライツとかインセンティブとかファストパスとか、今までうまい仕組みだなとしか考えていなかったが、非常に勉強になった。

  • しばらく、積ん読にしていたので、時間がかかってしまいました。学校などの公共に、どんどん入りこんでくる企業活動の実態について、大変深く考えさせられました。

  • こうした倫理をみんなで身につけたいですね。
    市場主義経済の限界を感じました。

  • 非常に良くまとまっており、面白かった。特に市場と道徳といったタイムリーな話題が扱われており、どちらを重視すべきかについて議論が非常に鮮やかに行われている。

  • 一言で言うと面白い。
    倫理的にお金で買っても良いものかというものの例を提示する。
    例えば、医者で並ばずに診察できる権利や病人や高齢者の生命保険買って、彼らが生きている間は年間保険料払い、死んだ時に死亡給付金を受け取る権利など。
    この本を読んだ人同士で自分の立場を議論すると面白いと思う。

  • いまやあらゆる場に進出してきている市場の限界について、マイケル・サンデル教授が書いた一冊です。自分の考え方に期せずして市場原理主義的なところが少なくないことに気付かされました。

    あらゆるものに金銭的価値を与え、市場で取引されるようになってきた現代に、何がその潮流に抵抗し、何が原因でその「市場原理主義」がうまくいかなくなっているのかを実に鮮やかに説明してくれていると思います。
    個人的に民営化というテーマでいろいろ調べているタイミングだったので、かなり参考になりました。

    市場で取引されるべきもの、そうでないものの区別、あるいは広告の入り込む場所に制限を設けるべきか否か、ボランティア事業にお金を出すことで効用が減少した事例など、非常に興味深いです。
    一見当たり前に思える事例から深く考え込まされる事例までの展開は見事ですし、「これから~」でサンデル教授の著作に興味を持たれた方なら、期待は裏切られないと思います。今回はよりダイレクトに経済と道徳の関わりという問題を取り扱っているので、身近にも感じられます。
    今日本でも市場原理主義の動きは衰えていないようなので…ぜひ多くの方に読んでいただきたい一冊です

  • 「正義を語ろう」よりももっと直接的に、自由主義・市場主義を批判している書。一つの思想として、相変わらず興味深い。資本主義社会における「イノベーション」は社会の利便性を向上させるのみならず、既存の価値観を常に変革(もしくは破壊)していくものでもあること、そしてその絶えざる変革に対して、伝統的な「道徳」の観点から保守的な批判を行うサンデル、という図式が明確になったように思う。この新たな革新と保守の構造は、今後の人類の歴史にどう影響を及ぼすだろうか。

    しかし、こうした反市場主義の論説は、具体的な施策に欠けるのが難点だ。この本でも、市場主義の批判に徹底してはいるが、「じゃあどうすればいいのか」という問にはほとんど答えられていない。善き生とは何かみんなで議論しよう、というだけでは説得力に欠ける。同じく資本主義批判の文脈で、モースの「贈与論」を引き合いにだす論説に対しても、同様の物足りなさを抱いたことを喚起させられた。

  • 昨今の某企業の態度や生活保護の話をみて何でこうなるんだろう、と考える事があるけど、それに対する一つの回答。

    お金は生きるためには必要であるが衛生要因であるかな、と自分は考えている。

    心の奥底にある尊厳が経済合理性や資本主義の趨勢により薄れてしまいがちであるけど、どこかで留めておかねばならない要素であることは否定出来ない。

    その尺度というかバランス感覚について改めて考えさせられる本です。

  • 何でもお金で取引する=市場主義の導入が良いことなのだろうか、という疑問。たとえば、結婚式のスピーチを代行で考えてくれる会社に、原稿を依頼すること。これは友情をお金で買っている様に見える。こういったことまでお金で取引してよいのだろうか、というのがテーマ。

    これまで道徳的議論が行われていた領域に、市場主義を新たに持ち込むと、道徳的観点から金銭的観点に問題が変質し、(道徳的には許されないが)お金で解決されるならそれでよいか、という考えに人々が染まっていくことが大きな懸念である。

    本来道徳的に節度を持つ事が人として大切なのであって、なんでもかんでも市場主義に任せればよいものではない。

    本書ではアメリカの市場主義によって問題が変質した事例が多数紹介されていた。市場主義が至る所に拡大が進んでいるのが不気味に思えた。

  • 相変わらず分かりやすい例ではあるものの、それが長過ぎて結論が見えにくくなっているのが残念。

    結論自体は序章で出ていて、最後まで読んでも「そうですか」くらいの感想しか出なかった。

  • 『正義』のほうを読んでないでこっちを読むのは邪道なのかもしれないが、結果的にはあまり関係ないだろうと思うことにして。
    おカネで取引されることが問題になるものの題材として、行列に割り込む権利、インセンティブ、生命保険の二次市場(バイアティカル、ライフセトルメント)、命名権を挙げて議論している。
    おカネで取引されるようになった場合の問題点としてのキーワードは、「不公正」と「腐敗」。(英語ではなんて書いてるんだろう)
    「不公正」とは、(本来全員へ向けたサービスであるにも関わらず)おカネを払えない人がサービスを受けられないこと、「腐敗」とは、市場論理が持ち込まれることによってその制度やサービス本来の意味が失われてしまうこと、かな。
    特に「腐敗」がポイント。ダフ屋や生命保険の二次市場になんとなく感じる双方承諾の上の取引だから問題はないけど…という違和感を説明してくれる。
    人々の倫理は市場の侵略を止められるのだろうか。もっと市場化が進んでいくのだろうか。

  • 書いてあることは言われてみれば当たり前、けれど内容のように考えたことはなかった

    年々お金で買えるものが増えてきている、しかしその中にはどうしても認められないものが多々ある

    それは市場に道徳が介入しているから、感情を経済から追い出すことはできない、そうこれこそ市場の限界なんやろうなぁ

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