オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下

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  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093677

作品紹介・あらすじ

自由世界の旗手というポジティヴなアメリカ像は真実か? 「これまで教えられてきた歴史はウソで、アメリカ人は真実を知らねばならない」と、映像作家オリバー・ストーンが綴る真実のアメリカ史。

感想・レビュー・書評

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  • 毎年この時期になると広島長崎に関するテレビ番組が増えますが、私は今までたいてい目をそむけていました。
    だいたいわかっているし、いい気持ちがしないから。

    でも今年はオリバーストーン氏が8月4日から15日に日本に滞在されるそうなので、大変楽しみです。

    彼のドキュメンタリーを見て、とても面白かったのでこの本を読みました。でも図書館の都合で、先に第二、第三巻を読み、この第一巻が最後になってしまいました。
    第二・三巻を読んだとき、「こんなにアメリカを悪く書くなんて、なにがあったのかしら?」と思っていましたが、第一巻の「はじめに」を読んで納得しました。

    >アメリカは史上例のない強大な力をふるって他を圧倒し、世界の覇権国家となった。その道のりは誇るべき成果と忌まわしき幻滅の歴史でもある。これから本書で探っていくのはほかでもないこの幻滅の歴史、つまりアメリカ史の暗部についてである。(略)私たちはアメリカが犯した過ちに目を向け、アメリカが自らの使命に背いたと思える事例にスポットライトを当てたい。21世紀に足を踏み入れてまもない今なら、その誤りを正す時間がまだ残されていると信じるからだ。

    この第一巻はアメリカの、「第一次世界大戦から、壮大な見せ物である原爆をおとすまでの道のり」です。
    テレビで放送したのは、この本の後半です。

    原爆については単純に語られるものではありません。
    毎夏の戦争特番は本質をついているのか、疑問です。
    でもまったく触れないと、戦争の問題を風化させてしまうのかもしれません。

    >イギリスの作家ノーマン・エンジェルが1910年の著書、『多いなる幻影』で提唱した”今や文明は戦争が起こりうる点を超えて発展してしまたので、もはや戦争は起こらない”という楽観的な考え方を多くの人々が共有していた。このような楽観主義は、まさに幻影だったことがすぐに明らかになる。

    だから、この先も戦争がないとは断定できないのです。
    この本を読むと、善悪関係なく、いろいろな状況が合わさって戦争がはじまっていくことがよくわかります。
    今週、またこのドキュメンタリーの再放送があるそうなので、多くのかたに見てほしいと思います。

  • 本著はアメリカ現代史を権力に対して批判的な観点で描いたもの。詰まり歴史を教科書的には触れられていない側面から考察しているところに面白さがある。
    特にアメリカという国は自由を標榜する啓蒙主義的な側面と産業資本・金融資本を背景とした実利主義的な側面の両面があり、それを意識しないと国家の在り方を正しく理解できないのだと思う。

    本編は主に第一次世界大戦から第二次世界大戦までをテーマにし、特に最後は広島、長崎への原爆投下の深層について明らかにしていく。
    原爆投下不要論は既論評として認識していたが、過去の歴史を遡ってみるとその納得感も高まる。
    日本人は自国のこととして様々な観点を理解しておく必要があるのだろう。

    アメリカが『世界の警察』になったのは然程昔のことではない。次編以降を読むことでその辺りの理解も深まるのではないか。
    2016年大統領選に向けて、アメリカの世界への関わり方が大いに議論されているところでもあり、この歴史的な変遷はよく理解しておきたいところ。

  • ここに書いてあることの全てが真実かどうか、僕には分からない。
    けれど、これが事実であると考えた方が、対戦後のアメリカの振る舞いが、あるいはアメリカに対する他国との反発が、あるいはロシアの西側諸国に対する言動が、説明しやすくなるような気がする。

    そういう意味で興味深い本だと思う。
    翻訳本ならではというか、そもそもの歴史的共通理解がないが故の読みにくさがあり、星4つ。

    アメリカが、いや、列強諸国が、他国民や平和のために、(ひとりひとりの自国民のためにさえ)政治的決断をすることなど無いことを、改めて思い知らされる。
    それは、列強諸国になろうとして列強諸国のまねをした、かつての日本を見ても明らかである。


    この本は、アメリカ人のアメリカ観を是正すべく、アメリカ人の手で書かれた本である。
    だから、この本を読んで、日本人がアメリカを非難するのは違うだろうと思う。

  • 物事の本質を見る目を持つこと。

  • ・西洋が世界の勝利者になったのは、西洋の思想、価値観、宗教が優れていたからではなく、
    むしろ組織的な暴力をふるうことに優れていたからである。
    ・我が国の歴史の中で日本人ほど忌み嫌われた敵はいないだろう(ピュリッツァー賞受賞歴史学者アラン・ネヴィンス)
    ・原爆被爆者、峠三吉の詩「八月六日」 ”あの閃光が忘れえようか”
    ・原子爆弾の投下に「これは史上最大の出来事だ!」と喝采を叫んだトルーマンに対してある民主党党員が大統領宛に打った電報
     「無辜(むこ)の人を死に至らしめる兵器に歓喜するなど、かりそめにもアメリカ合衆国の大統領たるもののなすべきことではない。
      喜んだ理由が破壊ではなく、破壊に終止符を打ったことにあると明確にしていただきたい。」
    ・アイゼンハワー
     私は2つの理由で原爆使用は反対だと言った。
     第一に、日本は降伏する用意ができており、あのような恐ろしい兵器を使用する必要はなかった。
     第二に、私は自国があのような兵器を用いる最初の国になるのを見たくはなかった。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】
    ・「オリバー・ストーンの現代アメリカ史がやたらにおもしろい。まだ二巻の途中だが、これは必読。アメリカが世界で最も恥知らずな国だということが、よくわかる。

    松岡正剛日刊セイゴオ「ひび」2014/03/06」

  • ウッドロー・ウィルソンのまさしくTPP条約ISD条項を彷彿させる発言。
    「門戸を閉ざしている国々には、その扉を叩き壊してでも開国させねばならない……。資本家たちによって獲得された利権は、たとえそれに反感を抱く国々の主権がその過程で蹂躙されようとも、我が国の使節によって保護されねばならない」
    これが1907年プリンストン大学総長時代の言葉であるとは。
    19世紀末の相次ぐ恐慌がアメリカをモンロー主義を放棄させ、太平洋へと向かわせる。様々な紆余曲折を経ながらも、自由主義国は小さな国々の主権やそこに暮らす人々の暮らしよりも、資本家の財産権を優先させてきた。グローバリゼーションの動きは、TWOからFTAへとさらに貿易の自由化を推し進めている。その先に何が待っているのだろうか。あと15年もすればその姿が見えてくるであろう。

  • アメリカの建国から第一次世界大戦そして第二次世界大戦の経緯をオリバーストーン氏
    によって詳細に語られた良書です。

  • アメリカの歴史の裏側を記述した内容。
    面白いが、アメリカの傲慢さ・帝国主義に腹立ちを覚える。
    原爆投下は、不要であった。ソ連に対する自己顕示であったのか。トルーマンをはじめ、愚かな人間が米国大統領になることの怖さを知る。

  • 「誰が儲かったのか?」「誰が得したのか?」

    というのが物差しになっています。
    イデオロギー、正義、悪、ではありません。
    こういう近現代史の本、読みたかったですね。
    読み物としても、とっても英語的なちょっとした皮肉を交えながら、実に滑らかによどみなく進みますし、ドラマチックに描かれていて、飽きさせません。
    そして、アメリカの近現代史というのが、当然ながら全て日本に跳ね返ってきます。
    読みながら、日本の近現代史なんて、アメリカや欧州帝国主義の歴史を把握しないと、事実や年号だけ記憶しても何の意味もないんだなあ、と思わされました。
    思った以上に、娯楽的にも実に面白い本でした。続きも読もうと思います。

    2013年に日本語訳で出た本のようですね。
    映画監督のオリバー・ストーンさんと、履歴は知りませんがアメリカの大学教授さん、つまり専門的な歴史学者さんなんだと思いますが、ピーター・カズニックさんという人との共著。
    当然ながら、少しでも売れるように、読まれるように、という意図からこういうタイトルになっているのだと思われます。


    簡単な話は、「アメリカの近現代史」なんです。
    とは言ってもアメリカは、日本と比べれば建国以来歴史が若いので、そのほとんどが近現代史なんですけど(笑)。
    そしてそれも、

    「学校や政府では教えないけれど、実はこういう裏事情があったのよ」

    というお話に特化して書いています。
    ただそれも、推測的な陰謀論に基づくものではなくて、基本的にちゃんと歴史的な資料があって書かれています。
    (まあ、この辺は情報公開法含めて、アメリカはある部分とてもオープンなんだろうなあ、と思います)
    思想的には、前述したように特定の視点から固まって書かれているものはないです。と、僕は思います。
    ただ、「アメリカ政府、アメリカ人はいつでも正しい」という心情の人から見れば、あまりに懐疑的で左翼的すぎるのかもしれませんが(笑)。
    (最近は笑っていられないのが、「〇〇政府、〇〇人はいつでも正しい」「〇〇政府、〇〇人は悪者だ」というような唖然とするしかない根拠のないコトバを、大真面目でのたまう人が、どうやら僕が住んでる国でも増えてきているらしいことですね。うかうかするとすぐに「非国民」という言葉が復活しそうで。怖い怖い…)

    オリバー・ストーンさんという映画監督さんは、割と実は「いつも重くて辛そうな映画ばかりだから、あまり観ていない」監督さんなんです。恥ずかしながら。
    ただ、「JFK」と言う映画は、たまたま見てしまって、うんざりするほど長かったのに、見たら、息を呑むほど面白かったんですね。
    ことほど左様に、エンターテイメントでもありますが、骨太なタッチの作家さんでもあるんだなあ、と。その個性はこの本にも発揮されています。

    同名のドキュメンタリーが先行したそうで、それも観てみたいなあ、と思いました。










    ################以下、個人的な備忘録###############

    ●第1次世界大戦、第2次世界大戦は、民主主義の解放とか帝国主義打倒とかと言われることもあるけれど、真っ赤なウソである。
     結局は植民地主義帝国同士の奪い合いに過ぎないし、アメリカもその例外ではない。

    ということであるとか、

    ●ウォール街と投資家たちの私利私欲の果てに導かれた「怒れる葡萄」的な不況。

    ●それを社会主義的傾向で歯止めしたセオドア・ルーズベルトの施策と、それに対する資本家たちの反発。

    ●反発の結果、資本家たちが立てた「言いなり政治家」ハリー・トルーマン。

    ●19世紀以降、アメリカで、どれだけの社会主義、共産主義運動があったか。つまり言い換えれば、資本家がどれだけ酷いことをしてきたか。そして、どれだけ無茶苦茶な逮捕弾圧が、加えられてきたか。

    ●20世紀以降、アメリカがどれだけ南米中米で無茶苦茶な介入をして、都合のいい政府を作り、その政府の暴虐や虐殺を事実上支援してきたか。そしてそれでどれだけ、アメリカ大企業がぼろもうけしたか。

    ●二つの大戦で、どれだけ武器製造業がぼろもうけしたか。

    ●つまりアメリカ政府=ウォール街、銀行家、巨大企業は、とにかく商品を買ってくれないと困るわけである。
    商品を買う相手を作る為に、海外に進出する。
    だから、いちばん困るのは社会主義国家だったりする。この単純な行動動機は、産業革命と帝国主義の勃興から、基本的に変わらない。
    21世紀の今も変わらない。
    正義の戦いなんて、存在しない。

    ●資本家が儲けるための戦争で、なぜ労働者のうちの息子が死ななければならない?という声が、どれだけアメリカでもあがっていたか。
    どれだけそれが報道されないか。あるいは、歴史としての語られないか。

    ●第2次大戦で日系在米人が受けた、迫害、収容、そしてなにより財産と事業の没収。巨額の金が簒奪された。

    などなどが豊富な例証と事例で語られます。

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著者プロフィール

1946年生まれ。アメリカの映画監督、脚本化、映画プロデューサー。『プラトーン』、『7月4日に生まれて』でアカデミー賞監督賞を二度受賞。著書『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』はベストセラー。

「2020年 『もうひとつの日米戦後史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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