マシュマロ・テスト:成功する子・しない子

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095411

作品紹介・あらすじ

『マシュマロをすぐ1個もらう?それとも我慢して、あとで2個もらう?』これは、行動科学で最も有名なテストのひとつマシュマロ・テストである。このテストの考案者である本書の著者ウォルター・ミシェルは、マシュマロを食べるのをがまんできた子・できなかった子のその後を半世紀にわたって追跡調査し、自制心と「成功」との関連を調べた。人生で成功する子は、初めから決まっているのか?それとも、そうではないのか?長年の追跡調査でわかってきた、人間の振る舞いの不思議を、マシュマロ・テストの生みの親自身が綴る待望の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 有名なマシュマロ・テスト。我慢すれば、より大きな報酬を得ることができるとして、我々は我慢をするのか。それは実際には報酬の内容にもよるし、要求される我慢の度合い、報酬取得の信頼度、それらの期待値や自分の欲望や実力を正確に把握できるかによる。

    頑張って勉強して大企業に入って、幸せな人生のマシュマロを得られる時代ではなくなっている。それを分からず、目の前のマシュマロを我慢し続ける自制心が重要だなんていうのは、人間の機械化を無責任な運任せで肯定しているに過ぎない。そんな風に思う。今日、美徳や価値観の根本が揺らいでいる。

    意志薄弱の事を古代ギリシアの哲学者は「アクラシア」と呼んだ。価値観が揺らぎ変容しても、意志薄弱者には軌道修正ができない。マシュマロは我慢しなくて良いが、自らをコントロールする力は必要だ。更に、マシュマロを用いた心理テストを見抜く洞察力とそれに抗ってみようとする自我が重要である。尚、ここで一つ目のマシュマロを食べず、報酬の二つ目を得た時点で二つとも踏み潰すような反逆的行為、あるいはその発想を厨二病またはアートと呼び、その過激さに心打たれる現象をファッションと呼ぶ。重要なのは、意志を強く持ち、盲目的に手懐けられた機械にはならず、抗って自己特別視したりそれに魅了される事なく、自然体でやり過ごす事。そうでなければ、他人の意図に絡め取られる。絡め取られたって別に良いのだが、それならば、自分の時間は他人の自由という事だ。本著には全くこんな論説はないが、マシュマロテストは奥深い。気丈にどんなマシュマロにも魅力を感じず、与えられるものに期待を寄せず、身も任せず。

  • 未就学児(4〜5歳くらい)の子供に今マシュマロを一つもらうか少しの間我慢してあとで2つもらうかというテスト(のちにマシュマロテストと言われる)を1960年代に実験した著者がその後半世紀に渡って追尾調査した結果、子供の頃に我慢出来た(自制した)子供は数十年後どのような人生を歩んでいるか?というとても引きのある有名な実験について。気になる結果がどうなったかというと自制することができた子供たちは、概ね社会的な成功を収めていることが分かった。やはり「自制する」という能力は「成功」に必要不可欠である。では社会的な「成功」は先天的に決まっているのか?それとも後天的に変える事は出来るのか?が気になってくる。しかし著者ははっきりと明言しない。その答えは単純ではない。よくある生まれか?育ちか?によって決まるほど人生は単純ではないからだ。それは長方形の縦と横の辺のようにどちらもお互いがお互いに複雑な影響を与えあっている。要はその複雑な組み合わせである。しかし多くの人がこの答えでは納得しない。はっきりと才能が足りないのか?努力が足りないのか?教えてくれと言う。しかしその単純な二項対立こそが間違っていると指摘する。これが一番大事な視点だ。成功を決定するのが「才能」ならば努力しないが「努力」ならば自分にもできるかも知れないと条件付きでやる人(=自分)本当にその気があるとは言えるのか?その前にまず「あなたはその気がありますか?」という視点こそが大切なのだ。ここのところは本当の意味での理解はすごく難しいし説明も難しいがおそらく正しいと思う。そのほかホットシステムやクールシステム、イフ〜ゼン(もし〜したらその時どうする?)など行動経済学や脳生理学、心理学にも共通するような内容でとても興味深く読んだ。

  • 有名なマシュマロテストを詳細に解説してくれ、またその後の追跡調査から、派生テストまで、マシュマロテストで気づきがあった事柄を網羅してくれている。

    我慢できるかどうかは才能というよりも育った環境が大きく、その能力は脳の可塑性によりあとからでもつけることができるとのこと。

    子供達が我慢する様子をホットシステムとクールシステムで解説してくれているところは興味深かった。

  • 【子供の為にできる事5つ】
    *どう育って欲しいか手本を子供の人生で重要な人物が手本を自ら示す事。大きな影響を与える。
    →ストレス、欲求不満、情動への対処法。自分が成し遂げた事を評価するときの基準。他人の気持ちに対する共感、感受性。態度、目標、価値観。躾の戦略、規律の欠如など全て

    *子供との約束を守る事
    →欲求充足の先延ばしを厭わないようにする為

    *幼いうちから「自分には選択肢があってそれぞれの選択肢には結果が伴うのだ」と学ぶ手助けをする事が大事。
    ご褒美を上手く利用すれば適切な選択肢を促せる。

    *「良い選択→良い結果、悪い選択→悪い結果」を幼いうちに認識するのを手伝う事。

    *楽しいけれど難しく、次第に難易度が上がる課題に一緒に取り組む事。
    →子供が必要と感じ、望んでいる手助けをしながらも、子供に自力で取り組ませ、決して課題を引き受けたり代わりにやったりしてはならない。幼いうちに成功体験を積めば、子供は成功や力量に関して楽観的で現実に基づいた見通しを持つようになったり、自分にとって最後には自ずと満足出来るようになる活動を自力で探す心構えを持ったりしやすくなる。

    3章
    大脳辺縁系➡︎扁桃体
    幼い頃に自制を可能にする戦略を学んで練習する方が、長い人生を通じて確立されて根付いたHOTで、自滅的で自動的な反応のパターンを変えるよりも、ずっと優しい。
    また、HOTシステムは人生の最初の数年に渡って支配的なので、幼い未就学児が自制心を発揮するのはとりわけ難しい。
    前頭前皮質
    脳の中で1番進化した領域
    coolシステムはゆっくり発達し、就学前の年月と小学校の最初の数年間に徐々に活発になり、完全に成熟するのは20代前半になってから。

    5章
    「if thenプラン」もし〜したらいいその時は…する。➡︎魅力的でHOTな刺激「もし何かがどうしても欲しくなったら、腹が立ったら、退屈したら、バーに入ったら」➡︎「見ない、仕事をする、飲まないなど」誘惑に抵抗する望ましい反応と結びつける。この実行プランを練習すればHOTシステムに望ましい反応を、引き起こさせるようにできる
    時間を経るうちに寝る前に歯を磨くのと同じに新しい連想や望ましい習癖が形成される。
    ➡︎ADHDの子供に成功例多い。

    8章
    実行機能ーコントロールの為のスキル
    第一に自分が選んだ目的とそれに付随する条件「もし今1つ食べたら、後で2つ貰えない」を記憶し絶えず頭に浮かべておく事。
    第二に目的に向かってどれだけ前進しているかを確認し、目的志向の思考と誘惑を和らげるテクニックとの間で注意と認知作用のスイッチを柔軟に入れ替えて、必要な修正を行う事。
    第三に目的を達成するのを妨げる様な衝動的な反応(誘惑の元がどれ程魅力的かを考える、手を伸ばして触れようとする)を抑え込む事。

    就学前に実行機能を十分発達させた子供はHOTな本能的誘惑が引き起こすストレスや葛藤に対処しやすい。その逆は様々な学習上の問題や、情動的問題に直面する危険が高まる。

    自己効力感ーコントロールしているという認識

  • 美味しいお菓子を食べるのを先のばしできる子は何が違う? 自制心に関する「マシュマロ・テスト」の考案者が、被験者のその後を半世紀にわたって追跡調査し、人間の本質の不思議を語る。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40233855

  • ・自己効力感とは、自分の行動を決定するにあたり、能動的な行為者になれるという信念。
    ・楽観主義者は、楽観の度合いが小さい人と比べると、自分の健康と将来の幸せを守るために多くの手を打ち、全般に健康で鬱になりにくい。
    ・幼い頃マシュマロを2個モラウタメニ待てる秒数の長い人ほど、大学進学適正試験の点数がよく、欲求不満やストレスにうまく対処できる。
    ・ホットシステム→キリギリス、クールシステム→アリ

  • 1960年代の園児実験:マシュマロ1個を直ちにもうらか、一人きりで20分待って2個もらうか。幼少期の自制能力が人生展開に重要。

  • 目の前の欲求を抑えて、合理的な選択を出来るか=マシュマロテスト
    本能的に衝動で行動する=ホットなシステムと認知的で複雑、ゆっくり活性する=クールなシステム
    のバランスによってマシュマロを判断する
    クールなシステムを活性化させることで、合理的な選択ができるようになる

    ホットなシステムが強めの子でもクールを育てれば、そのバランスを必要な時に必要な形で働かせることができる
    ストレスによってクールなシステムは活動が鈍るケースが多く、脳は可塑性によって長くストレスにさらされるとクールなシステムの働きが失われてしまう例もある
    (長期的に合理的な判断が可能かについては、幼少期に身の回りの人を信頼できると感じられたか否かによって、決定する)
    (仮にクールなシステムがうまく働かなくても、if thenと条件付けしながら学んでいくことで、ADHDの子供でも、かなり適応できるようになる)
    (ホット、クールどちらに重点が置かれるか遺伝的に決まっている部分もあるが、環境と遺伝の要素は複合的に関連しあっているため、二項対立的に捉えるのは難しい)

    クールなシステムで衝動や行動をコントロールする=実行機能。ごっこあそびなど論理とは違う形で他者を想像する場面でも発揮される。
    自分ならできる!=自己効力感。
    自分の知能や周りの世界は鍛えたり発達させたりできる=拡張的知能観。
    楽観的な世界観を持つことは、自己効力感や拡張的知能観と密接に関連している。
    →成功への楽観的な見通しを育むことで挫折や誘惑に対処する意欲や能力が高まる

    時間的、心理的、空間的距離感が大きい場合、抽象的なクールシステムが判断するが、これが近づくとホットな具体的で鮮明な思考になる。
    将来を考える時、それをクールに抽象的に考えるだけでなく、具体的に起こりうる筋書きを今まさに展開しているかのように「加熱」することで、より精度の高い判断ができる

    心の痛みはアスピリンで一定程度回復する。
    拒絶感受性が高い(相手からの拒絶を極端に怖がる傾向がある)人は自己成就的に人間関係に失敗しやすい。
    対人関係での拒絶を経験すると、炎症性の化学物質を放出し回復しようとする。進化の過程では短期的に身体的な損傷の治癒につながる利点があった。ただ、これが長期に渡ると病気の源になる。
    拒絶感受性が高くても、自制スキルの高い人は相手からの拒絶を「冷却」できるため人間関係の破綻は少ない。

    自尊心は過剰な自己評価の結果でもあるが、これが心理的な防衛システムに成っている面も在る。
    正確に自己を認識する現実主義者は自尊心が低く、鬱になりやすかったり、心身の健康状態が悪い傾向がある。

    人の行動は多くの場合、if,thenのパターンがある。特定の誘因により人格の表出パターンは予想できる。決して多種多様な状況でも人格が首尾一貫しているわけでなく、その人特有の誘因に基づくif,thenパターン表出と捉えたほうが、正確。

    実行機能は訓練によって高められる。マインドフルネスはその一つ
    セサミストリートでは実行機能を高めるプログラムを取り入れてきた
    コントロールした衝動があればそれをif thenに落とし込みそのパターンを自動化していくことが重要。自分がホットになりやすいパターンを記録し、そこに新たなif thenを組み込んだパターンを作れば自己のコントロールは簡単になる。

    子供には自制スキルが完全に埋め込まれているわけではない。まずは幼少期のストレスレベルを低くしておくこと。
    子供の気をそらせることを親がやってやることで、子供も自分をコントロールし気をそらせることを学ぶ。親はこの導き手になる。

  • 自制心のききにくいときの対策のヒントにしたくて読んだ。自分の弱い刺激を知ったり、

    ♧気持ちが明るくなることを考えると、目の前の衝動や誘惑への反応が和らぐ

    ストレスが長引くと脳の萎縮を起こし、思考力が落ちる
    ♧予め、特定の事態が起きたときにとる反応を決めておくと、衝動的な反応を起こしにくくできる(人間が変われることへの可能性)
    ♧嫌悪条件付け:衝動が発生したときに生じる行動を、自分の嫌いなものに変える
    ♧嫌な思い出を反芻することは痛みの再発を誘うこともあるが、自分から距離を置くことは有効
    ♧拒絶感受性(RS)という見捨てられ不安
    ♧課題をすることで元気になると思えば、意志の疲弊が防げる
    ♧「今」を冷却し、「あとで」を加熱する
    ♧ホットスポットを見つけるために日記をつける
    ♧将来自分は変われる、と思うほど、ひとは変われる

  • 心理

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