みずは無間 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 240
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094209

作品紹介・あらすじ

【第一回ハヤカワSFコンテスト受賞作】雨野透の人格が転写され宇宙を旅する惑星探査機。彼の中の、地球に残した元恋人みずはと過ごした記憶が、宇宙の危機を招来する……壮大な思弁的宇宙SF

感想・レビュー・書評

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  • 「それはあなたです」
    みずはの「飢え」を一歩退き、醒めた眼で見ていた筈の透は永い時の中で彼女の記憶に蝕まれ、いつしか雨野徹は単なるみずはの共鳴器に成り果てる。これがストーカー小説だというのは適切だろう。ハードSFかと言うと、色々な小道具について擬合理的な説明がついているとは言い難いが。永遠を生きる知性は果たしてまともな精神を保っていられるのか、その問いかけに空恐ろしい解を提示している物語。

  •  宇宙探査用の人工衛星に搭載されたAIは、退屈しのぎに人工の知性体を創りながら、大宇宙をさまよっている。その一方で、AIの元となった雨野透の恋人みずはのフラッシュバックが執拗に「彼」を悩ませる。
     ひとくちちょうだい。
     と、いつも口寂しく何かを食べていたみずはに振り回される記憶が、何万年にも渡る退屈な漂流とやがて始まる闘いの合間合間に違和感なく差し込まれる。日常と非日常が交差しながら、やがてみずはに関する記憶そのものが大宇宙の運命を左右させていく。
     壮大なホラ話になりがちなストーリーだが、過食症の恋人みずはのやや重い言動と緻密なハードSF設定が見事に融合された作品。

  • S-Fマガジン2014年1月号に第一部のみ掲載されていたので、続きが気になって手に取りました。
    読了してまず思ったのは、タイトルの付け方が巧いなぁと。
    リーダビリティに富んだ読み手を飽きさせない筆力でぐいぐいと物語に引き込んでくれる。
    思いもかけない展開になっていくわ、なんとも言えない読後感を残すわで、色んな意味で凄い作品だなと思います(良い意味で)。
    読み始めと、読後の印象がここまで変わる小説というのも面白い。
    あんまり人には勧めにくいけど、個人的にはとても良かったです。
    時間を置いてまた再読しようと思う。

  • 一気に読了。第一回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞の本作、期待を裏切らない面白さ。グレッグ・イーガンの「ディアスポラ」を彷彿とさせるが、日本型ディアスポラというか、最先端の宇宙論、物理学を下敷きにした世界感だけど、ラノベ的ストーリーを挟み込みつつ、しかしラノベ的まったり文体ではなく、きっちりした翻訳SFのテイストという、珍しいバランス感覚の作品。次の作品にも期待したい。

  • 人間の人格をコピーした宇宙探査機が主人公っていう設定は面白かったのだけど、あまりにも状況設定が壮大すぎて頭に入ってこなかった。

  • おおおイマドキのSFだ…なんとなく…
    分かりますかこの感じ…

  • SF。
    無人探査機にコピーされた人間、雨野透の人格が主人公。
    可愛らしい表紙から軽めのSFかと思っていたら、なかなかにハードなSFだった。表紙の女性、少し細すぎなのでは…?
    大きく盛り上がるシーンはなかったように思うが、一冊を通して、スケールが大きく、奇抜な展開が続く。
    とにかく変わった読後感の作品でした。

  • 他の受賞作も読んでみたくなりました。

  • 人格をコピーしたAIを搭載した宇宙探査機が宇宙を旅する話。
    序盤は暇つぶしに自己改造したり、人工知性体を作ったりする話。そんなミニエピソードが続くのと思いきや、元人格と依存症の恋人の「飢餓」を軸に、宇宙規模の崩壊が始まる。
    技術レベルや、話の規模がどんどんインフレしていく様子と、元人格の話がうまく組み合わさるところが良い。

  • 良くも悪くも日本人のSFって感じ

  • ハヤカワSFコンテスト第1回受賞作。

    円城氏の「バナナ剥きには最適の日々」に出てくる人工衛星のAIのモデルが過食症の彼女を抱えた研究者だったら、こうなるのかもしれない。というのが初めて読んだ感想。

    結局、落ちはよくわからん。
    SF的な用語は考証不足かもしれず。なんか違和感がちょこちょこありました。

  • 無人探査機に搭載されたAI-雨野透。退屈な日々。思い出す-地球に残した彼女「みずは」。彼女はひたすら求める。食、愛、優しさ。

  •  復活したSF作家の登竜門ハヤカワSFコンテスト第1回の大賞受賞作。
    平凡な理系大学生である雨野透の人格が転写されたAIを搭載した無人探査機が宇宙を旅していく話。寂しい宇宙空間でまれに起こる他のAIとのコンタクトや退屈しのぎに行った一人遊びが気が遠くなるような時の流れの中で思わぬ出来事を巻き起こす。
    (以下多少展開にふれます)
     みずはむげん、というタイトルの読み方でこのみずはというのが雨野透の依存体質の彼女で過食症になりどんどん悪化していく思い出が何度もフラッシュバックする。退屈しのぎに作った人工生命が長い時の間に暴走し、自らの強迫観念であるみずはが宇宙自体を脅かすという様な話で、結局他者や他者との関係についてはあまり登場せず、(みずはも自らの中でのイメージであり)自分で宇宙がいっぱいになり破滅していくような話で「自らを呑み込む蛇」がキイイメージとして出てくるところがコアなのではないかと感じた。
     そういう意味ではなかなか面白く、実際SFマガジンに掲載された第1部は面白く読んだ。しかしその後に話がエスカレートしていく割には文章にスピード感が増す印象は無く、また断片的に面白そうなアイディアや表現が出てくるものの(こちらがコンピュータ用語などに弱いせいもあり)それがダイレクトに伝わって来ない気がした。みずはのキャラクターには怖さがあるので、ドロドロになったみずはが雨野に襲いかかるような身体的に訴えかけるような描き方が入ったりすると面白かったのではないかなあ。

  • それをSFでやらなくても…と思いつつ、甘ったれ系の普通っぽい女の子の依存ぶりが依存先の人間の頭の中で宇宙を飲み込むレベルに肥大していくのは怖すぎた。SF的な言葉や用語がわからなくても十分楽しめる恐怖小説だった…。(内外自他どっちの意味でも)依存的性質について困ってたりすると、もうどこまでも逃げ切れない希望の無さ。個人的には恐怖小説として好み。休憩本にすると前後を見失ってちっとも進まなかったので、一気読みに。

  • 難しいけど、こういうの好きなので。
    なんかすごかった

  • 読んでて日本語がわからない。テーマが整理されていないし、言葉も整理されていない。思春期の子を見ているようです。魅力はあるものの私はもう少し落ち着いている方が好みです。

  • 読む前は表紙のイメージから、宇宙を舞台にした甘いラブロマンスを想像していた。いま思うと何でそんなふうに考えてたのかよく分からない。
    まさか魑魅魍魎と戯れながら餓鬼に追いかけられるサイコホラーだとは思ってもみなかった。

    退屈と飢餓と逃避と諦観。
    読んでいると心に湧き上がってくる、生々しい「厭わしさ」「うんざり感」はある意味凄い。
    読後の何とも言えない胸やけ感を持て余す。

    かなりマニアックなSF要素が詰まっていて、話の構想をちゃんと呑み込めた気がしなかったので、いずれ完全に消化すべく再挑戦してみたいという思いもある。

    分裂と統合の繰り返しでアレが増幅していくところは非常にゾクゾクきた。

  • ベースはゴリゴリのSFなのに、その一方で主人公の語る学生時代、過食症で依存症の低身長ぽっちゃりメンヘラ彼女との恋愛の記憶が生々しいし痛々しい、なんとも不思議な食感のSF小説でした。表紙がスイーツな宇宙でかわゆかった。宇宙と個人の精神の質量は果てしないのかなぁ、などと思いました。

  • 無人探査機のAIが主人公。このAI、量子チューリングの論文から自分を作り替えたり、暇を持て余して疑似生態系をシミュレーションしたりするから、理論物理好きにたまらない。転写元人格の透に残るみずはとの記憶が徐々にミステリじみてくるところも良かった。今まで読んだことないタイプのSF。
    無間の語源って八大地獄だけど、それを考えると、このタイトルはとても意味深。全く関係ないけど、某涼宮ハルヒの情報統合思念体を連想した。

  • 「それとも、あいつを探すべきかもしれない。並行世界の壁をぶち破り続けているあいつ、<デコヒーレンス派>の俺。あいつに聞いておけばよかった。別の世界に逃げ込んで、このけたくそ重い情報を。身軽な自分を探す旅に出る方法を。」


    ずっと気になってた。
    読んで見た感想としては、
    人工実存としてのSFの部分は、完全に思考実験的なもので、情報とは何かとか考えてたりするのだけれど、
    一方、みずはとの思い出の部分に関しては、
    みずはが就活してたりとか糖尿病になったりとか 変なリアリティがあったりと、なんか不思議な作品。
    とりあえず、主人公のうじうじっぷりが、いいよね!
    面白く読めました。

  • 面白いの一言

  • 面白くないけど笑えた

  • AIが人格を与えられ宇宙探索するが、人間の頃の記憶、過食症の恋人「みずは」に悩まされる。
    SFだけどホラーのようなストーリー。特にDという生命を生み出しコントロールしたり、AIである自分をコピーして分裂したりとなかなか怖い。
    後半はテンポアップし過去が次々と発覚していき、オチも面白かった。

  • 面白い!
    ほぼ独り言で思索的な話なのに、ここまで引き込まれるとは。
    あてもなく何千年も一人でいればそんなもんかもなあ、と思う。

    みずはの記憶がうっすらと哀愁を添えていて、切ない。

  • 探査船に積まれたAIが、自身が人間だった頃の過食症の恋人の幻影に悩まされながら、数万年に渡り宇宙を漂うお話。他愛のない日常の記憶とハードSFな展開が交錯する様は、一人セカイ系とでも言えましょうか。システム用語や量子論的概念が何の注釈も無しに乱れ飛ぶあたり読む人を選びますが、一人称の軽妙な語り口はラノベのような敷居の低さがあり、引き込まれます。
    また、主人公がヒマつぶしと称して繰り出すあれやこれやはAIや探査機の概念をとっくに凌駕していて、「そんなことやっちゃうんかい」と、翻弄されつつもツッコミを入れながら読んでしまいました。
    妙な感慨深さと切なさと恐怖の入り混じった読後感は、さながら良質のホラーのようです。

  • 作者の理知と(片寄らない)現代的センスが現れた文章がとても好きだ。物語としては、ただただ逃避し続ける主人公という、そこにさらに大きな構造を求めるのは良くないことなのか。
    「皆勤の徒」に次いで今年読んだなかで面白かったSF。年末は良いSFを読めた。

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