- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152095541
作品紹介・あらすじ
大学で鬱屈した日々を送る雅也に届いた手紙。それは連続殺人犯・榛村大和からのものだった。冤罪を訴える大和のため再調査を始めた雅也だったが、ある事実を知り……俊英による傑作長篇ミステリ
感想・レビュー・書評
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ーどうして人は、孤独を恥ずかしいと思ってしまうんだろう。(P.12)
…顔の皮膚一枚で浮かべたらわれながら薄っぺらな笑みであった。(P.180)
西の空には、橙と薄桃を刷毛で交互に滲ませたような色あいが広がっていた。細い電線と、まわりに群れ飛ぶ鴉とがくっきりと黒く浮かびあがっている。(P.250)
焦燥はなかった。かと言って解放感もなかった。ただ、ぽっかりと胸に穴があいていた。たったいまできた穴ではない。ずっと昔からあった、誰にも埋められない、そして誰も埋めてくれない穴だ。深く深く穿たれた穴だ。ふだんはそこに穴があると認識せずに暮らしている。それほどまでに見に親しみ、意識に馴染んだ穴だ。いや- 欠落だ。(P.261)
とくに行くあてはなかったが、ただ歩いた。青一色だった空に桃いろが刷かれ、やがて橙が混じってまだらに染まり、西に陽が落ちて茜が群青に呑みこまれていっても、まだ歩きつづけた。
濃紺の夜空を背景に、信号の灯りが冴え冴えと浮きあがって映える頃、…(P.311)
榛村の表では人を惹きつけ、裏では残忍な犯行を繰り返す、まさにサイコパスな描写がとても上手で、自然にこんな人かなと想像できた。
雅也がどんどん榛村に乗っ取られていくのが分かり、後半からゾクゾク。後半にかけて面白くなる本ってそうそうないので、新鮮。様々な人が入り組み、複雑な人間模様でたまに頭が混乱、、、
人の弱みに漬け込み、上手く足りない、満たされないところに入り込む、これは才能なのか…
現実にこんな人、会ったことないが、いたら怖すぎる…
チェインドッグ、鎖に繋がれた犬だが、誰が鎖に繋がれていたのか…雅也か、雅也の母か、それとも雅也の前に現れた謎の男か…
空の描写もとても素敵で、色を交えながら描くところが好き。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まだ映画を見ていませんが、大好きな阿部サダヲさんが犯人を演じられるということで注目をした一冊です。設定から、阿部サダヲさんではない様な気はするのですが、獄中で、動きもできない中で、表情だけで微妙な感情の動きを演じたり、圧倒的な存在感を出せたりできるのが、阿部さんくらいしかいないと、監督さんが判断しての起用なのかな?とか、勝手に想像してました。
美青年のイメージとは遠いですが、(もう一度書きますが、阿部サダヲさんは一番好きな俳優さんですが…)、サイコパスなら意外性がなく面白くないとも言えます。
この犯人の執着心と、その執着を持ち続け、行動に移せるパワーがすごいなと感心してしまいました。面倒にならないのかな、って思って。
この作家さんの、1番のことを毎回[いっとう]って書くところとか、少し言葉のクセが気になりました。情景描写などは潔いほど殆どなく、筋に集中できて、面白かったです。 -
装丁の感じから私を魅了することはなかったのだが、今回図書館が整理期間ということで末席に参列した。
いつの時代も期待を裏切らない櫛木さん。これは2015年出版の作品。なかなか心理的に猟奇的で面白い。あの一世を風靡した「羊たちの沈黙」のレクター博士みたいな。囚人との面会を経るたび、その心は操られる。共感して殺人を犯すか、正気を取り戻すかの2択しかない終わり方を想像していた。が、そこはさすが櫛木さん。まさかそっちにも…多くは語るまい。
シリアルキラーものは個人的に好き。共感は出来ないが虐待や傷付けるシーンは秀逸。 そして他の人のレビューを見て、これがあの「死刑にいたる病」の原題だと知った。読みたいと思っていた1冊を知らぬ間に手に取っていた…まさかマインドコントロール!? -
怖っ。たまにこういう本も読みたくなるんだけど、いつも後悔する。
本当にこういう事ってあるんだろうか、と。
実際殺人を繰り返すような事件はあるから・・・
映画が公開されるって事で読んでみた。
文庫化になる際に「死刑にいたる病」と改題。
榛村役は阿部サダヲでぴったりかも。目が笑ってない表情とか想像すると怖い。
死刑宣告を受けて留置所にいるのに、そこから昔親しんだ、今は大人の子供たちを操ってる。
怖い、怖い。
人を信じれなくなる。 -
「死刑に至る病」の改題前の小説。
きっと阿部サダヲさんだったら小説とのギャップによるガッカリ感はなさそう、映画も観てみたい。
秦村にも雅也にも共感できた。人は知らないうちにあの人のようになりたい、同化したいと思い、成長してきたのだろうな。いい人ほど慕われたがり、性格や感情の隙を見つけ、無意識に相手を見て感情を揺さぶったり、意図せず相手に同化したいと思わせるように振る舞っているのかもしれない。
偏見かもだけど、少なくとも自分がそうである気がした。
いい意味で学びの多い本だった。
ただ、エピローグは予想できる流れだったので不要だった感。
124冊目読了。 -
雅也とともに冤罪の犯人を探し、榛村に共感するかのように読み進められた。
いい意味で裏切られ、面白かった。
人が話す他人の印象を信用することの恐ろしさを感じることができ、そういう面では参考にもなったかも。 -
こういう話って、とりあえずぐんぐん読んでしまいます。好きか好きじゃないか、は別として
自分とは関係ない世界ではないなと感じました。
周りには危険な人はいない、いい人そうだと勝手に思い込むのって怖すぎますね。
犯人に魅了されて無意識にそこになろうとしてる描写、少ししかなかったけどとてもゾワっとしました。
現実にも、どこかしらにそういう人は間違いなく存在するのだと思います。
怖いですね。。
凶悪犯罪者がいると、なぜそんなことをしたのか、理解、解明しないと普通の人は不安になりますよね。理解できないこと、理由がないことってものすごく怖いですから。
でも、この話を読んで、到底理解できるものでもないし、理解しようと思うことすら危ない気がしました。
共感も理解もできないけど、とても興味深い話でした。 -
「死刑にいたる病」原作。
映画を観てから読んで良かった。
勿論違う設定もあるが、全体の色合いは変わらず、だからこそ先に映画で良かった。
補足され肉付けされ更に深く刻まれた。
これを読んで今また映画を観たら、更なる発見や想いも生まれるだろうけど
しばらくは余韻に浸っていたい。
[図書館·初読·6/9読了] -
映画館で10回以上も上映予告を見て映画化で知り、「映画史に残る驚愕のラスト」て聞いたら、めっちゃ気になるじゃないですか。
興味を持って、まず原作本から。
読み始めたらページをめくる手が止められずに(気持ち的には)一気読みでした。
突然届いた一通の手紙から、鬱屈した日々を送る大学生雅也の日々が変わっていく。冤罪なのかどうか再調査することにより、少しづつ明らかになっていく真実。
本当に冤罪?え?もしかして?まさか?……から二転三転する展開。
出会った人みな魅了してしまう殺人鬼に、雅也まで影響され堕ちてしまうんじゃないのか、ハラハラしながら読んでいくと……結局そこに着地するなんて。と安心(?)したのもつかの間、最後の最後でどーんと絶望させられました。
灯里ちゃんが、とてもとても心配です……
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作者はシリアルキラーにとても興味関心があるらしく、扱ったサイトを持っていたと教えてもらいました。さもありなん。
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え?もしかしてコイツがそうなんじゃ?と思わされる一輝が終盤、いい仕事するんですよね…… 読んでる最中、人から聞いた「榛村=中村倫也」が頭にこびりついて剥がれなくてずっと中村倫也に変換してたけど、最後まで読んで、やっぱり阿部サダヲだなって腑に落ちました。
映画、見てみたいな。
予告で岩井志麻子さん、ちらり映ってましたね