世界を救う処方箋: 「共感の経済学」が未来を創る

  • 早川書房
3.56
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092984

作品紹介・あらすじ

世界各地で貧困と戦ってきた経済学者ジェフリー・サックスが、今回、危機に瀕する祖国アメリカに目を向けた。増大する一方の貧富の格差、社会の分断、教育の劣化、巨額の財政赤字と政治腐敗、グローバリゼーションへの対応の遅れ、環境危機の深刻化…。悪化しつつある母国の病状を、途上国支援の現場で鍛えられた「臨床経済学」を応用して根本から診断、諸課題に対する抜本的な処方箋を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 長い。散漫で抽象的。具体策が抽象的。これを元になにか次のステップが打てるのかわからない。
    新書になったら読む。あと、他の人のレビューを読む。

  • 2013/02/28:読了
    こういう方向に進めると良いなぁと思った。

  • サックスが米国を斬る!
    ミンスも共和もどっちも批判してるけど、やはり共和よりか。
    財政赤字についても言及してたりだが、最後はやはりミレニアムに期待というパターン。

  • 日本経済新聞社エコノミストが選ぶ2012年経済図書ベスト10 第八位

  •  今までのサックスの作品とは異なり、本書はアメリカの社会経済に対する提言を記したものである(そういう意味で、タイトルはややずれている気がする)。現在のアメリカ社会経済について(サックスにしては珍しく)痛烈な非難を繰り広げており、それにとって代わる政策提言をおこなっている。内容としては、今年出版されたスティグリッツの本と結構近い。ついでに主張も結構近いと思う。
     特徴的だったのが、国民の意識調査を多用して、実はアメリカ社会経済の特徴である「自由」だとか「貧困」に対して結構悲観的に思っている人が多いことを示している点である。もっとも、統計の詳細について書かれていないので何とも言えない部分はあるが、この調査から導き出されるものは、我々が想像するアメリカ人の考えとはかなりかい離があるもので、実に興味深い。
     そして印象的だったのが、サックスによるリバタリアリズム批判である。しばしば、リバタリアリズムの代表格として、ハイエクやフリードマンがあげられるが、サックスはこの二人を擁護する。すなわち、ハイエクやフリードマンは自由主義というくくりに分類されるが、だからといってなんでもかんでも自由がいいと主張しているわけではなく、いわゆるリバタリアリズムとは一線を画すものである、というものである。具体的には、市場メカニズに関して、ハイエクとフリードマンは市場が頑健であるという前提で自由を主張しており、もし市場が頑健でなければ、フェアな競争ができるように政府が介入するなりして是正する必要があると述べているのである。そういう意味で、リバタリアリズムはハイエクやフリードマンの主張をしっかりと汲み取っておらず、単なる個人が責任を負わない自由ばかりを主張する思想だと批判している。
     本書の後半部分は、サックスらしさがよく出た内容だと思った。たとえば共感が社会に必要だとする主張がそれに該当する。ここで展開されている主張はごもっともであり、サックスほどの影響力のある人なら、そのようなことを社会に浸透されるパワーを持っていると思うから、教育の場に働きかけるなどしてぜひ実行してもらいたい。
     個人的に少し気になったのが、この「共感」というキーワードは哲学からの観点でいかに解釈されるべきなんだろう、ということである。そこのリンクをより気づいていけば、哲学的な叡智の借用も可能で、さらに説得力を増した頑健な主張が組み立てられるのではないかと感じた。

  •  題名を「アメリカを救う処方箋」に変えた方がいい。前半部分はまあまあ面白かったが、後半からは理想論や極論が出てきて、ほぼ読み飛ばした。就職問題は求職者にスキルがないことから生じているということが書かれており、それをマクロ経済政策で解決することは不可能だと書かれてりいるが、それなら、何でアメリカでは全産業で解雇される人々が存在するのかが説明できない。

     つまり、アメリカの不況は需要不足からもたらせている。これはポール・クルーグマンも指摘している。需要不足にはマクロ経済政策を用いた方が良いだろう。ジェフリー・サックスはマクロ経済学者であるので、彼からマクロ経済政策批判が出たことは印象的だった。

  • 何度となく、パットナムの「孤独なボーリング」が引用されているが、コミュニティにおける人の絆が薄くなってきたことが国の経済に影響すると指摘している。アメリカにおける分析の結果であるが、そのまま日本にも当てはまると思う。
    利害が異なる事業が共存共栄するには、その事業間に調整する機能が必要である。また、一方が不当な扱いを受けていれば、それをバランスすることも政府の役目であろう。しかし、企業間においてはかなり機能してきているが、会社と従業員という関係ではあまり機能していないのではないか。会社は儲かっているが、従業員の賃金は上がらないというのが恒常化している。
    著者はこれを商業主義の行き過ぎと考えており、どのくらい商業主義になっているかを指標で表すことを試みている。その結果では、テレビの視聴時間の長さと商業主義の行き過ぎとの間には相関があり、長時間テレビを視聴する国では、社会への信頼度が低くなり、国内の貧困度が高くなる傾向がある。
    ここで述べられる処方箋は、他の人を助けるために税品を払うこと。これが「共感の経済学」である。

    以下のページは、この本で引用されている行動の指針。
    http://journalistsresource.org/studies/society/culture/money-happy-spending-research/

  • 高齢化に関する直接的な記述はないけれど、ほとんどのことが日本にも当てはまるように思う。というか、アメリカを追ってきたから当然か。アメリカのコーポレートクラシーに支えられた民主主義、(強欲)資本主義と、北欧型社会民主主義との対比。かつて、日本も民主主義の名を借りた社会主義と揶揄された時代もあったような。著者の最後の提言はごもっともだが、その実現が民主党でも共和党でもない「第三の政党」や、ミレニアム世代に代表される若者に託される、というのはちょっと違和感。でもそれ以外に方法はなさそうだが。日本では、かつての「野党」に期待した結果かこれで、ミレニアム世代に代表される若者は、職に就けずに困りきっているのではないか。

  • P13
     アメリカの政治は公明正大でわかりやすい問題解決によって国家を軌道修正することができなくなっている。アメリカのエリート、たとえば大富豪、企業のトップ、わが同業者である学者たちのなかには、社会的な責任を放棄しているものが大勢いる。彼らは富と権力を追い求め、その他の人びとは取り残されてしまう。
     私たちは21世紀初頭にあるべき良い社会のイメージをあらためて思い描き、そこにたどりつくための建設的な方策を見つけだす必要がある。最も重要なのは、良き市民としてさまざまな行動によって、文明の対価を進んで支払うことだ。つまり、税金を応分に負担し、社会のニーズについてよく学び、次世代を守り育て、思いやりの心こそが社会を一つに結ぶということを忘れてはならない。

    P17
     本書の大部分は、アメリカの世帯の上位1%ほど占める富裕層の社会的責任について述べている。彼らは社会にたいする責任を回避してきた。およそ1億人のアメリカ国民が貧困かそれに近い状態で暮らしているのに、富裕層はその上にあぐらをかいているのである。
     富そのものを敵視しているわけではない。富裕層の多くはとてもクリエイティブで才能にあふれ、気前がよく、慈善活動にも熱心だ。私が敵視するのは貧困である。蔓延する貧困の上に大金持ちがいすわっている状況で、貧困の軽減や解消につながりそうな(教育、育児、職業訓練、インフラなどへの)公共投資を増やすということであれば、金持ちのための減税は不道徳であり、逆効果だ。

    目次
    第一部 大崩壊
     アメリカの経済危機を診断する
     失われた繁栄
     自由市場について誤った考え方
     公共目的から手を引く政府
     分裂した国家
     新しいグローバリゼーション
     八百長試合
     注意散漫な社会

    第二部 豊かさへの道
     共感に満ちた社会
     豊かさをとりもどす
     文明の対価
     効率的な行政のための七つのルール
     立ち上がるミレニアム世代

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