イエロー・バード

  • 早川書房 (2013年11月8日発売)
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本 ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784152094155

作品紹介・あらすじ

〈PEN/ヘミングウェイ賞・ガーディアン新人賞受賞〉イラクに派遣された二十一歳の兵士が語る、戦場における生と死、友情と絶望。イラク戦争世代にしか書けなかった鮮烈なデビュー長篇が登場

感想・レビュー・書評

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  • イラク戦争に従軍したバートルは、従軍する兵士達を送り出す式の日に同じ隊の18歳のマーフィーの母親からマーフィーを無事に連れ帰ってほしいと頼まれる。軽々しく母親と約束をしたバートルを上官のスターリングは、バートルを殴りつける。ただ、マーフィーの母親を安心させたかっただけなのに。だが、その約束がどういうことになるのか、凄惨な戦場の中でバートルは知らされる。

    出版された頃から気にはなっていたけれど、読むとつらそうだなぁと思い、手に取らないでいたのだが、図書館で見かけ、つい借りてしまった。やっぱりつらかった。
    あとがきによると、徴兵制だったベトナム戦争と違って、イラク戦争の志願兵は除隊後の仕事や大学奨学金を求める貧困層の若者が多かったと知り、より複雑な思いがあふれる。世界各地でいまだ続く戦争は、兵士にとっても癒えない傷を多く残すのだ。

  • イラクに派遣された青年兵士、年下の兵士の物語。
    年下の兵士の母親に「あんたがあの子をわたしのところへ連れて帰るって約束して」と言われた言葉が軛となった青年兵士がその兵士との友情を交わしつつ戦地を生き、年下の兵士のナイーブな故の死をどう扱い、どのような結果になってしまったのか、を淡々とした文章で書いていました。

    からからに乾いた大気の中を目隠しをされて歩かされているような、そんな印象を受けました。文章の中から遣る瀬ない乾燥した世界が迫ってくる、そんな気がします。

    ほぼ言いがかりのように始めたイラク空爆とその後の泥沼。不条理の中での生と死と、様々な事を体験した人で無ければ書けない現地の生々しさが静かだけれど激しく伝わってきました。

  • 傑作戦争小説。イラク戦争を一人の帰還兵の視点と回想を交えて描いた小説。終盤で明かされる真相がもたらすインパクトが大きかった。純粋に個人の視点と心理描写で展開されてるのに最後まで飽きない内容だったのが良かった。

  • 初読。イラク戦争を舞台にした戦争/青春小説である。イラク・フセイン政権との湾岸戦争で米軍は被害を殆ど出さずに勝利した。物量と科学力を背景にした湾岸戦争はコンピューター制御による大規模な空爆を中心とした現代的戦争だった。その火種は彼我の戦力差への絶望感を産み、イスラーム戦士を攻撃の対象を軍事目標から民間人へと転換したテロリズムに走らせた。それに応じたイラク戦争は大規模な地上軍を展開し、さながらベトナム戦争を想起させる泥沼化の様相を呈した。動員された兵士は、敵味方の区別がつかないゲリラ戦に苦しみ、帰国後は後遺症による現実社会への不適応に苦しんだ。イラク戦争に従軍した作者はイラク戦争を描くにあたり、かつてのベトナム戦争文学を意識的に模している。作者の分身である主人公の青年バートルにとって「国家/家」とは「父」が不在の不安定な存在であり、それが彼個人の存在に不安定さの影を落としていた。彼は自ら戦争の大義を、ひたすらに初年兵のマーフィを生きて祖国に戻すことに見出すが、マーフィーは過酷な戦場で次第に精神的に消耗してゆく。

  • [2014.04.01]

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