リライト (Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
3.28
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本棚登録 : 240
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092892

作品紹介・あらすじ

過去は変わらないはずだった-1992年の夏、中学2年生の美雪は、未来からやってきた保彦と出会う。旧校舎崩壊事故に巻きこまれた彼を救うため、10年後へ跳んで携帯電話を持ち帰った。そして2002年の夏、思いがけず作家となった美雪は、その経験を題材にした一冊の小説を上梓した。彼と過ごしたひと夏、事故、時空を超える薬、突然の別れ…。しかしタイムリープ当日になっても10年前の自分は現れない。不審に思い調べていくなかで、同級生の連続死など記憶にない事実が起きていることに気づく。過去と現在の矛盾が生み出した、残酷な夏の結末とは-。

感想・レビュー・書評

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  • 時をかける少女の影がちらつくタイムトラベルもの。

    雰囲気は嫌いじゃないが、ラストをはじめとした要所要所で引き込まれなくなっていく。

  • 期待したのだが


    パラドクスのオンパレードで、理解しにくいというか、なんかスッキリしないエンディングだな。発想は斬新で種明かしもすばらしいと思うけど、映画メッセージのような綺麗さを感じないのはなぜだろう?

  • タイムリープものの名作『時をかける少女』の裏返しのような、ガチガチに構成されたSFホラーミステリー。青春ミステリ、と謳ってはいるがその要素は舞台装置の域でしかなく、若干薄めでどちらかといえばホラー的な要素のほうを強く感じた。淡々とした文章は時に説明的に映るので苦手な人は苦手かもしれない。しかし構成面は秀逸で、物語のテーマもとっかかりのしやすいものなのでスラスラと読めた。半分までに出てくる謎がちゃんと収束されるのも魅力的ではある。ただ、設定上、何度か読み返しながら読み進めることになるので大体のオチは読めてしまうのが難点かも。
    早々にオチがバレた理由として結婚後の別性というミスリードが弱過ぎたことと(ここは1エピソード挟んだほうがよかったかもしれない)三人目の人称が表れたせいだろう。謎は深まったが同時に疑念も強まったことを付け加えておく。
    * ジャンル
    本書は様々なジャンルの複合作になっている。要素の強弱を語れば、SF=ホラー>ミステリ>青春の順だろう。ミステリ的な謎が物語としての純粋な謎を超えて恐怖に直結する様や、叙述トリックである一人称中の変容なども不安定さを感じるホラー要素で纏められているのはポイントが高い。本来はあり得ない事柄である「別々の人物同士の思い出の共有」という不可解かつ物語の根幹によるものであると思われる。

    【疑問点】なぜストーリー類型であるはずの青春の要素のみが極端に薄いのか?

    推察できる理由は二つあって、ホラー的な文章とキャラクター性であろう。
    クラス40人の人間(そのうちのクラスメートである半数の女子)を虜にする園田保彦という男のキャラクター性が薄いことが理由の一つである。物語上、彼は何十回も青春の演出=タイムリープの目的である実体験した小説の焼き直し、すなわちリライトであり追体験をするせいか、どこか仮面じみた印象を受ける。それが早々に叙述トリックで明かされてしまったせいで読み手の感情移入を削いでしまったのが最大の原因だろう。端的に言えば彼と主人公だけの甘酸っぱい思い出、という風に印象付けられるよりも先に、不気味な印象のほうが先立ってしまったのだ。ホラーとしては構わないかもしれないが、信じていた園田保彦という土台を揺るがすには、あまりにも最初に割かれたページが少なすぎるし、その限られたページ数の中で印象に残らなかったのは文章力と構築力の不備かもしれない。端的に言えば園田保彦という人格が魅力的では無かったのだ。

    もう一つ、構成面の部分で、彼に対して接する(すなわち読み手視点となる)女の子たちが叙述トリックによってバラけたせいでそちらに焦点が絞り込まれ、肝心の双方のキャラクターの印象付けが薄いというのもあるかもしれない。私、というのを隠すためにあえて身体的な描写や個々人の印象を抑えたかもしれないのだが、それでも描写そのものは少なすぎるように感じた。あと叙述トリックの肝が苗字と名前というひどくオーソドックスな部分というのは頂けない。園田保彦という人物に対する「個々人の印象の差異」を文中に表していてくれたのならばまだ評価は違っていたかもしれない。唯一あった主体性のあるキャラも早々に犯人というのがバレているのでそれがマイナスポイントである。

    * ストーリーについて

    出発点の分からないタイムパラドックスはドラえもんの『あやうし、ライオン仮面』などで分かりやすく描かれている。本作はSF小説の物語の切り口をオチに持ってくることによって真逆に配置し、なおかつ『時をかける少女』を裏返しにしたいわば逆説的な小説である。いわば十五少年漂流記と蝿の王のような関係性にある。ミステリとしては手法より動機のほうに着目したホワイダニットであると言える。

    問題点として、園田保彦の能力が万能過ぎるというのが無理やり感があるのかもしれない。一応作中で記憶を消す装置というのは言及されているが、それをフル活用しているためデウスエクスマキナ的なややズルい印象を受ける。いっそ彼の一人称視点での回がもう少しあれば不満点は消えたかもしてない。動機中心といい、いささか作業めいた感じがするのが物語上の欠点であろう。

    あと細かい不満点として、野球部員の室井大介の犯罪があまり物語に関与していない。

    【疑問点2】ホラーを書く上でなぜ心理描写に読者との溝が生まれるのか?

    淡々とした文体もそうだが本作は特に恐怖や憎悪以外の感情が欠落しているのが最大の難点。ホラー描写に引っ張られ過ぎたとも言える。本作のラスボスであり、真犯人の雨宮に対するイジメ描写もホラーというジャンルにしては珍しく説明不足で、理由や描写もあっさりしたものになっている。

    ホラーにおける恐怖は普通の人間の日常を揺るがすことでもあるが、それと同時に落差というのも大事な点である。裏切りとはストーリーだけでなく人物の印象も裏切らなくてはいけない。

    * 結論

    SFとしてもホラーとしてもミステリとしても及第点だが、ストーリーの構成面のために様々な部分を犠牲にした印象がある。もうあと100ページ追加していれば厚みのある物語になったかもしれない。

  • 十年前のあの夏の甘酸っぱい想い出を「実現」するために、「私」は準備して待っていた。しかし「私」は現れない……そして、次第に改ざんされていく「今」何が「起きている」のか?
    法条遥、キター。ホラー文庫のデビュー作、「バイロケーション 」が面白かったので、次作が出ないか待っていたのですが、(一作置いて)まさか早川から出るとは!しかも学園SFの殻をかぶったミステリ。十年前の思い出の中の「彼女」の優越感と秘密のくすぐったさがものすごいっす。
    そして今、作家となった「私」の周囲の起きていることの謎がどんどんと回っていくさまがまた面白い。ぐるぐるまわって……そう着地するか。ふむー。ラストは好みじゃなかったけど、なかなか楽しみな作家さんです。

  • わたし、頭悪いのかなぁ。
    過去は変えられないなら、小説が書かれなかった未来があるわけないと思うんだけど……ん~わからない。

    と、もう一回読み直してみた。
    ちょっと、わかった。
    でも……たった5秒しかいられない上に、本人にも会えないのに、10年前の彼女、いろいろ知りすぎてない?
    小説を読んだだけでしょ?
    それだけで、クラスの全員に同じ物語を押しつけてるってわかるのかな。
    自分に送られたものが発信器になってることを知らないってことは、茂がネタばらしした内容を知らないわけで。
    ん~やっぱ、わからない。

  • 図書館で。
    バッドエンド版時をかける少女、と紹介があったけどなるほど~という感じ。まあでも未来から来た少年も興味本位だけで初恋泥棒するのはイカンよね、という教訓か。
    それにしても40何回同じことを続けるって…確かに大変そう。そして彼は今はいずこに?という感じですがまあ大人になって美人になった彼女と結婚したならそれはそれで良かったのではないでしょうか、と臭いものにフタをしてみる(笑)

  • 一九九二年の夏。私は未来から来たという転校生、園田保彦と出会う。それは二人だけの秘密、一夏の恋。しかし、夏の終わり、旧校舎が崩壊して彼は下敷きになってしまう。彼を助けるために十年後にタイムリープする私。そして二〇〇二年。十年前からタイムリープしてくるはずの私を私は待つ。しかし、私は現れなかった。歴史が変わっている……それは私たちの運命が、残酷な結末に向かって堕ちていくはじまりでもあった。

    タイムリープを題材にしたSFホラー。あまりの恐怖に全身の鳥肌が立つほど面白かったです。どこかで『バッドエンド版、時をかける少女』と紹介されていたみたいですが、まさにその通りでした。

    ただ「ドラえもんの道具」とも言える未来道具が濫用されていて少し雑多な感じが否めず、★4つ。

  • 途中メタSFかと思ったが、そうでもなく
    タイムパラドックスを扱った
    いやミス版時かけ。

  • ダークサイドな『時をかける少女』
    この後3冊の続編をもって真に完結するのだそうだ。
    さてその結末とはどんなものなのか。

  • SFは苦手ですが、面白くて一気読みしてしまった!
    流行りのやり直し系の新しい形。

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著者プロフィール

1982年、静岡県生まれ。『バイロケーション』で第17回日本ホラー小説大賞長編賞受賞。

「2010年 『バイロケーション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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