機龍警察 暗黒市場 (ミステリ・ワールド)

著者 :
  • 早川書房
4.22
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本棚登録 : 702
感想 : 111
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093219

作品紹介・あらすじ

警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ元警部は、旧知のロシアン・マフィアと組んで武器密売に手を染めた。一方、市場に流出した新型機甲兵装が"龍機兵(ドラグーン)"の同型機ではないかとの疑念を抱く沖津特捜部長は、ブラックマーケット壊滅作戦に着手した-日本とロシア、二つの国をつなぐ警察官の秘められた絆。リアルにしてスペクタクルな"至近未来"警察小説、世界水準を宣言する白熱と興奮の第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • 毎日暑い日が続きますなぁー

    もうやんなっちゃう!
    シフト制の仕事なので平日休みになることが多く節約も兼ねて日中は図書館を避暑地として活用しているんですが本を読むペースも落ちてまして
    今年はずっと日に1冊だったのがこのところはそこまで読めていません

    それから本の題名を使ったあの下らないことこの上ないがごく一部に熱狂的ファンがいる駄洒落もぜんぜん思い浮かびません
    いつもは仕事中に考えているんですが(おい)こう暑くてはまさに昼行灯状態でもや〜っとして思考が定まりませんw

    『気候灼熱 行灯思考』なんちて

    さて『機龍警察 暗黒市場』です

    シリーズ3作目の今回はもちろん3機の龍騎兵の搭乗要員でもある3人の傭兵の最後のひとり「〈魔犬〉バーゲスト」を駆るロシアの元警察官ユーリ・オズノフ警部のメイン回です(待ってました!)

    本作を読み終えた時にある声が聞こえました
    それは作者である月村了衛さんの声だったのか、自分の内なる声だったのか
    シリーズ3作目までを順番に読み終えた方なら必ず聞こえる声です

    「で、3人の中では誰が1番好きなの?」

    もうそうなるでしょうよ!どうしたって!

    自分ですか?
    自分はもう第一印象から決めてました!もちろん今作の主役ユーリ・オズノブですよ!
    「弱さ」を持ってる人なんよ
    そして「迷い」の中にいる人なんよ
    3人の中で1番人間らしいともいえる人でなんとか正義を実行しようともがくけど果たして自分にその資格があるのかと葛藤し続けているような1巻と2巻
    そして今回はその葛藤の原因となるユーリの過去が語られるわけです!

    そして前作ライザの回で自分は「対比」がテーマだったのでは?とレビューに書きましたが今回は作中にもあるように「相似」がテーマだったような気がしました
    二組のロシア人の幼馴染もそうですが、この「相似」は作中いたるところで語られていたように思います
    例えば物語の後半に犯人を追ってロシアから来日するロシアの警察官に特捜班の捜査官たちが自分たちと同じ匂いを感じ共感するところとかね
    腐敗と陰謀にまみれる各国の官僚組織であったりね

    それにしても今作はかっこいいのよ!
    もうなにもかもかっこいいの!

    特にお気に入りはなんといっても
    ユーリが警察官となり九十一分署捜査分隊第一班に配属されたところ
    ここはユーリの父親の薫陶を受けた刑事ダムチェンコが班長をつとめ腐敗をよしとせずに民衆によりそう強い信念を持った刑事たち6人の集まりで通称「最も痩せた犬たち」
    この人たちがユーリのことを「息子であり弟」と認め育てあげるんだけどその教えに“痩せ犬の七ヶ条というのがあって先輩たちがユーリに一つずつ教えていくんです
    班長ダムチェンコが「一つ、目と耳と鼻を決して塞ぐな」
    老刑事ブリコジンが「一つ、尻尾は決して巻くな」
    強面の逮捕術の達人ジャギレフが「一つ、相手の目を惹かず、相手から目を逸らすな」
    2歳上の身近な目標であり相棒レスニクが「一つ、凍ったヴォルガ川より冷静になれ」
    ゴリラのような外見で力と優しさを併せ持つボゴラスが「一つ、自分自身を信じろ」
    アメリカ映画が大好きで高い分析力を持つカシーニンが「一つ、見方を変えて違う角度から見ろ」

    あれ?七ヶ条に先輩刑事が6人?
    そうです最後の一つは自分で見つけるのです!

    そしてもちろんユーリは物語の終盤最後の一つに気付くんだけどこれがまたすんばらしいのよ!
    ぜひとも自分の目で確かめてほしい!
    最高に面白いんだから!

    • ひまわりめろんさん
      まっつん
      ちわっ!

      いやー面白かったねー
      まっつんは姿推しかー
      んー姿もいいよねー
      まだまだ謎がありそうだし
      俺も姿とコーヒー飲みてー

      ...
      まっつん
      ちわっ!

      いやー面白かったねー
      まっつんは姿推しかー
      んー姿もいいよねー
      まだまだ謎がありそうだし
      俺も姿とコーヒー飲みてー

      機龍警察は本当に各キャラクターが魅力的で困る
      俺のユーリ推しもあくまで現時点での暫定なのでユーリにも慢心してほしくないわけ(誰の何目線やねん)

      まっつんのレビューきっかけで機龍警察にドハマり中の俺こそありがとだわさ!
      2022/07/22
    • 松子さん
      ぜんぜん、本と関係ないんだけどねっ
      コメントにひまさんが
      『おれ』って書いてるの見て思い出したんだけど、

      最初、ひまさんのこと女性だと思っ...
      ぜんぜん、本と関係ないんだけどねっ
      コメントにひまさんが
      『おれ』って書いてるの見て思い出したんだけど、

      最初、ひまさんのこと女性だと思ってた…。 
      はい、すみません…⊂((・⊥・))⊃

      こちらこそ、ありがとん♪
      2022/07/22
    • ひまわりめろんさん
      えええー

      女性要素ないやん…
      えええー

      女性要素ないやん…
      2022/07/23
  • 〈痩せ犬の七ヶ条〉
    班長が言ったーーー「一つ、目と耳と鼻を決して塞ぐな」。
    プリゴジンが言ったーーー「一つ、尻尾は決して巻くな」。
    ジャギレフが言ったーーー「一つ、相手の目を惹かず、相手から目を逸らすな」。
    レスニクが言ったーーー「一つ、凍ったヴォルガ川より冷静になれ」。
    ボゴラスが言ったーーー「一つ、自分自身を信じろ」。
    カシーニンが言ったーーー「一つ、見方を変えて違う角度から見ろ」。
    そして父が言ったーーー「一つ、まっすぐに生きろ」。

  • 今回はユーリの話でした。今回も読みごたえがありおもしろかったです。ユーリがバーゲストに乗り込んだ場面、かっこよかった〜。良かった!次も楽しみです。

  • シリーズ3作目。
    今作はユーリ・オズノフが主人公です。
    突入班の三人の中では最もメンタルも技術も未熟にみえるユーリですが、泥臭く捨て身で戦う姿が良いです。まさに「痩せ犬」。

    冒頭からいきなりユーリが辞職しているという展開になっていて何事?と思うわけですが、今作は作戦が始まる1部、ユーリの過去が明かされる2部、そして現在の作戦も過去の真相もすべてに決着が着く3部と分かりやすい構成でした。
    故に展開も結末も意外性はないのですが、囮捜査の緊張感と駆け引きや、機甲兵装による戦闘のおもしろさもあって全く飽きることはありません。とにかくボロボロになっているユーリが可哀想。そして同時にひたむきさが可愛らしくて、ユーリ頑張れ!の気持ちで一気読みでした。

    姿俊之とライザは全く違う世界の人という感じがしますが、ユーリはどこか甘さがあって親近感があります。
    天才肌の2人とは違い、些細なしぐさや言葉からの堅実な推理は良かったですし、脆そうな精神は人間臭いです。
    ご都合主義な感じもするラストですが、清々しさがあり気持ちよく終えました。
    しかしこのシリーズはやっと分かり合えた!という人物が次々死んでしまいます。この先大丈夫なんでしょうか。

    本作でようやくプロローグが終わったという感じです。次作から本格的に「敵」との戦いがはじまるのかもしれません。沖津さんの過去も気になるところです。

  • ユーリの哀愁の理由が‼️ラストが圧巻


  • 「ロシアの闇は深い」
    第三作目は“魔犬”「バーゲスト」の搭乗員であるオズノフが主役。元刑事でもある彼がいきなり警察を辞めさせらたところから話は始まる。そんな彼が頼ったのはかつての友であり現在はロシアン・マフィアであるゾロトフ。彼との因縁をはじめ、オズノフが日本にたどり着くまでの数奇な運命、彼がなぜ刑事であることにこだわるのかが描かれている。そして彼は過去と対峙しなければならない苦境に立たされる。今作もラストまで緊張感が途切れないストーリー展開は圧巻。最後は少々お涙ちょうだいな感じがするが今後の展開を見据えれば仕方ないか。作者がロシアの警察に関する文献が日本では見つからないと知り(トム・ロブ・スミスが最高の教科書だったのこと)苦労して書いたとされるロシア警察の世界はトム・ロブ・スミスに負けないくらい良く出来ている。誰が敵だか分からないこの戦いの中で、純粋過ぎるオズノフは少々役不足な気がしていたが、今作を読んでやはり特捜部には必要な人材だと思わされた。今後も姿警部と凸凹コンビを演じて欲しいものだ。

  • シリーズ第3弾、もはや安定的圧倒的エンターテイメントの傑作、面白いのなんのって…賞賛の言葉ナシ、生涯ベスト10に入賞決定。以下意味もないが自分の記録としてツラツラと…完全なるネタバレ含みますのでご注意ください!


    過去の作品においてSFとミステリ的本格警察小説の融合に成功しているシリーズである。今作でメインを張るのは機龍兵搭乗員の一人、ユーリ・オズノフ警部である。

    小説のジャンルとして「サスペンス」なるものがあり、キリキリと胃の痛むような緊張感を読者に与えることが至上なのだが、その舞台としてタイムリミット(いつまでになんとかしないと誰かが死ぬetc)やら、自然災害(暴風圏の航海やら、大寒波の中の雪山遭難etc)やら様々ある中で、キリキリさ加減半端ナイのが潜入、囮捜査である、今回ユーリはその渦中のど真ん中で活躍することになる。

    元警官の彼がなぜ機龍兵の搭乗員にまで身をやつしたか?その過去がフラッシュバック的に綴られるのだが、それも囮捜査に端を発した裏切りによるものだったとは!物語は過去と現在のユーリの潜入捜査を交互に描いていく。この対比と、ユーリの苦悩内面の描写に読者は圧倒される、なんてドMなんだよ!ユーリ!

    そもそも3人の搭乗員のキャラ付けは当初からハッキリしていたと思うし、自分的にもその色合いは判別容易だった。ユーリは「苦悩」。最も人間的で、だからこそ悩み、だからこそ強くなれる素養を感じていたのだが、見事にユーリ・オズノフ警部の生き様を反映させる物語構成であり、月村氏のリーダビリティのなんと凄まじいことか!(ちなみに姿は「野生」ライザは「虚無」でした)

    かくてクライマックスにおけるユーリの戦い、そして敵味方が反転するミステリ的結実と、政治的駆け引きと、混然一体となって雪崩れ込んでいくのだが途中で止めることなどできない、ただただ読むしかない面白さなのだ。

    いまだシリーズとしての終末は見えてこない、次作「未亡旅団」も刊行された。いったいどうなるんだ?このシリーズ。しかしもう疑いの余地などなく絶対的エンタメの傑作であることをファンは知っていることだろう。


    月村氏は刑事ドラマ見てたんだろうな~ユーリのロシア民警時代って「太陽にほえろ」とか「特捜最前線」とか、刑事のキャラ立ちとか、そのままでこれだけで別の物語できそうだし。「痩せ犬の7か条」には痺れた。

  • オーディブルで。ユーリオズノフ警部が主役。
    ユーリは、正義感の塊のような警官の父の血を
    そのまま継いだ子供。まっすぐに生きるクラスの人気者。その対局=影というべき落ちぶれたロシアンマフィアの父の子であるゾロトフとの少年時代の友情。落ちぶれた父に日々酷い目に合わせれながらも、父と楽しそうに過ごすゾロトフを目撃するユーリ。ユーリの父が犯罪を犯したゾロトフの父を知らずに射殺してしまった事件。そして、10数年ぶりに
    警官になったユーリと、マフィアになったゾロトフとの
    再会。何かすごく切ない気持ちになった。

    ユーリのモスクワ民警91分署時代の、素晴らしい仲間や上司.恋人との幸せな時代からの暗黒への急展開。
    まさかの仲間全員が裏切り。本当にロシアは、怖い。国家権力は怖い。
    やせた犬の7か条が、かっこいい。警官じゃなくても
    人生に有効だと思う。
    ①尻尾を決して巻くな
    ②相手の目をひかず、相手から目をそらすな
    ③凍ったヴォルガ川よりも冷静になれ
    ④見方を変えて違う角度から見ろ
    ⑤自分を信じろ
    ⑥目と耳と鼻を決してふさぐな

    ユーリは、ものすごくタフガイ。過去の裏切りや
    過ちに傷つきながら、まっすぐに生きようとしている
    姿勢に感銘を、受ける。最後に裏切った上司が、当時の最善策を取っていて、本質的には、ユーリの、味方だったみたいな件は、国家の陰謀の前には、仕方ないのも理解できるが、気持ち的には、納得がしにくかった。
    そしてなぜだろう。影であるゾロトフ、テイエーニのことは、最後まで憎めなかった。何か、ゾロトフとユーリは、最後まである意味お互いを分かり合えたまま、敵対
    した気がする。

  • <露>
    本書の前に読んだのが今敏先生の『防諜捜査』だった。そちらもロシアに深く関係する物語だった。ウオトカをショットグラスでそのままグイと飲むところなんかはどっちにも頻繁に出てきた。別に露西亜関連の小説を狙って読んだわけではない。たまたまそうなっただけである。

    今作も始まってすぐの超迫力殺戮シーンで読者のココロをグイと掴んでしまう。良いですねぇ実に良いですね。

    こういうシリーズ物はたいがいは第一作が一番面白くてその後少しずつ面白さは減っていく傾向にあると思うのだけど,この作品は違う。回を重ねる毎にドンドンと面白さが増してゆく。

    前回,会話文の後にしばしば入るその会話内容の長い説明など省いて,もっとテンポ良く会話を進めた方が良い,ひいては作品全体をもっと短くシンプルにすればもっと売れる。みたいなことを生意気にも僕は書いていた。でも今作を読んでそれが間違いであった事に気づいた。著者月村良衛の作品はとても読むのに時間が掛かる,ところが良いのだ。
    簡単にスラスラ読み終わる嬉しさを味わうのとは全く異なった心地よさがある。すまなかった。前に書いた『自爆条項』感想文の前言撤回である。すまぬ。

    要するに面白さが短くすぐに終わってしまうか,長く続くかの違いだ。巷では前者を早漏と云い後者を遅漏という。丁度良いのは何と云うのだろう。的漏か? あっ何を書いてるんだ僕は。管理者の方もしモラルに欠ける様ならここ消してください。って,誰も読んでないし。ぐふふ。すまぬ。

  • シリーズ3作目だが、読了した中では最高の出来。うん、ムッサオモロいぞ。

    警視庁特務部隊の龍騎兵パイロットが順番に主人公を張ってきて、今回も想定通りの元ロシア警察官ユーリ・オズノフが主人公。しかも冒頭シーンでいきなり日本警視庁との契約を解除され、ロシアンマフィア武器密売チームの一員となるべく登場する。

    「これ、オトリ捜査かな」という予想はものの見事にあっけなく当たるのだが(笑)、じゃぁ、そっから先も予想通りに展開する王道パターンかというと全くそうではなく、想像を絶する展開。ユーリの過去遍歴と現在日本での武器密売シーンが壮絶さを極めた筆致でグイグイ描かれていく。

    ドン・ウィンズロウを彷彿させるノアール展開、ボトムズもびっくりなバトリングシーン、官僚も政治家もヤクザもぐったくたに煮込まれたような愛憎相食む人間模様…。手に汗握るどころではない、腋からも額からも汗かきまくりで、心拍数も上がるし、これ高血圧患者に読ませたら危ないんちゃうかと思わせるくらいの、怒涛の展開。

    読みだしたのがこんなに遅くてごめんなさい。でも期間をおかずにこのシリーズを次々読める幸せかみしめてます。4作目はもうパイロットでない主人公なんだろうが、それはそれで非常に楽しみである。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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