ずる―嘘とごまかしの行動経済学

  • 早川書房
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感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093417

感想・レビュー・書評

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  •  家庭や社会において、我々はどのようなメカニズムで不正に手を染めてしまうのか―――人間の業とも言える「嘘」や「ごまかし」を行動経済学の視点から考察し、効果的な予防方法を様々な実験により検証した貴重なレポート。
     罪を罪と認識させる、嘘をつかないことを宣誓させる、前例を作らない、大義名分を与えない、罰則の強化はあまり効果がないなど、興味深い実験データ満載だ。
     誰かが自分に向けた不正を見極めるため、あるいは社会に対して無意識に不正を行いたくなる自分を律するため、役立つ書籍になるかもしれない。
     ただこの本を読んで最も困難だと感じたのは、自分が自分に対して行う不正についてである。
     例えば・・・ダイエット中なんだけど、超人気スイーツが半額で売り出してる・・・とか。
     例えば・・・今日は酒飲まないと決心したが、冷蔵庫にお刺身と吟醸酒を見つけた・・・とか。
     あなたは誘惑に耐えられますか? 固い決心に対するちょっとした不正を、拒み続けることができますか?

  • 「予想どおりに不合理」のダン・アリエリー教授のノンフィクション。
    人はどのようなときにズルをしやすくなるのか、どのようなときにズルをしにくくなるのかについて、ユニークな社会科学実験をとおして仮説を展開。
    引用されている実験が本当におもしろい。よくもまあ次々とこんな実験を思いつくものだ。社会科学者は創造力が必要な職業なのだと思う。
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    マイク・アダムスは数年にわたってデータを収集し、祖母が亡くなる確率が、中間試験の前は10倍、期末試験の前には19倍にも跳ねあがることを示した。
    おまけに、成績が芳しくない学生の祖母は、さらに高い危険にさらされていた。
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    疲れと不正についての論を展開し、この段落を「ともあれ、世の中の祖母たちに告ぐ。期末試験のシーズンには、お体を大切に。」で結ぶユーモアがこの本全体をあらわしていると思う。おもしろいことは真顔で言うほうがおもしろいのだ。

    メモ
    つじつまあわせ係数(fudge factor)

  • ずる(不正)がおこらない仕組みを考えるのに役に立った。

    アンケートは、サインを先にさせると、ウソを書きにくい
    にせものを身に着けているとずるをしやすい
    不正は感染する(皆がしていると自分も、と)

    少しの不正を皆がしている。その損失が大きい・・・確かに、皆、小さな不正は不正と思っていないような。不正の誘惑を断つ仕組みも必要。

  • 一般に信じられているような、不正は利益と罰則のバランスを合理的に計算した結果として行われるという犯罪モデルは、「シンプルな合理的犯罪モデル(Simple Model of Rational Crime:SMORC)と呼ばれる。

    しかし、著者の行った様々な実験により、人はSMORCのような単純なモデルに従って不正を行うわけではないことが立証されている。

    つまり、「捕まる確率を上げる」「罰則を重くする」といった単純な措置で必ずしも犯罪を抑止できるとは言えない。

    本書で行われた実験によって明らかになった事実をまとめると以下のようになる。

    不正を促す要因:
    ・自分を正当化する想像力
    ・利益相反(自分と相手の利益が一致しない)
    ・創造性
    ・一つの反道徳的行為
    ・誘惑に抵抗する「意志力」の消耗
    ・他人が自分の不正から利益を得る状況(正当化の理由になる)
    ・他人の不正を目撃する(割れ窓理論)
    ・不正の例を示す文化(文化圏ごとの個別の不正に対する価値観?これよく分からん)

    影響なし:
    ・不正から得られる金額
    ・捕まる確率

    不正を減らす要因:
    ・誓約
    ・署名
    ・道徳心を呼び起こすもの
    ・監視

    訳者あとがきで簡潔にまとめられていたので引用:

    "わたしたち人間は、一方では正直でありたいと思いながら、その一方でズルをしてトクをしたいとも考える。そのせいで、「正直な人間」という自己イメージと実際の行動との間に、ズレが生じることがある。わたしたちはそんなとき、驚くような柔軟性を発揮して、「つじつま合わせ係数」の大きさを自在に変えることで、ズレを解消しようとする----これがアリエリー教授の仮説だ。係数はどんなときに大きくなる(ずるをしやすくなる)のか、小さくなる(ずるをしにくくなる)のか。例によってユニークでおもしろい(ときにショッキングな)実験の数々をとおして、それを明らかにしていく。"

  • なかなか面白かった

  • 本屋でたまたま見つけてしまい思わず衝動買いしてしまった。お金は相変わらずないが後悔はしていない。

    「不正行為」というものに対してこれでもかってくらいいろんな視点から分析していて非常に内容が濃い。まあ詳しくは読んでみてや〜って感じだけど、一つ印象的だったのは俺が常に提唱している「グループ・ワーク無用説」が今回もまた実験を通して裏付けられてしまった。いい加減、無駄に何でもかんでもグループでやらせるのはやめてほしい(コミュ症並の感想)

    ちなみに副題に「行動経済学」という文言が入っているが、本編ではそこまで「行動経済学」というワードは出てこない。若干タイトル詐欺。別に文句はないけどねw

  • 署名の位置で不正が減る。
    利益相反。スポンサーの絵を良いと評価する。本人は気付いていない。
    疲れると誘惑に勝てない。不正しやすい。
    偽物を身に付けると不正をしやすい。
    不正は感染する。同じグループの人が不正をするとその人も不正しやすくなる。

  • 人は[そこそこ正直で誠実な自分]でいられる範囲でズルをする。


    人間がいかに都合よく考えてるかがよく分かる一冊。

    テストが終わったら、自己採点した後にシュレッダーに答案用紙を入れてから自己申告した点に応じて報酬がもらえる実験。シュレッダーに入れる場合と入れない場合で「ずる」の度合いが変わる。
    また、周りにずるをするサクラを用意すると他の人も「ずる」が増える。ただ、あまりに極端な場合は罪悪感からそこまでずるの度合いは変わらないなど。

    その一方で、自分は立派な人間でありたいという欲求もあるから、自分にとって良い「つじつま合わせ」をする。

  • ずるをするのは、特別悪い人じゃなく、普通の人。だから、防ぐのは難しいけど減らすことはできそう。

  • ヒトは、一方では自分は正直で立派な人物と思いたいが、もう一方ではごまかして金もうけをしたいと思うものです。
    ですからちょとしたズルをします。
    そしてズルしたことを正当化する言い訳を自分の中で作り上げます。
    ダン・アリエリーは、実験を通してどのような時にヒトはズルな行動をとるのか調べています。
    面白い実験です。
    小さなズルをして自分をごまかしてないか常に振り返ることって大事なことですね。

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