ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 680
レビュー : 106
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093783

作品紹介・あらすじ

9・11の現場からアフガンまで暴力と絶望渦巻く世界五都市にて、日本製の機械人形の存在を通して人の行為の本質を抉り出す連作短篇集。ポスト伊藤計劃と目される気鋭の新人によるデビュー第2作

感想・レビュー・書評

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  • 色々な切り口で攻めることが出来る多才な人だなぁ…と思う。

    この作品は私には硬質すぎて難しかったです。私の頭じゃ理解不能でした。脳内で映像化も難しい、音もしないし匂いも感じない無機質な世界観。それでも天使だったり、幽霊だったり、兵士だったり…使われ方が変化するDX9(歌姫)に、ゾクゾクしたり恐怖を感じたりしました。


    落下によるクラッシュ、偶像崇拝禁止のために顔を削ぎ落とされたり喉を潰されたり…、戦地なので兵士仕様にもなり、近いうちにこんな日が実際にやって来そうで読んでいてこわかった。


    「ヨハネスブルグの天使たち」「ロワーサイドの幽霊たち」「ジャララバードの兵士たち」「ハドラマウトの道化たち」「北東京の子供たち」


    「ジャララバードの兵士たち」でザカリーと出てくるけど、「アメリカ最後の実験」にもザカリーという名の坊ちゃんが出てくるけど、親類とかなのかな…。ザカリー坊ちゃんが好きなので気になって仕方がなかった。


    一見、ストーリーには何の関連もなさそうだけど、地味にじわ~っとつながっていて、ところどころ鳥肌が立った。


    「北東京の子供たち」では、遥空(ノエル)というキラキラネームのママが登場。場違いすぎて、思わず笑ってしまったけど…ちょうど今の子供たちが成長して子供を産んだ頃が舞台かな…。直接的な戦地ではない北東京の描写がほのぼのしていそうだけど、読んでいると不気味で一番こわいような気がした。戦地よりも殺伐としている。こういう描き方がうまいなぁ…と思う。


    宮内さんの書く作品好きで、最近出た作品も楽しみ。早く読みたいです。

  • 人間の業と本質、国家・民族・宗教・戦争・言語がテーマだそう。
    なかなか理解するのが難しい。
    今までに読んだことのない世界観ではある。
    この雰囲気でミステリを描いてくれたら好きかも。

  • 図書館で。SFなんだけど現実の出来事が織り込まれていて所詮フィクションだし、と片付けられない辺りが重い。そして辛い。でも折角再建したビルをもう一回破壊する意図はなんなんだ。
    歌う人形はなんとなく初音ミクみたいなイメージだなあと思いながら読みました。アレはソフトだけでハードは無いけれどもそのうちセットできるギミックとか出来そう。そして何が軍事目的に加工されるかわからない…これ、結構ありえそうで怖い。
    なんかこういうの読むと戦争は既に始まっていた、というようなタイトルの村上龍の作品を思い出す。じりじりと怖い。

  • 表題作を含む5つの短編から成る。SF仕立てだが、時間軸は限りなく現在、あるいは直近の未来。ヒーロー不在のハードボイルドといった趣きだ。とりわけ「ヨハネスブルグの天使たち」と「ジャララバードの兵士たち」は、硝煙の香りのする潤いのない乾燥した世界の中で、今生きていることさえ不確かな、ひりついた状況を見事に描き出す。ここでは、もはやアイデンティティ問うことさえできない。そんな問いは贅沢であると同時に、ここでは空無だからだ。そうした意味で、これは20世紀を突き抜けた極めて21世紀的な小説だと言えるのかもしれない。

  • 子供のころ読んだSFは、化学技術による恩恵で人々はいつまでも幸せに暮らした、というハッピーエンドばかりで人間の知能を超えるロボットや、超高速で走る乗り物が世界に平和をもたらすのだと信じ込んでいた。しかし、時が過ぎ、少し大人になって今度は少し分厚いのを手にした。人間の成長に合わせて、SF作品も成長していく。幸せになるために革新や進歩を求める余り、ごく身近なものが風化されていく事実を目の当たりにするかのように。この物語はそんな「幸福」を求めて見誤った人々によって産み落とされた、負の遺産、すなわちDX9という美しい少女型ロボットについて描かれる。彼女たちに罪はない。ただ愛する人のために歌を歌い、ざらついたノイズのような世界で人を殺す兵器と化し、人々のエゴのために落下と破壊を繰り返していく。歌を歌う少女(=歌姫)という幸福の象徴が、時代を超え、世界のために兵器のために悪魔と化す。戦争が幸せのための手段と言うならば、この世界に救いはあるのだろうか。

  • DX9というロボットを軸として、微妙に時間と場所がずれながらも、短編が繋がっていく近未来SF小説。良く出来ていると思う。思うけれども、伊藤計劃氏や円城塔氏の作品を読んだ後に読むと、ちょっと物足りなさがあると思う。
    それは、書き方や世界観の表現の手法の問題だと思うのだけれども、どうしても似ている感じは否めない。否めないが著者の他の作品を読んでいないので、この本だけが特別なのかもしれない。
    純粋さは記号化された存在となり、個性はノイズとなり排除されていく。いつの時代も人は悩み、現実から逃げ、問題を後回しにして、他人との接触はヴァーチャルな世界となり、ヴァーチャルな世界が、生きていることを実感できる場所となる。ヴァーチャルな世界のテロは、現実の世界に影響は無いが、人の価値観を変えていく可能性がある。繋がりは希薄化し、人は脆い存在となり、機械は耐久性と量産性が重視される。
    SFだけれども、リアルでフェイクな世の中は、人の多面性を排除し、宗教により統一化され、悲劇が連鎖する。信用は連帯に繋がるが、広がりを求めない。人の記号化と個性のノイズ。純粋なデータのみが信頼される世の中に、真の幸福はあるのか。おそらくそれはヴァーチャルな世界の仮想幸福なのかもしれない。苦痛も悩みも無い世界で、無感動で生きていく、何も無い平穏こそが幸せなのだとしたら、思考は邪魔な存在になってしまう。
    人が生きる意味とは何か、死ぬとどうなるのか、考えさせられるが、そこに明確な答えはなく、そしてこの本に求めるべきものではない。

  • SF仕立ではあるが社会派

  • 「スペース金融道」の作者で割と最近ちょこちょこ聞くので、借りてみた。
     DX9というアンドロイドを軸にすすめられる短篇。
     
     2篇目の「ジャララバードの兵士たち」がよかった。
     流浪の日本人、ルイ(本名・隆一)とアメリカの軍人ザガリーの道中。
     殺されたかつてのルイの同級生、ナオミをめぐって展開する軍の暗部。
     
     DX9は単なるアンドロイド、ではなく本来は金持ち用の歌う楽器として流通したが、武器として改造されたり、人格の転写をしたりと多機能。

     余談だが、初音ミクが三次元化するとこうなるんかなーと思ったりした。

  • <あらすじ>
    ヨハネスブルグに住む戦災孤児のスティーブとシェリルは、見捨てられた耐久試験場で何年も落下を続ける日本製のホビーロボット・DX9の一体を捕獲しようとするが―泥沼の内戦が続くアフリカの果てで、生き延びる道を模索する少年少女の行く末を描いた表題作、9・11テロの悪夢が甦る「ロワーサイドの幽霊たち」、アフガニスタンを放浪する日本人が“密室殺人”の謎を追う「ジャララバードの兵士たち」など、国境を超えて普及した日本製の玩具人形を媒介に人間の業と本質に迫り、国家・民族・宗教・戦争・言語の意味を問い直す連作5篇。
    う〜ん。ちょっと苦手なヤツだった。
    日本のSFって、伊藤計劃もそうだけど、やっぱり合わない……。
    とくに、アメリカ編は???だった。

  • 小説

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著者プロフィール

宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)
1979年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部英文科卒業。2010年囲碁を題材とした短編『盤上の夜』で第1回創元SF短編賞山田正紀賞を受賞、各種盤上ゲームの連作短編として2012年『盤上の夜』で単行本デビュー。第33回日本SF大賞受賞、第147回直木賞候補。2013年『ヨハネスブルグの天使たち』で第149回直木賞候補、第34回日本SF大賞特別賞受賞。2016年『アメリカ最後の実験』で第29回山本周五郎賞候補。「カブールの園」で第156回芥川賞候補。同作で2018年第30回三島由紀夫賞受賞。『彼女がエスパーだったころ』で第38回吉川英治文学新人賞受賞。『あとは野となれ大和撫子』で第157回直木賞候補。2017年「ディレイ・エフェクト」(『文学ムック たべるのがおそい』 vol.4)で第158回芥川賞候補。

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