さっさと不況を終わらせろ

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093127

作品紹介・あらすじ

増税も支出削減も、いまやることじゃありません。
リーマンショック以降、いまだに好転の兆しを見せない世界経済。なぜ目下の増税や財政緊縮は愚策なのか?
ノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンが、ついに叩きつけた最終解答。

感想・レビュー・書評

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  • 著者はクルーグマン。
    「道草」で翻訳されているコラムと内容がかぶるものが多く目新しさはない。

    彼の主張は、「不況に陥ったら緊縮財政するな。政府は財政赤字を気にせずに拡張的な雇用創出政策をやれ。中央銀行はその支援をしろ。」

    需要不足にある状態では、中央政府が大規模な財政出動を行って、需要不足を埋めろってのは納得。批判の一つに出口戦略があるのだけど、結局不況を脱してから話すことだろって気がします。

    彼の主張の要は財政出動であるわけで、昨今の日銀金融緩和とは違います。

  • 2008年のリーマンショックによる大不況が時代背景となっている本で、
    積極的な財政・金融政策による不況の解決を主張している

  • タイトルの割には面白くなかったです。
    冗長すぎます。

    ただし、訳者解説は秀逸。
    ここだけ読めば十分です。
    さすが山形浩生。

  • 本書のポイントは3つある。
    ① デフレ期ないし流動性の罠に陥ったときは、最後の借り手である政府が借金をする事で需要を創出し、景気を下支えすることべきである。
    ② 政府の財政赤字、累積債務のもっともよい解消法は、経済成長(それにともなう物価上昇)により実質的な債務の削減である。
    ③累積債務は将来的には問題になるが、その時点で信用性が担保されているのであれば問題はない。

  • 今さらだけど読んでみた。

    不況の時に財政再建のためといって財政出動しないのは雇用をさらに減らす。
    金融緩和も思い切った程度でやらないと効果ない。
    そもそも不況のときに財政赤字気にしてバラマキやらなくたって不況が続いて失業が増えるなら損失は減らない。

    といったことの理解になった。

    (Kindle版)

  • もしこういう本が分かり易いって言うのなら、そういう人もあってもちろん構わないけれど、それって単純に言って数字が出てこない事、或いは長い説明をダラダラと読んで全ページ読めたことと同じなら、逆に分かりにくいって思う人もいるのではないかと思う。そういうところがまさに欧米人専門家の書いた一般書という印象。

  • 現在の日本にデフレから脱却し景気回復をもたらす必読の一冊!

  • 訳者解説要りませんから。

  • ★2014年2月19日読了『さっさと不況を終わらせろ』ポール・クルーグマン著 評価B

    2012年上期の著作なので、まだアベノミクスは世に登場していない。しかし、ノーベル経済学賞受賞のクルーグマン教授は、財政出動、金融政策など現在の政府が取りうる景気刺激策を取るべしと主張。まさにアベノミクスそのものの主張。
    財政赤字削減を優先すべしという世の主流経済学者の主張は、世界を不況の海に沈め続けるだけだと過去の事例をもって検証していく。
    現在のクルーグマン教授のアベノミクスに対する評価を読んでみたい気がする。

  • これが出てもう2年とか経ってて…やはり日本人としては日銀に触れる部分に興味をひかれた。

  • 2012年7月20日初版
    ケインズ「緊縮をすべきなのは好況時であって不況時ではない」

    働きたいのに職がない→自分の価値が低下したような気分→尊厳や自尊心に対する打撃
    →この苦しみを終わらせるための知識も手段も持っている。

    マグネトーの不具合→つまらない故障のせい

    子守り共同組合→あなたの支出=ぼくの収入
    FRB 2008年以降マネタリーベースを3倍→流動性の罠(ゼロ金利でも高い)
    金融政策では人々を訓練できない→×失業者=建設業のイメージ

    ハイマン・ミンスキー「金融不安定性仮説」→安定期=レバレッジ→リスクに不注意→経済不安定

    金融イノベーション→金融システムを崩壊寸前まで追い込んだ。
    銀行=金細工工業の副業→金庫の利用のため→引換証=通貨の一種
    1933年グラス・スティーガル法→銀行が手を出せるリスクの量を制限→融資○投機×
    クリントン大統領→廃止

    アメリカ議会が低所得世帯の持ち家を増やしたがったのが融資増大の元凶→×他の市場でも起こった。「サブプライムローンは政府のせい」→保守派(小さな政府主義)の思わく。

    なぜ1%,0.1%の富裕層が,他のみんなより収入が増えたのだろうか?→怒りの制約が緩和された。ゴシップであったものが研究対象。

    マクロ経済学 1940年代 大恐慌への知的な対応の一部,惨劇の再演を防ぐ。
    1936年 ケインズ「雇用,利子,お金の一般理論」
    1948年 ポール・サミュエルソン「経済学」

    オバマ大統領→「大胆ですばやい行動」→不十分

    ミンスキーの瞬間は,実は瞬間ではなかった。→ブッシュ時代 住宅バブル→シャドーバンキングの取り付け騒ぎ→2008年9月15日リーマンブラザーズ破たん

    オバマ アメリカ回復再投資法(ARRP)7870億ドル→建設は小さい部分。大部分は失業手当

    雇用から財政赤字に注目を移す根拠はない。債務危機→根拠なし。

    日本国債の金利上昇に賭けた投資家→大損 日本=自国通貨で借りている。
    他国通貨(外貨建て)→パニック攻撃に弱い。

    支出削減→長期的な財政状況改善×→失業,経済の停滞→コストが高くなる。

    インフレ急上昇は,経済が停滞している限り起こらない。

    ヨーロッパのエリート→単一通貨からの利益を宣伝,欠点に対する警告を黙殺=労働移住性の低さ

    ミルトン・フリードマン「変動為替相場擁護論」 変動為替=サマータイム→たった一つの価格の変動→簡単

    ヨーロッパの大妄想 スペイン→費用の引き下げ→デフレしかない。→高失業率が続く。

    国債の買い替え→自国通貨を持っていれば,中央銀行が政府債を買う→デフォルトは起こらない。

    緊縮論者→インフレの恐怖。→安心感を求めているだけ。→経済が強くなるまで発効するべきではない。
    S&Pの格付け「市場の宣告が下った」→市場の実際の反応はなし。→アメリカの借入費用はかえって下がった。

    2010年選挙 イギリス・キャメロン首相→緊縮,安心感についての懸念が根拠。→不景気

    雇用創出より財政赤字削減=緊縮論者→貸し手に有利→苦しみを永続させることにこだわる。

    2000年バーナンキ教授→日銀批判「自縄自縛の麻痺状態」→自分がFRBでは同じ。

    ポール・クルーグマンと不況の経済学
    1970年代「収穫逓増下の貿易理論」→何かの偶然で秋葉原=電気屋→客を集める→電気屋の集積→電気街へ
    流動性の罠→一時的な金融緩和は効かない→インフレターゲット論
    ×財政出動は将来に禍根を残す→財政出動しなければ,将来へのツケを残す。

  • 久しぶりに読んだ経済書。平易にくだけた形の文章も多く、読みやすい一冊だった。マクロ経済学の面白さを感じることができた。
    アメリカの経済政策が論点の中心であったが、ヨーロッパの不況のメカニズムに関する解説が分かりやすく印象に残った。

    次は、財政規律を厳格とせねばならないという立場の人の本も読んで、比較をしてみたいと思う。

  • もっと早くアベノクスのような政策を実施していればと思う。今、財政再建の為の消費税増税がほぼ確定しているが、もっと早くやれる事を、十分量、十分な期間実施するとしていれば、財政問題にしばらく目をつむってクルーグマンの言う正に「さっさと不況を終わらせる」事ができていたと思う。

  • ノーベル経済学賞受賞のホールクルーグマンが説く不況脱出の処方箋。財政政策、金融政策の重要性をわかりやすく解説。

  • 不況は決してどうしようもないものでなく、人の力によって十分に対処できるって本。
    なんか日本のマスコミが嫌いそうな政策を提言しているのだけど、その説得力はかなりあるように僕は感じたな。

    そして、今話題(?)のアベノミクスは、だいたい著者の主張をなぞるような政策のように僕には見える。
    はたしてこの壮大な社会実験は成功するのか。
    成功しなかったとき、著者はどのような言辞を弄するのか。そんなことを考えました。

    個人的には、著者の提唱する方策、そして現実のアベノミクスは、ぜひとも成功してほしい。
    経済成長ってバブルの成金の嫌な姿が思い出されがちだけど、底辺の人もそれなりにうるおって、自殺者とかの問題も結構軽減するからね。
    そんな感じで、少しでも「まし」な世界になりますように。

  • 緊縮財政・財政再建は今じゃないでしょうということ。ケインズ、ポストケインズのほうが個人の好みから言ってもしっくりくるって感じ。

  •  クルーグマンで山形訳となれば、おもしろさはテッパン。リーマンショック以来の世界の不景気は、終わらせることができる、そのための知識・武器もある、というのが筆者の主張。ケインズ以来の財政出動と金融緩和をちゃんとやれば大丈夫だと。
     じゃあ、なぜ不況は終わらないのか。規模が小さすぎる、小出しにしすぎる、果ては財政破綻を心配するあまり引き締めに走るようなまるきり逆の政策まで。ここらへんへの反論が読みどころ。
     まさに日本がアベノミックスというか黒田バズーカをきっかけとして経済的に浮上しつつあるいまが読みどきかも。クルーグマンの、日本の経済政策に対する評価も聞いてみたいところだ。

  • 2013/05/15:読了

  • ノーベル経済学賞受賞の著者による不況に対する提言、というのは生ぬるく、かなり強烈な論調で現在の経済施策に対する批判とこれからどうすべきかを記している一冊。

    ターゲットはアメリカとヨーロッパ。日本はちょっとしか触れられていない。だが、置かれている状況はほとんど同じだと思っていい。

    著者の理論は説得力があるのだが、著者による反語調の記述が、著者の主張を非常にわかりにくいものにしている。訳者解説でなんとなく分かった感じ。自分の知識不足も大きいんだろうな。

    そのため、評価は星3つ。

  • 今話題のアベノミクスの掲げる三本柱はクルーグマン氏の主張と重なる部分が多いですね。そういった意味では、日本は実践でこれを証明しようとしていることになるのかもしれません。

  • クルーグマンさんと安部さん対談とかないのかな。

  • ポール・クルーグマンが、なぜ金融緩和によるインフレが不況時に有効なのかを分かりやすく解説。

    デフレでは→個人の消費の減少→企業の収入の減少→設備投資ができなくなる→給料少なくなる→個人の消費の減少・・・
    という悪循環が生まれ、ここで誰かが資金を注入しなければいけません。
    簡単に言うと、これができるのは政府だけであって、政府が金融緩和政策を行うべきだと解いている。

    さらに、金融緩和政策によってデフレが解決しないのは、量や時間が足りなかったせいで、金融緩和そのものが無効なわけでもないと論じている。

    とにかく、この経済学の分かりにくい現象をわかりやすく平坦な言葉で、例を使って解説してくれるのでマクロ経済の勉強になります。

  • どちらか択一ではないが、「社会は分配であり、政治は平等を実現する」と思った事と、データをただしくみながら何かをかえる勇気をもつならば、ケインズ派の政策を考えた方がいいのは確かだと思ったー。

  • 米国の住宅バブルの崩壊(リーマンショック)以降ゼロ金利に達したのも関わらず、失業率が高いまま景気は低迷していた。これが流動性の罠だとして、ゼロ金利でもまだ高すぎると説き、金融緩和、インフレターゲテング、財政出動などを組み合わせた政策が必須と小さな経済圏の例や歴史などを背景として強く主張する。

    住宅バブル引き起こした金融業界に怒りの鉄槌を振り下ろし、失業を本人の問題ではなく政策の問題ととして捉えるところなど米国共和党と真逆の考え方であることも良く分かる。

    背景となる主張はとても共鳴するのだが、冗長かつエキセントリックな表現が多く主旨が分かり難いのが難点、その辺りは訳者解説がとても分かりやすく纏められているのでとても理解の助けになった。グルーグマンの主張を手っ取り早く理解したいなら訳者解説だけ読むのも良いかも知れない。

    本書を手本としたのがアベノミックスと言われていますが、グルーグマンの主張するようにさっさと不況を終わらせて欲しいですね。

  • 著者のポール・クルーグマン氏は2008年ノーベル経済学賞を受賞した経済学者であり、世界銀行やEC委員会の経済コンサルタントとして活躍されています。





    世界的に停滞が継続していることについて著者は、経済学者ケインズの言葉をかりてこう語っています。





    「回復も見せないが、完全な崩壊に明らかに向かうこともなく、通常以下の活動状態で慢性的に、ずいぶん長い期間とどまり続ける」





    この現状を打破するために、どうすればいいのかの答えを本書は明確に表しています。





    それは大きな財政出動と大胆な緩和的な金融政策を実施するということです。つまり、昔ながらのケインズ的な政策を行うということが本書の主張となっているようです。




    本書には、日本についての記述は登場しませんが、長期デフレ基調での不景気、ゼロ金利近い流動性の罠など多くの部分が日本の現状に当てはまります。





    著者の考えによると、日本も一過性でない思い切った財政出動と大規模な金融緩和によってこの状況を脱出できる、ということなのでしょうが、今の日本の現状をみると著者の主張とは反対の方向へ進んでいるような気がします。





    公共工事の減少、財政支出を減らす、消費税増税などがそうです。その流れを変えるのは容易なことではありませんが、本書を読んで一人でも多くの人が現状の各種政策の愚かさに気付いてくれればと語っています。

  • まさに、今の不況を説明するものなので、読むのが遅れると賞味期限が切れそう。
    98年の、it's baaaaack!!からあんまり主張がぶれてないんだよなぁ。公共事業に対するものを除いて。

    日本の不況はなかなか時代を先取りしてたんだね。。

  • End This Depression Now ! by Paul Krugman を読む:
    本稿の目的は、「さっさと、不況を終わらせろ!」(山形浩生訳:早川書房)なる著作の内容を追いながら、その論点を整理するモノではなくて、(読んで貰えれば、それ程、長くないので、わかりやすい)、飽くまでも、私が、読後、色々と抱いた感慨を述べる極めて私的な内容でしかありません。従い、ことの成否を確認なされたい方は、まずは、本を読まれることをお勧め致します。
    著名な経済学者は、どちらかと言えば、経済理論のみならず、ある種わかりにくさの中に、哲学的思考というか、倫理学的な観点からも、卓越した何かを内面に有しているように思えてならない。それは、アダム・スミスやマルクスやエンゲルスも、ケインズですらも、そのような系譜が感じられるのは何故なのであろうか?クルーグマンは、それに比べると、単純明快、バッタ、バッタと、論敵を快刀乱麻の如くに、なで切りにして、その意味では、ある種の明快さの裏に潜む誤解されるという「負の要素」も無きにしも非ずであることは、否めないであろう。それにも関わらず、アメリカの共和党・民主党、双方に対しても、歯に衣着せぬ物言いを展開するのは、実に小気味よいではないか。何か、モノに憑かれたような「闘う宣教師」のような形相すら文脈や行間には、感じられる。もっとも、写真で見る限り、その面構えも、タフな容貌ではないと、誰が言えようか?アメリカの学者であるから、むろん、アメリカの経済分析を主体に論じられているにも関わらず、その日本経済に対する関心度・洞察度、とりわけ、失われた20年にも及ぶデフレ、超低金利、株安、為替・超円高との闘い、決められない政治に起因する金融・財政政策のガダルカナル式出し惜しみ、漸次的対応の試行錯誤、等、自らの議論を展開する上からも、魁としての日本の課題を、十分、反面教師的に研究考察しつつ、その打開策を、端的に分かりやすく、問題点とともに説いている。その意味では、日本の経済学者、或いは、エコノミスト称する輩とは異なり、まずもって、タフなアメリカ社会の中で、それなりの地歩を築いてきただけのことはあって、その筋金は、柔そうではない。
    人間は、「茹で蛙」の譬えの如く、確かに、長い間、徐々に熱くなるお湯の中にいると、その熱さが分からなくなり、終いには、熱せられて、茹でられてしまうことになる。同様に、マイナス成長、超低金利、株安、超円高、デフレ、賃下げ、空洞化の中で、長い間いると、それが、あたかも、ひどく、複合的な魑魅魍魎の成せる技のような錯覚に陥ってしまいがちである。しかし、そうではないと、はっきり、バッサリ、クルーグマンは、車の「マグネトーの不具合」を引用して、切り捨ててしまう。そして、更に、具体的な方策も、明示する。政府による公共投資への拡大策、大規模な新しい財政刺激策、経済活性化の為の政府支出プログラム、インフレ・ターゲットの設定、需要の創出、成長戦略など、(流石に、地元、毛利の3本の矢の譬えは、出てこないが、、、、)何処かで、最近聞いたことのある政策が、紙面には踊る。何よりも、「知的な明晰さ」と「政治的な意思の欠如」が、必要と、彼が、アメリカよりも、自分の経済理論を、直ちに、実行に移して貰いたいのは、本当は、オババによる米国ではなくて、実は、日本にこそ、期待するところ大なのではないかとも思われるほどである。読みようによっては、そんな気がしてならない。もっとも、それは、私が、日本人の観点から、読んでいるせいなのであろうが、、、、、、、。その意味では、この著作は、今日の日本中、否、世界中に蔓延している心理的な焦燥感と絶望感、或いは、拡張的緊縮政策やセンセーショナルに語られるところの終末論的破局説への対極的な政策提言である。天安門事件の時に、あたかも、人民解放軍が、二局分裂化して、内戦に突入するかの如き分析を行った軍事評論家と称する者や、さっぱり、具体性に乏しい現状分析だけで、解決策を提示出来ないでいるTV経済評論家に較べると、(較べる事自体が、恐れ多いのも事実であるが、、、)流石に、ノーベル経済学賞受賞の学者は違うのだろうか。自分の理論に、責任を持っていそうである。もっとも、著作の端々には、その期待する所の政策の実行者に対して、「優柔不断」や「断固たる決意の欠如」を、嘆いている節が、結構、見られなくもない。
    今から、思えば、「金融ビッグバン」なるものは、一体、何だったのであろうかと、考えさせられる。決して、私達は、日経やその他の経済誌が、未来は、太陽系のビッグバンによる誕生に喩えて、素晴らしいバラ色であるかのような幻想を抱かせたことを、、、、忘れてはならない。預金銀行・証券会社・信託銀行・投資銀行の垣根という障害は、「誰」の為の「障害」だったのであろうか?結果としてのシャドー・バンキング・システムの肥大化に伴う「モラル・ハザード」を惹起させてしまったのは、金融の規制緩和が、元凶だったのであろうか?むしろ、規制の「緩和」よりも、規制の「更新」の方にこそ、本来、適宜、必要だったのではないかと、政策の失敗だったのであれば、それは、又、ある種、「人災によるもの」であろうが、、、、、。「今にして思えば」と言う言葉は、何とも、可笑しなものであるが、実際、度重なる法案の提出や規制緩和の施策が、今にして思えば、「とんでもない結果」をもたらそうとは、その時、どれ程の人間が、思い描いていたであろうか?「バーナンキFRB議長は、自らが大学教授であったこともあるかつてのバーナンキ教授の助言に、自ら、従うことが出来なかった」、という言葉は、実に、当を得て、しかも、妙である。何とも、学者の時と政策当事者になると、立場が多いに異なり、自説を実行できなくなるのであろう?人間とは、所詮、立場が、変われば、そんなものなのかも知れない。
    この本の中には、当然、上杉鷹山や、清貧の思想という記述は勿論ない。ただ、私が、面白いと思ったのは、「負債というものの考え方」についてであり、又、緊縮策と心理的な道徳概念・美徳の概念や倹約の奨励などに対する合理的な考え方である。とかく、日本では、時流に媚びへつらうのか、どうか分からぬが、倹約というと徳川幕府の三大改革が、いつも、教科書通りの鑑として、もてはやされて、果ては、「上杉鷹山」や「清貧の思想」なる何とも精神主義的な形而上学的な心構えを説いたり、倫理的・道徳の範疇の延長戦上での「精神論」へと、進みがちである。(上杉鷹山自身は、そうではないと思われるが、)経済的苦境=倹約・節約・貯蓄=出を制して、入を図る=道徳的倫理的精神論へと、完結して行く。その観点から見る限り、財政赤字削減と緊縮論者への痛烈な言葉は、「負債というものの考え方」に端的に、表されていよう。即ち、曰く、「負債というのは、自分たちが自分たちから借りているお金で、、、、、(略)、、、、、世界全体でみると、全体としての負債水準は総純資産価値には、全く影響しないことがわかる、誰かの負債は誰かの資産だからだ。」と、観点を変えれば、目からまさに、鱗である。純資産価値の水準が問題になるのは、純価値の配分が問題になるときだけであると、そう考えると、貧困と格差、賃金・失業、セイフティー・ネット、等の問題点も、景気循環や経済成長・停滞ともおおいに、関連づけられて議論されても良さそうであるが、もう少々、この辺の課題については、別の著作ででも、論じてもらいたいものである。やや消化不良である。
    EUの危機とは構造的に異なり、米国では、資産担保証券(ABS) 債務担保証券(CDO) クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)等の或いは、デリバティブ・通貨スワップとか、「金融工学」と称する合法的なイカサマ賭博のような手法が、住宅ローンや、各種金融取引に、リスクが分散、ちりばめられ見えにくくする形で、取り入れられ、更に、S&P等の格付け会社による意図的な信用ランクの優良高位付けとも相俟って、より厳しい規制・監視ではなく、逆に、より無制限な緩和へと、人為的、政策的にも、大失敗をもたらしてしまったのは、周知の事実である。もっとも、それらは、政治的な圧力にもよるところが、大である以上、反ウォール街デモ参加者の気持ちが分からないでもない。しかし、一方で、米国住宅ローンの不良債権化の問題に対して、「大規模な借り換えプログラム」の実施を強く要求するも、政治的な立場から、債権者最優先の道徳的な考え方、即ち、債務者(債権者・金持ちからすれば泥棒になる者)への追加的な優遇策=借り換えプログラムの実施は、まさに、泥棒に追銭という理屈から、政府は、倫理的な政治的圧力に屈してしまったと、逆に、もっと、大胆に、個人債務者を救済し、このプログラムを大胆に実施すべきであったと。
    「負債圧縮・倹約のパラドックス」と言う言葉は、なかなか、心理的に、面白い言葉である。心理的と云えば、「恐怖心と安心感」、「安心感の妖精信仰」、という言葉も、心理的な要因を考える上で、興味深いものである。確かに、センセーショナルに、デフォルト、デフォルト、とばかりに、喧伝し、金融システムの崩壊、信用緊縮、銀行の取り付け騒ぎ、国の崩壊と、まるで、ワイマール共和国末期のナチスが、台頭してきた時期を連想させるような議論は、一寸、一歩、立ち止まって、冷静に、考える必要があるかも知れない。インフレも、我々が、体験してきたのは、せいぜい、特殊な戦後の一時的なハイパ-・インフレや、成長期でのインフレ、或いは、経済不況下でのスタッグ・フレーションで、そうした心理的な「インフレへの恐怖」の概念や、やがて来るかも知れない漠然とした「経済的破局・恐慌への恐怖」というものが、心の片隅にあることも否定しきれないのも事実ではあるが、、、。エネルギー・コストや食品の数値を取り除いた所謂、「コア・インフレ指数」というのも、消費者物価指数・卸売物価指数・鉱工業生産指数等の統計数値の中で、正確に、再考されなければ、今日の統計数値というマジックに、又しても、何処かで、騙されてしまいそうである。
    ヨーロッパに、目を転じると、所謂ユーロ危機は、そもそも、通貨体制をしっかりと、構築することもなくて、只単に、政治的な大欧州という政治統合の幻想が、先走る結果となり、単一独自通貨を有さない国々と共通通貨€ユーロとの齟齬と矛盾とが、主たる原因で、これに加えて、「労働委移住性」が、異なる言語や多様な文化によって、阻まれることにより、低下し、偏ってしまったことも、確かに、一因であろう。その意味では、この著作の中では、詳しくは、触れられていないが、TPP交渉や多国間貿易ルール・通貨制度・移民政策等は、別の機会に、是非、論じて貰いたい課題である。
    最後に、日本人読者の観点からは、まさに、今、20年にも及ぶ失われた時間を、取り戻さなければならない時であり、しかも、世界で、初めて、超低金利、超円高レート、株安、デフレの負のスパイラルの中から、抜け出すモデルを構築できる最後のチャンスであろうし、震災復興も、橋やトンネルや高速道路のインフラの整備・修理・保全などは、まさに、千載一遇の公共投資のチャンスであり、過去の土建屋や既存既得権益団体へのばらまきとは、もはや、今日では、異なる状況である以上、どうやったら、官民挙げて、雇用と需要の創出を図ってゆけるのか、或いは、環境規制、例えば、自然再生可能エネルギー、温暖化対策、排気ガスの総量・特定物質規制など、様々な実験が、おおいに、試みられるチャンスである。更には、通貨制度、少なくとも、リーマン・ショック以前の1ドル=100円程度迄への回復とか、株価の回復や賃金・セイフティー・ネットの再回復も含めて、批判はどうであれ、与野党共に、足の引っ張り合いをすることなく、一日も早く、この長引く不況を脱しなければならないであろう。「陽は又、昇る」日が、近いことを祈りつつ、、、、、。「ミンスキーの瞬間」、「流動性の罠」、「拡張的緊縮論」、、、、、等、他にも、興味深いキーワードがあるので、読まれてみては、如何でしょうか?

  • リーマンショック以降の不況の原因と、その対策を追う。

    タイムリーにも白川総裁の交代劇があった日銀ですが、1990年以降の日本の長期低迷をモデルにあげ、緊縮財政こそが悪要因となっている点を指摘したのは、他ならぬ現FRB議長のバーナンキ氏であり、そのFRBをして、いま米国が臨む不況において緊縮にハマってどうするんじゃい、と。

    今こそケインズの唱えた雇用創出を一つひとつ実現することこそ、健全な不況からの脱出と言えるのに、何がそれをしつこく阻害しつづけるのか。それは極一部の既得利権保持者がリスクを摂らないこと起因してると鮮やかに暴いて見せてくれます。

    そんなのつまんないじゃんねぇ、と読んだみんなを巻き込もうとする面白さが感じられる一冊でした。

  • ☆☆

  • 残念ながら刺激がなかった。

    この理論は正しいのだと思います。

    ただ、三橋貴明さんの本で読んだ話ばかりだったのと、欧米の話が多いのであまり面白くなかった。

    もう少ししたら安倍さんの財政・金融政策がこの理論の証明をしてくれるでしょう。

    三橋さんの本を読んでない人にはオススメ。

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著者プロフィール

NY市立大学教授。2008年、ノーベル経済学賞受賞。
イェール大学で学士号を、MITで博士号を取得。イェール大学、スタンフォード大学、MITで教鞭をとったのち、プリンストン大学経済学部教授。1982~83年には1年間大統領経済諮問委員会(CEA)のスタッフも務めた。主な研究分野は国際貿易。収穫逓増と不完全競争に焦点を置いた「新しい貿易理論」の創始者の1人である。国際金融、特に通貨危機の問題にも取り組む。1991年、アメリカ経済学会のジョンベイツクラーク賞受賞。日本語への翻訳書多数。

「2019年 『未完の資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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