多々良島ふたたび: ウルトラ怪獣アンソロジー (TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE)

  • 早川書房
3.70
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本棚登録 : 80
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095558

作品紹介・あらすじ

本篇の再解釈に挑む山本弘、正義の化身となった女子高生の苦悩を描く小林泰三の短篇ほか、北野勇作、三津田信三、田中啓文、酉島伝法、藤崎慎吾が日本SFの象徴的イコンをリスペクトする計七作

感想・レビュー・書評

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  •  また怪獣ものかって? そうですよ。今度は早川書房と円谷プロのコラボなので、ウルトラマンやウルトラ怪獣を登場させてOKという企画。7人の競作。

     まずは当代一の怪獣作家・山本弘は『ウルトラマン』の怪獣島の話、レッドキングとかピグモンの登場する「怪獣無法地帯」の後日譚。ピグモンは『ウルトラQ』に登場した巨大ロボット怪獣ガラモンの着ぐるみの流用というのがおとなの事情なのだが、山本作「多々良島ふたたび」では、ストーリーの上でピグモンとガラモンの関係が要になっているのに作者のこだわりを感ずる。

     北野勇作「宇宙からの贈り物たち」は『ウルトラQ』の登場人物・一平くんが夢を見ながら『ウルトラQ』の世界を移ろっていくという幻想的なお話。小説のあと毎回作者のちょっとしたエッセイがあるのも一興。ヴィデオのない時代、『ウルトラQ』の一話一話を食い入るように見つめて頭の中で再生可能になるようにした、そういう視聴体験がこの小説を生み出しているんだ。

     「ウルトラマン」の呼称は一切用いずにウルトラマン小説『AΩ』を書いた小林泰三がここでは堂々とウルトラマンを書く。タイトルは「マウンテンピーナツ」。怪獣を含む自然保護を訴える過激で暴力的な自然保護団体マウンテンピーナツによりウルトラマンが苦しめられる話で、明らかにシーシェパードへの揶揄。しかし必ずしもアンチ・シーシェパードなのではなく、テーマはウルトラマンの正義とは何かというところにある。なんだかわからないがスプラッターな感覚がウルトラマン小説を覆っているというのも小林泰三らしい。

     ホラーミステリー作家・三津田信三はホラー小説「影が来た」を、『ウルトラQ』のレギュラー登場人物、由利ちゃん、万城目、一平、それから一の谷博士を使って書く。怪獣こそ出てこないが、往時の『ウルトラQ』の雰囲気を見事なまでに再現していて、当時放映されたエピソードのノヴェライズかと思うほどだ。

     精神科クリニックに男がやってきて、悩みを打ち明ける。「実は私は地球人ではないんです」「そうですか。どこの星から?」「驚かないんですか」「そのようにおっしゃる患者さんは、さほど珍しくありませんから」。モロボシ・ダンというその男は変身できなくなってしまったという悩みを語る。診察室も変だ。座敷にちゃぶ台。精神科医の名もメトロン……いや、米瀞先生だ。治療はグループセラピーをやりましょうということになる。変身できないという同じ問題を抱えた患者が何人かいるのだ。ほら先を読みたいでしょ、藤崎慎吾「変身障害」。

     『ウルトラマン』が放映されていた時代、少年雑誌には怪獣の図解がよく載っていた。怪獣の身長体重、解剖図、そして足型。怪獣の足型ってどうやって取るのと田中啓文は思ったらしい。そこで「怪獣ルクスビグラの足型をとった男」を書いたんだろう。主人公の怪獣類足型測定士の福太郎の師匠が田中啓文じいさんという人を食った設定だが、ちゃんとネタになっていたりする。怪獣が歩いてきそうなところに生コンを撒いて足型をとるという命がけの仕事師の話である。なぜ日本にだけ怪獣が現れるのかもこれを読めばわかる。

     トリは酉島伝法の「痕の祀り」。「ウルトラマンと怪獣が戦ったあと、誰が後片付けするのだろう」小説。都市現状回復機構に属する加賀特掃会(略すと科特隊に近い)の降矢たちは万状顕現体(どうやら怪獣のことらしい)と斉一顕現体(そしてウルトラマンらしい)の接触状況(つまりは戦い)に向かう。斉一顕現体の放つ絶対子(スペシウム光線のことらしい)の影響を受けながら、現場にたどり着く。斉一顕現体が光を放って空に登っていったあと、加功機(モビルスーツみたいなものらしい)に乗って、急速に腐敗する万状顕現体を解体して処理するのである。そうしないと有害な有機物に汚染されてしまうからである。

     『ウルトラマン』シリーズの製作者からして、この設定に沿って作品を作るだけでなく、パロディにしたり、ウルトラマンが怪獣を倒し、宇宙人の侵略から地球を守るということに疑問を呈したりし、さらにはM78星雲から来た正義の宇宙人という設定をもっと大人っぽいものに換えてみたりしていたのである。とすればここで各作家たちがやっていることはその追随ではある。
     ウルトラマン・フォーマットを使って真面目に語る山本、三津田作品、パロディに傾く北野、藤崎、田中作品も楽しいが、換骨奪胎をめざす小林、酉島作品に強い印象を受けた。ま、それは評者の好みの問題で、読者それぞれに美味しいところを見いだせるだろう。

  • マウンテンピーナッツ、変身障害が面白かった。後者のアバターによる変身というアイデアは楽しい。

  • 7人の作家さんたちによる、ウルトラ怪獣アンソロジー。
    ウルトラマンたちではなく、メインはあくまで怪獣で、
    「怪獣」の魅力に取り憑かれた大人の多さを実感します。
    もちろん僕もそのひとりなんですけど(笑)。
    サイドストーリーあり、スピンオフあり、
    新作エピソード的なものもあり、ジャンルもムードもさまざま。
    ウルトラシリーズ、そして怪獣そのもの持つ世界は
    まだまだ広がる余地を残しているのだなぁと感じました。

  • 【由来】
    ・「ウルトラマンデュアル」の方が先に知ったけど、そのつながりで。

    【ノート】
     7人の作家によるウルトラ作品アンソロジー。ウルトラQ、マン、セブンまでが範囲というお題とのこと。

     本書もそうだが、円谷プロの動きの多様性には期待できる。つい最近までテレビでやっていた「ウルトラマンX」は久々の良作だった(ただし設定やらギミックに関しては既視感が強く、仮面ライダー陣営の後塵を拝すること甚だしいと思う)。また、少し前になるが「ウルトラQ dark fantasy」、「ネオ・ウルトラQ」、そして今も続いているコミックの「ULTRAMAN」など、大人向けな世界観の作品も発表し続けている。子ども向け番組ではまだ試行錯誤をしている印象だが、それ以外の分野では結構、伸び伸びと遊んで世界を広げているような印象だ。
     「SFマガジン」の早川書房と円谷プロがタッグを組んで、こんな本を出していたとは知らなかった。まずは第1弾ということで、今後の動きも楽しみ。

    「多々良島ふたたび」 山本弘
     ウルトラQとウルトラマンのクロスオーバー。皆が「似てるけど?」と思ってたピグモンとガラモンのつながりの解釈が秀逸。ウルトラ世界の設定を活かした真っ当なSF作品。

    「宇宙からの贈りものたち」 北野勇作
     ベースはウルトラQの「宇宙からの贈りもの」だからナメゴン。ちょっと不思議な前衛舞台劇を見ているような構成ではあるが、あまり印象が強い作品ではなかった。

    「マウンテンピーナツ」 小林泰三
     初代マンがベースだが、変身するのはギャル。怪獣を攻撃するなという世界的な武装環境保護集団「マウンテンピーナツ」がお話の主軸。
     でも設定がちょっと雑で、「国政世論を味方に付けてる」というだけで、このマウンテンピーナツは機動隊や自衛隊に発砲するわ、ウルトラマンにミサイル撃ちこむわ、やりたい放題。言動の身勝手さを強調することによって、彼らへの討伐を正当化するのが意図なのかも知れないが、それがあまりにも現実離れしていれば興ざめ。ちなみに本作品は、そんなマウンテンピーナツを「絶対、許せない!」と攻撃しようとする人間としての主人公と、不介入を貫く超越存在としてのウルトラマンという対立的構図がテーマ。
     ただ、この人の作品って、何か物足りなさを感じる。「AΩ」でもウルトラマン的な存在が出てくるのだが、今ひとつだったし、本作でもその印象は変わらなかったのが残念なところ。

    「影が来る」 三津田信三
     ウルトラQの「悪魔ッ子」がベースで、出てくるのもウルトラQでお馴染みの面々。ホラー作家によるものなので、それっぽいテイスト。

    「変身障害」 藤崎慎吾
     セブンをベースとしたスラップスティックコメディ。「ウルトラアイを使っても変身できなくなった」との悩みを、街で評判のカウンセラーに相談に来るモロボシダン。そこにメトロン、イカルス、ゴドラ、ペガッサ、チブルスが絡んできて...という話。。途中からオチが薄々分かるけど面白い。ダンも歳を取ってるという設定なので、是非、実写でやってほしい。

    「怪獣ルクスビグラの足型を取った男」 田中啓文
     「怪獣類足型採取士(国家資格!)」の孤軍奮闘を描いた、本書の中で一番好きな作品。「怪獣が日本にだけ現れるのは、生物兵器として日本政府が怪獣を餌付けしているから」という解釈が斬新。ただ、この辺りの陰謀論が本作の主軸ではない。センス・オブ・ワンダーなSF感も本書の中で一番強い。

    「痕の祀り」 酉島伝法
     怪獣の死骸を処理する現場を描いているのだが、正直、あまり分からなかった。

  • ウルトラQ・ウルトラマン・ウルトラセブン、所謂第1期ウルトラブーム時の3作品世界を舞台にした怪獣小説アンソロジー。各作家さん見事に世界観を活かした短編を描かれています。

    特に山本弘が描く表題作の、ガラモンとピグモンの関係性はさすがのこじつ…設定(公式設定じゃないよな?)である。なるほど、そういうことであれば得心がいく!謎解き部分もあって秀逸、上手いよなぁ

    その他もいずれ劣らぬ個性的かつウルトラ愛に満ちた小説で、オリジナルをしっかり見ていればいるほどに小説が楽しめる。初期ウルトラ作品に愛着ある人は是非ご一読戴きたい。俺、久々にDVDでも借りてこようかと思ったくらいである。

    あと出来たらM-1号出て来て欲しかった。俺似てるねん(笑

  • 各作者がウルトラシリーズのオマージュとして書いた短編アンソロジー。少々、気負いすぎたかなという感の作品が多い中、堂々と本編の背景を活かしつつ、本編では語られなかった疑問に答えた、山本弘のタイトル作品が出色。

  • ☆4つ

    なんともわたしにとっては玉石混交の作品達である。

    とんでもなく面白いお話もあれば、なんだこれこれぢゃまるで小学生の作文レベルだな、という具合の作品もある。

    自分なりにウルトラマンやウルトラセブン、そして怪獣や宇宙人たちに対して抱いている感情に個性があるのだろう。

    だからある種の作品には感激するが別の種の作品には激怒するのであろう。

    概して奇をてらい意味不明の単語を並べ立てる作品はすかぬ。すまぬ。

  • 山本弘「多々良島ふたたび」、小林泰三「マウンテンピーナッツ」、三津田信三「影が来る」がよかった。

  • とても楽しみな力ある作者さんたちのウルトラ怪獣文学集

     「多々良島ふたたび(山本弘)」は楽しい娯楽作品だ。ガラモンとピグモンの謎も解けるし楽しい作品。

     「宇宙からの贈りものたち(北野勇作)」はイマイチかな。凝り過ぎておもしろくなかった。

     「マウンテンピーナッツ(小林泰三)」の風刺的表現はなかなかのものだ。ウルトラとしてはおもしろくないものの、底を流れるテーマは良い。

     「影が来る(三津田信三)」もイマイチかなぁ。

     セブンが対象の「変身障害(藤崎慎吾)」はなかなかおもしろい。ハートウォーミングなエンディングも下手に真面目でユニーク。

     気持ちはわかるけど、おもしろくないのが「怪獣ルクスビグラの足型を取った男(田中啓文)」。ディック風の展開だけど全く違う。

     一番まじめなのが「痕の祀り(酉島伝法)」なんだけど、あまりに落差がありすぎるのと、相変わらずの漢字だらけが苦手だ。

     やっぱ、ウルトラ文学は山本弘が最高だな。

  • 円谷プロと早川書房のコラボによる「ウルトラシリーズ」アンソロジー。本編の後日談ちっくな内容から、やけに抽象的でわけわかめな作品までウルトラマンや怪獣に直接関知しない、市井の人々の姿が描かれます。ともすれば第一期シリーズに偏りがちで懐古主義に陥りそうな中『ギンガ』や『ネクサス』をクローズアップし、正義と矛盾と苦悩に揺れる小林泰三「マウンテンピーナッツ」が色んな意味で異質です。ピグモンとガラモンの関係性を理由付け、多々良島の真実と最終話付近のエピソードを橋渡す山本弘の表題作、作者らしさと『ウルトラQ』の雰囲気を両立した三津田信三「影が来る」も良し。連載は終わっているようですが“01”というからには続きもあるのかな?

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著者プロフィール

作家。2003年に本格SFにして著者初の四六判ハードカバー『神は沈黙せず』(角川書店)を刊行。同作は読者の話題をさらい、日本SF大賞の候補となった。また2006年5月に刊行された単行本『アイの物語』(角川書店)も各書評家に絶賛されている。

「2018年 『怪奇探偵リジー&クリスタル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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