ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
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本棚登録 : 687
レビュー : 108
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093783

感想・レビュー・書評

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  • 小説

  • 2013-6-2

  •  日本SF大賞を受賞した『盤上の夜』につづく、新鋭SF作家の第2連作短篇集。

     本書も『盤上の夜』に勝るとも劣らない面白さであった。どの短編も、じつに知的でスペキュレイティブ(思弁的)。『盤上の夜』と本書は2作連続で直木賞候補にのぼって落選したが、本書で直木賞を得ていてもおかしくなかったと思う(まあ、SFでは直木賞が取りにくいわけだが)。

     連作の舞台となるのは、近未来の南アフリカ、ニューヨーク、アフガニスタン、イエメン、そして東京――。
     異なる舞台をつなぐバトンとなるのは、日本製のホビーロボット「DX9」、通称「歌姫」。富裕層の道楽品として作られた、人間型の「歌うロボット」。いわば「未来の初音ミク」である。

     無数の「DX9」が、さまざまな形で物語の鍵を握る存在として登場する。
     たとえば、「9・11」テロの犠牲となった1人の青年の意識が転写されて。また、内戦の地ではその堅牢さから自爆テロ用の兵器に改造されて。

     単行本カバーの惹句には、「国境を超えて普及した日本製の玩具人形を媒介に人間の業と本質に迫り、国家・民族・宗教・戦争・言語の意味を問い直す連作5篇」との一節がある。

     まさしく、「国家・民族・宗教・戦争・言語の意味」などという大テーマに正面から挑む志の高さ、スケールの壮大さが、この作者の魅力なのである。それでいて、どの作品も先鋭的で刺激的なエンタテインメントとしても成立しているところがすごい。

     SFという狭い枠にとらわれず、いろんな作品を書いていってほしい。たとえば、青春小説や歴史小説の長編を書かせても、きっといいものを書くに違いない。

  • 北東京の子供たち、がなぜか印象に残った しんどい

  • 時間軸が現代のSFとでもいえるのだろう。
    歌姫こと日本製玩具のDX9が全編に登場する連作となっています。
    毎日大量のDX9が空から降ってくるという設定、これが現実だとしたらシュールすぎる世界ということになるのかな。
    民族問題など関係ないやと思っている自分に対して「そうではない。目を背けるな」と言われている気がしました。
    かなり異色の作品ですが、一読をお勧めします。

  • 戦争やテロを題材にした連作集。1作目、2作目あたりは興味深く読んだがそれ以降は登場人物や舞台がごっちゃになってうまく話が入ってこなかった。やっぱり通勤で細切れに読んでるとだめですね。

  • 日本製の愛玩AI玩具ロボットDX-9が全編通じて重要な役割となる連作短編集。歌うロボットだということで、初音ミクのイメージもあれば、名称からして往年のキーボード名器を彷彿とさせる。

    ただその扱いはひどいもので、愛玩されるシーンなどひとつもなく、ある時は顔を潰されて自爆兵器として、ある時は言論思想監視の先手として、ある時は耐久実験中に企業が夜逃げして自動的に何度もビルから落ちて…、可哀想になってくる。

    昔々に読んだ、ディックやバラードの作品を思い出す風味。デストピアまでとはいかないが、重たく苦しい、そして十分ありうるから光景が想像しやすい近未来予想図。読後感はなんともやるせないが、この空疎な感じがこの作品集の味わい何だと思う。これはこれで好きな読後感である。

  • 重い内容だがスラスラ読めてしまった。好きだなー。
    未読の作品を欲しいものリストに登録。

  • 南ア、NY、アフガン、中東でのテロやゲリラ、戦争など、今の新聞の国際面に頻出する地域・テーマを扱っていて、こうしたリアリズムと同時代性が注目されたのだろう。DX9みたいなロボットがほぼ当たり前になりつつある今、これだけリアルに描かれると、もはや事実に取材したフィクションに思えてくる。そしてこれはSFではないと思う。SFはもっととんでもないサイエンス&フィクションでもって、未来を正確に予測し、人間や世界の真実を突くものだ。この本は、限りなく現実のことでもって現実のことを書いている。
    『ヨハネスブルグの天使たち』マンデラを思わせる少年と少女の物語に、旧訳聖書の時代を思わせるようなエピローグ。一番SF的?
    『ジャララバードの兵士たち』アフガン米兵ハードボイルド。いやこれも現実に起きてそうな話。
    『ハドラマウトの道化たち』オリエンタリズムが濃厚。多様性の中の同一性と同一性の中の多様性について考えさせられる。ほか自己同一性のこととかちょっと考えさせられすぎ?
    『北東京の子どもたち』団地以外のエリアのことが気になり過ぎちゃって。
    『ロワーサイドの幽霊たち』この話を読み飛ばしていて、大森望の解説まで読んでから気づいて。結果いちばん衝撃を受けた。9.11についてはあまり向き合いたくないというか、やはりショックでずっと避けていると思う。タワーに突っ込んだテロリストの人生なんか気にとめる価値もないと思っていたけど、モハメド・アタという名前があることに気づくと何とも言えない気持ちになる。もう、そろそろ、9.11のことをたどっていってもいいのかもしれない。

  • (収録作品)ヨハネスブルグの天使たち(直木賞(2013上/149)候補)/ロワーサイドの幽霊たち/ジャララバードの兵士たち/ハドラマウトの道化たち/北東京の子供たち

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著者プロフィール

宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)
1979年東京都生まれ。2010年「盤上の夜」で第1回創元SF短編賞山田正紀賞を受賞してデビュー。12年同名の作品集で第33回日本SF大賞、13年第6回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞をそれぞれ受賞。14年『ヨハネスブルグの天使たち
』で第34回日本SF大賞特別賞。17年『彼女がエスパーだったころ』で第38回吉川英治文学新人賞、『カブールの園』で第30回三島由紀夫賞、18年『あとは野となれ大和撫子』で第49回星雲賞〈日本長編部門〉を受賞。近著に『超動く家にて』『偶然の聖地』『遠い他国でひょんと死ぬるや』など。


「2019年 『宮辻薬東宮』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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