機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 305
レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095091

作品紹介・あらすじ

由起谷主任が死の床にある元上司の秘密に迫る表題作、ライザが特捜部に入る以前を描く「済度」、技術班の活躍を描く「化生」など至近未来警察小説シリーズのこれまでに発表された全短篇八作収録

感想・レビュー・書評

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  • 機龍警察シリーズ短編集。
    長編シリーズの短編集というと、スピンオフの軽い内容なイメージなんですが、これはがっつりと重厚で、どれも素晴らしくおもしろかったです。
    登場人物たちを再度掘り下げると共に、本編への深い理解に繋がります。
    シリーズ愛読者には嬉しい。


    【火宅】仕事一筋の独身で、今は病気で弱っている男が新築の家にたった一人というのが悲しい。
    相変わらず疎まれる特捜部を描きながら、一転してそこに別の警察内部の闇を描きました。
    捜査のノウハウを教えてもらった上司に、その成果をこういった形で示してしまうという切なく渋い演出が光ります。

    【焼相】短編ながら非常に緊迫した立てこもり事件を描いています。次々と犠牲者が出る展開は戦慄。シリーズの過去の事件後、各部署がどのような状態になったか内部の力関係の描写もおもしろい。
    立てこもり犯に挑むかつてのテロリスト・ライザの変化と、それに気づく緑の姿が印象的。

    【輪廻】犯罪組織の幹部が何をしに日本に来たのか?という謎に驚くべき現実が明かされます。
    真面目に勤めている日本企業のサラリーマンが、世界の紛争に深く関わっているという事柄もショックですが、やはりその兵器や使用方法が怖い。恐ろしい未来を予感させるものの、現状で出来ることが何もないという厳しい現実を見せつけられます。
    ミステリアスな微笑みを浮かべる黒人に底知れぬ闇を感じる深い物語でした。

    【済度】IRFから逃走し特捜部に入る前のライザの物語。死に誘われながらも、贖罪の道を模索し流れるライザに謎の男からの依頼が舞い込む。
    電話だけの謎の依頼人とのやりとりや、ライザが単独で行動するのはスパイアクション小説みたいで楽しい。電話の相手の正体には驚きました。

    【雪娘】遠い地、ロシアでかつてあった1つの殺人事件が、月日を経て日本の事件と重なる様が見事。
    殺人事件の方法には大きな激情を感じますが、それとは反対の少女の静かで儚い姿には、言い知れぬ不安と悲しさを感じます。
    最後まで事件を追えなかったユーリの刑事としての心残りにも切ないものがありました。

    【沙弥】由紀谷の高校時代のお話。前にもちらりと出ていた、由紀谷が警官を志すきっかけとなったエピソードを掘り下げています。
    荒れた青春時代の中で、一つの事件を切っ掛けに友情と希望が描かれ瑞々しくも悲しい。
    由紀谷を取り巻く大人たちはどうしようもない人間も多いのですが、警官が最後に素直に謝り、由紀谷がそれを素直に受け入れたシーンが良かった。
    叔父に何も言えず、自分でも決心がつかず、それでも友人の意志を胸に刻んだラストも感慨深いです。

    【勤行】個性的な面々ばかりの特捜部にあって、家庭を持ち出世を気にする普通っぽさが貴重な宮近理事官。
    人間味のある姿に親近感が沸きます。
    特捜部を全体的に見たお話で、誰もが人知れず一生懸命なのがユーモアを交え描かれており、みんなをお応援したくなる楽しい1編です。
    庶務の桂さんがやっぱり素敵。

    【化生】同じ捜査主任でも由紀谷にスポットが当たる事が多いので、ここで夏川が登場したことが嬉しい。
    研究内容については予想できるものの、沖津部長が珍しく焦る姿が事態の重要性を感じさせます。
    タイムリミットが間近に迫っていることにふと気付くような事件で、今後の特捜部にシリアスな展開を予想させる締めの1編となりました。
    普段感情が読めない沖津部長が、夏川との会話で部下への信頼と尊敬に溢れていて素晴らしかった。

  • 機龍警察の世界観の中で、各々の章に仏教用語を冠し、それぞれがすべて味のある見事な短編小説となっている。本当に上手い作家さんだなぁ、と実感した。沖津、ライザをはじめとして、キャラクターがみんな良い。このシリーズ、はまってしまいそうだ。

  • 2019.7.29

  • 機龍警察シリーズの短編集だ。なかなか面白かった。それぞれの短編が。この中で『済度』に死神のテロリストのライザと『X』との出会いが書かれている。そう『X』つまりその後上司となる特捜部長の沖津との出会いが。

  • 短編集。これまでのストーリーの間を埋めるエピソードのいくつか。沖津以外の特捜部メンバーのキャラクターに触れることができる。さて次作。

  • これもなかなかのものでした。
    はまってます(笑)

  • 9:「機龍警察」シリーズの短編集。表題作である「火宅」は初出の「結晶銀河」で読んでいたけどいまいちピンと来なくて、でもシリーズを通して読んでから再読すると、「ああ……!」ってなる凄みがあります。そういう意味では、初心者の方よりシリーズのファンの方に全力でお勧めしたい一冊。
    甘さとかぬるさとか、ゆるさ、そんなのとは一切相容れない「世界の闇」を描くシリーズ、どれも決して後味がいいとは言えないけれど、だからこそ警察機構という枠の中で精一杯を尽くす登場人物たちの熱意や生きざまが輝いているように思えます。
    各話タイトルは仏教用語で、それぞれ解説もついているけれどこれがまたドンピシャで唸る。

  • 武蔵野大学図書館OPACへ⇒ https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000124964

  • 短編も良く出来ているな、というのが素直な印象。ライザがリクルートされる「済度」は長編でのキャラクター背景を知る上でも必読か。最後の「化生」は最新長編「狼眼殺手」にもつながるのでこれもまた読んでおきたいところ。宮近の微笑ましい(?!)一面が見られる「勤行」など作者の幅広い力量に感服。

  • 勤行のラストがよかった。

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著者プロフィール

1963年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒業。2010年、『機龍警察』で小説家デビュー。2012年に『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、2013年に『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、2015年に『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞を受賞。他の著書に『神子上典膳』『機龍警察 狼眼殺手』『コルトM1847羽衣』『東京輪舞』などがある。

「2019年 『悪の五輪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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