人体600万年史(下):科学が明かす進化・健康・疾病

  • 早川書房
4.04
  • (21)
  • (20)
  • (10)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 301
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095664

作品紹介・あらすじ

「裸足への回帰」という趨勢の生みの親として著名な進化生物学者が、現代人の病という視座を通すことで600万年の人類進化史をエキサイティングな、現在進行形の物語に変えた、骨太な知のサーガ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 後半は人類進化を踏まえた人間の健康に関する内容。

    中東では、新石器時代が始まってから身長が4cmほど高くなったが、7500年前から低くなり始めた。中国や日本でも、稲作が発達するにつれて8cm低くなり、メソアメリカでも農業が確立するにつれて5.5~8cm低くなった。感染症との闘い、断続的に起こる食料不足、長時間の農作業にエネルギーを費やしていたためと考えられる。ヨーロッパ人の身長は、1950年頃になって旧石器時代のレベルに戻り、その後上回るようになった。

    狩猟採集民の標準的な栄養量は、炭水化物35~40%(日本人の摂取基準50~65%)、脂肪20~35%(同20~30%)、タンパク質15~30%(同15~20%)、食物繊維100g/日(同20g/日以上)、ビタミンC 500㎎/日(同100mg/日)、カルシウム1000~1500㎎/日(同650mg/日)、カリウム7000㎎/日(同2500㎎/日)。

    睡眠中はレプチンの値が上がり、グレリンの値が下がり、食欲を抑制する。睡眠不足の状態が続くと、レプチンの値が下がり、グレリンの値が上がるため、栄養が足りていても食欲が旺盛になる。

    週25km歩くだけでHDL値をかなり上げ、血中トリグリセリド値をかなり下げる。精力的な身体活動によって、新しい血管の成長を刺激し、血圧を下げることにつながり、心臓の筋肉や動脈壁を強化する。定期的に運動している人は、心臓発作や脳卒中のリスクを半分近くまで減らせる。運動の程度が激しいほどリスクの減り幅が大きい。

    飽和脂肪酸は肝臓を刺激してLDLを多く産生し、動脈硬化のリスクを高める。不飽和脂肪酸はHDL値を高め、LDLとトリグリセリド値を下げて、心臓血管疾患のリスクを減らす。トランス脂肪酸は、LDLを増やし、HDLを減らす。

  • 2型糖尿病、骨粗鬆症、がん(特に乳がん)、など現代病と呼ばれる病気が生物学的進化と文化的進化のミスマッチから生じていることを説明している。
    まず、生物学進化によって人間がいかに効率的に糖を接種できる能力を獲得できたを示し、次に農業革命、産業革命を経て、人間がいかに過剰に糖を接種しやすくなったを示すことで、現代病の原因となる肥満になることが必然であることをわかりやすく説明している。

  • ☆農業により大量の糖類を摂取するため、インシュリンが多く生産されるになった。

  • 著者はハーバード大学の人類進化生物学という、一般には聞き慣れない部門の教授。
    上下2巻だが、①類人猿からの600万年に渡る人類の生物学的軌跡、②人類の進化に比べ、文化・文明の変化が激しすぎることによる様々な病や問題(著者はミスマッチ病、進化的ミスマッチと呼ぶ)。それぞれが重厚な内容で一人の著者が一冊にまとめることができるとは、著者の素晴らしい知性に驚愕するとともに、一冊になっているが故に後半が一層の説得力を持つ。
    ジャンクフードでない健康的な食事、適度な運動、ストレスの軽減。当たり前のことだが、なぜに難しいのか、いかに大切かがよく理解できた。
    後は実践できると良いのだけれど。

  • 古代から一気に近代、中世の見解も聴きたかった

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:469.2||L||下
    資料ID:95160588

  • 人間は(すべての生物がそうであるように)子孫をできるだけ多く残す方向に自然選択を受けてはいるものの、座りっぱなしで画面や文字を凝視する時間が長く、加工食品ばかり口にするような先進国の現代的な生活をしながら健康体でいるように自然選択は受けていない。

    近視、歯列の悪さ、婦人科系のトラブル…自分が医者にかかったことのある病気・症状の大半が予防可能なミスマッチ病だったことにがっくり。はっきり言って親の責任がかなりあるので、自分は繰り返さないように日々努力したい。

    人間が健康でいられるために自己責任でできることを挙げてみると:
    ・骨に負荷をかけるような運動を頻繁にすること。特に成長期にそうすることは一生の資産になる。
    ・加工度のできるだけ低い食品をバランスよく食べること(所謂地中海食。筆者も指摘する通り和食に限らず東洋の料理もよい)。また小さいうちは固いものを意識して噛ませること(著者はガムも推奨)。
    ・砂糖、砂糖を使った食品は食べない。
    ・特に子どものうちはできるだけ屋外で過ごす時間を長くすること。また幼少期・成長期に読む本などは、できるだけ目に負担がかからない、多様な色を使ったはっきりした印刷のものを選ぶこと。
    ・女性だったら出産したらできるだけ長い期間授乳すること。
    ・いうまでもなくタバコは吸わない、お酒はほどほどに(自分の場合、断酒かもしくは週に1回、1杯のみ)。
    ・CMは批判的な目で見て、惑わされない。

全28件中 1 - 10件を表示

ダニエル・E・リーバーマンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
佐藤 優
ピエール ルメー...
ヴィクトール・E...
トマ・ピケティ
リンダ グラット...
カルロ・ロヴェッ...
スティーブン・ピ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×