ハーバード白熱教室 世界の人たちと正義の話をしよう+東北大特別授業

  • 早川書房
4.02
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本棚登録 : 205
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094292

作品紹介・あらすじ

「病院の診察予約券を転売することは許される?」「韓国の人気歌手が兵役を免除されるのはOKか?」お国柄を反映した熱き議論が繰り広げられる。震災復興について東北大学で行なわれた討論も収録

感想・レビュー・書評

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  • ここまでの討論ができる意思と自分の考えと、興味と信念、それを言語化できる能力
    賛成と反対をはっきり言えること。
    討論内容はもちろん興味深くて考えさせられることばかりだけど、それに参加する人たちに圧倒された。
    自分にはない、かっこいいなと思った

  • 先生に薦められて借りました。物事の側面を考えた上でより良い判断ができる人になりたいです。

  • 世界の地域での問題を扱った議論

    NHKの特別番組として放送された2本の白熱教室の番組の講義録となっている。
    時間の関係で省略されてしまった講義最後の質疑などが盛り込まれて,一部いまいちだった議論・やりとりが省略されていたように思った。

    扱われている内容が,その国・地域にとって切実な問題であり,緊張感をもった白熱した議論がみれて面白かった。また,国ごとの考え方の違いもみれて参考になった。

    ただ,この本はあくまで特別授業の講義録なので,公共哲学についての勉強にはあまりならない。勉強したいなら,『これからの「正義」の話をしよう』などを読んだほうがいい。この本は読み物として読むのがよい。

  • 市場主義がどのように社会と向き合っていくべきかの世界各地で行われた討論の様子が書かれていて、様々な問題との向き合い方を考えるきっかけになる本であった。

  • 中国、インド、ブラジル、韓国、日本の東北などで繰り広げられた彼の特別講義。

    東北については原発や津波からの復興に関して。
    そのほかではお金で買えるものに関してや、女性に対する性犯罪に関してなど。

  • LET'S TALK ABOUT JUSTICE IN THE WORLD
    AND A SPECIAL LECTURE IN TOHOKU UNIVERSITY -
    http://www.hayakawa-online.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000008652

  • サンデル教授と世界の人々の議論。お題は「お金で買えないもの」「レイプ」「ワールドカップ直前のデモ」そして「日本の復興」。どんな問題でも議論することが大事ということ。議論を戦わせることによって理解が深まっていくのがよくわかる。特に最後の案件については、あまり意見を言わず我慢して納得する傾向にあるといわれる東北でのこと。自分も東北出身・・・とかは言ってられんわな。ともあれ、意見を否定しないのも大事である。

  • 中国、インド、ブラジル、韓国での白熱教室の実録。学生たちとのやりとりの中に、それぞれの国の事情がリアルに出ている。韓国は野外劇場で14,000人が参加。古代ギリシャの直接民主制を連想させるもの。最後に震災復興をめぐっての東北大での議論。生と死に直面した問題だからこそ、正義の意義が鋭く問われる。心に響く議論だった。

  • どこの国においても、活発な議論だった。人間の人種、信条、性別などによって差別のない、社会的合意形成がなされた上で社会は進んでいくべきということ。ブラジル以外は行ったことがある国なので、議論の細部まで楽しめた。

  • 「市場経済を持つ」状態から「市場社会である」状態への変化→すべての価値が市場的思考や市場の倫理で定義できるという勘違い
    何でもタダや安い値段で配っていたら、現在のギリシャみたいに人々が努力しなくなる
    スイスの核廃棄物処理場の候補になった村への意思調査で、補助金について言及する前は賛成51%だったものが、補助金を出すことを明記したところ25%に半減した→前者で賛成した村人は、愛国心や公共心に満たされることを(無意識にしろ)求めていた。後者では、金銭が絡むことで公共善への意識が締め出され、単なる金銭的取引にすぎなくなってしまった。→多くの経済学者は経済学を、合理的選択に基づく価値中立的な存在である(市場が自発的に動くことは出来ない)と定義している。しかし、実際は市場の倫理や経済学的思考、金銭的インセンティブがものの意味に影響しているので、いつでもそうであることは無い。→"経済学を価値中立的な科学と理解するだけではなく、道徳・政治哲学と再び結び付ける必要があるということだ。"
    インドでは、レイプの被害者を悪く言ったり白い目で見る風潮がある。大人は男子に「レイプはいけない」と教えるよりも、女子に「自分の身を守れ」と教える文化
    「レイプを特別視すべきではない。他の犯罪と罪の重さは変わらないと考えるべき。親が男子を欲しがるのと同じように、レイプも女性蔑視に基づくものである。レイプを凶悪犯罪と見なすのは、男性が女性に純潔を求める結果である。純潔よりも腕を失う方がよっぽど不自由」
    蹂躙(じゅうりん)…暴力・権力を以て相手を踏みにじること
    女性を守るべき尊いものと崇めている時点で、女性を蔑視している(守るという発想はか弱くて自立できないという考えが根本にある)⇔女性の社会的地位向上が実現するまでは、女性は守られていかなくてはならない、という仕方ない現実
    宗教対立によるレイプ
    ヘイトスピーチ。(インドにおける)神への冒涜の言葉と同じように、他人のアイデンティティを侮辱し、自分の力を誇示する行為であるので、取り締まるべき⇔そもそも神への冒涜の言葉を裁く法律が不要。女性を特別扱いするという点で、女性の地位を貶めることになる。自由の国であり続ける為には、言論の自由を保障すべき。罰するより、教育で解決すべき問題である。
    "女性の社会的地位が低いまま、形式的に男女を平等に扱っても、女性が望む形での本当の平等はもたらされない。"
    野球の試合で、一昔前は一番安い席と一番高い席の値段の差が少なかったので、異なる(職の)階級の者が隣合って共に応援した。現在はボックス席などの優遇席の出現により、そんなことはほとんど無くなってしまった。→市場主義における社会的一体感の喪失
    "結局のところ、お金と市場の問題はたいていの場合、経済の問題ではなく、実際に私たちが共にどう生きていきたいかの問題なのだ。"=お金そのものではなく、その背景にある道徳や倫理、公共善とどう向き合うかの問題
    市場に任せるかは、「公平性」と「腐敗」の観点から見ることで判断できる(例:大学が入学資格を売る行為は、家庭経済に起因する機会の公平性に欠けるし、大学の目的は金集めではないのでそれをやることで本来の大学の腐敗に繋がる)
    金銭的インセンティブを一度導入し、責任感が追いやられてしまうと、それを取り戻すのは難しい(例:保育園で、迎えに遅れてくる親に罰金を課したところ、逆に遅れてくる親が増えた。これは、金銭的インセンティブによって「先生に申し訳ない」という罪悪感が払拭され、罰金をサービスに対する料金だと捉えてしまったことに起因する。そして罰金制度を廃止しても、一旦増えてしまった遅れて迎えにくる親の数は減らなかった。)
    異なるバックグラウンドを持つ者どうしが交流し議論しお互いを尊重し合える社会であるべきであるが、何でも金で買える市場社会における危険性としてはその理想像から遠ざかってしまう点にある
    福島原発事故によって、福島県から山形県に避難した人は約一万人。その多くが自主避難と言われている。子供を心配して避難した母親が多く、一方でその父親は福島県に残って仕事、という二重生活を送っている。金銭的、精神的に苦しい現状
    水掛け論
    多数派により議論を十分に行わず復興を進めることは、過去の原発推進派が多数派であったことと同じで悲惨な結果を招くかもしれないから、慎重に議論を行ってから復興を進めていくべき⇔全員の合意を待つのは、例えば再び津波が来てもここにいると言い張る人の命を救うことが出来ない。大事なのは命を失わないこと
    合意というよりは納得を追い続けるべきではないか

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著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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