わたしが降らせた雪

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  • 早川書房 (2013年2月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784152093578

#YA

作品紹介・あらすじ

"信仰心が篤い父のもとに育った十歳の少女ジュディスは、ある日自分に魔法の力があるのではないかと信じるようになる。孤独で聡明な少女の悩みと苦しみを透徹した眼差しで描いた新鋭のデビュー作"

感想・レビュー・書評

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  • もっと若い時に読んだら主人公に共感出来たのかもしれない。

    真面目な洋物の文体、私が十代ならこの本の
    繊細さに憧れただろう。

    キリスト教について詳しくないし
    現代の価値観には合わない。

    しかし、「わたしが降らせた雪」このタイトルには
    強烈な引力があった。

    心理学に長けた人なら面白いのかもしれない。


  • 健気な少女の本音が展開させる物語に目が離せない。内と外の世界の相違。布教する親子と世間は摩擦する。少女をいじめ家までも執拗に壊し続ける魂はどこから生まれ育ったのか。少女に話す声の主は誰。色々な声が見えてくる。

    著者の着眼点、発想が凄い。もっと作家を続けてほしかった。こんなのは初めて読んだ。面白い。

  • 感受性の豊かな人の表現って、独特で素敵であり、
    解り辛かったりもする。
    読み始めは、ちょっと自分に合わないかなぁ と
    感じたけど、途中からは あっという間に完読できた。
    ジュディスや彼女の父親、クラスメートらをとりまく状況が苦しく、ずっとブルーな気持ちで読んでいた。
    最後は安堵して読み終わることができて良かったなぁ。

  • 10歳のジュディスは、信仰厚い父親と二人暮らし。勉強はできるが、学校ではいじめっこのニールとその仲間に執拗にいじめられている。そんなジュディスは、自分の部屋に廃物で作ったミニチュアの庭を大切にしている。ある週末、月曜日にはトイレに頭を突っ込んでやると言われ、自分のミニチュアの庭に雪を降らせると、本当に雪が降り学校も休校になる。そこからジュディスは、神の声を聞くようになり、ミニチュアの庭で起きたことが現実の世界でも起きるようになっていく。

    ニールのいじめがエスカレートし、父親の職場での立場も含め追い詰められていくジュディス。ミニチュアの世界が現実になることで次々起こる災難。その闇に気づき止めようとするが止められないジュディス。後半はハラハラしながら一気に読んだ。繊細な神経を持つジュディスの心の動きが悲しく怖い。
    何かもっと早くに周りの大人が聞き付けなかったものか。
    最後はホッとさせるが、不思議な恐怖感が残る。

  • ウェールズの田舎町で原理主義教会に属する父親と2人で暮らす10歳の女の子の話。原理主義の生活は当然孤立と差別を生み、厳しい父と二人で母親のいない生活が孤独と空想を生む。抱きしめてあげたいような繊細な少女が空想の世界で起こした奇跡(のような?)が引き起こす波と連鎖。そしてその結末。
    すごくよく書かれていて、これが処女作とは、という出来栄え。これだけ書けるのに、演奏活動に専念すると言って5作で筆を折ってしまったという作者は、やはり只者ではないのだろう。
    ただ、起きてしまったことは取り返せない(大事なところで2度ほど出てくる)、という感覚は、やはり原理主義の家庭で育った厳しい倫理観を感じさせる。人を殺めていない限り、たいていのことは何とか取り返しがつく、あるいは少なくともそうしようと努めることができる、と考える私とは少し違うかも、と思った。
    何にしても、一風変わった、でも面白い本だった。

  • イギリスの作家グレース・マクリーン、2012年発表の小説。「エホバの証人」をモデルにしていると思われるキリスト教の異端の一派の熱心な信徒の家庭に育った少女の一人称の物語り。宗教や奇跡が大きなテーマとなっていますが、宗教的な物語りというより、父子家庭の父と娘の絆の再生を描いた物語りであり、とても心に響く暖かな結末の作品。良いです。

    10歳のジュディスは工場労働者の父親と二人暮らし、間もなく起こるはずのハルマゲドンとその後に訪れる「最も美しい土地」を信じる純真な少女です。自室にはガラクタや廃物を利用して「最も美しい土地」のジオラマ模型を作っており、豊かな想像力ととても繊細でナイーブな感性を持っています。しかし異端の宗派の信徒ということもあって学校ではいじめにあっており、学校へ行きたくないと言う気持ちで模型の街に雪を降らせると、実際に季節外れの大雪となって学校は休校に・・・。
    妄想と現実がリンクして追いつめられて行くジュディスを描いてなかなか見事な作品です。

    一人称で語られるジュディスの繊細なものの見方、感じ方、そしてその表現が非常に素晴らしい。また、宗派の善良で愚直な信徒たち、伝道で対話する主に下層階級の様々ないわば異形の人々の描写も秀逸。道徳のテキストにでもなりそうな物語りではありますが、10歳の少女の独り語りということもあって説教臭さや押し付けがましさは感じられず、わりと素直に感動します。

  • 原題は〈The Land of Decoration〉。ハルマゲドンで世界が滅んだ後にやってくるとされる〈最も美しい土地〉のこと。

    いじめに苦しむ10歳の少女ジュディスは、自分の部屋に〈最も美しい土地〉を作った。そこに雪を降らせて神様に祈ると、外の世界にも雪が降った。過酷ないじめが待ち受ける恐怖の月曜日に起きた奇跡。

    学校や仕事へ行きたくない時に嵐を起こす力や、自分をいじめる奴に復讐する力があったらどんなにいいか。でも、行動には必ず結果が伴い、その結果を取り消すことはできないのだ。

    ジュディスの苦悩よりも、彼女の父親の苦悩の方が胸に迫ってくるものがあった。信仰の篤い大人ゆえの、父親ゆえの孤独な闘いを強いられる。怒りにかられている時こそ、信仰は試されるのだ。

    読み終えたときに、サッと霧が晴れるように物語の構図が見えて感動した。やはりタイトルは原題のままのほうが良かったのではなかろうか。

  • 装丁で選んだ本。
    宗教的なことって日本人にはなかなか掴みづらいものだけど、信仰を意外な側面からつついてる気もする。
    ソフトタッチなお話かと思いきや、なかなかシビアだし、ふわふわと終わらない気がして、すこしハラハラしながら読めた。
    そうゆう奇跡って、なんだか分かる気がする。
    望まないと引き寄せないのは確かだし、驚くような偶然がこの世にはたくさんある。
    信じるか信じないかって話。
    ただ、たぶんストーリー的には奇跡がどうこうとゆうのは本題ではなくて、やっぱりひとの心がどうなのかってこと。
    物語でさえ、うつくしいだけでは心をうたない。
    音楽も絵も、たぶん恋だってそうなんだろうな。

    ジュディスの奇跡、信じるということ。

  • エホバの証人という信仰に厚いために学校でイジメにあう少女がいた。
    ゴミや身の回りのもので作った箱庭に起こした出来事が実現してしまうようになり、あたかも自分が神のようになってしまう。
    しかし彼女は聡明だ。そのような力を持つことの重さにもきちんと気づく。
    彼女にそんな力を与えた、私は神であるという声。
    これはまるで悪魔みたいだったけど、一体なんだったのだろう?
    怒りという感情に目覚めた彼女の心だったのかな?
    最後信仰一本やりだった父親が彼女ときちんと向き合ってくれて、明るい未来が見えてきたのがいい感じだった。

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