深紅の碑文 (下) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

著者 :
  • 早川書房
4.23
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本棚登録 : 229
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094247

感想・レビュー・書評

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  • 「夢と希望の物語だ」と言ったら言い過ぎだろうか。
    リ・クリティシャスという人類滅亡の危機に積極的な遺伝子操作の受け入れという手段で生き延びた人類に訪れる再びの人類滅亡の危機。
    「その時」を受け入れるのか逃げるのか、それぞれの登場人物たちは誇りにかけて信念のままに生きる。
    正しいか正しくないかは「その後の歴史が決める」とはよく言うが、この物語では恐らく、その後の歴史すらがその成否を決めることは出来ないだろう

  • SF。小説で☆5は初めて付けるかも。
    前作(時系列が少し前で同じ舞台)の「華竜の宮」もそうだったのだけれど、組織や社会とそこで動く人と個人との距離感が抜群で、組織の非情さ/融通の利かなさ/影響の大きさ、を外から見たときの描写に現実社会と比べても全く違和感を感じない。ファンタジーは所詮個人の創作した物語、という見方は存在すると思うのだけれど、歴史、伝記などとこの、素晴らしいファンタジーを描写で同列に比較できるということは、史実であっても結局人が構成し直した物語となるのであって、文章で表現できること、表現しようと思う事は、結局著者の視点や考え以上には広がらないということなのだ。つまり、リアリティがあって、とても面白いという事です。。
    あと、文章が、激情と抑制の間の揺らぎだけを写し取ったようで、好きです。
    <大異変>後のお話も、続けて欲しいなあ。

    ・世間は…何かをやろうとする者に対して、いつも減点法でしかものを言わない。これはだめだ、それは間違っている。失敗したらどうするのか、もっといい方法があるはずだ、なぜ、こちらのほうを選ばなかったのか、どうしておれたちが言う通りにしないのか、そっちへ行っても何もないぞ―と。
    でも。
    人間は、減点されるために生きているわけじゃない。誉められるために、生きているわけでもないのだ。

    ・人類は夜空を見上げたときから、いつか、あそこへ行ってみせると決めたのです。

    ・でも、私たちはこのまま進みます。ザフィールも、きっとそれを一番喜びます。誤解があっても、それを解く必要などまったくないというのがあの人の口癖です。行動がすべてを物語るのだから、世の中の人々が許さないのであれば、自分たちは潔く消えていこうと…。

    ・「機械を仲間だと思っているだろう?はみ出しているという意味では他の連中と同じだ。」
    「人間を愛する能力がなくても?」
    「それは人間にとって絶対に必要な条件じゃない。

    ・私は―核エネルギーというものは、使わずに済むならそのほうがずっといいと思っています。本当はあの技術は地球外―つまり、宇宙開発用に限定したほうがいい。
    …人類が宇宙へ出る理由―そこには科学の研究、産業の発展、社会や生活圏の拡大…様々なものがありましょうが、技術発展の問題とは、実は、その一番の理由となるべきものではないでしょうか。地球でやれないことを宇宙でやる―地球上では害悪にしかならない技術、社会を壊しかねない技術も、宇宙での生活なら役に立つかもしれません。

    ・「…海上民にとってアキーリ計画がどういう意味を持つのか―私は、ほとんど考えてきませんでした。海も陸も同じ人類だからと、一括りにしていたのは私のほうですね。海上民にとって、アキーリ計画は何の意味も持たない。陸で反対している人たちと同じく。そんな状況下で、私たちはアキーリ号を出発させる…」
    「…パンディオンの救援活動に対してもね、何の意味も認めていない海上民は多いよ。陸からの干渉は必要ない、何もしないでくれと」

  • 深紅の碑文 (下) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

  • 壮大なスケールのSF大作でした。スパンが長いこと。読み物的には華竜の宮の方が、グイグイ引き込まれて面白かったが。人類はどうなるんだろうと言うまま終わってしまった。私の中ではマキはやはり男性なので再登場してくれて嬉しかった。彼の青澄に対する感情めいたものが心に残った。そして青澄にも人らしい感情があって良かった。

  • 前作を読んでいなかったので、最後まで魚舟とは何なのか、それを知りたくて読み続けた。
    そのため、とうとう物語に集中できないまま終わってしまった。
    海上民と陸上民とは民族の違いくらいに思って、対立の根深さを理解したのも相当後半となった。

    初めて読んだ者にもう少し説明が欲しい。

    設定は予想外で魅力的だし、言葉も美しくて素晴らしいと思ったが、人物の内面を理解できるような表現が少なかったように思う。

  • ちょっとがっかり。何をかきたいのかぼやけたきがする。青澄とマキの終わり方はよかった。

  • 私には長すぎた

  •  武器売買の利権に絡む紛争幇助の動きなど、きな臭さを増す下巻。

     自分の生き方は自分で決める、自分の手綱は決して他人に預けない…そんな姿勢を貫き、交渉の席に着くことを拒み続けたザフィールの意固地さに苛立ちを覚えてしまった。
     制御化獣舟などの陸上民のやり方からも分かる通り、ラブカたちの不信感は当然のものとはいえ、どうして闘争以外の道に向かえなかったのか。
     未来を度外視するような生き方が、他の登場人物とは対照的だった。

     休戦に誰より尽力した青澄とマキが、安らかなひと時を過ごすラストの場面は、尊くも切なくてたまらなかった。

     ちょっと気になったのは、裏の政財界ネットワークの存在と扱いが、そこだけご都合っぽくみえたこと。

  • この世界に行けるなら
    海がいいな

  • 確定された闇に向かってそれでも踊り続ける人間のしたたかさ。こんなに暗いのに光まみれだ。

  •  人類は滅びる。それは定められた結末のように思える。
     では、滅びるまでの時間をどのように生きればいいのか。滅びるからと自暴自棄になるのか、それはむなしい。けれど、何かをなしたとしても、それは滅びるのであれば無駄ではないのだろうか。
     これはSFなのではあるが、バブル崩壊後、未来に夢を抱けない現代にも通じるテーマであるように感じた。

     青澄が主役過ぎる!とも思うのだけれど、華竜の宮の続編であることを考えると、やはり、彼でしかなしえないことなのかもしれない。青澄出てくるとテンションが上がるし、彼の挙動に一喜一憂する。しかし、前作より青澄の視点が薄れ、ある意味かっこいいヒーローとなってしまったので、続編があるならば、彼が悪であるというまっとうな主人公の姿を見たい。
     そして、やはり、マキの物語でもある。2人のマキの見る世界を思うと切ない。

  • 誰の行為が正しいか間違っているかなんてわからない。題名が重い。

  • もう、読後、充実感と寂しさと力強さと希望と何やら色々で!<華竜の宮>補完どころか短編<リリエンタールの末裔>まできっちり回収して練りあがった、すごい物語だった。神林長平氏が<いま集合的無意識を、>で書いてた「リアルに屈するな、虚構の力を信じろ」の一文を力強く思い出した…。<魚舟・獣舟><華竜の宮><リリエンタールの末裔><深紅の碑文>。今はすごかった、素晴らしく大好きな作品だとしか言えない!いつか通し再読するぞー!

  • ☆の数は好みの問題なので。
    同じ舞台の関連作品はしばらく前に読みました。

    個人的には、海の文化の雰囲気があまり好きではないので・・・。
    魚舟とか獣舟とかの感覚がどうも掴めず。

    地球環境の未来の描写やその対策に悩む人々の描写には引き込まれました。

    壮大な困難に立ち向かう人々の話は、現実の自分の抱える問題をちっぽけに感じさせてくれます。

  • どんなに頑張っても人類の歴史は「深紅の碑文」なのか。
    信念の人々の揺るがない様を、美しいと感じると同時にしんどくなる。
    だけど後味は悪くなかった。

  • 陸地の大半が水没した『華竜の宮』や『魚舟・獣舟』の後の世界で、新たな大異変に備える世界の様子。
    世界観はSFでも、そこに生きる人々の葛藤や足掻きは等身大に迫ってくる。
    http://blogs.yahoo.co.jp/rrqnn187/12709915.html

  • 人類最後の瞬間が近づく中、謎の集団が現れる

     この部分、実は好きではない。裏組織だって?それが世界を動かしている?陳腐だなぁ。テンションが少し落ちる。人類の未来は今のまま?深海?宇宙? あまりここに興味を持つのは作者の狙いとは異なるのかなぁ。

     下巻はこれでもかというほど登場する役者たちのそれぞれのエンディングを描く。バカがつくほどていねいにそれぞれを描く。大人の恋もあれば、若者の夢もある。犬死もあれば、犠牲もある。本当にていねいに役者たちを葬っていく。役者に愛情がなければ、これはできまい。使い捨てかと思っていた役者にもスポットがあたるのは驚きだ。ある意味「渚にて」風の終わり方だが、大きく異なるのは未来があること。

     深海の深宇宙も出てこない。新人類はまさに今地上で無為に争っているメンバーそのものだ。きれいな解決もなければ一致団結もない。新人類と陸人類と海人類が適度な距離を置きながら、それぞれの未来を想う。

     正直言うと、あっけない。核融合まではたどり着くものの、その利用は真っ二つに割れたままだし、陸と海の諍いは絶えない。現実色が濃いからこうなるのか。知性体を有する未来の人類でもこうなのか?

     あまりに生存欲が強く人類。これはクラークが繰り返し述べている。それに加えて、あまりに管理しにくい人類。この側面を提示したのは、本作が初めてではないだろうか。両者は一致する。だから、多様性なのかもしれない。この世界の未来を見てみたい。

    9/7 訂正

    「裏組織だって?それが世界を動かしている?陳腐だなぁ」との記載は私の誤記です。みえないメンバーたちをそう感じたということで、裏ではないだろうし世界を動かしているわけでも無いのでしょうね。この部分はこのメンバーたちの登場の意図がわかりにくかったため、荒っぽい表現になったことお詫びします。

    まだまだ続くらしい物語に大いに期待しております。一巡したら、また地上に戻ってきて欲しいな。強い人類を私は読みたい。

    • ueda222さん
      いなえしむろ 様

      著者の上田です。長い物語を最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。深く感謝申し上げます。
      ひとこと、コメント...
      いなえしむろ 様

      著者の上田です。長い物語を最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。深く感謝申し上げます。
      ひとこと、コメントさせて頂きます。

      >「裏組織だって?それが世界を動かしている?」

      大変申し訳ありませんが、私は作中で、このようなことは、まったく書いておりません。公の場で間違った情報が流れるのは少々困りものなので、訂正して頂けるとありがたいです。

      いなえしむろ様が、この部分をお好きになれなかったのは仕方がありません。いくらでも、好き嫌いをお書きになればよいと思います。しかし、それは正確な内容把握と記述がなされた上で初めて成立するものです。まず、ここをクリアして頂くよう、よろしくお願い致します。
      2014/09/07
    • ueda222さん
      確認しました。ありがとうございます。
      〈ルーシィ篇〉と〈惑星マイーシャ開拓史篇〉は、いずれ執筆するつもりです。スケジュールの後ろのほうにあ...
      確認しました。ありがとうございます。
      〈ルーシィ篇〉と〈惑星マイーシャ開拓史篇〉は、いずれ執筆するつもりです。スケジュールの後ろのほうにあるので、しばらくお時間を頂く形になりますが。『深紅の碑文』は、そこへ至るための重要な布石です。
      2014/09/08
  • 久しぶりに一気に読みました。ザフィールのパートが読んでいて面白い。青澄理事長、切ないです。

  • 「華竜の宮」の続編。上下巻の大作。
    世界の終わりが近づいているという閉塞感。そこで必死にもがき続ける、様々な登場人物たち。善だとか悪だとか単純なことではない。頑張ったから報われるわけでもない。でも生きるためには与えられた環境で戦い続ける以外にないんだ。
    リーダーシップ、組織運営・・・SFではあるが、いろいろな要素が詰まっていて、ビジネスマンでも楽しめる本だと思う。

  • 組織の内側視点の話が、とても興味深く面白く語られます。
    詰め込み過ぎで未消化な感じもしましたが、楽しめました。
    話は、まだ終わって無いのではないかという楽しみもあります。
    厳密な繋がりは求めないので、書き継いで欲しい世界設定です。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。同作は「SFが読みたい! 2011年版」国内篇第1位に選ばれ、『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』の各表題作、『華竜の宮』の姉妹編『深紅の碑文』と合わせて《Ocean Chronicleシリーズ》と呼ばれ、読者からの熱い支持を集めている。近著に『妖怪探偵・百目』シリーズ、『薫香のカナピウム』など。

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