深紅の碑文 (下) (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094247

感想・レビュー・書評

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  • 「華竜の宮」の第八章からエピローグ直前までの、空白の40年余りを描いている作品。


    青澄、ザフィール、ユイ。それぞれの信念があり、相容れないものがある。絶対的な正しさがあるわけではない。

    ユイは、幼い頃の純粋な気持ちをそのまま持ち続けていて、それは眩しくも感じられるだろうな。強さともいえる。
    宇宙船開発について、状況が全く違っていて比較するわけではないが、コロナ禍での「不要不急」とは、ということが思い浮かんだ。

    アシスタント知性体であるマキの言動に心が動かされる。人工知性体。魚舟、獣舟、ルーシィ。人間の定義とは一体なんだろうと考えさせられる。

    血の代償を忘れず、足掻き続ける。希望を感じられるラストだったと思う。

  • これ、シリーズものの続編だったのですね。
    耐えられずに乱読してしまいした。SFはそんなに得意じゃないみたいで、星3つです。

  • 壮大なスケールのSF大作でした。スパンが長いこと。読み物的には華竜の宮の方が、グイグイ引き込まれて面白かったが。人類はどうなるんだろうと言うまま終わってしまった。私の中ではマキはやはり男性なので再登場してくれて嬉しかった。彼の青澄に対する感情めいたものが心に残った。そして青澄にも人らしい感情があって良かった。

  • どんなに頑張っても人類の歴史は「深紅の碑文」なのか。
    信念の人々の揺るがない様を、美しいと感じると同時にしんどくなる。
    だけど後味は悪くなかった。

  • 「夢と希望の物語だ」と言ったら言い過ぎだろうか。
    リ・クリティシャスという人類滅亡の危機に積極的な遺伝子操作の受け入れという手段で生き延びた人類に訪れる再びの人類滅亡の危機。
    「その時」を受け入れるのか逃げるのか、それぞれの登場人物たちは誇りにかけて信念のままに生きる。
    正しいか正しくないかは「その後の歴史が決める」とはよく言うが、この物語では恐らく、その後の歴史すらがその成否を決めることは出来ないだろう

  • 「華竜の宮」続編。
    一線を引かれた視点は感情移入を水際で留め、傍観者の立場にさせる。
    ただ傍観する、この恐ろしさ。
    そして真逆の圧倒的な臨場感、このリアルさ。
    利権をめぐる諍いは永遠に絶えないのだろうか。
    血を、最後の一滴まで流し続けない限り、争うことを止めないのだろうか。
    人は全知全能ではないけれど、知恵を出し合い能力を高め合うことはできるのに。

  • SF。小説で☆5は初めて付けるかも。
    前作(時系列が少し前で同じ舞台)の「華竜の宮」もそうだったのだけれど、組織や社会とそこで動く人と個人との距離感が抜群で、組織の非情さ/融通の利かなさ/影響の大きさ、を外から見たときの描写に現実社会と比べても全く違和感を感じない。ファンタジーは所詮個人の創作した物語、という見方は存在すると思うのだけれど、歴史、伝記などとこの、素晴らしいファンタジーを描写で同列に比較できるということは、史実であっても結局人が構成し直した物語となるのであって、文章で表現できること、表現しようと思う事は、結局著者の視点や考え以上には広がらないということなのだ。つまり、リアリティがあって、とても面白いという事です。。
    あと、文章が、激情と抑制の間の揺らぎだけを写し取ったようで、好きです。
    <大異変>後のお話も、続けて欲しいなあ。

    ・世間は…何かをやろうとする者に対して、いつも減点法でしかものを言わない。これはだめだ、それは間違っている。失敗したらどうするのか、もっといい方法があるはずだ、なぜ、こちらのほうを選ばなかったのか、どうしておれたちが言う通りにしないのか、そっちへ行っても何もないぞ―と。
    でも。
    人間は、減点されるために生きているわけじゃない。誉められるために、生きているわけでもないのだ。

    ・人類は夜空を見上げたときから、いつか、あそこへ行ってみせると決めたのです。

    ・でも、私たちはこのまま進みます。ザフィールも、きっとそれを一番喜びます。誤解があっても、それを解く必要などまったくないというのがあの人の口癖です。行動がすべてを物語るのだから、世の中の人々が許さないのであれば、自分たちは潔く消えていこうと…。

    ・「機械を仲間だと思っているだろう?はみ出しているという意味では他の連中と同じだ。」
    「人間を愛する能力がなくても?」
    「それは人間にとって絶対に必要な条件じゃない。

    ・私は―核エネルギーというものは、使わずに済むならそのほうがずっといいと思っています。本当はあの技術は地球外―つまり、宇宙開発用に限定したほうがいい。
    …人類が宇宙へ出る理由―そこには科学の研究、産業の発展、社会や生活圏の拡大…様々なものがありましょうが、技術発展の問題とは、実は、その一番の理由となるべきものではないでしょうか。地球でやれないことを宇宙でやる―地球上では害悪にしかならない技術、社会を壊しかねない技術も、宇宙での生活なら役に立つかもしれません。

    ・「…海上民にとってアキーリ計画がどういう意味を持つのか―私は、ほとんど考えてきませんでした。海も陸も同じ人類だからと、一括りにしていたのは私のほうですね。海上民にとって、アキーリ計画は何の意味も持たない。陸で反対している人たちと同じく。そんな状況下で、私たちはアキーリ号を出発させる…」
    「…パンディオンの救援活動に対してもね、何の意味も認めていない海上民は多いよ。陸からの干渉は必要ない、何もしないでくれと」

  • いよいよ、たっぷり「オーシャンクロニクル」の最終編!?
    短編で読んでいたものが、少しづつ繋がる。
    「ウォーターワールド」の世界感ですが、物語の深さが全く違う。
    すごいです。おぼれそうです。

    リ・クリテイシャス以降の世界で、「華竜の宮」の続編です。久しぶりにSFにどっぷり浸かって、何をどう書いたものか?
    ・来るべきプルームの冬に向けて、どう生きるのか?
    ・ラブカとシラテガ
    「リリエンタールの末裔」の彼も登場します。

    読み慣れたのか?作者の熱量が落ちたのか?「華竜の宮」ほどの面白さは感じられないものの、この練られた世界感は大好きです。

    惜しいな。もう少し、この物語を続けて読みたいです。

  • 深紅の碑文 (下) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

  • 前作を読んでいなかったので、最後まで魚舟とは何なのか、それを知りたくて読み続けた。
    そのため、とうとう物語に集中できないまま終わってしまった。
    海上民と陸上民とは民族の違いくらいに思って、対立の根深さを理解したのも相当後半となった。

    初めて読んだ者にもう少し説明が欲しい。

    設定は予想外で魅力的だし、言葉も美しくて素晴らしいと思ったが、人物の内面を理解できるような表現が少なかったように思う。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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