ずる―嘘とごまかしの行動経済学

  • 早川書房
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感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093417

作品紹介・あらすじ

ビジネスや政治の場にごまかしを持ちこませず、プライベートでも嘘のない関係を作るためのヒント満載。わかりやすい実例といくつもの実験で、不正と意思決定の秘密を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  •  人は、ズルをすることによって出来るだけ利益を得たいが、同時に自らのことを道徳的な素晴らしい人間だと思いたい。そこで、この二つの動機づけの折り合いがつく(自分で折り合いがつけられると判断する)範囲、つまり、肯定的なセルフイメージを壊さない範囲でズルをし利益を求めることになる。これが、不正が行われる原理として筆者が唱える「つじつま合わせ仮説」である。本書ではこの仮説が実験により得られた結果を用いて様々な面から考察されており、非常に説得力があると感じた。
     署名や監視、(呼び起こされた)道徳心は不正を減らす方向に働き、自制心の消耗や他人のズルを目撃すること、また他人が自らのズルによって得る利益への考慮は不正を促進する。その一方で、ズルから得られる金額や捕まる確率は不正の度合いに影響を及ぼさないことが実験から確かめられたが、この一見不思議な結果も「つじつま合わせ仮説」によって容易に説明できる。すなわち、不正から得られる金額が多くなるほど自己正当化が難しくなり、捕まる確率の大小は自己正当化の容易さに関係しないからだ。

     自分が如何に日常的にズルをし、しかもずる賢くその行為を正当化しているかに気づかされた。

  •  家庭や社会において、我々はどのようなメカニズムで不正に手を染めてしまうのか―――人間の業とも言える「嘘」や「ごまかし」を行動経済学の視点から考察し、効果的な予防方法を様々な実験により検証した貴重なレポート。
     罪を罪と認識させる、嘘をつかないことを宣誓させる、前例を作らない、大義名分を与えない、罰則の強化はあまり効果がないなど、興味深い実験データ満載だ。
     誰かが自分に向けた不正を見極めるため、あるいは社会に対して無意識に不正を行いたくなる自分を律するため、役立つ書籍になるかもしれない。
     ただこの本を読んで最も困難だと感じたのは、自分が自分に対して行う不正についてである。
     例えば・・・ダイエット中なんだけど、超人気スイーツが半額で売り出してる・・・とか。
     例えば・・・今日は酒飲まないと決心したが、冷蔵庫にお刺身と吟醸酒を見つけた・・・とか。
     あなたは誘惑に耐えられますか? 固い決心に対するちょっとした不正を、拒み続けることができますか?

  • 創造性が高い人ほどごかましが多い、偽ブランドを身につけるとずるしやすくなる…。わかりやすい実例といくつもの実験で、不正と意思決定の秘密を解き明かす。ビジネスや政治の場にごまかしを持ち込ませないヒントが満載。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40176331

  • 人はバレない程度のずるは悪気なくしてしまうということがよく分かった。

  • 「予想どおりに不合理」のダン・アリエリー教授のノンフィクション。
    人はどのようなときにズルをしやすくなるのか、どのようなときにズルをしにくくなるのかについて、ユニークな社会科学実験をとおして仮説を展開。
    引用されている実験が本当におもしろい。よくもまあ次々とこんな実験を思いつくものだ。社会科学者は創造力が必要な職業なのだと思う。
    ---
    マイク・アダムスは数年にわたってデータを収集し、祖母が亡くなる確率が、中間試験の前は10倍、期末試験の前には19倍にも跳ねあがることを示した。
    おまけに、成績が芳しくない学生の祖母は、さらに高い危険にさらされていた。
    ---
    疲れと不正についての論を展開し、この段落を「ともあれ、世の中の祖母たちに告ぐ。期末試験のシーズンには、お体を大切に。」で結ぶユーモアがこの本全体をあらわしていると思う。おもしろいことは真顔で言うほうがおもしろいのだ。

    メモ
    つじつまあわせ係数(fudge factor)

  • ほんと一握りの人以外、人は多かれ少なかれ何かのズルをしてしまう。それにはパーソナリティや環境が複雑に関わっている。人のずるは汚いなぁと思うけど、自分も自分が許せる、正当化できる範囲内でずるをしてる。どうしたらずるをしないか、ちょっとだけしれた気がする。

  • ずる(不正)がおこらない仕組みを考えるのに役に立った。

    アンケートは、サインを先にさせると、ウソを書きにくい
    にせものを身に着けているとずるをしやすい
    不正は感染する(皆がしていると自分も、と)

    少しの不正を皆がしている。その損失が大きい・・・確かに、皆、小さな不正は不正と思っていないような。不正の誘惑を断つ仕組みも必要。

  • 一般に信じられているような、不正は利益と罰則のバランスを合理的に計算した結果として行われるという犯罪モデルは、「シンプルな合理的犯罪モデル(Simple Model of Rational Crime:SMORC)と呼ばれる。

    しかし、著者の行った様々な実験により、人はSMORCのような単純なモデルに従って不正を行うわけではないことが立証されている。

    つまり、「捕まる確率を上げる」「罰則を重くする」といった単純な措置で必ずしも犯罪を抑止できるとは言えない。

    本書で行われた実験によって明らかになった事実をまとめると以下のようになる。

    不正を促す要因:
    ・自分を正当化する想像力
    ・利益相反(自分と相手の利益が一致しない)
    ・創造性
    ・一つの反道徳的行為
    ・誘惑に抵抗する「意志力」の消耗
    ・他人が自分の不正から利益を得る状況(正当化の理由になる)
    ・他人の不正を目撃する(割れ窓理論)
    ・不正の例を示す文化(文化圏ごとの個別の不正に対する価値観?これよく分からん)

    影響なし:
    ・不正から得られる金額
    ・捕まる確率

    不正を減らす要因:
    ・誓約
    ・署名
    ・道徳心を呼び起こすもの
    ・監視

    訳者あとがきで簡潔にまとめられていたので引用:

    "わたしたち人間は、一方では正直でありたいと思いながら、その一方でズルをしてトクをしたいとも考える。そのせいで、「正直な人間」という自己イメージと実際の行動との間に、ズレが生じることがある。わたしたちはそんなとき、驚くような柔軟性を発揮して、「つじつま合わせ係数」の大きさを自在に変えることで、ズレを解消しようとする----これがアリエリー教授の仮説だ。係数はどんなときに大きくなる(ずるをしやすくなる)のか、小さくなる(ずるをしにくくなる)のか。例によってユニークでおもしろい(ときにショッキングな)実験の数々をとおして、それを明らかにしていく。"

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