深紅の碑文 (下) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 229
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094247

感想・レビュー・書評

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  • SF。小説で☆5は初めて付けるかも。
    前作(時系列が少し前で同じ舞台)の「華竜の宮」もそうだったのだけれど、組織や社会とそこで動く人と個人との距離感が抜群で、組織の非情さ/融通の利かなさ/影響の大きさ、を外から見たときの描写に現実社会と比べても全く違和感を感じない。ファンタジーは所詮個人の創作した物語、という見方は存在すると思うのだけれど、歴史、伝記などとこの、素晴らしいファンタジーを描写で同列に比較できるということは、史実であっても結局人が構成し直した物語となるのであって、文章で表現できること、表現しようと思う事は、結局著者の視点や考え以上には広がらないということなのだ。つまり、リアリティがあって、とても面白いという事です。。
    あと、文章が、激情と抑制の間の揺らぎだけを写し取ったようで、好きです。
    <大異変>後のお話も、続けて欲しいなあ。

    ・世間は…何かをやろうとする者に対して、いつも減点法でしかものを言わない。これはだめだ、それは間違っている。失敗したらどうするのか、もっといい方法があるはずだ、なぜ、こちらのほうを選ばなかったのか、どうしておれたちが言う通りにしないのか、そっちへ行っても何もないぞ―と。
    でも。
    人間は、減点されるために生きているわけじゃない。誉められるために、生きているわけでもないのだ。

    ・人類は夜空を見上げたときから、いつか、あそこへ行ってみせると決めたのです。

    ・でも、私たちはこのまま進みます。ザフィールも、きっとそれを一番喜びます。誤解があっても、それを解く必要などまったくないというのがあの人の口癖です。行動がすべてを物語るのだから、世の中の人々が許さないのであれば、自分たちは潔く消えていこうと…。

    ・「機械を仲間だと思っているだろう?はみ出しているという意味では他の連中と同じだ。」
    「人間を愛する能力がなくても?」
    「それは人間にとって絶対に必要な条件じゃない。

    ・私は―核エネルギーというものは、使わずに済むならそのほうがずっといいと思っています。本当はあの技術は地球外―つまり、宇宙開発用に限定したほうがいい。
    …人類が宇宙へ出る理由―そこには科学の研究、産業の発展、社会や生活圏の拡大…様々なものがありましょうが、技術発展の問題とは、実は、その一番の理由となるべきものではないでしょうか。地球でやれないことを宇宙でやる―地球上では害悪にしかならない技術、社会を壊しかねない技術も、宇宙での生活なら役に立つかもしれません。

    ・「…海上民にとってアキーリ計画がどういう意味を持つのか―私は、ほとんど考えてきませんでした。海も陸も同じ人類だからと、一括りにしていたのは私のほうですね。海上民にとって、アキーリ計画は何の意味も持たない。陸で反対している人たちと同じく。そんな状況下で、私たちはアキーリ号を出発させる…」
    「…パンディオンの救援活動に対してもね、何の意味も認めていない海上民は多いよ。陸からの干渉は必要ない、何もしないでくれと」

  • 確定された闇に向かってそれでも踊り続ける人間のしたたかさ。こんなに暗いのに光まみれだ。

  • 久しぶりに一気に読みました。ザフィールのパートが読んでいて面白い。青澄理事長、切ないです。

  • 「華竜の宮」の続編。上下巻の大作。
    世界の終わりが近づいているという閉塞感。そこで必死にもがき続ける、様々な登場人物たち。善だとか悪だとか単純なことではない。頑張ったから報われるわけでもない。でも生きるためには与えられた環境で戦い続ける以外にないんだ。
    リーダーシップ、組織運営・・・SFではあるが、いろいろな要素が詰まっていて、ビジネスマンでも楽しめる本だと思う。

  • 「華竜の宮」の続編。そら是非とも読まなアカンという期待を裏切らない大傑作。SFのキャンバスに描く一大人絵巻の素晴らしさ。縦糸横糸がつむぐ圧倒的な画に心打たれるばかり。

    どんな状況であっても、例え間近に絶滅規模の大異変が迫っていても、人間誰しも、信じるべきものがあり、進みたい未来があり、それに向かって突き進む自由があるんだけど、その道に他人の道が干渉した時、力づくで道を奪い合うのか?話し合って妥協点を見つけるのか?…なんぼ教えを受けても悟ったつもりでも結局血を洗う方を選んでしまう俺たち。

    結局争う事が本能となっている俺たち、でも本能の赴くままに生きて行けばいずれ死ぬと分かっているから、欲求を抑えて共存を模索してかんとアカン。

    根源的かつ重たいテーマを考えさせる作品としても、このシリーズは素晴らしい。重たいテーマを背負わせるくせに物語として面白いのも素晴らしい。

    次こそ「ブルームの冬」遭遇時の人間を描くのか?それとも宇宙に飛び立ったオリジナルマキ達を描くのか?まさかルーシィが主人公?

    いずれにしても非常に楽しみである

  • 上・下巻の感想を併せて。

    世界観がすごい。スケールが大きい上に緻密。登場人物も魅力的である。
    SFの醍醐味が存分に詰まった大作。

  • 「華竜の宮」その後。前作に引き続いて王道SF路線まっしぐら。惜しむらくは、「大異変」等の用語解説がないところ。3年も間が開いてるんだから、簡単な説明はあってもよかったのでは?。

  • 「華竜の宮」の続編。

    面白かったー!!!
    やっぱり上田さんの作品はスケールが大きくて良いなぁ。
    あまりの濃厚さに、読み終えた後はどっと疲れるんだけど(笑)
    一度読むとその後何年間も忘れられないような作品です。

    近未来、未曽有の環境変化に人間はどう対応するのか?
    SFではあるんだけど、全面に押し出されているのは、
    政治、利害関係、駆け引き、そして人と人との繋がりですね。
    前作にも登場した青澄とアシスタント知性体マキが再登場。
    ただマキ君がマキさんに……(笑)まぁこっちはこっちで良いけど。

    海上民と陸上民。同じ人間なのに相容れない存在。
    どちらの言い分も決して間違いではなく、妥協点は見つからない。
    大異変を前に、人間同士で殺し合いをしている場合ではない、、、
    けれど目先の事しか見えないのは、現実の世界でも同じですね。

    次々と船を襲う<ラブカ>のリーダー、ザフィール。
    彼が元医師という背景が興味深かったです。

    読み終えた後はしばらく放心状態…
    色々な思いが去来して、胸が苦しくなるほどでした。
    個人的には「華竜の宮」以上の傑作!!

  • 上から一気に。とは言いつつももったいなくて少しずつ。
    「大異変」を迎えようとする人類の生きることへの足掻き、そして希望。立場は異にしていながらも人間ひとりひとりは生命力に溢れ、したたかでしなやかで、悲しいほどに崇高です。
    「華竜の宮」での驚愕した記憶が蘇ってきましたが、事象なり進化した人間の姿などの用語解説みたいなのがあった方がこれから読む人のためには良かったのでは?

  • 前作のクライマックスで唐突に登場した感のある人口地生体による大災厄に際し人類の痕跡を残すという深宇宙探索に至るまでのエピソードを深堀する話ではあるが、どちらかというと、そちらは今回でも脇に回り、タイトルに示される深紅の碑文に至る陸と海の闘争が多く描かれる。来るか来ないかわからない災厄ではなく、近い将来に必ず来る災厄に際して人はその業から逃れられない世界を描く。それにしても前作のみならず、リリエンタールのエピソードも拾いながら物語を収束していくのは非常にうまい。ただし、本作でも取りこぼした登場人物とエピソードは多々残っていそうなので、また次回作を期待したい。

著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。同作は「SFが読みたい! 2011年版」国内篇第1位に選ばれ、『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』の各表題作、『華竜の宮』の姉妹編『深紅の碑文』と合わせて《Ocean Chronicleシリーズ》と呼ばれ、読者からの熱い支持を集めている。近著に『妖怪探偵・百目』シリーズ、『薫香のカナピウム』など。

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