ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 684
レビュー : 108
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093783

感想・レビュー・書評

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  •  空から少女ロボットが降る近未来。閉塞状況の続く世界各地で人々は。

     デビュー時からSFジャンルを越えて幅広い支持をあっという間に勝ちえた、注目の若手作家の2冊目の単独著書でこれまた直木賞候補で話題となった連作短篇集。優れた資質を感じさせる作品。
    「ヨハネスブルグの天使たち」 人種対立の絶えない南アフリカの話。アフリカーナーという白人種たちの選択がなかなかアイロニカル。
    「ロワーサイドの幽霊たち」 911テロを背景に、なんとあのオールディスの問題作「リトル・ボーイ再び」の発想を持ち込んだ作品。ちょっとビックリする内容だが、時制の入れ替えなど高度な技巧を有する作家だとよく分かる。
    「ジャララバードの兵士たち」 内戦のアフガニスタンに持ち込まれた兵器の謎。これもひねりの効いたアイディア。
    「ハドラマウトの道化たち」 「ジャララバードの兵士たち」と登場人物の重なる。舞台はイエメンで、これまた内戦状況でのミッションの話。
    「北東京の子供たち」 現代日本のかかえる様々な問題がさらに進行した状況の中のティーンエイジャーが描かれている。団地という場の特性が上手く活かされている。

     伊藤計劃とバラードが引き合いに出されている帯はどうにもいただけないが(題材など関連は無いとも言えないが、どちらにも似ていないし若い著者が気の毒)、文章は密度が高くミステリ的な技巧にも優れ、沢山の情報に基づいた現代社会の諸問題をヴィヴィッドに切り取る手腕も見事。こうした様々な地域を違和感なく現代的な視点で描くというのはこれまでの日本SFには無かったもので、21世紀に至り随分進歩したのだなあと感じられた。しかしこちらの頭が硬いせいか、全体にシリアスな内容と少女ロボットが落ちてくるアイディアを結びつける必然性が最後まで納得できなかった。自分の中では、アニメ的な風景しか浮かばない少女ロボットたちと世界各地の取り合わせは、ミスマッチによるマジックは生まれずミスマッチのままになってしまっている。

  •  戦争紛争時代背景SFといえば、一昔前は第二次大戦や共産vs資本や社会vs民主や東西冷戦などが多かったけど、本作はアフリカ~中東~イスラムなど、わりと最近に起きた事を背景としていたのが印象的。
     ただ、SFというには非常に惜しい。
     DX以外の世界の出来事や技術に関してはとくに目新しさも無ければ、あったところで実現困難さや驚きを感じることも出来ない。作者の想像の問題か、現代の技術開発速度の問題かは今は論じないが。
     その唯一のSF要素といえる、ボカロが落下したり軍用兵器になったり義体化運用できたり…に関しても。すでに二次元作品などでは様々に表現済であり、義体なんぞはSFの王道すぎてもうね(笑)
     下手にSFなんて冠はつけずに、戦場や軍事を元にしたフィクション小説のような冠にすれば良かったのではないかと思った。

  • 8月27日読了。図書館。

  • 「ヨハネスブルグの天使たち」「ロワーサイドの幽霊たち」「ジャララバードの兵士たち」「ハドラマウトの道化たち」「北東京の子供たち」

  • 新聞評で見たので読んでみたが、私にはさっぱり付いていけない世界でした。コメントもできない・・・

  • 空から少女アンドロイドが降ってくる。
    五つの短編を貫く主題が秀逸。
    日本製の歌う玩具アンドロイドが止める者もいない耐久試験の為にビルから降ってくる。兵器に改造され、パラシュートと共に降ってくる。9.11を再現する為ハイジャックされた飛行機ごと降ってくる。ゲリラ兵となりビルの窓から降ってくる。未来への閉塞感に悩む大人がプログラミングして集団で団地の屋上から降ってくる。

    最初の強烈なイメージといい展開する場所・地域といい、とても日本人が描いたとは思えない。
    いい意味でとても日本人離れしている。
    「ねじまき少女」を彷彿させるが、エンタティメント性には若干かける。
    そこだけ惜しい。

  • 確か直木賞にノミネートされてた…はず。それで興味を持って読んでみました。
    最近の日本のSFは文体がみんな似たような感じで(しかもあんまりうまくない文章)かなり苦手意識を持ってましたが、この作品はあまり抵抗なく読めたし、廃墟で墜落する日本製初音ミクドールのイメージが気に入りました。
    この連作集では日本製ドールが出てくることが共通点ですが、主人公がアイデンティティを喪失していたり、居場所がなくさまよっていたりするのも共通しているかもしれません。
    また、日本のSFの青臭さというかこう中二的な…ものはやや感じますが、短編のせいか心情描写も少なくダイジョウブでした。
    ポスト伊藤計劃といわれてるとかここの感想で知りました…大変ですねこれからのSF作家。なんてったって死んだ方と比べられるのはきついでしょう。
    個人的にはこの作家の方が伊藤計劃よりこなれてる感じがしました。
    また機会があれば読むかも。

  •  通称「歌姫」と呼ばれる日本製のホビーロボット・DX9の落下をめぐる連作。初音ミクを連想させる、ボーカロイドがそのままロボットになったような彼女たちは、再生されたツインタワーから墜落し、廃墟化しつつある団地から飛び降り、あるいは砂漠にパラシュート降下します。
     南アの首都ヨハネスブルグからニューヨーク、アラブを経て東京に至る物語の舞台の、内戦、テロ、虐殺、あるいは自殺といった荒廃した景色を背景に落ちるDX9、のイメージは私は好きでした。

     最初の表題作はあまりピンとこなかったけれど、二話めの「ロワーサイドの幽霊たち」から徐々に惹きこまれ、あとの三作はストーリーがなんとなく連続していることもあって一気に読んでしまいました。
     いちばん好きなのは「ジャララバードの兵士たち」です。鳥葬用の沈黙の塔、デジタルカメラやゲームなど、娯楽用に開発された日本の技術を転用して軍事利用するゲリラ(私も昔どこかで、プレイステーションなどゲーム機の高度な機能は軍事利用できると聞いた)、『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』を想起させる台詞、ハザラ、レズビアンなど、道具立てがとにかく楽しかった。ルイとザカリーのキャラクターもよかったです。
     最終話「北東京の子供たち」の、高齢化によって廃墟やスラムと化していく高層団地群、というのも惹かれる舞台でした。自分が巨大団地に二十年暮らしてその移ろいを眺めていたというのもありますが、この話に描かれている北東京(赤羽あたりかな?)の未来図は結構リアルな気がしました。
    「ロワーサイドの幽霊」は、アメリカ人にはこういうふうにあの同時多発テロを描くことはできないだろうと思いました。このところ東日本大震災を主題にした現代アートを幾つか興味深く見たのですが、そのどれもが外国の作家の手になるもので、やはり日本人にはこういう表現はできないかもなあ、と思って、それと似た感じ。

     作者がどこにもいないような淡々とした文章で、けっして明るいストーリーではないにもかかわらず、読後感があまり暗くないのも個人的にはよかったです。

  • ホビーロボットDX。通称【歌姫】。データをインストールすれば、さも人間のように動き出す。いろいろな場所で用途の違いを見せながらも、人間の世界に関わりをもっていく。人間に取って代わる存在になりうるのか。【ヨハネスブルグの天使たち】【ロワーサイドの幽霊たち】【ジャララバードの兵士たち】【ハドラマウトの道化たち】【北東京の子供たち】

    __ぎこちなさなど微塵もなく動くDXは、読んでいる際にも、ロボットだということを忘れてしまいそうになるぐらい自然に存在していた。近未来を予見できそうな世界観を堪能できた。

  •  何らかの紛争や悲劇のあった地域を舞台にした、5編の近未来SF短編集。
     各短編に共通するのはDX9という日本製のアンドロイド。もともとは歌を歌う愛玩用だったが、ある場所では自ら落下試験をつづけ、ある場所では安価な戦闘兵として戦い、ある場所では人格のコピー保管場所とされている。
     機械人形と生物兵器が横行する世界で、争いの中の人間たちが希望を見いだそうとする構図はありふれた設定で、それを越える何かがあまり感じられなかった。ただ、この作者特有の日常と非日常をつなぐ不安定な作品はもっと読んでみたい。

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著者プロフィール

宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)
1979年東京都生まれ。2010年「盤上の夜」で第1回創元SF短編賞山田正紀賞を受賞してデビュー。12年同名の作品集で第33回日本SF大賞、13年第6回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞をそれぞれ受賞。14年『ヨハネスブルグの天使たち
』で第34回日本SF大賞特別賞。17年『彼女がエスパーだったころ』で第38回吉川英治文学新人賞、『カブールの園』で第30回三島由紀夫賞、18年『あとは野となれ大和撫子』で第49回星雲賞〈日本長編部門〉を受賞。近著に『超動く家にて』『偶然の聖地』『遠い他国でひょんと死ぬるや』など。


「2019年 『宮辻薬東宮』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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