- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152095701
作品紹介・あらすじ
これは書店を愛する人たちの物語――島に小さな書店が一つ。店主フィクリーは店内に捨てられていた幼児マヤに出逢う。フィクリーは愛情深くマヤを育て、成長していくマヤは本を好きになり……。
感想・レビュー・書評
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小さな島で唯一の本屋を営む主人公。
偏屈な男性が幼い女の子を育て、しだいに人と関わるようになる。
とてもいい話でした。
大学でポーを研究していたフィクリーは、妻の故郷で本屋を開きました。
ところが妻がとつぜんの事故死。
酒におぼれる彼に、意外な運命の扉がひらきます。
本屋に女の子が置き去りにされたのです。
2歳半のマヤ。
思わず世話を始める彼が一時的なことと言いながら次第にほだされ、ふいに愛情を自覚することに。
周りの人々も、心配して様子を見に来ます。
なき妻の姉のイズメイや、その夫の作家、警察署長で人の良いランビアーズ。
そして、はるばる島まで本の営業にやってきた取次店の女性アメリア。
大柄でアンティークな服が好き、(ビッグバードというあだ名だった)ぽわぽわの金髪の彼女。
自分の好きな本しか注文しない気難しいフィクリーと、しだいに心を通わせるようになってゆくのです。
本を愛する気持ちがあふれていて、そんな人たちの交流に心温まります。
泣けるけど~感傷的というのではなく、ちょっと距離を置いた寛容さやユーモアがいい。
登場人物にいろいろな面があって、単純ではないのが魅力的ですね。
各章のはじめに、フィクリーが好きな短編が紹介されているのもお楽しみ。
マヤに向けて書き残したものということのようで、愛情あふれる内容なんです。
本屋大賞で受賞したため知りましたが、これは素晴らしかった!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
愛する妻を交通事故で亡くし偏屈になっていく書店主フィクリー。孤児であるマヤの里親になる事や、好意を寄せる女性との出会いなど、人との繋がりで少しずつ人柄が丸くなっていく様が微笑ましかった。
人生何が起こるか誰にもわからない、とはこういう事を言うんだと思った。
店の希少本が盗まれるというミステリー要素もあり、先が気になりながら読み進められた。 -
島で唯一の小さな書店「アイランド・ブックス」の店主、フィクリー。愛する妻を事故で亡くし、1人きり本を売る日々を送るうちに、偏屈な性格になっていた。
ある日、書店の中にぽつんと幼女が置き去りにされた。幼女の名前はマヤで、彼女の若い母親は遺体で発見された。
フィクリーは戸惑いながらも使命感を覚え、マヤを引き取り育てることに決める。そして時間は過ぎ、フィクリーは再び女性を愛することが出来るようになり…。
物語の冒頭、主人公のフィクリーはとても偏屈で嫌な男として映る。だけどそれには抱えた悲しみとか孤独感とか理由があって、読み進めるにつれて彼の人間的な魅力がどんどん明かされていく。
フィクリー以外もキャラクターがとても魅力的。ほんの少しずつ悪い心を持ち合わせていたりするところが人間臭くてリアル。
フィクリーの亡くなった妻の姉・イズメイ、フィクリーの友人であり警察署長のランビアーズ、フィクリーの後の妻で編集者のアメリアのキャラクターがとくにとても好きだった。
ポップな雰囲気だけど、人間関係の入り組み方がけっこう複雑だったり、悲しい死が訪れる場面もいくつかある。だけど悲壮さをあまり感じないのは恐らく、前向きに強く生きる人々が描写されているから。
フィクリーの娘となったマヤは聡明な少女へと成長し、書店主の娘らしく文学の才能を発揮し始めるところも素敵。マヤが小学生になり学校の課題で書いた掌編が出てくるのだけど、とても素晴らしい内容だ。
各章の冒頭に、実在する本がたくさん登場するところが面白い。その本についてフィクリーが語り、そして次のページから始まる本編とも関わっていく、というつくり。
オコナーやサリンジャーなど有名な作家の本も取り上げられていて、また読みたい本が増えてしまった。
悲しく思えたラスト近くの後に訪れる本当の結末はとても希望的だった。
誰かを想う気持ちが人の生き方を変えることは現実にもある。そういう人々の生き様を、温かい気持ちで見届けられる結末だった。 -
孤独で偏屈な書店主が、店に置き去りにされていた幼児を育てることで変わっていく…というような紹介から受ける印象(ハートウォーミングなお話だろうな)とはかなり違う物語で、いやあ、良かったです。終盤の展開は好きなパターンではないけれど(「感動」を誘う安易な常套手段だと思ってしまう)、本書の場合は、過剰に情緒に流れることのないクールな書き方で、素直に読むことができた。
最初のあたりは、主人公フィクリーの偏屈ぶりがおかしく、嫌いなものへの辛口評にクスリとさせられる。ミステリっぽい意外な展開もあって、どんどんひきつけられて読んでいくと、終盤は、本と本を好きな人たちへの愛であふれんばかりの言葉が並んでいる。ちょっと気恥ずかしくなるくらいだけれど、やっぱりここはぐっとくる。
本を愛するフィクリーは、本を心の糧とし、言葉によって生きている。彼に自分と似たところを見出す本好きの人は、少なくないだろう。そうだよねえと、あちこちで頷きながら読んだ。その中で一番心に残ったのは、フィクリーが、引き取ったマヤという子どもへの愛を自覚する場面だ。
「酒に酔ったような、気持ちが浮きたつような感じがする。狂おしいような感じ。これが幸福というものだと思うが、そのうちこれは愛なのだと彼は気づく。」「愛というもののなんともやりきれないところは、ひとがひとつのものにくそったれな愛を注ぐと、あらゆることにくそったれな愛を注ぐはめになるということだ。」
人を変えるのはやはり人との関わりなのだ。本や言葉じゃない。でも、本は(うまく言えないけれど)変わりうるように心を耕してくれるものではないかなあと思った。 -
とても良い時間でした。あたたかいお話なのですが、悲しいこともあり、でもそれがちょうどいいバランスです。主人公の書店主がだんだんと人と関わって行くのが優しくて。本屋のない町なんで、町にあらずだぜ、という台詞に大きくうなずきます。素敵な本の虫たちがたくさんです。各章のタイトルが短編?の名前にもなっていて、A・Jのコメントも良くて読みたくなりました。先日読んだ「本泥棒」が本編にちらっと出てきたのも嬉しかったです。本を読むっていいなぁ、と感じたお話でした。
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2022.12.15読了
島に一軒だけある小さな書店。偏屈な店主フィクリーは妻を亡くして以来、ずっとひとりで店を営んでいた。傷心の日々を過ごすなか、書店にちいさな子どもが捨てられているのを発見する。そしてフィクリーはその子をひとりで育てる決心をする。
フィクリーの言葉から
「ぼくたちはひとりぼっちではないことを知るために読むんだ。ぼくたちはひとりぼっちだから読むんだ。ぼくたちは読む、そしてぼくたちはひとりぼっちではない。」
フィクリーが育てる子どもマヤがとてもいい子。
自分が書店に預けられたのは必然で、他の子たちのようにサンドイッチ屋やおもちゃ屋に預けられなくてよかった考えているのがあまりにも可愛すぎる。
ほのかな恋愛、ミステリー要素も含み物語は展開していく。
翻訳物だからなのかな、割と淡々と話が進むのは、私からしたらありがたい部分もあった。
本好きは絶対好きになる本書です。 -
タイトル通り店主のものがたり。
妻を亡くし書店に幼児置き去り、その子を引き取り育てる、恋愛、病床。
本好きな家族や友人達に見送られるっていいなあと思いました。 -
小さな島唯一の書店。偏屈な書店主のフィクリーをめぐる人々との物語です。
自動車事故で妻を亡くし、大きな喪失感を抱える中で、閉店中の書店に残された孤児のマヤを里親として育て始める事によって変わっていくフィクリー。
色々な事故や事件が起こりながらも、暗くならず何かを次の世代に引き継いでいく尊さが身に沁みます。
本を愛する人に囲まれて生きられて幸せだよフィクリー。温かい物語でした。
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