海を照らす光

  • 早川書房
3.98
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095145

作品紹介・あらすじ

ドリームワークス映画化! 二十世紀初頭のオーストラリア。孤島に暮らす灯台守の夫婦は、ボートで漂着した赤ん坊を実子と偽って育てはじめる。心を揺さぶる愛と苦しみを描く世界的ベストセラー

感想・レビュー・書評

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  •  オーストラリア西部の孤島、ヤヌス・ロックの灯台守のトムとその妻イザベルは、ある日漂着した小舟に男と女の赤ちゃんが乗っているのを見つける。
     赤ちゃんは生きていたけれど、男は既に亡くなっていた。トムはこのことを報告しようとするが、イザベルはそれを押しとどめ、自分が赤ちゃんの母となって育てるとトムに告げる。赤ちゃんをルーシーと名付けた。

     母親はその赤ちゃんを探しているかもしれない、誰にもこの事実を告げずに黙ってルーシーを育てていることに、トムは時に良心の呵責を感じる。

     ルーシーが洗礼式を受けるときに、トムとイザベルはルーシーの実母がずっと夫と娘の行方を捜していることを知る。

     そして、トムは2回にわたり、ルーシーの実母、ハナにルーシーが生きていることを伝えた手紙を送る。そして、トムとイザベルがルーシー、本当の名前はグレース、を育てていることを当局が知るところとなり、ルーシーはハナの元へと連れて行かれる。でも、ルーシーはハナには懐かず、イザベルとトムのところに帰りたいと泣き叫ぶ。
     また、トムは全ては自分が決めたことと、イザベルをかばって逮捕される。

     でも、トムもイザベルも許せないハナだったけれど、結局は彼女の口添えのおかげでトムは釈放され、イザベルも罪には問われずにすむ。

     それから20数年が経過した最終章で、大人になった、ルーシー(グレース)がトムの前に現れる。


     そんなストーリー。途中からは読むのを止められず、引き込まれて一気に最後まで読んだ。最後の方は涙。

     イザベルの初めの決断は間違っていた。流産を3回くり返した後だとしても。そのイザベルの思いを結局は受け入れたトム。その時に、もう少し踏み込んで話し合っていたら、イザベルもトムも、そしてハナも、あそこまで苦しまずにすんだと思う。

     また、トムの行動は理解出来ないわけではないし、いい人なのは分かるけれど、やってしまったことが中途半端だったと思う。

     でも、人って、多分そういうものなだと思う。
     その時、その時に、自分にとって「善」と思える行動をとる。
     そこに、他者は不在となる。そして、それが時に悲しみや苦しみを生み出してしまう。
     それでも、真摯に向き合っていくなら、前を向いて歩いていける。
     そんなことを思いました。

     それにしても感じるのは、戦争が引き起こす悲しみ。

  • 孤島の灯台守,3年間に一度の休暇,まるで監獄のような環境だと思った.自分を罰するかのようなトム,彼を愛したイザベルも3度の流産は心を蝕んだことだろう.この二人が救いを求めるように犯した過ちが心に響く.もちろんあの時ああすればという思いもあるが,ルーシー・グレースに関わった人たちの愛する気持ちは紛れもない.波の砕ける音が響くこの物語は愛と許しの壮大な祈りのようだ.

  • 愛する人と正義との狭間で揺れ動く心理描写が巧み。人を愛すること、信頼すること、そして正しいこととは何かについて考えさせられる秀作。映画撮影中ということなので、どのような映画に仕上がるか楽しみ。

  • 灯台の光は船乗りを導いていく。
    時に迷っても、時に航路を失っても。

    人生という道程が途中、暗闇で閉ざされようとも我々を導く光はいつか現れる。

    愛と赦しの物語。

  • 子どもを持つ親の気持ちって、自分が親になってみないとわからないものなんだろうな…。それに戦争に行った人の気持ちも、実際に行った人にしかわからないもので…。
    兄たちが戦争で死んだのに、トムは生きて帰ったことを「フェアじゃない」とイザベルがトムを責めるところは、胸にガラスを突き刺されたような痛さだった。いくらカッとなっていたとしても、愛する夫にこんな残酷なこと言う?後半もイザベルはルーシールーシーばっかりで、トムのことはどうでもいいようだ。
    世の中には旦那はいらないが、子供は欲しいという独身女性もいるそうで…(あ、既婚女性にもいますね)。最後までどう転ぶかわからずハラハラした。大人に振り回される子供の姿を見ると、大人の定義についていつも考えてしまう。お互いに振り回し振り回されつつ成長していくものなのかな…。
    この灯台の表紙すごく好き。本棚に飾っておきたい。

  • 絆が生み出す幸福と苦しみの物語。
    まさにそういう物語。
    灯台守の孤独と、絶海の孤島での暮らし。
    子供を亡くした妻の絶望と、希望。
    子供と夫をなくした女の哀しみと、失った時間。

    映画向けの本ですね。
    映画もみてみたい。

  • 自分がイザベルならどうするか 夫のとった行動を許せるか 自分がハナならどうするか 子供の幸せを一番に考えるべきか それとも、情にに流されず自分が正しいと信ずることを成すべきなのか  
    オーストラリア人のドイツに対する憎悪が凄まじい それに対して、フランク(オーストリア人)の強さと優しさに感銘を受けた
    愛する両親に引き裂かれたルーシーの気持ちが辛すぎる 
    泣いた、泣いた、泣いた・゜・。

  • それぞれに苛立ちを感じてそれぞれに憐憫の情がわく。正しい正しくないという価値観もわからなくなって、煩悶した。

  • 我が子への、母であることへの執着。
    幸いにも、無事に母になれた私にはわからないし、語れないことだけれど。

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