機龍警察 未亡旅団 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
4.23
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本棚登録 : 402
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094315

作品紹介・あらすじ

由起谷警部補が街で出会った子供は、チェチェン共和国から侵入してきた女性だけのテロリスト集団、『黒い未亡人』の一員だった……。日本SF大賞&吉川英治文学新人賞受賞シリーズの最新第4弾

感想・レビュー・書評

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  • もうスゴイ、圧倒的、言葉がない、かくて機龍警察シリーズと月村了衛氏は自分の中で神となった。

    今作について何か語ろうとする時、何から手をつけていいのか?様々な出来事が乱立し、無駄は一切なくて、それぞれに濃密なる意味とカタルシスがあり、過去作品との繋がり、キャラクターが交わることにより発生する彼らの内省の変化…敵味方合わせて膨大すぎるのだ!それなのに苦もなく読ませる筆力、神と言わざるをえない。

    それでも特に己に残った部分は、由紀谷警部補とカティアの邂逅、そして第2章「取調べ」だった。

    由紀谷警部補はシリーズを通して特に印象深い、笑顔の優しいイケメンらしいし、時折覗かせる闇も、彼の警官魂の熱さと、壊れやすくて儚げ感も、読者の心を鷲掴みにしてきた。今作では冒頭から、彼とテロリストである少女カティアの出会いが描かれる。もうこの先の予感だけで心震えた。

    女だけのテロ集団「黒い未亡人」過去最強の敵である、その尖兵であるカティアと由紀谷が正面からぶつかる「取調べ」シーンはシリーズの中でも例がないシーンであり、由紀谷、カティア双方の心の叫び、慟哭、咆哮が切り刻みあって、少女テロリストと警官、あまりに違いすぎる二人の融和が描かれる。息詰まる展開の果てにとうとう重要情報の引き出しに成功するものの、さらに重大な事実が暴かれて…とクライマックスとなる。こういう繋ぎも含めてほとほと上手い。

    最後の章はいつも通りのアクション、スリル&サスペンスシーンで安心感のある面白さ。見えざる「敵」の正体もやや浮き彫りになりつつあった。

    総じて語りたいことたくさんありすぎる!キーワードだけでもあげておくことにする。

    由紀谷とカティアの二重写しのように描かれる、シーラと○○の出会い、そして日菜子との関連、
    鬼子母神、
    「取調べ」でユーリが由紀谷にかけた言葉「自分自身を信じろ」、
    決死の作戦に就くこととなったカティアにライザがかけた言葉「おまえは私より強い」、
    すっかり癒し系なカンジの姿警部と缶コーヒー、
    最強の敵「黒い未亡人」とのガチ対決「姿vs風の妻ファティマ、ライザvs剣の妻ジナイーダ」、
    城木警視の心象変化とっても危険な兆しが見える、
    母を亡くした子、母に捨てられた子、
    新キャラ桂女史ステキだわ~

    そして何よりチェチェン紛争、これは事実なのである。

    ラストはカティアから由紀谷への手紙で締めくくられる、滂沱の涙必至であり、最高の読後感であった。

    まだあった!馬面の曽我部警視、公安外事第3課長けっこういい奴じゃない?今回出番多くて沖津を食ってたような?よいキャラなので今後の活躍に期待である。

  • 完璧。今回は再びテロ。とはいえ、チェチェンのテロリストと言うこれまた世界の政治情勢を背景にしたリアルな設定。それも未亡人旅団と言う戦争の惨劇の申し子のようなテログループを設定し、世界の戦火の現状を描く。そしてもう一つ意表をついたのが、今回の主人公は姿ではなく、由起谷。由起谷とテロリストの少女、その兄とテロのリーダーという二重構造の人間関係が濃厚に描きこまれる。一方でリアルで悲惨なテロとの戦闘シーンも描きこまれている。近い将来このようなことが起きかねないのが本当に怖い。
    これだけ悲劇的な内容なのに、熱い感動があり、しかも読後感が爽やかな感動なのもスゴイ。この作者は本当にうまい。多彩な登場人物を配しながらもどこも破たんしないどころか過去の話まで上手く取り込んでより高いレベルで物語を完成させている。読むごとにレベルが高くなっている。これほどの実力を持つ作家も日本には少ないのでは?

  • 機龍警察シリーズ第四弾はこれまでの作風からまたちょっと変えてきた。今回は突撃要員ではなく由起谷・城木が主役。作者の月村さんは特に由起谷がお気に入りなんだろうなというのが伝わってくる(実際、次作の短編集でもフューチャーされている)。今回は戦場で常に犠牲となる女性と子供からなるテロ組織が空いて。自分たちの身を守るための自衛組織がいつの間にかテロ組織に変質していく恐ろしさが書かれている。またそんな組織に物心つくころから身を寄せる少女シーラの心情も上手く描かれている。そのシーラと由起谷との取調室でのやり取りがこれまでの龍機兵との動的活躍とは対照的な静的緊張感に溢れた良作。由起谷は幼いころからテロ組織で育った少女を変心させることが出来るのか。シーラと“死神”ライザの一瞬の邂逅も後々意味を持ってくるあたり良く練られている。そして日本に上陸したテロ組織「黒い未亡人」の目的とは。これまでどちらかというと宮近より好感の持てた城木の身近にまで<敵>の魔手が近づいていて彼の気持ちの揺らぎも伝わってきて、ますます次作が楽しみである。

  • 「機龍警察」シリーズ4作目。
    今作はチェチェン紛争で家族を失った女性・少女で構成されるテロ組織「黒い未亡人」との闘い。未成年でありながら機甲兵装を駆り自爆をも辞さない敵と対峙することとなる特捜部。これまでとは全く異なる困難な任務、そしてある意味では最強の敵。緊迫感が尋常でない。
    戦闘シーンも安定の迫力。「風の妻」ファティマVS姿・「剣の妻」ジナイーダVSライザの生身での白兵戦、ビル内部で繰り広げられる機甲兵装同士の肉弾戦は手に汗握る激しさ。
    何よりも少女テロリスト・カティアの存在が大きい。
    真正面から向き合う由起谷に心を開いていく姿、同じような境遇のライザからのメッセージ、裏切り者になりながら仲間を救うための決死の行動。胸が熱くなるシーンの連続。
    そして悲劇的でショッキングな今作でラストのカティアからの手紙が一縷の救いと希望になっている。ひらがなという所がまたいい。
    個人的にはシリーズ最高の内容。

  • 堂々のこのミス第5位。
    連作にも関わらず、しかも4冊目なのにこの評価!凄いんじゃない?
    ドラグーンに乗る搭乗員を順番に紹介するシリーズは終わってどうするのか、と思っていたら自爆をものともしない最強テロ集団「黒い未亡人」が登場。
    女だけの戦闘集団、しかも自爆させるのは少年兵(少女)と言う日本の常識では有り得ない、しかし世界の潮流の中で見れば現実に有りうる組織。
    これに立ち向かう日本警察、如何に近未来の設定とはいえ描写は難しいだろうな~との危惧をものともしない作者の筆力。
    少年兵と戦う搭乗員と整備主任の苦悩が描写されるが特にしつこくもなくサラッと流す。
    特捜と外三、神奈川県警、警視庁、と登場部署はやたら多いが最初の登場人物一覧表に戻ることなくスラスラ読める。
    なんでかな~と思ったら外三の曽我部さんの如く人物描写・造形が上手いから。馬面が浮かんでくるもんね。突然登場した桂女子も然り、重要人物はチャンと印象に残る。
    一方どうでもいい人はホントにどうでもいい役割しか与えられていない。上手いよな~、勿論計算づくなんだろうけど。
    アクションシーンは相変わらず素晴らしい。初回は顔見世、2回目は1対1の格闘戦をたっぷり、ラストはビル内での機甲兵装同士の格闘戦、これが凄い。
    非常階段の入り口を爆破し廊下を破壊し壁に激突しながら身長3メートルのロボットが暴れまわる。う~ん、見たい!
    アクションシーンをたっぷり見せて最後に届くカティアの手紙。ひらがなだけの文章が却ってグッとくる、もう泣ける、泣ける!
    「敵」の正体はおぼろげなまま、まだまだ続きそうだけど次回作はどうするんでしょう、敵を強大化するだけだとドラゴンボールになってしまうし。
    でもきっと月村さんは、いい意味で期待を裏切ってくれるでしょう、期待度120%です。

  • シリーズ第4弾です!

    第1~3作目までは、
    龍機兵の3人のパイロットについて、
    それぞれ一人ずつ、物語の軸に据え、
    各人の、暗ぃ過去を織り交ぜながら、
    警視庁特捜部(架空)での任務が、
    写実的(風)に描かれていましたが…、

    本作では、特捜部の捜査・運営側の、
    由起谷主任と城木理事官を軸に据え、
    チェチェンから潜入した、哀しき、
    女性だけの自爆テロ集団との攻防を、
    家族と悲哀の交錯した物語で描く…、
    といぅ、よりハードなお話ですが…、

    安定感のある設定と作風も相まって、
    作品の世界観にもグッと引き込まれ、
    また、考えさせられる部分もあって、
    エンターテインメント小説としては、
    抜群に面白かったです!!

    多くの伏線と、一縷の救いを持って
    終幕した、今後の展開に期待です!!

    本シリーズは、
    『パトレイバー』ハードボイルド版、
    のよぅな設定であり、作品ですが…、

    本作では、
    本来の主役である「龍機兵」が、
    脇役的な立ち位置となっており、
    その点からも、
    『パトレイバー』の劇場版第2作と、
    よく似た雰囲気もあったかも…。

    食わず嫌ぃで未読の方は、ぜひ…!!

  •  近未来の警察小説シリーズ第四弾。
     女性だけのチェチェン人テロ組織『黒い未亡人』が日本に潜入し、自爆テロを起こす。彼女たちの真の狙いを探ろうとする特捜部のメンバーを、警察内部の見えない敵が邪魔をしようとする。
     機甲兵装同士の戦闘シーンは相変わらずリアルで迫力があるが必ずしもそれが売りではなく、警察内の入り組んだ暗部、そして今回は年端もいかない少女たちがテロ組織にその身を投じるまでの哀しい背景が丹念に書き込まれており、読みごたえがある。

     ロボットが登場する警察小説、と聞くと偏見をもたれそうだが、いい意味で裏切ってくれる、安心して読めるシリーズになった。次作は、そろそろ例の〈敵〉の中核に迫るのだろうか。

  • すごい作品だ。毎回思う。圧倒的な戦闘シーンはむしろ副菜で、今回の主菜のテーマの深さはとても1文では語れない多重構造とでも言おうか。でも結局は「母」ということなのかな。いやはや、いったい今後の展開がどういうものになるのか想像も付かない。ただ、読み続けるのみである。

  • シリーズ4作目。

    今回の相手は少女たちすら自爆を厭わないチェチェンの女性テロリスト集団「黒い未亡人」。
    年端もいかない子供たちの捨て身の攻撃に、相手をする特捜部たちは「子供殺し」という現実に精神的にも追い詰められます。

    今作からいよいよ「敵」に焦点が絞られ始めますが、同時に不安の種も撒かれており、シリーズの今後がますます気になる興奮の1冊です。

    ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













    特捜部らとの攻防の狭間で語られる「黒い未亡人」の一員である少女、カティアの半生は、日本人からは想像もできない過酷なものです。しかし、まったく違う場所のまったく違う環境であっても、変わらない人間の本質によって心を通わせようとする由紀谷の心根が素晴らしい。

    刑事の取り調べなんていうドラマではお決まりのシチェーション、しかも相手はテロリストの少女vs一介の刑事となるとどうしてもハードルが上がり不安なのですが、由紀谷という人物を掘り下げて迫力のある取り調べ場面でした。

    姿、ライザ、ユーリがこれまでのシリーズを包括して変化をみせているのもうれしい。

    カティアと由紀谷が心を通わせる一方で、互いに互いを消化しきれなかったシーラと日菜子。
    今作でのキーとなるこの二人の女性は、共に他人の目から語られるばかりで実像がはっきりしません。全くの正反対のような似た者同士のような。彼女たちの計り知れない心の内が、この事件で多くの人々を巻き込んだように思います。

    そして、今作で一番の注目だった城木理事官。
    「敵」に偏りがちなのは宮近理事官だったはずなのですが、ここにきて城木理事官が非常に不安定になりました。

    生徒会会長の座についた兄の行動に疑惑を感じたり、難民キャンプを巡る兄に胡散臭さを感じたりというのが、ロマンティストなのは兄で、現実的なのは弟という反転の布石になっているのもおもしろい。
    城木理事官が「敵」側になった場合、宮近理事官よりもずっと手強そうでこの先不安です。
    アイデンティティの揺らいだ城木理事官と、警官になって良かったと自分を肯定した由紀谷の対比でのラストも印象深い。

    3人の搭乗員以外の登場人物たちも掘り下げられ、より壮大なシリーズになっていくようで今後も楽しみ。

    それにしても庶務の桂さんが素敵でした。

  • 絶望的なまでに悪趣味な設定なんだけど、その悪趣味さはまさしく人間社会の悲劇そのものを体現してて、読み始めは毎度すごく嫌な気分になる。ただ、この恐ろしい世界はほんとわずかに垣間見える希望を描くためにあるっていうことが終盤で僕ら読者は気づき始めて、そこでジーンとさせるのがうまいんですなこの作者は。今作はシリーズの中でも一番その絶望の底が深い作品のように思う。その分だけ希望がより輝いて見える。

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著者プロフィール

1963年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒業。2010年、『機龍警察』で小説家デビュー。2012年に『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、2013年に『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、2015年に『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞を受賞。他の著書に『神子上典膳』『機龍警察 狼眼殺手』『コルトM1847羽衣』『東京輪舞』などがある。

「2019年 『悪の五輪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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