忘れられた巨人

  • 早川書房
3.60
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感想 : 213
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095367

作品紹介・あらすじ

奇妙な霧に覆われた世界を、老夫婦は息子との再会を信じてさまよう。ブッカー賞作家が満を持して放つ、『わたしを離さないで』以来10年ぶりの新作長篇! 著者来日、ハヤカワ国際フォーラム開催

感想・レビュー・書評

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  • "まるでおじいちゃんおばあちゃん版のドラクエみたいだな"のレビューが気になって手にとりました♪

    ドラクエと言えばFC版のドラクエⅢ
    あのこわ〜い音楽に合わせて、「おきのどくですがぼうけんのしょはきえてしまいました」のメッセージが出たときのショックは今でも覚えています…w
    けど、本書は大丈夫!
    途中でしおりを挟んでおけば消えることはないでしょう!
    安心して続きから始めれます!


    ドラゴンクエスト風に

    カズオ・イシグロエスト 〜忘れられた巨人〜

    主人公はアクセルとベアトリスの老夫婦
    遠い地で暮らす息子に会うために冒険に出かけます
    冒険に出るこの大地は人の心や記憶に影響を及ぼす「奇妙な霧」に覆われている
    ルイーダの酒場はありませんが、戦士や少年、老騎士たちと出会い旅を共にします
    スライムは登場しないが悪鬼、悪魔犬、妖精、竜などが登場
    これら魔物たちに立ち向かい次々と襲いかかる試練をクリアすることはできるのか…
    そして、息子と再会することできるのか…

    ほん3さん、ドラクエを紹介して頂いて…
    じゃないっ!w
    『忘れられた巨人』を紹介して頂いてありがとうございました♪
    楽しい冒険でした(^^)

    • 1Q84O1さん
      戻りたいですね〜♪
      セーブが消えても何度もやり直したドラクエⅢ
      キラーマシン、ヘルバトラーを仲間にするために倒しまくったドラクエⅤ
      この2つ...
      戻りたいですね〜♪
      セーブが消えても何度もやり直したドラクエⅢ
      キラーマシン、ヘルバトラーを仲間にするために倒しまくったドラクエⅤ
      この2つをまたやり込みたいですw
      2023/05/08
    • おびのりさん
      読みましたね。実は、私は、これ読むの辛めだったんですよ。世界観が掴めなくて。
      読みましたね。実は、私は、これ読むの辛めだったんですよ。世界観が掴めなくて。
      2023/05/08
    • 1Q84O1さん
      おびのりさん、だめでしたか…
      私もお供しますのでイシグロエストの旅にもう一度出ませんかw
      おびのりさん、だめでしたか…
      私もお供しますのでイシグロエストの旅にもう一度出ませんかw
      2023/05/08
  • うーん、やはり外国の物語は苦手。
    特にカズオ・イシグロさんのは三作品めだと思うが、全部苦手。
    これまで読んだ中では最も読みやすかったが、雌竜を退治するところまでは星三つペースでしたが、最後の最後に星二つに。
    最後のあの終わり方はないわ〜。
    良かった〜って思えず、ガッカリです。

  • カズオ・イシグロは大好きな作家だが、新作をリアルタイムで読むのは、これが初めてのことになる。結論から言えば、『わたしを離さないで』『日の名残り』の二作に優るとも劣らぬ素晴らしい傑作だ。
    ただし最初のうちは戸惑った。舞台は、アーサー王が死んでから数十年後のブリテン島。鬼やドラゴンや妖精が当たり前のように跋扈し、騎士が重要な登場人物となり、『薔薇の名前』を思わせる修道院まで出てくる。設定だけ見れば、完全な中世ファンタジーの世界だ。これまでのイシグロ作品のイメージとあまりにも違うので、何か入れ小細工のような設定になっているのではと疑いながら読んでいたが、最後まで設定は変わらない。主人公の老夫婦はどことなくホビットを思わせるし、これはカズオ・イシグロ版『ロード・オブ・ザ・リング』なのかと思った。しかし拡散気味に見えた様々な要素がドラゴン退治に集約される終盤に至ると、神話的であると同時に限りなく現代的なテーマを持った物語の全貌が明らかになる。

    「記憶と忘却」「捏造された記憶」はイシグロ作品にいつも出てくるテーマだが、今回はそれが個人だけでなく民族の問題にまで発展する。「忘却に基づく平和」が正しいのか「真実の記憶に基づく戦争」が正しいのか…その対立の果てに、憎しみの連鎖(視点を変えればそれは「正義」と呼ばれる)が壮大な悲劇をもたらす。このあたりの展開には、明らかに21世紀の世界が重ね合わされている。ブリトン人とサクソン人の歴史に詳しいイギリス人なら十分に予想出来た結末かもしれないが、知識が乏しい日本人としては、次第に明らかになっていく各人の行動の真意や終盤の劇的な展開に、手に汗握る思いだった。
    そして本作は、民族の興亡を描く叙事詩であると同時に、ある老夫婦の愛を描いた抒情詩でもある。主人公のアクセルは一体何者なのか? 彼と妻ベアトリスの間に本当に息子はいるのか? 二人の過去に一体何があったのか? 記憶、忘却、愛、憎しみ、そして赦し…様々なテーマがぶつかり合い溶け合っていく最終章は限りなく美しく、一つの世界の終わりと新たな世界の誕生を同時に見ているかのようでもある。悲劇を乗り越えるためのかすかな希望も、そこには感じられる。
    舞台設定こそ『ロード・オブ・ザ・リング』のようだが、途中から強くイメージが重なったのはテオ・アンゲロプロスの映画だった。当初ホビットのように見えた老夫婦は、それ以上に、父親を探して旅をする『霧の中の風景』の姉弟のようであり、ラストは『シテール島への船出』を彷彿とさせる。アンゲロプロスは、民族の歴史と個人の人生を共に描くことに成功した映画作家だったが、同様に、イシグロも本作において叙事詩と抒情詩の融合に成功した。一貫して描き続けてきたテーマをさらに深化させ、同時に全く新しい物語世界を構築した、カズオ・イシグロの見事な傑作。予想とまったく違う形で期待に応えてくれたのが、何よりも嬉しい。

  • やはりカズオ イシグロの作品はとても面白いですね♪
    記憶が霧に消されている時代の老いた夫婦が息子を訪ねる旅に出るところから始まった物語は不思議な臨場感を伴いながら読者をブリテンの神話世界に誘うけど門外漢の私達にも違和感無くいにしえの世界を旅させて呉れる。「忘れられた巨人」との邦題になっているけど原題(埋められた とか葬られた)のほうがピッタリな気がする。それにしても面白かった!

  • この作家さんの3冊目ですが、やはり独特の雰囲気がありました。外国の作品だからでしょうか?途中解りにくい所があるので、何回も読むぐらいな熱心さが必要かもしれません。

  • うーん、これはどう読んだらいいのだろう。

    アーサー王がほんの少し前までまだ生きていた時代のイギリス。マーリンの魔法がまだ残っている頃。

    アクセルとベアトリス夫妻は、村はずれの家で夜にろうそくを使うことも許されず、村の人に一線を引かれたような暮らしを送っている。
    文字はなく、全てのことは口伝えで残されるというのに、ここの人たちの記憶はいつもすぐに消えてなくなってしまう。
    何か大事なことを忘れているような気がする…。そんな思いも、いつしか忘れ…。

    人々の物忘れの原因は、辺りに立ち込めている霧のせいではないか。
    身のまわりも頭の中も、もやもやとしてつかみどころのない登場人物の視点で語られる物語は、やっぱりつかみどころがなくて、手さぐりで読み進めるしかない。
    ただし、読み手のほうには記憶力が多少なりともあるので、余計に悩ましいともいえる。

    忘れたり思い出したりを繰り返しながら、夫婦は遠く離れて暮らしている息子の元を訪ねていくことにする。
    今と違って公共の乗り物どころか道すらも満足にないなかを、老夫婦は息子の元へと歩き続ける。

    旅の途中で若い戦士や鬼に襲われた少年、そしてアーサー王の甥である老騎士と、出会ったり別れたりを繰り返しながら、彼らは伝説の雌竜の元へと集結する。
    雌竜こそが、この霧の大元なのだから。

    ストーリーにするとこんな感じ。
    けれど文字になっているよりも多くのものごとがこの小説には含まれているようで、考えれば考えるほどに物語に捕らわれていくよう。

    最初にアクセルとベアトリスが住んでいた村の様子を読んでいた頃は、アイヌの人達を思い浮かべてしまった。
    荒涼とした土地。連なる丘。文字を持たず、共同生活のようにかたまって住む人たち。(でも、農業を営んでいましたね)
    何よりも、先住民でありながら追いやられたようにひっそりと暮らす人々の姿が。

    けれどもそれは、世界中のどこでも行われている光景なんだなあと、読み進めていくうちに気が付く。
    アクセルとベアトリスと老騎士はブリトン人。若き戦士と少年はサクソン人。
    本当は侵略する側とされる側で対立しているはずなのに、混じりあい、互いを尊重しながら暮らす人々。
    それは善きことのはずだけれど。

    “あなた方キリスト教徒の神は、自傷行為や祈りの一言二言で簡単に買収される神なのですか。放置されたままの不正義のことなど、どうでもいい神なのですか”

    個人の記憶と、民族の情念。
    今、日本に暮らしている日本人にはあまりピンとこない民族の情念が、現実社会ではいつも大きな諍いの種になる。

    雌竜の放つ霧のように、詳細を見えないようにしたまま持ち続ける情念は恐ろしい。
    だがしかし、全てをクリアにすることで問題は解決できるのか。却って重荷を背負うことになってしまうのではないか。

    “これまでも習慣と不信がわたしたちを隔ててきた。昔ながらの不平不満と、土地や征服への新しい欲望―これを口達者な男たちが取り混ぜて語るようになったら、何が起こるかわからない”

    常に寄り添って生きてきたアクセルとベアトリスが最後に選んだ道は、一体どう意味なのか?
    考えた時に気づいてしまった。
    アクセルの、戦士の、少年の、騎士の視点で語られたこの物語は、一度もベアトリスの視点に立っていなかったことを。

    彼女は何を思い、何を考えて生きてきたのか。
    時に子どものように頑固に、今という時間しか持たなかった彼女は、最後に記憶を取り戻すことができたのか。
    それともどこかで記憶を取り戻していたのか。

    アクセルとベアトリスの違いの大きさに、何か読み落としているようで不安なのである。

  • 前情報のないまま読む。
    「わたしを離さないで」のときのように、さぁこれからどうなるんだ!とソワソワしながら読み進める。

    そして、中盤、思い出す…

    そうだった、イシグロさんの作品に明確な救いを求めちゃだめなんだったことを。

    あとは、ひたすら、これ以上悪いことが起こりませんように、と思いながら読んでいました。

    どすーんときます。読み応えがあります。


    物語の舞台は、アーサー王が亡くなった後のブリテン島。(巻末の解説によると六、七世紀らしい)

    人の記憶を奪う霧が立ち込め、鬼や妖精も出てくるファンタジーだけれど、冒険をするのは老夫婦。

    老夫婦でも手加減なしで、魔物が襲ったり険しい山を登ったりします。

    個人的には、エドウィン少年の存在がつらい。
    せめて老夫婦に出会えたことは救いなのかな…

    この小説をどういう風に受け止めればいいのか、迷う。

    過去や幻影が入り混じり、忘れられていた記憶を手繰り寄せながら真実が立ち上がってくる。

    自分がイギリス(と書いていいのかわかりませんが)の文化に疎すぎて、重要なことを見逃している気がする。

    侵略の歴史を扱って、いるんですよね?(誰に聞いているんだか)
    でもこれは物語や過去の話ではなくて、今の、話だと感じた。

    恨みは残っているのか?


    登場人物の誰もが迷い続けている。

    誰もが旅の途中で、心許ない。

    ラストがそれでよかったのかわからない。


    それと、神様(キリストさん)に祈る場面が割とあるのだけど、揶揄してるのかなーと思った。

  • カズオ・イシグロの 日本人ルーツゆえなのか?

    「忘れる」ということの両面が使われている。

    また「忘れる」ということと 永きの平和 との関係も問うている。通常、「忘れる」ことは信頼関係をゆるがす。大事なことを覚えていることで、人間関係は強化される、と考えるものだろう。

    忘れ去ることを良しとする発想は、日本の「水に流す」という言葉に込められているが、同じような感覚は英国にもあるのだろうか?

    逆に、アーサー王伝説をモチーフにした作品であることは、むしろ彼の文化との距離を感じる。
    竜を守る側のガウェインやマーリン、サクソン人のウィスタンは 竜退治のトリスタンのようだ。モチーフが何かはわかるが感覚的に呑み込めないのはもどかしい。
    彼らは これらの登場人物にどんなイメージをもって読むのだろうか?

    “わたしを離さないで” では イシグロ氏が何人であるかなど考えもせずに読んだ。
    “日の名残り”は英国的色彩一色だった。

    この作品は、混じり合うことのないグローバリズムや、信頼を支える孤独に当惑させられた。
    哀しいですね。。

    • vilureefさん
      こんにちは。

      カズオイシグロの新作、全くのノーマークでした(^_^;)
      哀しいんですか、このお話・・・。
      「わたしを離さないで」も...
      こんにちは。

      カズオイシグロの新作、全くのノーマークでした(^_^;)
      哀しいんですか、このお話・・・。
      「わたしを離さないで」もぎゅ―っとなるような辛さがありましたが。
      これ、読んでみます!
      2015/09/04
    • adagietteさん
      vilureefさん、コメントありがとうございます。
      “わたしを離さないで”に較べると、わかりにくい作品のような気がしました。
      でも、...
      vilureefさん、コメントありがとうございます。
      “わたしを離さないで”に較べると、わかりにくい作品のような気がしました。
      でも、読んでよかった、と思える作品でした。
      読後に読んだ日経ビジネスのインタビューも興味深かったです。
      2015/09/05
  • 記憶がなくなる、ということは、嬉しいことや悲しいこと、怒り、憎しみなどの全ての感情を忘れていくこなのだ、と感じた。
    忘れるということは、ある意味幸せなことなんだろうな。

  • 奇妙。読みにくいことはないのだが、なにやら奇妙な話だったなあっというのが正直なところ。
    アーサー王伝説あたりの知識があればもっと面白かったのかも。
    大事な記憶をいつのまにかなくしてゆく。
    それは悲しいことだけれど同時に救いでもあるのかもしれない。
    記憶をなくす原因が竜、というのはなにかの比喩的なものなのかとおもっていたけど、ほんとにいた。
    確かにファンタジー。
    でもそうしたのはマーリンだったという驚き。
    憎しみを忘れさせることで、平和を保つ。
    そもそも憎しみが生まれるようなことをするなよ、と思うのだけれど…
    メインの老夫婦は強く想いあっているようで、
    決定的に分かり合えてないのでは、とも思ったり。
    原文だとどういう呼びかけなのか、と思うのだが、「お姫様」が、最後までなんか慣れんかった。
    普通に名前で読んだのじゃダメなのか。

    船頭さん、どうあってもアクセルを渡しそうにないよなあ
    つーかあの島に息子のはかがあるとか言ってたけど、
    もしかして死者の島ってことなの?
    うーんよう分からん。
    村上春樹っぽいなー
    謎めいたところを読み解くのが向こうの人は好きなのかなあ?

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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