機龍警察 暗黒市場 (ミステリ・ワールド)

著者 :
  • 早川書房
4.25
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本棚登録 : 512
レビュー : 87
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093219

作品紹介・あらすじ

警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ元警部は、旧知のロシアン・マフィアと組んで武器密売に手を染めた。一方、市場に流出した新型機甲兵装が"龍機兵(ドラグーン)"の同型機ではないかとの疑念を抱く沖津特捜部長は、ブラックマーケット壊滅作戦に着手した-日本とロシア、二つの国をつなぐ警察官の秘められた絆。リアルにしてスペクタクルな"至近未来"警察小説、世界水準を宣言する白熱と興奮の第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ3作目。
    今作はユーリ・オズノフが主人公です。
    突入班の三人の中では最もメンタルも技術も未熟にみえるユーリですが、泥臭く捨て身で戦う姿が良いです。まさに「痩せ犬」。

    冒頭からいきなりユーリが辞職しているという展開になっていて何事?と思うわけですが、今作は作戦が始まる1部、ユーリの過去が明かされる2部、そして現在の作戦も過去の真相もすべてに決着が着く3部と分かりやすい構成でした。
    故に展開も結末も意外性はないのですが、囮捜査の緊張感と駆け引きや、機甲兵装による戦闘のおもしろさもあって全く飽きることはありません。とにかくボロボロになっているユーリが可哀想。そして同時にひたむきさが可愛らしくて、ユーリ頑張れ!の気持ちで一気読みでした。

    姿俊之とライザは全く違う世界の人という感じがしますが、ユーリはどこか甘さがあって親近感があります。
    天才肌の2人とは違い、些細なしぐさや言葉からの堅実な推理は良かったですし、脆そうな精神は人間臭いです。
    ご都合主義な感じもするラストですが、清々しさがあり気持ちよく終えました。
    しかしこのシリーズはやっと分かり合えた!という人物が次々死んでしまいます。この先大丈夫なんでしょうか。

    本作でようやくプロローグが終わったという感じです。次作から本格的に「敵」との戦いがはじまるのかもしれません。沖津さんの過去も気になるところです。

  • シリーズ3作目だが、読了した中では最高の出来。うん、ムッサオモロいぞ。

    警視庁特務部隊の龍騎兵パイロットが順番に主人公を張ってきて、今回も想定通りの元ロシア警察官ユーリ・オズノフが主人公。しかも冒頭シーンでいきなり日本警視庁との契約を解除され、ロシアンマフィア武器密売チームの一員となるべく登場する。

    「これ、オトリ捜査かな」という予想はものの見事にあっけなく当たるのだが(笑)、じゃぁ、そっから先も予想通りに展開する王道パターンかというと全くそうではなく、想像を絶する展開。ユーリの過去遍歴と現在日本での武器密売シーンが壮絶さを極めた筆致でグイグイ描かれていく。

    ドン・ウィンズロウを彷彿させるノアール展開、ボトムズもびっくりなバトリングシーン、官僚も政治家もヤクザもぐったくたに煮込まれたような愛憎相食む人間模様…。手に汗握るどころではない、腋からも額からも汗かきまくりで、心拍数も上がるし、これ高血圧患者に読ませたら危ないんちゃうかと思わせるくらいの、怒涛の展開。

    読みだしたのがこんなに遅くてごめんなさい。でも期間をおかずにこのシリーズを次々読める幸せかみしめてます。4作目はもうパイロットでない主人公なんだろうが、それはそれで非常に楽しみである。

  • 龍機兵「バーゲスト」搭乗員、ユーリ・オズノフ警部は突然警視庁と契約を解除。旧知のロシアン・マフィアと手を結び武器密売に手を染める。
    彼らのもとには、国境なき密売組織による暗黒市場ルイナクへの招待状が届いていた――。

    すべてが裏切りと不実に満ちている。信じられるものは何もない。
    ロシアに生まれ、警察官の息子として育ったユーリ。彼を警官として育て、裏切り、すべてを奪ったもの。
    それはロシアという国が抱える宿痾と呪い。この国で果てしなく繰り返される同じ悲劇が、かつての若い彼をも飲み込んだ。
    モスクワからハバロフスク、マカオ、大連、台湾、そして日本にまでユーリ押し流してきた壮絶な逃亡と戦いの運命。
    彼を蝕み、縛り、しかし今まで生かしてきた、たくさんのものたち――もう二度と会うことのない両親、恋人、上司、仲間、そして暗黒街に潜む影・少年時代の忘れ得ぬ友人たちの記憶。
    誇り高き痩せ犬たちの信念が、暗黒の市の罪と罰を明らかにしてゆく。

    「まっすぐに生きろよ。何があってもまっすぐにだ」

    特捜部長沖津旬一郎による、ブラックマーケット壊滅作戦が展開されるシリーズ3作目。
    1作目から垣間見えていた、ユーリが警察という組織に抱く複雑な感情の正体と並行して作戦の模様が描かれる。

    月村さんの描く男たちは設定やセリフがクサいなあ、でもカッコいいなあ。と思いながら、いつも夢中になって読んでしまう。至近未来を舞台にした、世界観はハードなパトレイバーという風なアニメテイストなのに、人間ドラマは往年の香港ノワール映画を彷彿とさせる世界観。「誇り高き痩せ犬たちの挽歌」という感じ。


  • 「ロシアの闇は深い」
    第三作目は“魔犬”「バーゲスト」の搭乗員であるオズノフが主役。元刑事でもある彼がいきなり警察を辞めさせらたところから話は始まる。そんな彼が頼ったのはかつての友であり現在はロシアン・マフィアであるゾロトフ。彼との因縁をはじめ、オズノフが日本にたどり着くまでの数奇な運命、彼がなぜ刑事であることにこだわるのかが描かれている。そして彼は過去と対峙しなければならない苦境に立たされる。今作もラストまで緊張感が途切れないストーリー展開は圧巻。最後は少々お涙ちょうだいな感じがするが今後の展開を見据えれば仕方ないか。作者がロシアの警察に関する文献が日本では見つからないと知り(トム・ロブ・スミスが最高の教科書だったのこと)苦労して書いたとされるロシア警察の世界はトム・ロブ・スミスに負けないくらい良く出来ている。誰が敵だか分からないこの戦いの中で、純粋過ぎるオズノフは少々役不足な気がしていたが、今作を読んでやはり特捜部には必要な人材だと思わされた。今後も姿警部と凸凹コンビを演じて欲しいものだ。

  • 機龍警察シリーズ、3作目。

    今回は龍機兵搭乗要員の1人、ユーリ・オズノフにクローズアップ。元ロシア警察の捜査員であり、無実の殺人容疑を掛けられていたユーリ。前回のライザも同様であったが、あまりに壮絶な過去に言葉を失うほど圧倒された。その壮絶さに対し、ストーリー自体はSFなれど、ロシアの現状を上手く填め込んであって、単なる絵空事と感じさせないのがこのシリーズの凄いところ。また、3人の龍機兵搭乗要員の中ではユーリが一番人間的な弱さを持っているキャラであるだけに、ライザ以上に感情移入もしやすく、展開に胸を打った。今のところ、シリーズの中では今作が私の一番。

  • シリーズ第3弾、もはや安定的圧倒的エンターテイメントの傑作、面白いのなんのって…賞賛の言葉ナシ、生涯ベスト10に入賞決定。以下意味もないが自分の記録としてツラツラと…完全なるネタバレ含みますのでご注意ください!


    過去の作品においてSFとミステリ的本格警察小説の融合に成功しているシリーズである。今作でメインを張るのは機龍兵搭乗員の一人、ユーリ・オズノフ警部である。

    小説のジャンルとして「サスペンス」なるものがあり、キリキリと胃の痛むような緊張感を読者に与えることが至上なのだが、その舞台としてタイムリミット(いつまでになんとかしないと誰かが死ぬetc)やら、自然災害(暴風圏の航海やら、大寒波の中の雪山遭難etc)やら様々ある中で、キリキリさ加減半端ナイのが潜入、囮捜査である、今回ユーリはその渦中のど真ん中で活躍することになる。

    元警官の彼がなぜ機龍兵の搭乗員にまで身をやつしたか?その過去がフラッシュバック的に綴られるのだが、それも囮捜査に端を発した裏切りによるものだったとは!物語は過去と現在のユーリの潜入捜査を交互に描いていく。この対比と、ユーリの苦悩内面の描写に読者は圧倒される、なんてドMなんだよ!ユーリ!

    そもそも3人の搭乗員のキャラ付けは当初からハッキリしていたと思うし、自分的にもその色合いは判別容易だった。ユーリは「苦悩」。最も人間的で、だからこそ悩み、だからこそ強くなれる素養を感じていたのだが、見事にユーリ・オズノフ警部の生き様を反映させる物語構成であり、月村氏のリーダビリティのなんと凄まじいことか!(ちなみに姿は「野生」ライザは「虚無」でした)

    かくてクライマックスにおけるユーリの戦い、そして敵味方が反転するミステリ的結実と、政治的駆け引きと、混然一体となって雪崩れ込んでいくのだが途中で止めることなどできない、ただただ読むしかない面白さなのだ。

    いまだシリーズとしての終末は見えてこない、次作「未亡旅団」も刊行された。いったいどうなるんだ?このシリーズ。しかしもう疑いの余地などなく絶対的エンタメの傑作であることをファンは知っていることだろう。


    月村氏は刑事ドラマ見てたんだろうな~ユーリのロシア民警時代って「太陽にほえろ」とか「特捜最前線」とか、刑事のキャラ立ちとか、そのままでこれだけで別の物語できそうだし。「痩せ犬の7か条」には痺れた。

  • なかなか文庫にならないので図書館で借りました。
    機龍警察第3弾!今回は元ロシア警察ユーリ・オズノフ警部のお話。

    契約を破棄して警視庁特捜部を解雇されたユーリは、かつてロシアでの幼馴染、今はロシアンマフィアの大物になっているゾロトフと手を組む。
    がしかしそれは、武器密売市場を摘発するための囮だった。

    父親が警官で、貧しいが幸せだったユーリの子供時代。一方、ならず者の世界からも追放されたどん底の父親を持つゾロトフ。
    複雑に絡まりあった二人の因縁は学校卒業とともに消えたかに見えたが、警官になったユーリが無実の罪に陥れられたときに、再び結び合わされる。

    何がいいってアナタ!金髪にアイスブルーの氷の瞳、表情の少ないユーリに対して、黒い豊かな長髪、黒曜石の瞳、甘い目元のゾロトフですよ!
    ユーリの通り名が「灯火(アガニョーク)」でゾロトフは「影(ティエーニ)」ですよ!
    しかもゾロトフは全身に刺青で、ユーリの左掌には彼に無理やり入れさせられた黒犬の刺青。

    萌え!

    囮捜査の過程で、ユーリが過去に陥れられた事件の真相も徐々に明らかになっていきます。
    自分を裏切って陥れたと思っていた人達が、実は自分を守るために泥水を飲んでいたと知り、自分を暗黒街に引き込んだ相手が、本当は自分を庇護していたと知ったユーリ。
    全世界に裏切られたと思っていたけれど、本当は、リーリヤもダムチェンコも九十一分署の皆も、黄も、そしてゾロトフも。皆がユーリを守っていたんです。
    なんつーか、腐女子的に言うとまさに総ウケ……。

    囮がばれて、旧型の機甲兵で最新型とデスマッチをすることになったユーリ。周囲が最新型の勝利に賭ける中、ゾロトフはユーリの勝ちに賭けます。
    二回戦ではクヮン(中国黒社会の幹部。このヒトもお気に入り!)も何気にユーリの勝ちに賭けてきます。

    萌え!!

    そして気力体力ともに限界となりながらも、ユーリは自分の分身、龍機兵のバーゲストに乗り込み、ゾロトフと対決します。
    バーゲストの龍骨とユーリの脊髄に埋め込まれた龍髭が連動する!

    萌え!!!

    萌えはまぁこの辺にしておいて。

    最初からふっきれている姿さんは別として、ライザとユーリは機龍警察で「再生」していきます。
    ユーリの性格・容姿もお話の流れも、ありがちな設定・展開といえばありがちですが、いいの!龍機兵もユーリもツボだから!

    3人のお話がひと通り終わって、これからが「機龍警察」の本ストーリーになっていく予感です。
    あああ動く龍機兵をアニメか実写で見たい……!

  •  近未来の警察を舞台にした機龍警察シリーズの第三作。
     前作はライザ・ラードナーが主人公だったが、本作はユーリ・オズノフが主人公となり、世界中の武器密売商人との駆け引きがからんでくる。また、オズノフの少年時代から龍機兵パイロットになるまでのエピソードや、龍機兵同士の戦闘シーン、捜査を妨害する目に見えない〈敵〉の不気味さなどが、前作同様丹念に書かれており、最高水準の娯楽小説となっている。
     本シリーズも三作目になったが、安心して読めるシリーズとなっており、次作が待ち遠しい。

  • 燃えた!これは燃えた!!ユーリとダムチェンコさんの絆が熱い!敵役のティエーニことゾロトフも最後まで最強なダークヒーローでカッコいいし、クライマックスまでの盛り上がりがもうたまらん…しかも舞台は宮城県閖上というリアリティ溢れるロケーション!沖津さんの静かな力強さも相変わらずぐっときます。ユーリの命を救った鈴石警部補の頑張りにも泣けました!

  • 2019.2.15

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著者プロフィール

1963年生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年「機龍警察」で小説家デビュー。2012年「機龍警察 自爆条項」で第33回日本SF大賞を受賞。2013年「機龍警察 暗黒市場」で第34回吉川英治文学新人賞を受賞。2015年「コルトM1851残月」で第17回大藪春彦賞を受賞。2015年「土漠の花」で第68回日本推理作家協会賞を受賞。

「2018年 『水戸黄門 天下の副編集長』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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