病の皇帝「がん」に挑む ― 人類4000年の苦闘 上

制作 : 田中文 
  • 早川書房
4.32
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本棚登録 : 275
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093950

作品紹介・あらすじ

病巣の切除、X線による放射線療法、抗がん剤による化学療法……不治の病から治療可能な病へといたる「がん」との壮大な闘いの歴史を描きだすピュリッツァー賞受賞作。解説/仲野徹大阪大学教授

感想・レビュー・書評

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  • 映像化されたドキュメンタリーを観ていたかのような読了感。
    そしてこれをジャーナリストではなく、一人の医師が執筆しているということに驚きも感じた一冊です。

    日本の医療エッセイで目立ったものといえば、患者当事者の闘病記や、医療従事者の視点で書かれた治療法などでしょうか。
    なのでどうしても偏りを感じてしまい、良くも悪くも冷静に情報を受け取ることができずにいました。

    しかし、この著書は「がん」という病に対して、患者の存在、医師の存在、彼らが選択する治療法やこれまでの歴史など様々な角度から向き合った内容となっており、ニュートラル。

    読んだきっかけは、あまりいいことではありませんでしたが、読む前に比べ、未来へ目を向けられるようになり、不思議と入ってくる情報も前向きなものに変わっていきました。

    がんに挑んでいるのは、医師だけでも、患者だけでもない。その両方、もしくはもっと沢山の人たちの存在なくしてがんとの戦いで勝利は得られないというメッセージが込められているのを感じました。

    この手の本を読むことは珍しいのですが、ぜひ下巻も読みたいです。

  • 「書き続けることができたのは、この話を語らなくてはならないという、ある意味、切羽詰まった思いがあったから」
    週刊誌の向井万喜男の読書紹介にあったので借りてみた。おもしろいのだが、少し詳しすぎるかも。興味が続かず断念。

  • 上巻だけでも目が醒めるような面白さ。今年読んだ本の中でたぶん一番になると思う。医学だけでなく文理問わず幅広い分野の知識を総動員してがんとの戦いの歴史を描いているので,それ自体がとても興味深いだけでなく,幅広く本質的な教訓が詰まっている。特に歴史の教員として個人的に惹かれたのは,たくさんの人間の七転八倒(この描写が本当にうまい)の果てに現在のごくわずかな進歩がある,という点で,まさに「歴史」というものの面白さの核心をついていると感じた。きっとこの本を読むことでたくさんの人間が慰められると思う。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:494.5||M||上
    資料ID:51600476

  • がん研究と治療に関しての歴史が記されている

  • 癌との戦いの歴史がよくわかる。

  • 闘病の辺りはやはりしんどくて、ソルジェニーツィンの『ガン病棟』を思い出してしまう…けれどメアリ・ラスカーとファーバーの話から一気に読んだ。

  • 「がん」と、その治療に挑む医師・科学者と患者たちの間の長い物語。外科手術、化学療法、放射線療法、予防医療、など、「がん」から身体を守るための戦いの歴史が綴られる。医学的な探求だけでなく、黒胆汁がその原因とみなされていた古き時代の話から、政府やスポンサーから研究のためのサポートを引き出すためのロビイングの話も物語の中での重要なパーツとして描かれている。副題は"A Biography of Cancer"。まさしく、がんの「伝記」として成立している。著者はこの本のことを「真の意味での「伝記」であり、この不死の病の思考のなかに入り込んでその性質を理解し、その挙動を解明しようとする試みである」としているが、まったく正しい。

    単なるがんの解説書と本書とを分ける大きな特徴のひとつに、ほぼすべてのエピソードを個人名とくくりつけた上で記述されているところがある。このことは、特に著者の視点では、おそらく非常に重要だ。まだ存命の人も多いこともあり、本書を書くためには慎重かつ多くのリサーチが必要であっただろう。この本のためにそれが必要であったとしても、敬意を払うべき多大な努力が注がれている。上下巻の大部であるが、読む価値はある。何よりも自分も含めておそらく我々の三分の一か半分はその身に宿すことになる怪物の「伝記」なのだから、その正体について知ることが重要でないわけはない。

    さて、本書のタイトルは、「病の皇帝(The Emperor of All Maladies)」である。もっとも、がんが皇帝のポジションを獲得したのは最近のことだ。疫病など他のすべての病が克服されて初めてがんが病として前景化してきた。「文明化はがんの原因ではなく、ヒトの寿命を延ばすことで、がんを覆っていたベールを取り去ったのだ」。いまや、がんの「克服」は人類がもっとも切望しているもののひとつだ。そして、今はまさにその皇帝が退位する前夜なのかもしれない。

    下巻の中ほどで、がんの発生メカニズムが次の6つの本質的な細胞生理学的変化の現れに求められることが明らかにされる。
    1. 増殖シグナルの自己増殖
    2. 増殖抑制シグナルへの不応答
    3. プログラム細胞死(アトポーシス)の回避
    4. 無制限な複製力
    5. 持続的な血管新生
    6. 組織への浸潤と転移

    これらが遺伝子の累積的変異によって重畳して発生する。「がんを患う」ということは、体内で起きている長くてゆっくりとした「発がんのマーチ」なのだ。「遺伝学的に言って、われわれの細胞はがんの奈落の縁に立っているわけではない。奈落に向かって、徐々に、段階的に引っ張られているのだ」。遺伝学的にがんになりやすい人や、なりにくい人がいる理由も、遺伝子変異を起こす発がん性物質にさらされるとがんが発生する確率が高くなる理由もこれにより説明される。

    「がんの言語は文法的であり、整然としており、そして ― 書くのがためらわれるのだが ― かなり美しい」

    ここにいたって、科学によるがん発生のメカニズムはある程度解明された。また、具体的に発がんに関わる遺伝子もいずれ特定されることだろう。だが、その成果はいまだ効果的な治療につながっていないし、古い治療の効果を説明することもできていないでいる。これからもまだ多くの人が戦いを挑み、そして最後にはいその「伝記」の終わりのページを書くことになるのだろうか。

    ----
    上巻の最後に著者へのインタビューが掲載されている。本書の著者は実際に現場で患者を持つ腫瘍医でもある。患者の存在がこの本を書く動機になったとも言っている。
    そのインタビューの中で、本書の要点のひとつは、「今までの努力は何一つ無駄ではなかった」と念を押すこと、だと著者は語る。この「何一つ無駄ではなかった」は下巻の章題にも採用されている。「本書には歴史に対する敬意が込められています」と語る。そして、インタビューの最後を「書きつづけることができたのは、この話を語らなくてはならないという、ある意味、切羽詰まった思いがあったからだと思います」で締める。著者の思いがにじみ出ている本である。

    最後に。専門用語も頻出する難しい内容だが、非常に読みやすい丁寧な翻訳になっている。ありがたい。

  • ガンの世界を知の集大成とも言うような広い視野で語りかける大作。上巻ではハルステッドの切り取る治療がとても印象に残った。終わりなき人類のガンとの闘いを下巻でどう展開していくのか今から読むのが楽しみである。とにかく重い本なのに読み進めるたびに感心の嵐なのだ。腫瘍内科の先生であり、同い年。ジャーナリストでも歴史家でもあるような素晴らしい著書。今年読んだ本でもっとも感銘を受けた本であることは間違いない。

  • 資料ID:21401161
    請求記号:491.65||M||上
    配架場所:普通図書室

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プロフィール

シッダールタ・ムカジー(Siddhartha Mukherjee)
がん専門の内科医、研究者。著書は本書のほかに『病の皇帝「がん」に挑む——人類4000年の苦闘』(田中文訳、早川書房)がある。同書は2011年にピュリツァー賞一般ノンフィクション部門を受賞。
コロンビア大学助教授(医学)で、同メディカルセンターにがん専門内科医として勤務している。
ローズ奨学金を得て、スタンフォード大学、オックスフォード大学、ハーバード・メディカルスクールを卒業・修了。
『ネイチャー』『Cell』『The New England Journal of Medicine』『ニューヨーク・タイムズ』などに論文や記事を発表している。
2015年にはケン・バーンズと協力して、がんのこれまでの歴史と将来の見通しをテーマに、アメリカPBSで全3回6時間にわたるドキュメンタリーを制作した。
ムカジーの研究はがんと幹細胞に関するもので、彼の研究室は幹細胞研究の新局面を開く発見(骨や軟骨を形成する幹細胞の分離など)で知られている。
ニューヨークで妻と2人の娘とともに暮らしている。

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