忘れられた巨人

制作 : Kazuo Ishiguro  土屋 政雄 
  • 早川書房
3.60
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本棚登録 : 1447
レビュー : 188
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095367

感想・レビュー・書評

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  • 人間の本質の探求と対話という体験をこのような形で経験することになるとは。
    読み終わって時間が経過するにしたがって、ジワジワと思考が活性化してくる。
    そして、圧倒的な筆力に圧倒される。

  • 『わたしを離さないで』はSFで、この『忘れられた巨人』はファンタジー、とカテゴライズされている。
    でも、読んでいる間に、心の奥に不穏なさざ波がずっとたち続けているような感覚は一緒。

    何かが起きている。
    所詮は本の中の出来事だと、タカをくくることができないようなことが書かれている。
    なんだろう、この警告を受けているような切迫感は。

    過去の記憶なしに人は今を生きて行けるのか。
    忘れたい過去もあり、忘れたくない過去もある。
    老夫婦の旅路の果てに何が待っているのか――怖いけど読まずにはいられない。

    胸に残るもやもやした読後感にも、妙に納得してしまう一冊。
    うーん、説明が難しい。

  • ★ファンタジーの必然が?★地域全体で人の記憶に霧がかかる。良いことも悪いことも曖昧になって平和に暮らすなか、霧が晴れてしまうと・・・。嫌なことを思い出しても乗り越えて、長年連れ添った夫婦の愛情を保ち深めるラブストーリーなのだろう。ただ、もしかしたら自分はファンタジーという分野が不得意なのかもしれない。邦題も「忘れられた」とやってはあまりにも直截すぎる。

    島に渡るくだりの解釈が分からなかったが、三途の川ではと指摘されて納得した。もしそうだとしたら、息子を巡る厳しい内容を最後に思い出すのは、それが記憶の本源ということなのか。

  • この小説はイギリスの民話なのかファンタジーなのか、主人公の老夫婦の会話がおっとりとしていて初めはなかなか物語に入り込むことはできなかった。

    しかし、読み終えてみるとこれはアーサー王伝説を交えたり、不穏な現在社会を思い起こさせながらこの老夫婦のラブストーリーであったと感じる。

    この小説は最後まで読んだら霧が晴れるように感じるのである。

    「竜の吐く息」と「記憶」がこの物語を読むときのポイントである。がんばって読んでみてほしい。

    図書館スタッフ(東生駒):ミラベル・ジャム

  • たまたまチャンスがあったので読んだものの、ちょっと長かった…。記憶を消す霧、鬼、騎士、竜、妖精、修道士などファンタジーは嫌いじゃないけど、終盤はなんだかわからなくなり眠いままページを進める始末…。

  • カズオ・イシグロの長編。アーサー王の時代の少し後、鬼や竜、騎士や魔法が登場するので、読んだ印象はファンタジー。ただ、序盤から全てが霧に包まれているようなモヤモヤした話。主役は誰?タイトルの巨人はいつ出てくるの?それでもぐいぐい引き込んでくる。終盤やっと霧が晴れたと思いきやまた霧の中・・・モヤっとしたラスト。すっきりしない。でも悪くない。

  • 素直にさみしい、と思った。
    もし私が誰かと生涯を、人生を分かち合えたとして、
老いて私が人生を終えたときに。
そのことで必要以上に悲しまずに、
また素晴らしいなにかを見つけて、誰かと出会って、
新しい幸せを見つけてほしい。
    とは思うものの。
それが理想的だとは分かるものの。
    でもさみしい。
それはさみしい。
さみしいけど、いつまでも縛り続けるのは愛でも優しさでもないから。
    だからせめて、
    いつか、別れの日が来ても、
それまで幸せだった、
あたたかい時間を分け合えた、
楽しみを喜びをあなたの中にある輝きを十分引き出せた、
と思えるような関係を作りたい。
    思い出すだけで幸せな気分を思い出せるような、あたたかい存在になりたい。
    と、忘れられた巨人を読んで思いました。

    ======================
    と、読んだ当初(半年前?)は思っていたけど、しばらく経って印象は変わる。読み返していないのに、不思議。
    夫婦って素敵と思う。マイプリンセス、だなんて。そんなふうに、思いやって、思いあって生きるのって、素敵。

  • イシグロの10年ぶりの新作はファンタジーということで期待。アーサー王、円卓の騎士ガウェイン、魔術師マーリン、竜とくれば、嫌でもわくわく。息子が住むという、あるいは老夫婦が渡ろうとする島はアヴァロンか?しかしそれらは外側だけであり、ファンタジーというのも形だけ。人間は怒りや悲しみや恨みを忘れたほうが世の中が平和になる。特に夫婦は忘却と許しが必要。そういう事が書かれていたのだろうか?どういう結末なのか、最後の部分の意味が分からない。本質的にはラブストーリーであるとされながら、私には最後の部分でどうしてもラブストーリーには思えない。また翻訳の土屋さんは好きだが、これに関しては今いち。老夫婦の会話がしっくり来ない。ファンタジー関連の事柄は知識や慣れも必要だから、得意分野ではなかったかも?高い評価を得ている本作だが、ファンタジーとして期待した私には退屈だった。

  • 何か月もかかってようやく読了。
    登場人物たちのかみ合わない会話を読んでいると、自分の頭の中にも霧がかかってくるようで、終始不思議な世界観に包まれていた。
    個人レベルの辛い思い出から人類レベルの歴史まで、忘れた方が「幸せ」に暮らせるということはあるのかもしれないけど、何かを忘れて得る「幸せ」ってなんだかすごくぼんやりしたもので、そういう「幸せ」は欲しくないな、と思った。
    後ろを振り返ってばかりでは仕方がないけど、過去と向き合うことは未来のために大切だよな、と。
    だから、この物語の中のアーサー王側(ガウェイン)の考え方には納得がいかなかった。
    老夫婦のその後が、気になる。
    私は、奥さんは船で先に島(あの世)へ渡るが、旦那は霧の晴れた後の世界をもう少し生きるのだと思う。
    みなさんはどう読みましたか。

  • アーサー王伝説をうまく使い、どこか遠くの物語を描く。時代は初期中世あたり。謎だらけの始まり。霧が晴れていくかのように、非常にゆっくりと老人の歩みのペースで、少しずつベールが上っていく。最後にまた霧の中に消えていく結末も美しい。
    愛と記憶と自立。老年期の主人公に焦点を当てつつも、人生のすべてがエッセンスとして入っている。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

忘れられた巨人のその他の作品

忘れられた巨人 Kindle版 忘れられた巨人 カズオ・イシグロ
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) 文庫 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) カズオ・イシグロ
忘れられた巨人 Audible版 忘れられた巨人 カズオ・イシグロ

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