カンパニュラの銀翼

著者 :
  • 早川書房
3.56
  • (19)
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  • (14)
  • (2)
本棚登録 : 255
感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (465ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093271

作品紹介・あらすじ

1920年代後半の英国-エリオットには秘密があった。資産家の子息の替え玉として名門大学で学び、目が見えなくなった「血のつながらない妹」のため、実の兄のふりをして通いつめる日々。そんなエリオットの元に、シグモンド・ヴェルティゴという見目麗しき一人の男が現れる。物憂い眩暈。エレガントな悪徳。高貴な血に潜んでいる病んだ「真実」-精緻な知に彩られた、めくるめく浪漫物語。第2回アガサ・クリスティー賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリー、哲学、SF、ファンタジー、ロマンス等々と、いろいろな要素がてんこ盛りでおいしいが、文章にやや癖がある。それが非常にマッチしたいい場面もあるのだが(ミュリエルとの絡みとか)。アガサ・クリスティー賞として紹介されるとちょっと首を傾げたくはなるものの、面白ければ問題ないのかもしれない。ただ、後味はあまり……それでいいのか、エリオット、と思わなくもない。自制が一周回ってはずれなくなった彼やシグと、快活さが売りの「彼ら」との対比は光と影のようで、さらに両翼を担う関係は他にもあるので、読み終わってみると、何をメインにした物語だったのかと、少し印象がぼやけた気もした。

  • カテゴリはミステリかな?

    カンパニュラの銀翼、好きな世界で、文章も読みやすく面白かった。
    場面、時代(というとネタバレになるかな)や視点が変わって話が展開するんだけど、何が謎なのか、何の関わりなのか中盤以降まで見えない。

    シグとベネディックの秘密にはちょっとびっくりしました。アガサクリスティー賞受賞ということで読み始めたからかな?想定外の謎と解法でした。

    シグモンドのイメージは当初、美しくて、特別に青い血の持ち主なだけに、もっと厭世的で無気力な、人嫌いかな?と思っていたのに、生まれの特異さや環境の割には普通の不器用な青年で、その感情が出ていく様が素敵だった。
    ミュリエルとの関わりあいは切なかったけど、あの結末は彼の血を考えればお互いに幸せだったのかもしれないな。

    なんというか、シグモンドは貴族らしい品のある余裕でしょうけど、他人にやさしいし、寂しさを抱えたところがまた女心をくすぐるというか、すごく好きだな(笑)。
    いっそ、このままミステリシリーズとして、エリオットの麗しき助手として話を続けてほしかったです。。。切ない!

  • (No.12-83) 早川書房 第二回アガサ・クリスティー賞 受賞作品。
    この賞は、イギリス アガサ・クリスティー社公認のミステリ賞だそうです。

    内容紹介を、表紙裏から転載します。
    『1920年代後半の英国。エリオットには秘密があった。

    資産家の子息の替え玉として名門大学で学び、目が見えなくなった「血のつながらない妹」のため、実の兄のふりをして通いつめる日々。そんなエリオットの元に、シグモンド・ヴェルティゴという見目麗しき一人の男が現れる。
    〈抜け出したくばね、必要なのは概念の改革だよ。エリオット・フォッセー〉

    物憂い眩暈。エレガントな悪徳。
    高貴な血に潜んでいる病んだ「真実」。精緻な知に彩られた、めくるめく浪漫物語。』

    ものすごく密度の高い物語でした。この一冊を読み終わって、なんだか3冊くらい本を読んだような気分になりました。
    これって日本の作品だよね?と念を押したくなるほど、書き方が翻訳ものぽかったです。
    ですから翻訳ものが好きでない方には積極的にお勧めできないかも・・・。

    あちこちに薀蓄が散りばめられているうえ、思いがけない方向に物語が転がって行き、ぼんやり読んでいるとなんだかわからなくなりそうです。
    あれ?・・・、と違和感を感じてすぐに出てきた横書きページ。わあ、そうだったんだ!

    ゴシック・ロマンであり、オカルトっぽいのに、科学的に原因や解決方法を考えてちゃんとミステリとして納得させてくれたことが、ミステリの賞をとった作品として納得です。

    ラストに向けてどんどん緊迫感が増していくので、いろいろ注意して考えて読みたいのに、それどころじゃないよ~って立ち止まる気になれず・・・。後半は一気読みでした。前半はね、立ち止まりつつ、時々前の方を読み直したりしたんだけど。

    いや~満足満足!
    あえて言えば、これってアガサ・クリスティーじゃないよね。
    選者の一人鴻巣友季子さんが選考会に出るとき「この作品は明らかに抜きんでているが、アガサ・クリスティーの名を冠したミステリの賞に適格であるか」を心配されたそうです。結果的にそれは問題ないとなったのだとか。
    もし、エドガー・アラン・ポー賞があったら、まさにぴったりだったんだけどな。

    早川書房のイメージにぴったりの本で、さすがだわ!と嬉しかったです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「エドガー・アラン・ポー賞があったら」
      タイトルだけで、読んでみたいと思っています。ポーっぽい話?とっても気になります!
      「エドガー・アラン・ポー賞があったら」
      タイトルだけで、読んでみたいと思っています。ポーっぽい話?とっても気になります!
      2012/11/27
    • tokiwahimeさん
      そうなんです、雰囲気はすごくポーっぽいの。
      もしポーがお好きならお勧めです。
      そうなんです、雰囲気はすごくポーっぽいの。
      もしポーがお好きならお勧めです。
      2012/11/28
  • なかなか個性ある文体でとっつきにくかったが、困惑させる展開の後、面白くなってくる
    古典的、怪奇的、ファンタジー的な要素があって、ミステリー的な要素は無いように見えてちゃんとあった
    登場人物の魅力も中盤から伝わってきた
    独創的な物語であることは間違いない

  • えーー、なんというか、神経を逆なでされるというか、げんなり疲れるというか。読む→ぐったり→でも続きが気になる→読む、の無限ループで、どうにかこうにか読了しました。
    話は、気になるんです。どうなるんだこれ?というどきわくはあります。
    がいかんせん。何言ってるか分かりにくい!!!!!!
    まどろっこしいし。抽象的だし。
    好きな人はたぶん、すごく好きだろうなと思いますが、おいらは疲れた。

  • キャーー! ゴシック&耽美要素満載で、でも論理的と言うか、言語遊びと言うか。本格的で、好きな人は絶対に好きな作品。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「好きな人は絶対に好きな作品。 」
      タイトルからして秀逸だし、表紙のイラストも雰囲気たっぷり(実はコレも文庫化待ち)
      「好きな人は絶対に好きな作品。 」
      タイトルからして秀逸だし、表紙のイラストも雰囲気たっぷり(実はコレも文庫化待ち)
      2013/04/02
  • 文章がとても幻想的で、綺羅を尽くした耽美な表現はとても心地いいです。
    高貴な血に潜む真実、死神のような男の謎、辻褄合わせの時間など、
    眩暈のするような美しい物語に感動しました。

    本格ミステリなのかなと勝手に思っていたのですが、
    ミステリの要素だけでなく、哲学的であり、
    怪奇小説なようでもあり、様々な面で楽しめました。
    銀翼のシーンがまた美しく、夜空を翔ける姿に、
    暗闇からは死への恐怖と、死への安らぎを感じます。
    最後は物悲しいけれど、よかったと安心することができました。
    とても好きな物語です。

  • 前2作読んでいて、好きな世界を書いてくれる作家さんやなと思てましたんで、クリスティー賞受賞は大変喜ばしいです。
    今回もなにやら妖しげな世界を紡いで下さっております。素敵。
    これを機にデビュー作文庫化せえへんかなー。
    図書館で借りて大変気に入ったので買おうとしたら絶版なのだった…。

  • 独特の世界に引き込まれた。でも言ってることがなかなかに難しくて、ゆっくりゆっくり読み進めた。読み終わったときの達成感?充足感?(笑)。言ってること難しいのに途中で投げ出したくないおもしろさがあったな。
    『アガサ・クリスティー賞』受賞とあったので、ミステリかと思ったら、うーーん、これ、ジャンルとしては何なんだろう。普通のミステリではないです。

  • ミステリーより幻想ゴシックファンタジーに振り子の針はよっているような気がする。始めは吸血鬼登場かとも思ったけど、非常に科学的で哲学的。最後まで謎めいていて、それはシグモンドの行動性格の巧みさによるのだと思う。とにかく、ハリウッド辺りで映画化されてもいい様な面白さだった。

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著者プロフィール

2007年に『黒十字サナトリウム』で第9回日本SF新人賞を受賞し、デビュー。2012年『カンパニュラの銀翼』で第2回アガサ・クリスティー賞を受賞。他の著作に『黒猫ギムナジウム』『コンチェルト・ダスト』などがある。

「2015年 『みがかヌかがみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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