- Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152093127
感想・レビュー・書評
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クルーグマンの主張は「経済危機は財政出動で解決できる」というのもの。もともと自分には納得できない考え方だったので、批判的に、でももしかしたら逆に説得してもらえるかも、という気持ちで読んでみた。結果は、残念ながらやはり説得はしてもらえなかった。
そんな中でもなるほどと思わされたのが、「緊縮財政派は、怠惰に対しては罰が与えられるべき、という考えが根底にある」というもの。たしかに普段自分がニュースや新聞を見ていても、そういう考え方をしているところはあるかもしれない。あとは、「流動性の罠の下にあっては、クラウディングアウト(公共投資の増加は民間投資の現象に相殺される)は発生しない」「そもそも総消費がの不足分を公共投資でおぎなっているのであり、公共投資が民間消費を現象させるということはない」ということ。それは確かにそうかもしれない。
ただし、自分的に最も大きな疑問だった「財政赤字は?」については、「財政赤字なんてたいした問題じゃない、実際財政赤字が現実の問題になってることなんて無い」「インフレになればより問題は小さくなるし」ということ以上の答えは無かった。これらについて明確な反論は無いけど、自分たちの現在のために将来に何かしらの負担を負わせる根拠としては、あまりにいい加減すぎる主張に感じてしまうな。また、「失業が増え生産者のスキルが毀損し続けるとしたら、それこそ将来への負担でなくて何なのか」という話もあったけど、そもそも将来に負担を残さなければ成り立たない今の経済が間違っているんじゃないか、とも思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書の中心的な主張は、流動性の罠に陥った経済の下では、財政政策と金融政策(一時的でない継続的な金融緩和)の両方が必要だということである。これは、マクロ経済学の初歩中の初歩であるISーLMモデルの意味するところと基本的に一緒であり、特に目新しさはない。
ただ、「実際」の経済ではIS曲線やLM曲線がどのような形(傾き)で、外生変数の変化に対して、どれ位の幅でシフトするのか(シフトしないのか)が分からないのが厄介な所である。
結局、不況に対する万能薬はないので、(1)効果があると考えられる政策は全てやる、(2)効果が出るまでやり続ける、(3)政府が景気回復に対して強いコミットメントを持つ、という至極もっともな結論が示される。
本書の内容に対する反論余地はあまりないのだが、(1)〜(3)を行うことは簡単なようで難しい。 -
900 早稲田ブコフ
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クルーグマン教授の著書も読むのは久し振り。勿論、安倍総裁の返り咲きが読書のきっかけ。
本書の主旨は、このとんでもない不況にはケインズに立ち返り、財政出動を拡大し、金融政策を根気よく続けよということ。
金融工学やレバレッジと格付け会社に飾り立てられ、細かく刻んで世界にばらまかれた爆弾が破裂し、世界中の同時不況。何故かケインズなんて今更とか、財政の健全化が安心を生み、好況を齎すというヘンな論調が強いのだそうである。教授はOECDは緊縮信者だと批判するが本当?。
建設国債とか赤字国債という言葉に僕個人でも拒否反応があるが、国債なんて返済の必要は無く、せいぜい金利分を払って償還時期が来たら借換えれば良いのだそうである。つまり、経済の拡大と財政規模の伸長でいつの間にか相対的に小さなモノになってしまうという。実際、アメリカの国債は償還されていないのだそうだ。日本でもそうかな。ならば、東北の復興とインフラの補修はやらなければならない事に、しっかりカネを使うべきだよね。
アベノミックスという呼称にはレーガノミックスのように大失敗で終るという危惧が隠れていると思う。首相の経済ブレーンにも国債発行しても心配いらないよ、と情報発信して欲しいものだ。安心だって多少の経済効果があるかも知れないし。 -
みんなで読んで、さっさと不況を終わらせよう!
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現在は政府支出を増やすべきであり、減らすべきではない。民間セクターが経済を担って前進できるまで続けるべきだ。―現代のケインズともいうべき著書の主張は生き生きとし、その舌鋒は冴え渡る。今年の必読書であることは疑いない。(島中雄二・三菱UFJモルガンスタンレー証券参与・景気循環研究所長)
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日本経済新聞社エコノミストが選ぶ2012年経済図書ベスト10 第二位
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2008年のノーベル経済学賞受賞者である
クルーグマンの直近の著書。
政府は、アメリカの景気回復のために、
そして持続的成長を取り戻すために、
全力で金融緩和をし、財政政策を打て、と
主張する。
徹底して過去の事例やデータを重視して、
現在との類似を見出しながら、
提案に関してはとことん現実・希望志向なのが
読んでいて心地よい。
だが、それは別に耳障りがよいという意味では
なくて、もっともリアルに、優先的にやるべきだと
平易に理解できるからである。
著者のいうように、5年間も失業率が高い状態が
続けば、仕事のない若者は、本来ならば得られるはずであった
経験や知識を得られず、結果的に経済を回すことに
貢献しない層として一生を過ごす可能性が高い。
そうなれば、将来にわたって、その人個人にとっても
国家にとっても大損失であろう。
「将来の財政破たんリスクがあるから、今引き締めましょう」
というのは、正論のように聞こえるが、
その姿勢とやり口こそが、本当に将来の破綻を招くという
のが、真実であろう。
おもしろいのは、2000年に、バーナンキも、そして
クルーグマンも「日銀のデフレ対策は不十分」と言いながら、
実際に現在のアメリカも同じようなことになってしまったと
著者が認めているところ。
過去、僕の読みも甘かった、と素直に言う箇所が本書には
いろいろ出てくる。クルーグマン先生、かっこいいです。
R.ドーキンスの著書にも似たような話があったが、
その道の大家と呼ばれる人物になってしまうと、いろいろプライドとか
あって、自分の誤りを認めるのが難しくなりそうなもんだが、
そこで現実を目にした時に、「俺が間違ってたわ」とすぱっと
認められることは、ものすごくかっこいいし、信頼できるあり方だ。
さて、日本では安倍政権が誕生し、クルーグマンのいうような
リフレ政策と、インフレターゲット設定(まぁ2%だけどさ…)に向けて
動き出そうとしている。
ついに20年に及ぶ日本の停滞は終わるのか?
きっとクルーグマンも非常に気にしながら見つめているだろう。
僕も気になるし。もちろん(笑)。
アメリカだと高所得層と新自由主義者はケインズ主義を
亡き者にしようとしているのだが、
日本だと小泉首相(新自由主義的政策)の後継者であったはずの
安倍氏が、ケインズ主義に基づく財政出動を全力で訴え、
格差是正に積極的という旗印を掲げる左翼系政党が
それに否定的というところが、まったく真逆で大変興味深い。
要するに、日本の保守といっても、それはアメリカの保守と
全然前提が違っているということなのだろう。
「まっとう」な経済観念を掲げているのが、
日本では保守サイド主体であり、アメリカでは民主党主体ということだろうか。 -
ノーベル経済学者のクルーグマン教授いわく、デフレを脱却して景気回復するには、ケインズ的な財政出動で赤字国債を大量発行し、公共投資を行うしかない! 過去20年にわたってデフレの不景気が続き、ゼロ金利で金利操作もできない流動性の罠そのものにはまっている日本で、公共投資を減らして、事業仕分けで節約して、縮こまっていてどうする!
巨額の財政赤字が将来のツケになるかって?? 戦後アメリカが負った1250億ドルの債務は、当時のGDPの120%に達していたが、今では1250億ドルなどGDPの1%にすぎない。つまり、アメリカは赤字国債の借金を全く返さずに、15兆ドルの経済規模に成長した。要は、経済成長とインフレで、国の借金はチャラになったわけである。 日本だって、明治維新のときの赤字国債依存は80%もあったし、戦時中もGDP比200%近い債務を負っていた。国はその借金を返したことはないのである。
インフレになったら購買力は下がるけど、デフレで額面の賃金カットをされるより、よほどマシだ。毎年下がる給料で280円の牛丼食べるより、毎年少しづつでも昇給して、400円の牛丼食べたほうが、労働者にとっては幸せだろう。計算するとバカかもしれないが、お金の購買力がインフレで下がっても、会社や上司に文句を言う労働者はいない。
ギリシャやスペイン、イタリアは自国通貨を放棄してしまったため、通貨を切り下げることができないから、労働者の賃金カットでしか競争力を回復できない。ギリシャやスペインは自国の中央銀行を持たないから、デフォルトの恐れがあって、投資家がパニックになる。 日本は自国通貨であることが決定的に違う。アメリカではFRB、や日本では日銀(中央銀行)が赤字国債を買い続ければ、国家のデフォルトなど起こらない。 日本の国債は、国の債務がGDP比200%に達していても、10年もの国債の金利が1%にすぎないのは、デフォルトのリスクがないからだ。
日本がジンバブエみたいなハイパーインフレになるかって??? -
(2012/11/28読了)経済停滞を脱するには、もっとでっかく大胆に国債を発行して政府が経済を活性化しろという論。アメリカはともかく、日本はこれ以上国の借金増やしてる場合じゃないと思うけどな~(^^;