誰に見しょとて (Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
3.53
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本棚登録 : 154
レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094124

作品紹介・あらすじ

素肌改善、アンチエイジングから、人体改変まで――美容+医療を謳う革新的な企業コスメディック・ビッキーは、人々の美意識、そして生の在り方までを変えていくが……著者五年ぶりの最新連作集

感想・レビュー・書評

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  • 女性はいつの時代も、いくつになっても、「美」を追求し続ける。
    「化粧」をテーマにした近未来SF連作短編集は、「美容」と「医療」を融合させた「コスメディック・ビッキー」という企業を軸に展開していく。
    第一話目は、コスメジプシーだった女子大生・天音が突然のひどい肌荒れをきっかけに、当時駆け出しの企業だったビッキーの『素肌改善プログラム』で桃の美肌を手に入れる。
    日焼けしたように見せる人工皮膚のシャクドウ・ギア、画像を映すフィルム型アイシャドウなど、近未来のハイテクな化粧品が楽しい。様々な新商品を開発しながら知名度をあげていくビッキー。ビッキーと共に注目を集める、社長の娘でもある広告塔のカリスマモデル、山田リル。急激な業務拡張に、読む側も胡散臭さを感じずにはいられない。
    アンチエイジング、整形、ドーピング…美や若さを追求する上で立ちはだかる様々な倫理観。自傷行為を表現の一つとみなす「リッパー」なる人々も現れる。理想の美を追い求めるほど、「身体変工」の割合が増えていくことに、どこまで突き詰めればいいのかと時に戸惑う人々。時代の流れに身をまかせ、躊躇せず己の理想を目指して邁進する人々。多種多様な欲望を実現していくビッキーは、さらに壮大な計画に向け突き進む。
    そんな中、リルを襲った突然の事故。ここからリルを取り巻く状況もまた変化するのだが、やはりここでも胡散臭さを感じる部分が多々あり。アンチ側を煙に巻くビッキーの手法に、ただならぬ腹黒さを感じ、第一章で「もしかして…」とうっすら感じていた『素肌改善プログラム』に関してのモヤモヤは、最終章で的中する。
    先進的な美容法が、幸せを生み出すのか…それは私にもわからない。でも…
    「<化粧する文化>。これはもう、人類の遺伝子に刻み込まれているとしか思えないね。」
    この一文には心から納得である。
    効果的に挿入される「古代」のエピソードが、人類の「美」への目覚めを語っており、やがて現れる「巫女」的女性はある人物と重なるかのよう。未来と過去が交錯する最終章は壮大なフィナーレという感じで、お見事でした。女性だから描けるSF。

  • 化粧品(コスメ)と医学的(メディカル)を足した複合語<コスメディック>を社名にした巨大企業『コスメディック・ビッキー』とかかわる人々の話10篇。

    想像力に欠ける私は、自分の美を追求していく話?としか考えが及ばず、1つ1つ読み進めていくたびに、思いもかけないところに連れて行かれる感覚に、夢中になって読み進めてました。

    ビッキーの追い求めているものを知ろうとすればするほど
    私もコントロールされてしまっているような恐さもあり…
    ビッキーの商品をなにか試すとしたら、
    私はステラノート入り香料と人工鰓かなぁと。

    自分を嫌っていて、自信もないのに、
    素肌改善プログラムやアンチエイジングを試そうと思わなかったのは
    こんな姿でも何も手につかない程悩みぬいている訳でもなく、
    少しは満足してたんだ…っていう発見がちょっと嬉しかったりもして。

    化粧って、まさに「自分のため」
    下手だからって言い訳して、自分と向き合うことを長年避けてきちゃったと反省する一冊です。

    菅浩江さん、初めて読みました。
    最後の『化粧歴程』が言葉の洪水で、今頭の中が整理できない状態ですが、読み応えがあり、睡眠時間を削って読んじゃいました。
    他の作品も是非読んでみたいと思います。

  • 上手い!小説としての組立て、文章の勢い、伏線の畳み方、どれをとっても納得の出来。書きたいことを書いているというパワーと読者にそのパワーをしっかり伝えるテクニックがばっちり噛み合わさっている傑作。
    ラストは少々情熱あふれすぎの気配もあるけど、それがまた妙にエエ味付けになっていて。

    人間の文明は同族の殺戮部分(戦争)以外を除いて「便利に・楽に・美しく」を目指して発展してきた一面はあると思う。
    特に自分を美しく見せたいと言う欲求は、原初は生殖行動に起因するものであったかもしれないが、次第にその範ちゅうを外れ、それそのものが目的となって発展し再分化していってる様相もあり。
    では、その欲求の行きつく先はどこなのか?

    登場する企業「コスメディック ビッキー」の異常な発展、この企業の社長山田キクと専属モデル山田リル母娘の気持ち悪いまでのポジティブさ、とにかく怪しさ満載。
    彼女らの言動一つ一つは決して間違ってないし、むしろ彼女らをとりまく周囲の方が嫉妬羨望の出る杭は打つ的なアカン感情を持って動いているはずやのに、こ新興宗教の勧誘員にも似た作られた感溢れる「満たされ」面した母娘に違和感感じまくり。

    その違和感と怪しさが頂点に達してのラストで、前述の「溢れた情熱」が効いて、この作品をグイっと引き締めている。その他の伏線も「溢れた情熱」に絡めとられて収束する物語。これスゲーわ。

    人生40年以上ヘタれで過ごしてきたので、せめてこれからはポジティブに生きたいし、倒れるなら前向いて倒れたいし、くじけてる暇あったらスクワットの一つでもしたいと思ってる俺なんだけど、この本を読んで「行き過ぎたポジティブって人間から離れていくのかもなぁ、ウチュージンになるのかなぁ」と思ってしまった。

  • これは良い意味で、ドラえもん小説だと思う。『永遠の森 博物館惑星』のムネーモシュネーに引き続き、化粧品ビッキーという万能の科学技術を中心に、人間ドラマが展開している。帯に『永遠の森』が引っ張り出されているのも納得だ。
    ただし、『永遠の森』が胸の奥にそっとしまっておきたいような心温まる物語だとしたら、『誰に見しょとて』はSFらしい警鐘や示唆に富んでいる。とくに、介護の匂いの不快感を軽減したり、アスリートやモデルの身体を改造したりすることで起こる人間の心の変化には唸らされた。また、短編ひとつひとつの書き方には工夫が凝らされ、著者はもう確固たる地位を築いているにも関わらず、初期作品のような野心さえうかがわれる。物語が古代日本のヒミコ譚から宇宙エレベーターにまで飛躍するのにも驚かざるをえない。
    それほどに実験的でありながら、読後が爽やかなのは、本作が人間の善に対する著者の信頼でしめくくられているからだろう。そこがバラ色といえばバラ色だが、「夢だっていいじゃない」と呟きたくなる。

    個人的には、後からじわじわとくる『永遠の森』を抜くことはできなかったので星は4つ。だが、SF世界を少し押し広げるような作品として、また化粧というものを見つめなおさせてくれる作品として、心から敬意を払いたい。

  • ひっさびさの菅さんの新刊ー!
    おっもしろかった。
    わたし自身はメイクには興味がなくて・・・自分の顔にもあんまり興味がない・・・スキンケアだけでもきちんとしておきたい、と思うくらいの人間でさえ、メイクアップ業界SFについて本作で出てくる化粧品、そう、装う品々について興味しんしんでいらずにはいられなかった。

    どんどん技術が発達していくと、こういうのもありなのかな、という商品の作り。
    そして、装う人間の意識についての洞察には、うなずくばかり。

    最後の、名前のねたについては、おおおおおそういうことかー!と、そこで短編の全部がキレイにつながって一気に立体的に作品として立ち上がってきた。圧倒された。

  • SF

  • 人の美に対する情熱から人類の進化まで話が広がる連作短編集。
    人工と天然の境界線が曖昧になる、気がする。

  • 美容や化粧は自分のためのもの。
    女子じゃないと理解しにくいであろうこの事実。

  • とてもまとまっていて、すごくよくできた連作短編集だと思います。
    身近な化粧というものが主軸なこともあって、一気に読みました。

    一つの化粧品会社が徐々に頭角を現して次第に世界を変えるまでになっていくのを、それぞれの短編のキーパーソンの目線で見つめていきます。
    何がすごいって、話が進んで規模が大きくなるにつれて会社自体の胡散臭さがどんどん増していくこと。しかもそれは決して否定的には描かれません。非常に前向き。なのに空寒い。むしろ少し恐怖すら感じました。
    物語は、作中のある人物のように、最後まで否定することを拒否して進みます。

    読後は不思議な余韻と疑問に包まれました。
    作中の人物たちが感じたように、彼女の本当の心の在り様、このまま人類はどこへいくのか。いい意味でもやもやすることばかりです。
    ただ一つ間違いないのは、その執念に圧倒されたということ。

    各伏線も含めて全体でまとまっていて、とてもきれいな小説だったと思います。
    おもしろかった。

  • 美容整形のSF。
    近未来の美容整形はこうなるんだろうなという予想。目線が女性感覚のため、ついて行けず。
    どれも同じようで変化、トリックに欠け飽きる。

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著者プロフィール

1963年生まれ。SF作家。2015年、『放課後のプレアデス みなとの宇宙』のノベライズを上梓。他の著作に『おまかせハウスの人々』『プリズムの瞳』など。本作がはじめてのビジュアルブックとなる。

「2016年 『GEAR [ギア] Another Day 五色の輪舞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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